第50話 白頭巾とプラウド・ボーイズ
三部作後編です。
翌日の各国のニュースや新聞は大荒れだった。
『現職の大統領。殺人未遂で現行犯逮捕!』
『各機関も共犯か?!』
『今後の世界経済は?』
その中でカメラで撮影させないソニックを、風刺画で描いた絵が話題を読んだ。ソニックは、カメラはダメだが似顔絵等、人が描いた物は許可している。その絵の題材は
『音楽の神にひれ伏した大統領』
という題材の風刺画。長いドラムスティックを二刀流のように構え、熊襲太鼓を叩く後ろ姿のソニックの足元に大統領が跪き、両掌を組みプレジデントが涙する絵であった。かの有名な「カノッサの屈辱」のパロディである。
この事件の後、とある団体達がアメリカ全土で暴れ出した。ソニック達Watts Towersの天敵「KKK」とプラウド・ボーイズ(アメリカとカナダの男性のみで構成されるネオ・ファシズム思想を有するオルタナ右翼団体)である。いずれも白人至上主義者である。今ではテロ組織認定され、インターポールの達斗やウィルにとっても敵である。彼らにとってあのプレジデントは象徴である。その象徴が逮捕され荒れに荒れまくっているということだ。
ソニックは家族や子供達、これまで出会ってきた大切な仲間達にバリア・プレートを配った。あのデパートでの一件でLAの買い物客を守ったあの直径5cmの板である。GTやジャム達が改良を重ねてようやく認可が下り、量産化出来るようになり、アメリカ中で売られた。GTやジャムはボロ儲けし、GTは会社の上場へ、ジャムは全米に学校を建設した。そのバリア・プレートを持っていれば、拳銃は無効化出来るようになる。これから始まる戦いの前に、身内や一般民衆を巻き添えにしないためにどうしても必要なアイテムだった。
現在でも白人至上主義者である彼らの差別は止まらなかった。だが、ソニック達Watts Towersは一歩も怯まなかった。そして、そんなWatts Towersに賛同する者達が全米で、世界中で続々と現れ始めた。あのリトルトーキョーでのライブを観ていたLA中の人々が啓発し、世界中に触れて回った。LAでは
「合衆国を脱退して独立国家にする!」
と民衆は荒れ、デモ活動をすると、
「それなら俺達もそっちに加わりたい!」
と各州がこぞってLA を支持し始めた。北部のNYからほぼ全ての州が賛同するようになり、首都ワシントンDCの住民達まで
「俺達はソニック達がくれた本で生き直せたんだ!そんな恩人にきちんと恩返さねーと示しがつかない!」
とまで言っており、残されたのはあのプレジデントの息がかかっている少数の地域だけであった。ダイアナ達が住むオクラホマの先住民達まで派生し、今では全米の過半数を占める州が人種差別撤廃を支持し、それが気に入らない最早少数となった「KKK」とプラウド・ボーイズがアメリカとカナダの国境付近や南部で睨み合っていた。だが、ここでもソニック達Watts Towersを後押しする人々が現れた。カナダとメキシコ国境付近の住民達や、南米から来る人々である。彼らは撤去活動を始めた国境の壁の前で
「俺らも白人なんだけどよ?何か文句あんの?」
と挑発する。南部アラバマ州の人々が
「お前らとっくの昔に負けたんだ!往生際悪いぞ!そんなにやりたきゃ南北戦争の時代に帰れよ!そんなんだから俺達南部の人間は田舎モン扱いされんだよ!オメーらのせいでな!」
ととことん糾弾した。次第に新ブラック・パンサー党も参戦し
「オメーらのボスは終わったんだ!俺達だって旧式から変わったんだ。オメーらもいい加減目え覚ませ!何なら俺らがオメーら躾け直してやろーか?」
と言い放つが、ソニックが
「もう止めろ。白頭巾のオメーら、とっととこの国から消えろ。テメーらのルーツの国へ帰れ。この国にいたってもうオメーらの居場所なんて御覧の通りねーんだよ!それも何か?また白頭巾被ったまま黒焦げにしてやろーか?」
と脅す。すると、白頭巾達がキレて発砲してくるが、ソニック達が持つバリア・プレートにことごとく弾き返され、警官達に一斉検挙された。ソニックは民衆達に
「こんな奴ら囲んで非難するより、こいつらに世の中皆で背中向けて相手にしねー方が効くだろ。」
と嗜める。これはかつてWatts Towersのバルカンがソニックに言った言葉である。
これにより、欧米で白人至上主義がどんどん減っていった。そんな考え方は古いと認識し始めた。ソニックは新ブラック・パンサー党に
「こいつら消えたらオメーらも解散するんだな。人種で徒党組んでる内は奴らと同じなんだぞ。もういいだろ。」
と諭す。これにより、奴隷解放運動から始まり、キング牧師の演説を経て問題になった人種差別運動は終演し、他人種を尊重する考え方が一般的になり、それを許せない者達は時代や社会から置いてけぼりにされた。そんな孤独に耐えられない白人至上主義者がドラッグに走り、世間からどんどん見放されていった。そのドラッグを売り捌いているのは同じ白人だったという訳のわからない事が起きる。弱っている同人種を滅ぼすという共食いが始まったのである。
一方プラウド・ボーイズは北部NYのカナダ国境に追いやられていた。ここではかつて9・11でソニック達Watts Towersと共にワールド・トレード・センターの瓦礫を片付けたジャンボ・マックス達元ハーレムの仲間達や、その後のライブを聴きに来ていた人々が彼らを追い詰めていた。ジャンボ・マックスはNYのレスキュー隊の隊長だが、他には警官や弁護士にまで上り詰めた者達もいて、更に達斗やウィルと合流し、プラウド・ボーイズをテロ組織認定しているカナダ政府と挟み撃ちにしていた。彼らは
「何がQアノンだ?でたらめこきやがって!オメーらの正義の味方は俺らのダチに何したんだ?モニター越しに馬鹿やって逮捕されてたじゃねーか!見えねーモンにすがってる馬鹿共が!あん時のライブでソニックが発した言葉は本当だったみてーだな!神がヒトに向かって銃撃つのか?」
「ほら、カナダ行って捕まるか、こっち戻って俺らにボコられるか好きな方選べ!俺らはソニックと違って物わかりがいいからこの世から消えろまでは言わねーがよ、それよりやべー事はすっかもな!」
と脅すが、達斗がニヤリと笑い
「それなら俺も少し使えますよ。「Sonic」なら師匠直伝なんでね。師匠はネチネチしたの嫌いだからスパッと止め刺してこの世から消えろっつってんだよ。俺は兄貴と違って手加減は出来るけどよ?オメーら、どーする?」
《ビカッ!ドーン》
《ボン!ボワッ!》
と言いながら地面に「Volt」と「Burst」を打ち込み脅す。こうして彼らはカナダ当局に身柄を拘束された。達斗はあくまで「Sonic」は威嚇程度しか使っていないようだが、ジャンボ・マックス達は
「おおっ!やるじゃねーか小僧!」
と一同驚き拍手していた。
こうしてソニックだけでなく、ソニックが出会った者達全ての尽力により平和が戻った。ソニック達Watts Towersの他にジャンボ・マックス達元ハーレムの住民達や、その後のライブを聴きに来ていた人々、カナダとメキシコ国境付近の住民達や、南米から来る人々、他の海外の人々等多くの人物が戦争ではないやり方でこの下らねー世の中をぶっ壊し始めた。まだネオナチのような残党もいるが、もう反撃する余力もないまま世界中から自然消滅し始めた。ソニックは語る
「俺はジャスティス(正義)なんてモンはこの世にねーと思ってる。ジャスト(正しいと思った事)でいいじゃねーか!絶対的に正しいモンなんて求めるモンじゃねーと思うよ。皆価値感や考え方が違げーんだからよ。」
この発言に民衆達は賛同しているが、権力者や宗教家達は納得していない。実際にソニックはその権力者に銃で発砲され、今目の前で白頭巾のテロリスト達が懲らしめられている現実を見ながら、これからも戦いが続くだろうと胸に秘めていた。
LAでは桜も菜月も子供達もアメリカの様々な人種の友達が大勢いる。彼らと幸せにゲラゲラ笑いながら過ごしている。ソニックも多くの人種で構成されたWatts Towersの仲間達と過ごしながら今まで生きてこられた。だからこそ人を大事に出来たんだろうと思い過ごしてきた。ソニックと家族達はいちいち●●人という言葉は決して使わず、自然と名前で呼び合っている。ソニックは昔
「オメーら全員アメリカ人じゃねーのか?俺がこの国に来た時、そーとしか思ってなかったぞ!」
と言ったことがある。日本人から見ればそうなのだが、アメリカに来てからはそうでなかった。●●系●●人という言葉がついて回っていた。そして迫害されていたWatts Towersというアメリカで出来た最高の友達のために必死で戦っていた。そうやっている間に今まで懸かっていた。菜月も同様で、アメリカに来たばかりの時は皆アメリカ人としか思っていなかったという。学校や習い事を通じそういう垣根が無くなっていき現在に至る。
誰が悪いのかと言えば、この世の中と狭い価値観を持ち押しつける大人達であり、それにならなかったソニックと菜月は子供達にとっていい大人なのではないだろうか?というだけなのだろう。
こうしてソニック達Watts Towersはようやく下らねー世の中を真っ向からぶっ壊す事に成功した。ソニックがアメリカに来てもう30年が過ぎていた。まだ若かった「カタメ」時代から戦い抜き、気付けばソニックも子供を持った壮年になっていた。
世の中変わるのはそう簡単ではありません。ソニックは30年もの間、多くの仲間達のおかげで達成する事が出来ました。




