第7話 稲妻を呼んだ男
カタメはエデンで左半身を火傷し、更に肉食獣を捕食し続けた事により、カタメが超能力を手に入れる片鱗が見える話になります
「あの日は雲1つない晴れた空だったんだ!なのにあの片眼の少年が熊の首を刎ねた瞬間、森に雷が落ちてきたんだ!信じられないよ!」
カタメがアメリカに来て3ヶ月。まともな暮らしは出来ていない。そんな時、103丁目ワッツ・タワーズ駅前を通り過ぎる民間人がある噂話をしていたのを聞く。
「パサディナで熊が出たらしいぞ。」
地理感のないカタメ、鉄治の地図もエデンの放火で燃えてしまった。カタメは近くにいたビッグ・ジョーに尋ねる。
「よお、パサディナってどっちの方角だ?」
ビッグ・ジョーはカタメに逆に尋ねる。
「行って何する気だ?」
カタメはあっさり答える。
「熊捕まえて喰うんだよ!」
ビッグ・ジョーやカタメを知る者達は驚く。こいつがその辺の野獣を食いあさっているのは見ているが
(は?熊を捕まえるだと?)
だが、カタメの眼はマジだ。
「鰐捕まえて喰うくらいだから、もしかしたらマジで熊倒すんじゃねーか?」
と皆が話し出した。カタメはワッツ・タワーの奥に置いてあったでかいスコップを見つけ、肩に担いだ。いつもの鉄パイプに割れたビール瓶をくっつけている。背中にギターケース2つと荷物、手甲と安全靴。そんな装備で本気で捕まえにいくらしい。ビッグ・ジョーはカタメに尋ねた。
「お前マジか?」
カタメは本気のようだ。
「当たりめーだろ。少なくとも俺がこの国来てよーやくまともな飯にありつけるんだ。こんな美味しいチャンス逃したくねー。」
するとビッグ・ジョーが
「なら俺が案内してやるよ。だが歩いて行くならかなり遠いぞ?」
カタメは軽く答える。
「この怪我でこのタワーまで帰ってきたんだ。今更そんなこと気にしねーよ。」
ビッグ・ジョーはこいつならマジかも。と興味が湧いてきた。
「こっちだ。着いてこい。」
とカタメと鉄治を連れて歩き出す。すると一緒にドラム缶の火で焚き火をしていた23人も興味半分で一緒に着いていくことになった。パサディナはワッツ・タワーから遥か北に位置する。
北の方へぞろぞろとアメリカのヤンキー達と歩いて行くカタメと鉄治。通行人が皆避けていく。
(ガラの悪い俺達だからな。無理もねーだろ。)
しばらくしてダウンタウンの辺りを通り過ぎる。まだ午前中だからエデンのギャラリー達はいない。エデンのマスターともすれ違って軽く挨拶したが、相変わらず化け物見るような目で見てやがる。ダウンタウンを通り過ぎる頃、警察官がカタメやワッツ・タワーの連中を呼び止める。
「おい、お前ら。この街で棒持って歩くな。罰金取るぞ。」
カタメ達はシカトした。オメ-に構ってる暇はねーと。すると、警察官数名が拳銃を取り出し、カタメ達に構える。
「動くな!両手挙げて近くの壁か地面に頭付け!」
カチンときたナイフ使いのアルが警官に言い放った。
「おい!ポリ公のオッサン!こんなもん俺らにとっちゃただのおもちゃだ。撃つ気ねーなら腕ごと奪うぞ!」
警官は威嚇射撃をすると、カタメや鉄治を含めた全員が弾丸を手慣れたように交わす。ワッツ・タワーに長くいれば、そんなもの交わすのは朝飯前だ。慣れまくってる。そして、特に喧嘩っ早いファルコン、ロケット、キッド、ロッキー、ニコが次々に警官達を銃声よりデカイ声で脅した。
「チャカ持ってっからって調子に乗んじゃねーぞ!テメ-!」
「どーした?もう弾切れか?だったらそのおもちゃ俺にくれよ!」
「こっちは腹減ってんだ!邪魔すんな!」
「そーいやテメーこないだシメたポリと似てんな?またやられてーのか?」
「おい!そのチャカと同じもん、そこの店で5ドル弱で売ってたぞ。オメーは何処で買ったんだ?」
すると、警官達はビビッて去って行った。何やら彼らと因縁があるようにも見えた。
パサディナの山の方に着いた。奥に入っていくと、ハンター達が猟銃を持ってうろうろしている。どうやら熊がいるのは本当らしい。カタメ達はもっと奥まで歩いて行く。
もう昼過ぎだろうか、空は雲一つ無い青空。ロスは晴天ばっかりでアメリカに来てから今まで雨に当たった事が無いカタメ。しばらくすると、カタメが獣道を見つけた。草が踏まれ何か歩いているような足跡。カタメは隻眼になってから、他の五感が人より鋭くなっていた。何やら獣の臭いがする。ハンターも猟銃を持ってあちこちにいる。
すると、肩にでかいスコップを担いでいるカタメの背後から、ビッグ・ジョーよりはるかにデカイ大きな熊が襲いかかってきた。カタメは振り向きざまに、ビール瓶をくっ付けた鉄パイプを熊の口の中に思い切り「グサッ!」と突き刺し「スッ!」と素早く引っこ抜いた。続けざまにでかいスコップでその熊の首を「スパン!」と刎ねた。因みにそのスコップは刃物ではないが、確かに
《キーーーン!斬!!!!バサッ!ドサドサドサ!!!》
というでかい音が山全体に響き渡る。周囲の木々も斬り裂かれバタバタ伐採され倒れていく。そしてカタメは「スパン!」と刎ねられ空中に放り出された熊の生首を片手でポンとキャッチした。その瞬間、雲一つ無い筈の青空が突然暗雲に見舞われ、カタメを照らすように稲妻が落ちてきた。
《ビカッ!ドーーン!!!!》
熊の生首を無表情で抱えるカタメと足元に無残に転がる首の無い熊の胴体を照らす稲妻のシルエット。まるで夜道を走り抜け、雄叫びを上げる獣のような鋭い眼光で周囲をギラッと睨むカタメ。倒れ崩れ落ちる熊の胴体と森の木々、呆気に取られる鉄治とワッツ・タワーの面々、身体が凍るように固まる猟銃を持ったハンター達。足下には熊の首と口から大量に流血した血溜まりと、モノクロな狼色の花が咲いている。
暗雲は直ぐに去った。カタメは生首の毛を口に噛み、熊の胴体を1人で担ごうとする。
「それにしても重いな。」
ビッグ・ジョーが呆れた顔で言う。
「馬鹿。オメー1人でこんなデケーもん持てるわけねーだろ?オメーら、そっち持て。」
23人のヤンキー達が熊の屍体を持ち上げるのを手伝う。カタメは元の人間の表情に戻って皆に言った。
「ならお礼にみんなで喰おうぜ!」
「おい、手伝った奴ら全員喰わしてやるよ。熊鍋なんて滅多に喰えねーぞ。」
カタメは彼らに初めて明るい表情を見せた。腐らないようカタメが使っていた包帯で熊の首部分を縛る。持ってきたスコップと鉄パイプを台にして包帯で縛り、神輿のように皆で担いでワッツ・タワーまで運んだ。滅茶苦茶重いが、さっきまで荒んでいたカタメや皆の表情が笑顔になっていった。帰り道は血だらけになっていったが、そんなことは関係ない。早く持って帰って皆で喰おう。彼らの頭にはそのことしか考えてなかった。
帰りの道中は皆固まっていた。誰がどう観ても普通の人間がやってる事だと思えない。まるでマンモスを狩った原始人である。首のない熊がヤンキー達に担がれている。その生首を、隻眼の少年がニコニコしながら脇に持っている。野鳥がたかってくるが、彼らが持っている凶器で殺され、熊と一緒に彼らのエサとされた。警察に通報する者すらいなかった。熊の屍体を持った連中の方が何より恐ろしい。カタメ達は、とにかく道中で腐らないよう早歩きで戻っていく。さっきの警察官が呆気にとられていた。
「・・・それ、お前らが倒したのか?」
カタメは
「あーそーだよ!俺達の獲物だ!触んじゃねーよ!これから皆で喰うんだよ!文句あんのか?」
と言い放った。
道中で、皆どの部位が食べたいか話していた。胸、肩、脚、体長2m以上あるこの熊の肉。カタメにとってはヨダレが出そうな程食いたかったアメリカ産の肉。ナイフを持っていたアルやニコが
「バラバラにした方が持ちやすいんじゃねーか?」
と提案すると、カタメが
「それじゃ肉屋から盗んできたブロックバラに見られるだろ。重いけどこのまま持っていった方が信用出来るだろ。」
と話し、その方が「熊を倒したぞ!」という証にもなると考えたからだ。もうあのワッツ・タワーが見えてきた。あいつらどう思うのかとカタメはワクワクしていた。
今回発動する超能力は、風で斬る能力と稲妻を呼ぶ能力となります。




