第57話 RELIVE⑪ マンホールの中を駆け抜ける新たな獣
ルーマニア編後編です
「オメーら!悔しくねーのか?!こんな世の中に弄ばれて、ほんとに人生このまま終わっていいのかよ?!」
その晩、ソニックと鉄治、イミダス、エディ、ジャッキー、ランボー、ボスを中心に話し合っていた。その中で移動図書館を運転しているディオが何やら本を探して
「あった!これこれ!」
その本とは「ヴィイトルル・ロマン・カルチュラル&エイド・ソサエティ」と書かれた薄いパンフレットのような物。どうやらLAにあるルーマニア人のコミュニティに関する内容の本を見ながら皆で考えていた。そして難題を解いていく。
「こいつらにパスポート与えるにはどうするか。」
「LAに移動するためにどうすればいいか。」
そして、Watts Towersの考えがまとまった。全てはこの公演が終わり、エルトン達がストリート・チルドレンを全員集めることが先決である。
その夜、ソニックはインターポールを退職し、現在は隠居しているニールに頼む。
「ニールのおっさんよお。頼みてーことがあんだけど。」
ニールは久しぶりのソニックに
「どーした?改まって?」
「今、ルーマニアでライブやっててよお。チャウチェスクの孤児って呼ばれてる連中をLAで預かってウチの会社で雇おうとしてんだよ。悪いんだけど、そいつらが落ち着くまで面倒見てくんねーかな?」
ニールは世界中を飛び回っていた経験から知っていたらしいが
「その問題は知ってるけどよ?今のそいつらどんな奴らだ?」
ソニックは
「簡単に言えばあんたと初めて会ったときの俺らと同じだよ。こういうのは菜っちゃんや達斗じゃなくてニールにしか頼めねーからよ。」
ニールは退職後、どうも退屈な世の中に霹靂していた所だった。
「ああ。いいよ。オメーらがプレジデント倒して退屈でしょーがなくてよ。」
ソニックは礼を述べ
「これから鉄兄ぃがそっち行くからよ。それとGT達にも頼もうと思ってさ。2万人もいてよ。パサディナの「ヴィイトルル・ロマン・カルチュラル&エイド・ソサエティ」ってとこにいながらウチの仕事手伝ってもらおうと思ってんだよ。」
ニールは
「わかった。とにかく先ずそいつらにパスポート取らせろよ。後はこっちで何とかすっからよ。」
鉄治はその間ウィルと連絡を取り、確認していた。LAにある彼らルーマニア移民を支援する非営利団体「ヴィイトルル・ロマン・カルチュラル&エイド・ソサエティ」に彼らの事を任せるという事と、ここで「Burning Gear America」のスタッフとして働きながら、自分の道を探す援助をしようと画策していた。ここはソニックがよくライブを行うハリウッド・ボウルとも近い。ソニック達がライブを行ってる間、彼らの出国許可を得るために動こうとしていた。
更にソニックはロス・アンゼルス市長に、鉄治はカリフォルニア州知事とそれぞれ連絡を取った。カリフォルニア州知事は
「あなた以外のミュージシャンがやっている基金じゃダメなのか?」
鉄治は
「それやったら一生たかられますよ。自分の意志で自分の足で踏み出すのが大事なんです。」
カリフォルニア州知事はしばらくして
「・・・まあ、いいでしょう。ただし、帰国条件はソニックと同じく制限させてもらいますよ。それから暴徒にならないように監視つけるように。」
と要求。鉄治が
「私が引率してしばらく帯同するので。」
と了承をもらう。ロス・アンゼルス市長はソニックに
「・・・ええ、あなたの事だからダメと言っても聞かないでしょう?ヴィイトルル・ロマン・カルチュラル&エイド・ソサエティにはこちらからも頼んでおきますので。ただし、帰国条件はあなたと同じく制限させてもらいますよ。それから暴徒にならないように監視つけるように。」
ソニックは
「その点は元インターポールのニール・マディソンって人物に頼んであります。近日そちらに伺うと思うのでよろしくお願いします。」
とニールを紹介した。
翌日、ソニックはエルトンとアル、ジウの協力で、ブカレスト中のストリート・チルドレンをブカレスト・ノルド駅前に集めた。ソニック達Watts Towersが、ヨーロッパで行う初のゲリラライブである。
(なーんだ。こんなにいるじゃん。)
人数はソニックが普段野外ライブをやっている人数、2万人くらい。警察や民間人が
「おい!この集会今すぐ止めろ!」
「平日の昼間からやかましいぞ!」
と言ってくるが、キッド、ゼブラ、ロケット、ジャンゴが
「うっせーな!ドラキュラ共が!血税でも吸ってろ!」
「元はオメーらの政策の問題だろが!」
「こいつら放置して苦しめてんのはオメーらだろ?!」
「俺らが今すぐ何とかしてやっから黙って見てろ!」
と怒鳴りつけながら、ソニックは彼らに音楽を使わず警棒で「Sonic」6連発を浴びせる。
《ボワッ!ブオッ!》
《ビュン!ズバン!》
《ダダダダダダダ!》
《ビカッ!ズドーン!》
《ゴオッ!ボオッ》
《グイーン!ガチャッ》
思わずびびって固まってしまうブカレスト・ノルド駅前の民衆達とオーディエンス。
「よお、目え覚めたか?オメーら。」
オーロラックで頭がイカれた彼らは完全に両眼を見開いた。ソニックは笑顔で
「オメーら!悔しくねーのか?!こんな世の中に弄ばれて、ほんとに人生このまま終わっていいのかよ?!」
「俺もコイツらもオメーらと同じヒトだ。そんな俺らも世の中変えられたんだ。オメーら!やってみねーか?」
元気の無いオーディエンスは
「何を?」
と理解してない。するわけがない。彼らはソニックが初めてワッツ・タワーに居を構えた頃と同じ境遇なのだから。そして、情報もない彼らはソニックの事を知らない。
「オメーら捨てた親や国やこんな世の中なんてほっとけ。問題はオメーらがもっとデケー事やって諸悪の根源ぶっ壊したくねーか?」
ソニックはエルトンを見て
「オメーら。こんな世の中捨ててエルトンみてーに旅に出ろよ。ここにいたっていつまでも変わらねーだろ?自分探しの旅ってやつだよ。」
彼らはまだピンと来ないが、コンボイが
「世界はマジで広いぞ。マンホールの中よりもずーっとな!どーよ?一緒に世界出てみねーか?」
ビッグ・ジョーも続いて
「居場所がねーなら自分達で作ってみねーか?俺らもオメーらと同じ字も読めない社会のはみ出し者だったんだ。」
サージェントも
「光なんて誰も与えちゃくれねーぞ?今のままじゃーな!」
ソニックが
「その辺の獣を食らってでも生きていけんだぞ。俺らも鰐だの熊だの野鳥だの魚だの獲って生きてきたわ!名もない骸骨に変わりたくねーからな!」
鉄治が
「今まで死に物狂いで生きてきたんだろ?なら大丈夫だよ。俺は神よりオメーら信じるよ。必死に勉強して、奴らの出鼻へし折ってやれ。援護すっからよ。」
そしてビッグ・ジョーが
「わからない事はこのエルトンに聞けよ。字なんか読めなくたって生きていけんだぞ。ここだけの話、俺もオメーらくらいの歳じゃ、河に棲む鰐だの野鳥倒して生き延びて来たんだからな!」
鉄治はソニック達Watts Towersと話し合い、このライブで彼らの意見を聞こうとして煽っていたのだ。そしてソニックのライブが始まった。だが、いつも通り「Sonic」を乗せ演奏していたソニック達Watts Towersだったが様子が違う。皆一様に涙を流していた。ソニックは
「どーしたよ?シケた面しやがって?」
オーディエンス達は
「こんなに熱いモン生まれて初めて感じたよ・・・」
彼らには今まで人の温もり等皆無だった。次々に号泣するオーディエンス達。ソニックは
「それがヒトの証だ!いっぱい泣いていいんだ!もし辛いことがあったら大声で歌っていいんだぞ!歌うのはタダだからな!」
こうしてようやく彼らは両眼を輝かせた。初めて人を信じられるようになったのだ。ソニック達Watts Towersには痛い程わかる。かつての自分達もそうだったのだから。ソニックが30年以上前に、ワッツ・タワーの前でドラム缶の中に火を焼べてからようやく集まったWatts Towers。それからずっと仲間で苦楽を共にしてきた。そして今、昔の自分達と同じ境遇の人々に何かを出来る力を持った。ソニックは、そんな彼らに惜別の「Sonic」である「Ghost」を放ち、彼らの闇と死神のような過去を振り払おうと力を振り絞る。
《ボワッ!シュオオー・・・ゴン!》
そして止めの「Magnet」で彼ら2万人のオーディエンスを優しく包む。
《ギュッ!グッ》
ソニックにはわかっていた。温もりがないことがどれだけ辛いことか。そして、温もりを得た時の解放感を。龍司や菜月、鉄治、若草ファミリー、Watts Towers達が与えてくれた温もりを彼らに味わってもらおうとありったけの「Burst」を放った。
こうして2時間にわたるブカレスト・ノルド駅前でのゲリラライブは終わった。彼らはライブ後、3日分の食料をWatts Towersからもらった。空腹では満足に答えは出ないという事と、再び集合するという約束の証としてである。
そして3日後、ライブに来た全員が集った。皆で新しい世の中に飛び出してみようと決意したのであった。更に鉄治が
「おい!オメーら!全員自動的にルーマニア国籍だってよ!これでパスポート取れるぞ!役所行ってみよーぜ!」
こうして彼らは鉄治とエルトンの引率で、ロス・アンゼルスのパサディナにある「ヴィイトルル・ロマン・カルチュラル&エイド・ソサエティ」という所へ飛行機に乗って旅立っていった。そして、ソニックのような強烈な個性を持った人物を探し、彼らと戦おうとするのであった。
彼らは90年代初頭の政権崩壊後に生まれた人々で、丁度ソニックが祖国で問題を起こした時期と重なっています。この話で20代後半の菜月くらいの年齢だと思います。




