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第61話 Watts Towersのいないロス・アンゼルス

アメリカに舞台が戻ります

 ソニック達Watts Towersがヨーロッパツアーに出て数ヶ月が経っていた。ギリシャで出会ったワリドや、ハンガリーで出会ったルカはこのLA に来て、それぞれやりたい事に邁進している。2人共UCLA に入学し、親友となっていた。だが、ルーマニアから来た移民団はやりたい事がまだ見つからず、ボランティアや「Burning Gear」の仕事に勤しんでいたが、一部は腐っていた。そんな時だった。ルーマニアにいた時と同じように暴れる4人組に1人の女性が襲いかかる。LAの住民達が


「出た!昇龍旋風脚!」


「おおっ!」《パチパチパチパチ》


とオーロラック漬けの4人の青年達を必殺の蹴りで倒し、足下に転がす。拍手を送る住民達。その女性とは、このLAで今や「Mother」と呼ばれ親しまれている菜月であった。傍らにはヨーロッパツアーに不参加の意を表したジャーマンとアレックスが付いている。この3人が現在LAの治安を守っている巷のヒロイン&ヒーローである。菜月は彼らに


「あなた達が兄ちゃんがルーマニアから連れて来たって人達ね!話は聞いてるわよ。取り敢えずあたし達の前でドラッグは止めてね。相手が兄ちゃんだったらあなた達病院送りだったわよ。」


と話す。彼らは


「何者だテメー・・・」


とうずくまりながら尋ねると、アレックスが


「ソニックの妹だよ。このねーちゃんだけは敵に回さねー方がいいぞ。戦闘力でいったらソニック以上だぞ。なんせハリウッドのアクション女優だからな。」


と彼らに告げる。菜月は彼らに


「ここに来た以上何かやりたいことないの?」


と尋ねるが、彼らは鉄治がいる「Burning Gear America」での仕事が性に合わず、また、オーロラックの魔の手から逃れ切れておらず、菜月が


「それならもっといいとこ連れてってあげるわ。着いてらっしゃい。」


と別の所へ案内する。そこは、菜月の2番目の義姉夫妻が経営するクリニックであった。待っていたのは義兄のデイブと葵である。菜月は


「葵姉ちゃん。この子達お願い出来る?」


「デイブ兄ちゃん。この子達シンナーの匂いするから連れてきたんだけど。」


「あんた達。このお姉ちゃんはあたしや兄ちゃんよりおっかない御方だからね。」


と話していると、身元引受人のニールと鉄治がやってくる。鉄治が逃げ出した彼らに


「オメーらよお、別にウチでの仕事したくねーってんならそれでもいいんだけどよお。ならどーすんだよ?またマンホールの中に戻りてーのか?変わりたくてここに来たんだろ?なら何になりてーかくらい考えろよ。」


と諭す。ニールも


「オメーら夢ねーのか?簡単な事でいいからよ。まずそれ探す努力しろよ。」


と尋ねる。更にデイブが鉄治とニールに


「こいつらヤク抜いたらワッツ・タワーの下にでも預けらんねーのか?」


と訊くと、鉄治が


「こんな根性なしじゃ死体に化けるだけだ。むしろあいつらが嫌がるよ。もうあそこは本物の漢を磨く聖地だからよ。」


と現状を話す。


 ソニックやGTが出て行った後辺りからワッツ・タワーの住民達は彼らのように夢を持つため皆目の色が変わっていったと言う。


「俺達も夢を持っていれば何か凄いことが出来るんじゃねーか?」


と思い始め、ソニック達Watts Towersが勉強のために残していった落書きを頼りに、更にその辺のアスファルトや壁に落書きしながら勉強し、たまに訪れるソニックが本を与えたりして皆、大きな夢を持ち、共感する者達が団結しそれぞれ起業し、今では皆立派な社会人として成長していったそうだ。現在LAでは、そんなワッツ・タワーの元住民達が立ち上げた会社が大成功を果たし、今日までLAの経済を支えているのである。建築や不動産、金融、IT、服飾、飲食業、旅行代理店やホテル業、外資系、GT達がやっている自動車産業、コンボイが再起業した運送業、ジャムと茜がやってる教育まで様々であり、彼らは


「ワッツ・タワーの勝者達」


「歴代のワッツ・タワーを制したチャンピオン」


とLA市民から呼ばれていた。ソニック達Watts Towersは、彼らの協力のおかげであの独裁者まがいのプレジデントを懲らしめられたのだ。だが、その勝者になるには本物の漢になる以外選択肢はなく、ソニック達Watts Towersのように最初の内は日が暮れたらゴングが鳴り、銃弾や凶器が飛び交う環境に代わりは無く、そこで漢を見せる必要があった。かつてソニックが熊を倒し、皆で食べた様な強烈なインパクトを持つ者に群がり、そんな人物を中心に起業していったそうだ。鉄治もニールも、そしてソニックもその事は解っており、与えられた仕事から逃げ出す者に務まらないと判断していた。


言われっぱなしの彼らの名はイリエ、ゲオルゲ、ゾルト、ドミネルという4人。ルーマニアから来た彼らは皆「ヴィイトルル・ロマン・カルチュラル&エイド・ソサエティ」に預けられた後、ソニックが紹介した「Burning Gear America」の仕事に従事する者や、GT達がやっている自動車産業、菜月の親友である千尋がやっている造園業等を手伝っており


「夢さえ持っていれば離れてもいい。直ちに行動に移しなよ。」


と鉄治や「ヴィイトルル・ロマン・カルチュラル&エイド・ソサエティ」に言われていた為、やりたいことが見つかった彼らのほとんどが他の仕事に就いていた。だが、それすら見つけられず、未だにシンナー中毒の4人は、2万人いた移民の中でも特に重症で、彼らを預かった「ヴィイトルル・ロマン・カルチュラル&エイド・ソサエティ」もお手上げだという。


 そんな時、この4人にある者達が尋ねてくる。その人物達は、ソニックが初めてアメリカに来てライブを行った際に凶器を投げ傷つけた元ジャンキー達だった。彼らは現在ソニックの義弟スコッチが率いる財団のスタッフとして勤務している。彼らはイリエ、ゲオルゲ、ゾルト、ドミネルに話す。


「俺達はソニックがまだ駆け出しの若手だった頃、お前らと同じ薬物中毒でよ。あいつの身体をズタズタにしてしまった。今でも後悔してるよ。俺達は檻に入って反省してよ。あいつは許してくれたんだけど、俺達はそーは行かねーと思ってここで働いてんだ。いつまでもオーロラックに取り憑かれたらほんとにただのゴミ人間になっちまうんだぞ。デイブの治療が済んだら俺達のとこに来いよ。ほんとにこのままでいいのかよ?」


ソニックがルーマニアでのライブで放った事と同じ事を言われた4人。ゲオルゲは


「うるせーな!お前らなんかに解ってたまるか!これが俺達の生きがいなんだ!夢なんてねーよ!生きてくのに精一杯なんだからな!」


と開き直ると、随行していたジャーマンがゲオルゲをぶん殴る。


「甘ったれてんじゃねー!それは皆同じなんだ!俺もこいつらもそうだったんだ!鉄兄ぃやニールやVRC&ASが時間もチャンスも与えてんのにいつまでスネてやがって!夢なんて自分で見つけろ!マンホールの中で凍え死にたくなかったらな!」


と怒鳴り散らす。更に財団のスタッフが


「俺達もお前と同じジャンキーで字も読めなかったんだぞ?そこは同じだろ。それでも生きて来れてるんだ。お前らは出来ねーんじゃねー。やらねーだけだ。明日を生きたきゃ嫌でも何かやるんだな。その先に夢があるんだ。」


 こうして揉めている中、ジャムと茜、菜月の親友、窓香がやって来た。字が読めないという彼ら4人に学校にでも通わせようと尋ねてきた。いずれも菜月の依頼である。ボディガードにアレックスも随行していた。そんなイリエ、ゲオルゲ、ゾルト、ドミネルに、まだ未完の話を読み聞かせようとする窓香。それは、GTを主役にしたワッツ・タワーに住む者達の物語である。その話の登場人物は皆、ワッツ・タワーの下で暮らしており、自分達の正義のために戦う男達の話であった。窓香はそんな彼らを全員Watts Towersと呼び、かつてワッツ暴動を起こしたニールやルディ、ティムの世代からソニック達の世代を経て現在の住民に至るまで取材している。まだ未完なのは、今も尚漢を磨き続け、戦っている者達がいるからである。窓香は桜にルーマニア語を教えてもらい、彼らに読み聞かせた。ふてくされてた彼らは次第にその話に飲み込まれていった。その後、ドミトルが


「俺、自首するわ。オーロラック無い環境じゃなきゃ止められねーからよ。」


と話すがアレックスに


「それじゃダメだ。お前強制送還されるぞ。今ここで止めるんだ。」


と説得されるが、イリエは


「俺達自信無いよ・・・」


と泣きそうになる。すると窓香が


「泣いてもいいよ。」


とポツリと話すと、4人の男達は泣き出した。窓香が


「いっぱい泣いていいからね。あたしの親友のお兄ちゃんの口癖よ。」


と話す。ゾルトが


「・・・何でだよ?何でそんなに優しいんだよ?」


と泣きながら話すと、茜が


「同じ人間だからよ。ソニックが何でこの国にあなた達を連れてきたか、それはあなた達が困っていたからよ。」


「とっくに救いの手は差し伸べられてたのに今まで拒否してたからこうなったんでしょう?いい加減素直になりなよ。」


と図星を突かれる。


 やがて別の国でソニックに出会い、この国にやって来たワリドとルカもやって来た。ルカが


「一緒に勉強しよう。解らねー事は教えてやるよ。俺ハンガリーから来たんだけど、一応ルーマニア語出来るからよ。」


と協力してくれる様子。ワリドも


「俺達も勉強中なんだ。覚えるのに早いも遅いもないんだから一緒にやろう。」


と誘った。


 この一件以来、オーロラック中毒だった4人は次第にドラッグから離れていき、ジャムと茜の学校で学び、ワリドとルカが家庭教師のような事を始め、勉強するようになった。ソニックや菜月が味わった愛情がWatts TowersのいないLAで、ソニックがアメリカで得た家族や多くの仲間達によって、ヨーロッパで出会った友達がこのLAで繋がり始めていた。

菜月を中心にソニックにこれまで関わった人物達がソニックに影響を受け、新しい人材に伝えていきました。

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