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第60話 この兄にこの妹あり

ソニックがアメリカへ近況報告します

 クロアチアでのライブを終えたソニック達Watts Towersは、同じ旧ユーゴスラビアだったスロベニアへ向かった。クロアチアで壊れ、新調した貯水タンク車に水を入れるため、首都のリュブリャナへ向かう。ここにある水環境局に問い合わせ、貯水タンクに給水する。この貯水タンクにはクロアチアの「プリマコシュペド」のロゴが付いていたが、特にお咎め無く給水が完了。そのままリュブリャナでのライブを行う。


 ソニックはようやく落ち着いた国に着き、桜に連絡を取り、家族の様子を尋ねる。すると


『菜っちゃんが凄い事になってるのよ!』


ソニックは


『また何か受賞したのか?』


と尋ねると、桜が


『そうじゃないの。あなたの代わりにLA で悪党退治してるのよ。ジャーマンとアレックスと一緒に。』


びっくりしたソニックは


『マジかよ?危ねーから2人に止めさせてくんねーか?』


桜は困った様子で


『あたしじゃ無理よ。あの娘言い出したら止まらないってソニックが一番良く知ってるでしょ?』


と話す。その後アレックスに連絡を取り


『おい、お前ら菜っちゃんに何させてんだよ?危ねーから止めさせろ。』


と忠告すると、アレックスが


『無理だよ。菜っちゃん俺らより強えーだろ。』


ともう止まらない様子。今では「女ソニック」と呼ばれ、LAの治安を守っており、流石に1人にしておけないアレックスとジャーマンが付き合っているという。今ではLAで菜月の前では誰も犯罪を犯せない状況になっており、巷のニュースでも騒がれていた。


心配になったソニックは菜月に直接連絡する。


『菜っちゃん。女の子なんだからそこまで派手にやんなよ。いくら強くても兄ちゃんひんやりだよ。』


すると菜月は


『兄ちゃんだって頑張ってるんだからこれくらいやんないと。やっぱり兄ちゃん達がいなくなるといっつも治安悪くなっちゃうのよ。それに今のあたしは「Mother」だから、強いって事見せないと舐められちゃうの。心配しなくても拳銃持ったのは相手しないから大丈夫よ?あたしだっていつまでも子供じゃないんだから。たっくんだって出来るんだからあたしだって出来るわよ。』


と平然としている。だがソニックは


『菜っちゃん「Mother」なんだろ?菜っちゃんにもしもの事があったら子供達悲しむだろ?』


と説得するが


『大丈夫だって。それに兄ちゃんよりえげつなくないよ。』


それを聞いたソニックは黙ってしまった。


『・・・とにかく無茶すんじゃねーぞ。桜ねーちゃんも心配してんだからよ。』


と言うと


『大丈夫。大丈夫。ちゃんとお姉ちゃん達も子供達もあたしが守るって決めてるから。それにみんな「Motherかっこいい」って言ってくれてるし大丈夫だよ。』


と明るく話す。ソニックは


『・・・まあ、菜っちゃんがそー言うなら大丈夫か。とにかく心配かけんじゃねーぞ。皆菜っちゃんを慕ってるんだからな。』


と言って電話を切る。直後にアメリカへ帰国していた鉄治に連絡を取る。ソニックが


『菜っちゃんほんとに大丈夫なんか?』


と尋ねると鉄治が


『大丈夫だろ。少なくともオメーより無茶してねーぞ?』


と話す。そして


『オメーは菜っちゃんに過保護してねーか?菜っちゃんはもうプロの格闘家だぞ。大丈夫だよ。俺もアレックスもジャーマンもいるからよ。心配すんな。それより今何処だよ?』


と近況を聞かれる。ソニックは


「クロアチアで貯水タンク車が地雷踏んで吹っ飛んでよ。怪我人はいなかったけど、新調して今はスロベニアだよ。」


と報告する。すると鉄治が


『オメーらの方がひやひやしてんぞ?菜っちゃんの心配より自分の心配しろよ。何処行っても相変わらずドンパチやってんだからよ。』


と釘を刺された。


 この国は、旧ユーゴスラビア内戦から逃れてきた者達が通過する国であったが、移民受け入れを通過できずにいた者達が足止めを食らって定住していた。ここは「バルカンルート」と呼ばれ、旧ユーゴスラビア内戦から逃れてきた者の他に、中東やアフリカ、旧東側からの移民がこの地に辿り着き、移民の受け入れ先が決まっていないいわゆる「迷いの地」であったが、比較的穏やかで識字率も高く治安の良い国で、移民達はこの国からの移民受け入れを待っている状態であった。彼らはこの国で職に就きながら、更に西へと向かう予定である。ソニックは


「同じ国だったのにこんなに違うのか?特に問題もなさそーだしいつも通り出来るな。」


と話しながら、リュブリャナでのライブを終え、次のマリボルへ向かう。そのマリボル近郊の集落で事件が起きる。


「火事だあ!」


という叫び声がソニック達Watts Towersがキャンプを張っていた直ぐ側の場所へ響き渡る。木造で建てられた家屋が引火し大火災が起き、消防が手を焼いている中、ソニックが水を被り突っ込もうとするが、ビッグ・ジョーとブライに


「馬鹿か!オメー!さっき鉄兄いに忠告されたばっかだろ?」


と羽交い締めにされる。ソニックは一旦頭を冷やすと、横に流れているドラヴァ川を見ながら


「これだ!」


と2本の警棒を取り出し、対岸へ移るソニック。Watts Towersがソニックの意図を察知し、住民や消防に


「オメーら!全員この場から離れろ!」


と大声で誘導する。対岸のソニックは、ドラヴァ川の向こう側で燃えている大火災を目がけ、警棒でドラヴァ川の水を特大の「Jet」で突き刺す。すると、川の水が火災現場に向かってまるで津波のように覆い被さり、一瞬で鎮火していった。だが、その現場は住民共々水浸しになり、ドラヴァ川の魚が地面にピチャピチャ跳ねている。ソニックはそのまま地元警察に連行され、


「やり過ぎだ!」


と怒られてしまった。下を向くソニックだったが、Watts Towers全員が引き取りに行き、釈放された。火災現場へ戻るとそこには、火事で焼失した人々が運ばれていた。ソニックは


「あの・・・なんて謝ればいいか解らないけど・・・すみませんでした。」


と住民達に謝罪する。直ぐに立ち直れる筈もなく、住民達は悲しみに暮れていた。


 それから3日後、会場のドヴォラナ・グスタフのステージに上がるソニック。そこで見たのは、あの時の大火災にあった住民達が来てくれていた。入場してくるソニックにオーディエンス達は


「あの時は火事を止めてくれてありがとう!」


「あんたのおかげで家族が救われたんだ!」


「みんな大火傷負ったけど命は助かった!みんな感謝してるよ!」


と声援を送られた。また、あの時ソニックを連行した警察官まで


「もう気にするな!それより例の「Sonic」を聴かせてくれ!」


と来場していたのはびっくりした。このライブには中東やアフリカからの移民もおり、一緒にライブを楽しんでいた。このヨーロッパではもう慣れた光景だったが、差別もなく、様々な人種が皆共存していたこの空間を楽しませようと、ソニックは惜しみなく「Sonic」を放ちながら音楽を奏でる。最後に「Magnet」を放った時、警察官に


「なんであの時ソレ使わなかったの?」


と別の切り口で突っ込まれた。ソニックは


(その手があったか!なんで気付かなかったんだろ?俺もまだまだだな。)


と思いながらライブは終わった。


 ライブ終了後、ソニック達Watts Towersは再び焼け跡へ戻り、瓦礫の撤去作業を手伝う。9・11のテロ事件と同じように警察や消防、住民達と作業を行う。彼らが


「何でそこまでしてくれるの?」


と尋ねると、一同


「見ちゃったモンはしょーがねーだろ?」


と黙々と片付けを行う。すると、住民達が炊き出しを行っており、ソニック達Watts Towersにスロベニアの郷土料理ボグラチという温かい煮込みスープが配られた。このヨーロッパツアーで初めて住民達の愛を受け取ったようだった。


 翌日、再び桜や菜月、鉄治達に報告すると


『・・・全くあなたって自分の身を顧みないんだから!』


『・・・やっぱ兄ちゃんには負けるわ。』


『言った通りじゃねーか!オメーは無茶し過ぎなんだよ!』


と呆れかえっていた。


 胃袋を満たしたソニック達Watts Towersは片付けを終えると


「9・11思い出したな。」


「あの時は川の水で消せないレベルだったからな。」


と思いに浸りながらスロベニアをあとにした。


菜月がソニックの背中を見て育った結果でもありました。比較的治安のいい国なので現場から離れた話になっています。

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