第63話 平和な国にある廃墟の正体
スイス編前編です。ソニックが昔の自分とほとんど同じ場面の青年と出会います
ミラノをあとにしたソニック達Watts Towersはそのまま北上し、スイスへ向かう。この国ではジュネーヴ、ベルン、チューリヒでライブを行う。ミラノからジュネーヴまで一旦フランスを通り、税関を含めたった4時間ちょっとで到着したWatts Towersは
「えっ?もう着いたのか?」
と驚く。ミラノを出たのは朝方で、昼には着いてしまった。コンボイは
「これでも一応アルプス山脈通ってんだぞ。」
と説明する。スイスは永世中立国であり、平和な国だと誰もが思っていたが、至る所に怪しい建物がある。近くの住民に尋ねると
「核シェルターだよ。」
と説明される。他にも
「あの家、トーチカって言う偽者の家だよ。近くに行って見てきなよ。笑えるから。」
と言われるがまま行ってみると、それはコンクリートの家に窓の絵が描いてあり、あちこちに小さな穴があった。
「・・・何だこれ?」
とソニックが呟くと、サージェントが
「この建物に隠れてこの小さな穴から銃を出して敵を追っ払うんだよ。」
ソニックは
「砦みてーなもんか?でも何で戦争やらない国にそんなモンあんの?」
とサージェントに尋ねると
「永世中立国って言っても周りの国は戦争やってたろ。そりゃタダで守れるわけねーじゃん。自分の国守るくらいはしてるだろ。」
と返答する。
「ああ。納得。」
と理解したソニック。だが、探究心を持ってしまったソニックはもっと見たいと近くの住民に聞き、ライブまでかなり時間があったので隣のヴォー州にあるトブラローネ・トレイルという場所へ行ってみることにした。そこでソニック達Watts Towersは奇妙な景色を目の当たりにする。
「・・・何だ?ここ。」
そこにはコンクリートの上にコケの生えた三角形の建物がいくつも並んでいた。ここは別名「竜の歯」と呼ばれる対戦車用の軍事防衛戦の跡地であった。第2次世界大戦中に、フランスを占領したドイツ軍から国境を守るために作られたという。現在はハイキングコースとなっている歴史的建造物で
「原爆ドームみてーなもんか。」
とソニックが話すと、Watts Towersが皆
「何それ?」
とソニックに尋ねる。
「鉄兄ぃの故郷にある原爆落とされても残った建物だよ。爆弾落とされるまでは産業博物館?だったかな。何かドーム型の屋根だけ骨組みになってて焼け残った建物。」
と説明するソニック。それと同時に
(・・・何か日本の自衛隊思い出すな。でも、中坊だった俺に兵器盗まれる程間抜けじゃねーんだろーけど。)
と思っていると、帰りがけに軍服を着た青年達が走っているのを目撃する。
「あれ?何で軍人いんの?ここ戦争やってねーんだろ?」
とサージェントに聞くと
「おいおい、ここの男は全員兵役あんだぞ。スイスの軍隊って最強で有名だよ。バチカン守ってる連中は皆スイスの軍人だぞ。」
それを聞いた一同は驚く。
「中立なんて肩書きだけかよ?俺らより修羅潜ってんじゃねーか?全員チャカ持ったことあるってことだろ?」
とザワつき始め
「・・・ある意味物騒な国だなここ。」
と気を引き締める。銃を持って歩いているということはソニック達Watts Towersにとって
「いつでも犯罪者になれる。」
という認識である。若い頃から散々銃を相手に戦ってきたソニック達Watts Towersだったが、改めて当時を思い出し、数年前のプレジデント逮捕事件の際に使用していたバリア・プレートのスイッチを入れた。この永世中立国でまさかこれを使うとはと皆が思っていた。
ジュネーヴに戻り、キャンプを張る。ここモンブランの立地はキャンプが張りやすい。皆でキャンプファイヤーをやっていると
「遠くの方で人影が見えた。」
と視力のいいトマホークが話してると、ロケットとJJ、ブライ、ジャッキーが
「見に行ってくる。」
とその人影が向かった方へ行ってしまった。4人が行った先は山の奥深く。懐中電灯を持ってはいたが暗くなってきた。流石にまずいだろうとソニックが連絡するが、ロケットが
「スマン。マズいことになってる。」
と返答する。ソニックは
「どーした?迷子になって帰れねーのか?」
と尋ねると、ロケットが
「さっきの奴が首吊り自殺しよーとしてたんだよ!ブライが止めて今JJとジャッキーが説得してる。」
それを聞いたソニック達Watts Towersはロープを取り出し、迷わないよう大型トレーラーに結びながらロケット達と自殺志願者をここまで連れてきた。舌を噛もうとしたところをロケットがみぞおちにパンチして、ブライが担いで連れてきた。口の中にはJJがたまたま持っていた小さなボールを咥えていた。舌を噛まないようにするためである。
夜中の0時を回ったところで彼は目覚めた。彼の名はヨハン。先程話していた兵役中の青年である。ヨハンは先祖代々スイスに生まれスイスで育った生粋のスイス人。言語はフランス語を話す。スイスは他にオランダ語、ドイツ語、ロマンス語があるが、ジュネーブはフランスに接している為ヨハンはフランス語とオランダ語が話せる。ヨハンは
「・・・これを見ろよ!右手の指が3本も無くなっちまった!・・・何で戦争やらないのに兵隊になんなきゃいけねーんだよ!・・・もうおしまいだよ。」
ソニックは
「俺も片眼ねーけど、おしまいじゃねーよ。まあ、失った時は君と同じだったけどな。死にてーって気持ちもわかるよ。俺もそーだったからな。けどよ、死んだらいけねーよ。って俺はこいつらに教わったよーなもんさ。」
とWatts Towersを指す。するとヨハンが
「オメーらにはわかんねーよ!俺は明日も明後日も毎日軍事訓練受けなきゃいけねーんだぞ!大体何なんだよ?オメーら外国人が優遇されて、生粋の俺らスイス人が皆強制的に兵隊にされるっってーのはよ!自分の国なのにおかしーだろ?」
一同
「マジで?!」
と驚く。この国では19歳から30歳までに男は全員兵役があるという。ヨハンはまだ20歳。ジュネーヴ造形芸術大学に通っていたが、厳格な父により早めに徴兵され、訓練中に右手の親指、人差し指、中指がいつの間にか吹っ飛んでしまった。それでも来いと教官に命令され、嫌気が差したと話す。ヨハンには夢があった。
「欧州を渡り歩く画家になる。」
という夢を打ち砕かれ、この事件に至ったのである。ソニック達Watts Towersは
「・・・ひでーなそれ。」
と言葉にならない。そして
「俺らが匿ってやる。取り敢えずこのトレーラーの中に隠れてろよ。俺達はアメリカから音楽をやりに来た者だ。まだ旅の途中だから好きなとこで下ろしてやるよ。」
と意見が一致するも、ヨハンが
「この手でどーやって絵が描けんだよ!」
と鳴き叫ぶ。ソニックは
「いずれわかるよ。生きてりゃな。だから死ぬなよ。絵描くの好きなんだろ?なら残った身体で描いてみろよ。」
と説得する。そしてサージェントが
「俺もお前と同じよーな事情で左手の中指無くなったよ。俺左利きだしよ。それでも生きていけんだからよ。夢持ってんなら簡単に諦めんなよ。」
とヨハンを嗜める。エースも
「俺の右脚も義足だぞ。でもちゃんとこいつらと歩いてるよ。」
と右脚を見せる。そしてマンモスが
「これ、食えよ。」
とバーベキューを差し出す。横でグッディとマックが
「一緒に食おーぜ!」
と誘い、ミグに
「おい!オメーら食い過ぎなんだよ!特にグッディ。お前明日運転手だろ?」
と笑いを誘うもヨハンは受け入れない。ソニックは
(俺もおっちゃんや菜っちゃんと出会った頃はこんなだったよなあ。だからほっとけねーんだ。おっちゃん。今更ながらすまねー事したなあ。)
と振り返る。そして、バーベキューを口にしないヨハンを見て
(緑さんにも同じ事したよなあ。帰ったら謝ろう。)
と思う。ソニックは
「しばらく寝台車でそっとしてやってくれ。また変な気起こさねーよーに見張っててくれよな。」
と皆に頼む。
スイスには核シェルターがあるということで調べながら書きました。




