第64話 RELIVE⑫ Sound of Sonic
スイス編後編です
翌日、ジュネーヴで最初のライブをL`Usineで行うソニック達Watts Towers。準備に取りかかり、観客が入り出すと突然ヨハンが寝台車の一番奥に逃げ込み怯え出す。観客の中に上官が数名いると言う。ソニックはグッディに
「寝台車だけフランス行ってくれ。」
と頼むがグッディは
「寝るとこどーすんだよ?」
と尋ねる。ソニックは
「他の車両か野宿でいいや。お前らはどーする?ベッドで寝たいなら一緒に行っていいよ。」
と全員に聞くが
「俺も別にいいよ。スタジオ車とキッチンカー、診療車とトレーラーハウスにハンモックで大丈夫だろ?」
と全員が一致した。ヨハンが
「何でだよ!何でそこまでするんだよ!俺は兵役から脱走したんだぞ!さっきまで銃や爆弾持ってたんだぞ!これから人を殺そうとするかもしれねーんだぞ!なのになんでそこまでしてくれんだよ!」
と泣きながら話す。するとソニックが
「今、君が言ってること、30数年前の俺とほとんど同じだよ。昨日の夜、こいつらが君にしたこともほとんど変わらん。ただ違うのは、俺が既に人殺したってのと、君がこれから人殺すかもしれないってことだ。今なら間に合う。黙ってここから逃げろ。夢あんだろ?」
と説得する。そしてソニックは自分の過去を話す。
「実は俺はな、祖国で人大勢殺してんだよ。そいつらも君みてーに周りが腐った連中ばっかでよ。そーでもしねーと俺が殺されると思ってな・・・で刑務所に入れられて昨日の君みてーな事しよーと毎日してたんだ。でもよ、その後出会った人達が皆滅茶苦茶いい人達ばっかでよ・・・まあ、こいつら(Watts Towers)もだけどよ。だからこれから生きてみろよ。生きるだけでいいからよ。そうすりゃ君のやりたいこと手伝ってくれる奴らに出会えっからよ。まあ、そん時にゃ俺らも手伝うからよ。」
ソニックはヨハンの気持ちが痛いほどわかっていた。自らが「カタメ」になった時のシチュエーションとほぼ一致していたからである。
「心配すんな。君の仇は俺達Watts Towersが今すぐ取ってやる!君の為に戦ってやる!それが俺達に出来る事だからな。なんせ俺達は自分の国のプレジデント倒したくれー強えーからよ。それでも心配ならここに連絡しなよ。助けに来てくれっからよ。」
と言って出したのは菜月の名刺だった。グッディに
「すまねーけどこいつがどーしよーもなくなったら菜っちゃんに連絡してくんねーか?ワリドやルカよりは簡単だからよ。」
と頼み、グッディとドミンゴ、更に今回の事件に関わったロケット、JJ、ブライ、ジャッキー、更にサージェントとエースを同行させ、寝台車を一路フランスへ走らせた。戦力は減るが、ヨハンを逃がしたら合流する予定である。
そしてステージに立つソニック。今日は予定を変更して始めから熊襲太鼓を使用する。ヨハンがびびっていた連中を睨み付け、挨拶代わりの「Sonic」。
《ダダダダダダダダダダダダダダダダ!》
と「Combat」を熊襲太鼓で彼らの足下へ放つ。ソニックは
「おい!テメーら!それでも世界最強の兵士の集まりなんか?」
と怒鳴りつけると、オーディエンス達から
「何だと?!」
と押し寄せてくるが、ソニックが長いドラムスティックを一閃。
《ギャドーン!》
と強烈な「Volt」をアリーナへ落とす。固まるオーディエンス達。笑顔を一切見せないソニックはそのまま演奏を始めた。まるでダウンタウンでプレジデントを呼び寄せたような喧嘩腰のソニック。ハーメルンの笛吹きと似たような雰囲気のソニック。
「その不思議な力はどっから来るんだ?」
とアリーナの観客が話すと
「俺の身体ん中だよ!サウンド・オブ・ソニックだ!」
「それを言うならサウンド・オブ・ミュージックだろ?てゆーかそれ、隣のオーストリアの話じゃねーか!」
と突っ込むオーディエンス達だが
「は?知るか!そんなモン!今の俺はそーいう気分なんだよ!徹底的に戦ってやる!この「Sonic」でな!何が最強の兵士だよ?笑わせんな!強制労働なら共産国家と代わんねーな!」
と煽る。次第にオーディエンス達が
「そーだよ!何で俺らが兵隊に駆り出されなきゃ行けねーんだ?!」
と呼応する。ソニックの演奏は近隣住民にも広がり
「何が世界一平和な国だ?外人ばっか優遇しやがって!地元の俺らは脅迫されてるだけじゃねーのか?」
と不満を漏らし始めた。皆ヨハンと同じ思いをしていたのがわかったソニックはガンガン「Sonic」をぶちかます。だんだんヨハンが怯えていた者達が居づらくなり、帰ろうとしていたが「Magnet」で引き戻される。
「おい!逃げんじゃねーよ!オメーらみてーのダウンタウンのジャンキー相手にすっかり慣れてっからよ。こっちはこの力でアメリカを引っくり返したんだ!悪りいけど朝まで付き合ってもらうぞ。兄ちゃん達、覚悟しろよ?」
と誰一人逃がす素振りを見せず、最後尾にいるビッグ・ジョー達が囲んでいる。ソニックが
「そいつらLAでも最強の奴らでよ。逃げてーならそいつら倒してみろよ!まあ、例え武器持ってても無理だろーけどな!そいつら平気で弾丸避けっからよ!」
と挑発する。ヨハンを苦しめていた者達は座り込んでしまう。どうやら腰が抜けたようだ。呆れたソニックは
「武器持たねーとこれかよ?平和な国なんて何処も見せかけだけだな!俺が生まれた国もだけどよ!」
と言い放ったのは早朝の事だった。丸半日ライブを行ったソニック達Watts Towers。次の日も、そしてベルンやチューリヒでも同様に行った。永世中立国の彼らはどの国の人間にもこのソニックを問題に出来ず、権力者は皆下を向いてソニック達Watts Towersを次の国、オーストリアへと向かうのを待っていた。様々な団体が本拠地を置くこのジュネーヴで、彼らには都合が悪かったらしく
「お願いだから早く出てってくれ!」
と神に願っていたと国境で聞いたソニックは
「そんなもんいねーよ。いつまでもそんなモン信じてバッカじゃねーの?」
と言い放つと、カトリックの多い国民は激怒。だがソニックは
「なら俺のダチの指3本返せよ!俺は9・11の時に神を許さねーって誓ったんだ!俺は無神論者だ!俺は神なんかより、オメーらに指3本奪われたダチの夢を信じる事にすんぞ!あいつは俺と同じ能力を持っている。数年後オメーらやり返されんぞ!覚悟しとけよ!せいぜい存在もしねー神に祈るんだな!」
と言ってスイスを出た。
一方、ソニックがライブを行っている様子をスマートフォンで流すエース。撮影はしていないが、きちんと生ライブをヨハンに聴かせながら
「あいつ馬鹿だけどよ、いい奴だろ?実を言うとよ、俺もあいつと似たよーなモンだったよ。でも、あいつと出会って変われたんだ。世の中で前向いて歩けるよーになってよ。まあ、俺は片脚ねーけどな。」
と笑いながら話す。エースは続ける。
「俺もアフガニスタン行って戦闘機飛ばしててよ。墜落して片脚失っちまった。そん事は今でも後悔してるけどよ、それでもこーやって笑って生きていられるんだよ。それだけで十分だよ。」
横にいたサージェントも話す。
「それにお前は夢あんだろ?ソニックも今のお前と同じよーなツラで俺達の前に現れたよ。でっけーギターケース2つ背負ってな。毎日のよーに傷だらけになって包帯巻いて俺達のいるとこ戻って来てよ。よろよろのゾンビかミイラみてーな格好で「こいつほんとしぶてーな」って皆思ってさ。それでもあの片眼はギラギラしててよ。今思えばあいつもお前みてーにでっけー夢持ってて、ぜってー諦めねーって覚悟があったんだろーな。俺らはその光に付いてって今までもこれからも生きて来れたってだけさ。だからお前も諦めんなよ。俺らが手伝うし、これから仲間作ればいいんだからよ。」
実際に戦場へ行った2人の言葉は何より重かった。ヨハンは
「・・・俺、絵には絶対自信があったんだ。指が無くても描けるかな?」
ロケットが
「左手無事じゃねーか。なんなら右腕に筆くっ付ければ描けるんじゃねーか?」
とヨハンに提案すると
「・・・やってみようかな。俺、まだ大丈夫だよな?」
とようやく前向きになるとグッディが
「どこで降りたい?何ならアメリカでもいいぞ。伝手あるからよ。」
と話すと、ヨハンが
「それじゃLAに行きたい。あんたらがいたワッツ・タワーを描く!」
と希望した。それを聞いたグッディは菜月に連絡を取る。
「菜っちゃん。また1人追加だ。いいか?」
と尋ねると、菜月が
「大丈夫!大丈夫!いつでもおいでよ。あ、そうだ。その子に電話代わってくれない?」
と明るい声で直接ヨハンと話す。ヨハンは
「今の誰?」
とグッディに尋ねると
「ソニックの妹だよ。向こうじゃ「Mother」で通ってる。」
と説明し、サージェントの手引きで空路LAへ向かったヨハン。そのままサージェントはヨハンとアメリカへ帰国し、グッディ達はオーストリアへ足を戻す。
後年、ヨハンはLAで「細胞外マトリックス」という粉末をソニックが懇意にしているライトボーン医師に勧められ、失った3本の指が奇跡的に生え戻った。その後、指が元通りになったヨハンは「21世紀ルネサンス最高の画家」として後世に伝えられることになる。
指を失った青年を書いてる間に「細胞外マトリックス」をふと思い出したので採用しました。また、タイトルのサウンド・オブ・ミュージックはそのままではなく、別の国で使ってみました




