第65話 音楽の先人達
ソニック達Watts Towersに母国から陣中見舞いが来ます
スイスから追い出されるような形で隣国オーストリアへ向かったソニック達WattsTowers。ここもまた永世中立国である。この国はかつて、オーストリア・ハンガリー帝国を形成し、2度の世界大戦を経て現在の形に落ち着いたようだ。また、このオーストリアは音楽の都・ウィーンがあり、ソニック達WattsTowersもこの地でライブを行う予定である。
グラーツ、ザルツブルグでの公演を終えたソニック達WattsTowers。ザルツブルグからはスイスで離脱していたグッディの寝台車も合流。この国の公演を行う中でソニックはこのオーストリアで音楽を行っていた先人達の逸話を耳にする。
「ベートーヴェンは耳が聞こえなくなっても、歯で棒を挟んでその振動で作曲していた。」
「モーツァルトは音楽てんかんで、トランペットやフルート等の管楽器の音が苦手だった。」
「シューベルトは多くの作品を出しながらも31歳にしてこの世を去った。」
等、道すがらで彼らの楽曲を聴きながら
「ベートーヴェンってスゲー執念だなあ。」
「モーツァルトもシューベルトも自分と戦ってたんだなあ。」
と思うと共に
「彼らが作曲してた時代ってこの国も大変だった時代だったんだよなあ。俺達も負けねーで頑張らねーとな!」
と自らに活を入れる。中には彼らを
「ただのクソ野郎だよ。浮気癖もあるしよ。」
と言う者もいたが、ソニックは
「でも彼らは俺みてーな人殺しじゃねーだろ?俺も人のこと言えねー人生だからよ。まあ、俺ら音楽やってる連中ってどっか螺旋が5、6本抜けてるもんさ。あ、ただ俺は浮気はしねーよ。奥さん怖いからさ。」
と周囲に話していた。だが、この国最後の地ウィーンでソニックはある人物と出くわす。それは妻の桜だった。
「来ちゃった。」
「え?桜?何でここに?」
「あなたがこっちで色々やってるみたいだから心配になって・・・」
LAを拠点に楽曲の和訳の仕事に就いている妻の桜がこのウィーンにやって来た。子供達は緑と長女の真優が面倒を見るからと送り出したという。その真優に
「パパは向こうでも相変わらず暴れてるみたいだから様子見に行ってきてよ。」
と頼まれたらしい。また、桜の友達であり、一部のWattsTowersと結婚した皆も一緒だった。ミッチとベッキー、マリリン(アレックス、ジャーマン、サージェントの妻)は旦那とLAに残るか、帰国してはいるが、他の11人は桜と同じでそれぞれ夫が心配で様子を見に来たと話す。また、彼女らは高校時代にこのウィーンへ旅行していた過去があった。ソニックは
「ところで何でウィーンなんだ?」
と桜に尋ねると
「ここならあなた達も暴れないでしょう?周りみてみなよ。きちんと現地の人も移民の人も仲良くやってるでしょう?何でかわかる?」
確かにこのオーストリアでは特にいざこざがない。隣国スイスでは色々問題もあったが、この国でも色々世界史に大きく揺れていた国であったが、今はそんなモノに振り回されず、平和に過ごす人々がいる。あちこちに移民がいるのも他の国と同様なのだが、頭にスカーフを巻いている女性をちらほら見る。あれは中東からこの国に移住してきたイスラム教徒の教えで巻いているという。他にもこないだ回ってきたハンガリーやルーマニア、クロアチアやアフリカ諸国等多くの民族が尊重し合い、共存して暮らしているのはアメリカと代わらない、いや、差別しているアメリカ以上の文化ではないだろうか?さほど不思議ではないのだが、隣国のスイスを経験しているソニックにとっては拍子抜けしている感覚だった。そして桜が
「ここは音楽の都よ。この国は音楽で平和になってると思うの。最近のあなたは昔のように音楽に対して殺伐な方向に行ってるような気がしてならないわ。子供達も皆心配してるの。ここに来る前にイタリアで誠剛とも会ったけど、あの日から目が変わってないって。あなたのバトル・ミュージックはここでは必要ないんじゃない?それよりもベートーヴェンやモーツァルトに負けないような現代の音楽、「Sonic」をこの音楽の都で聴かせてあげてほしいの。今のあなたが奏でる「Sonic」を先人達に聴かせてあげられないかしら?」
ソニック達WattsTowersはその言葉にハッとした。あのダウンタウンでの6・6のライブ以来何処かバトルモードとなっていた。このヨーロッパに来て様々な問題と戦ってきたソニック達WattsTowersは、この言葉を聞いてそれぞれが我を戻していく。
「そうだったよな。俺達、あの時から音楽が楽しいモノだって忘れるところだった。どっかしらギスギスしてたよな?」
「そうだよ!今現代で音楽やってる俺達WattsTowersが新しい風吹かせてやろーじゃんか!俺達には「Sonic」があるじゃねーか!」
「この音楽の都に俺達の「Sonic」をきっちり足跡として残してやろーぜ!」
彼女達の陣中見舞いを受け取り、ソニック達WattsTowersはあの少年時代のような目に戻っていった。エデンでのライブの後、皆で俺達の城を彼女らと協力して建てたあの日の目の輝きを取り戻していった。桜ら妻達が渡欧したのは正解であった。エディが
「全く俺達の嫁さんには敵わねーよ。」
と呟く。ダンやレオも
「ワイフにゃ何でもお見通しだよな。」
「天下無敵の俺達も頭が上がれねーときたもんだ。」
と溜め息を漏らす。
このウィーンでは3つのライブハウスで行う予定だったが、LAに戻っている鉄治から連絡が入り
「もう一カ所追加だ。ムジーク・フェラインが1日限りライブやってくれって打診が来た。行けるか?」
それを聞いたソニックは
「マジか?!そこで俺らが「Sonic」出していいってのか?」
と驚く。何せそこは「黄金のホール」と呼ばれ、世界一の音響を誇る場所で有名な所であり、普段クラシックを聴かないソニックでさえ名前くらいは知っており、
「自分達には分不相応なとこ」
と敬遠していたほどだ。鉄治が
「桜ちゃん達が絡んでるみたいだぞ。やってやれよ。」
と話すと、ソニックは隣にいた桜に
「あそこって君が押さえてくれたの?」
と尋ねると、桜が
「今現在世界一の音楽じゃない!絶対やった方がいいよ。ベートーヴェンだってモーツァルトだってあなたと同じように音楽で世界と戦ってたんだから!」
と明るく話す。ソニックは
(どーゆールート持ってんだよ?桜はよ。全くあいつらの言うとおりだよ。奥さんには誰も敵わねーってことだよな。)
と思いつつ、ウィーンでのライブをこなしながら、音響組は関係者と話す機会を増やしていった。ソニックは
(そうか。どの時代も音楽やってる奴は戦ってたんだなあ。クラッシュもピストルズも、ストーンズやビートルズだってそーなんだろー。でも、俺達だってそーなんだ。今も、これからもな!ぜってー負けねーぞ!俺達Sonic Los Angeles、WattsTowersがこの時代の代表として戦っていくんだ!)
と心に誓う。そして桜に
「今までの全てを注ぎ込んでやってみるよ。お膳立てありがとな。」
とにっこり笑って礼を述べた。その夜、ソニックは桜と2人きりで話した。こんな時間はいつ以来だろうか?桜の事、子供の事、菜月が今LAで頑張ってる事。そして
「・・・いつも心配ばっかかけてるよな?俺。」
と呟くと、桜は
「それだから好きなのよ。何かに向かって真っ直ぐなとことか、誰かのために何かするとことか。ほんと出会った頃から変わってなくて・・・だから好きなのかもね。」
とにっこり微笑む。ソニックは
「やっぱ君には敵わねーわ!ほんと俺より強い!」
と何か言葉に出来ないような事を思いに秘め、2人で夜空を見上げていた。ムジーク・フェラインでのライブは、オーストリアを発つ5時間前の日曜日に決まっていた。
オーストリアは音楽家が多いので、社会問題を取り上げずに書いています




