↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/79

第43話 明かされた義兄妹の真実

ソニックと菜月が初めて公に過去のことを話します

 菜月はアカデミー賞に初選出された。丁度義兄のソニックがグラミー賞を受賞した歳と同じくらいの年齢に成長していた。そんな2人の関係を世界中が知りたがった。ソニックと菜月は腹をくくった。真実を話すのは今だと。


 あれから2週間後、ソニックと菜月はカメラはNGという条件で再び記者会見を行った。どうしても自分達2人の関係を世間に知ってもらういい機会だと菜月と話して決めたことだ。ソニックがゆっくり口を開く。


「・・・ご存じの方も多いと思うのですが、俺はガキの頃、祖国で大勢の人を殺めました。片眼を奪われ前科者になった俺が少年院から出た時、正直「死にたい」と思ってました。その時俺を救ってくれたのが、隣に座っている菜っちゃんと、亡くなられたご両親です。」


「・・・今から20年ほど前の事になります。この3人の愛情に支えられ、俺は1年後にこのアメリカLAにやって来ました。あれこれ苦労はあったけど、更に1年後、ようやくデビュー出来て、恩返しとしていつかこの3人をLAに招待しようと思ってたのですが、俺が渡米4年目にその恩人、菜っちゃんのご両親が祖国で放火に遭いお亡くなりになってしまったんです。」


「・・・菜っちゃんは祖国で恐怖で震えて泣いていました。どうしても菜っちゃんの力になりたくて、恩返しがしたくてこのLAに連れてきました。あの時大勢の人々が菜っちゃんの為に集まり、話し合いや手続きに動いてもらい、こうして菜っちゃんはLAで暮らすようになり、俺の義妹として迎えた次第です。」


「あの時グラミー賞に選ばれてたのですが、辞退するほど菜っちゃんを守りたかった。家が火事になったとき、菜っちゃんのお父さんが咄嗟に菜っちゃんと愛用のテディベアに俺の送った手紙を挟んで一緒に家から放り投げたそうです。それを聞いて俺は菜っちゃんを託されたんだと思い、今まで育ててきました。」


「・・・・実は、最初のグラミー賞を取った夜、夢の中に菜っちゃんのお父さんが現れて、菜っちゃんのことを改めて託されました。その時、菜っちゃんの夢の中にも同時に亡くなったご両親が現れたそうです。」


ソニックは涙を潤ませながら


「・・・今思えばもしかしたらあの夢の中で、亡くなったお2人が俺達の成功を予言してたかもしれません。」


「・・・・ほんと人生ってわからないもんですね。「死にたい」と思ってた俺が生かされて、菜っちゃんも1人ぼっちで生かされて、「生きてればいい」と言い続けてたお2人が死んじまって。」


「・・・でも菜っちゃん。生きててよかったと思わねーか?俺達を愛してくれる人達がこんなにいっぱいいるんだぜ?」


この長い話を菜月は涙を流しながら聞いていた。菜月はソニックに感謝し


「・・・ありがとう。兄ちゃん。生きててよかったよ。この国に連れてきてくれてありがとう。お父さんもお母さんもいないけど、その代わり兄ちゃん達がいっぱい愛してくれたから・・・皆に優しくしてもらえたから・・・」


と泣き崩れた。


「・・・俺はこのアメリカに来た時に優しさと言う物を捨ててやってきた。けど、菜っちゃんを引き取って育てるということで再び優しさを持てるようになったんだ。獣から人に戻れたのは菜っちゃんのおかげだ。お礼を言うのはこっちの方だよ菜っちゃん。ほんといつも助けられてばっかだったな。」


記者達はこの2人を奇跡の兄妹と称え、菜月を「リアルシンデレラ」と呼ぶも、ソニックは毅然と


「そりゃ違いますよ。菜っちゃんはシンデレラよりすげー。シンデレラには陰湿な継母と義姉にいびられてたけど、菜っちゃんは逆です。優しい継母と優しい義姉がいつでも側に付いてた。菜っちゃんを支える親友4人や俺達Watts Towersがいた。俺は白馬の王子様じゃねーんすよ。」


「特にNYで起きた9・11の時は俺がLAに帰れない間、その新しい家族や親友に助けられたんです。それは俺が与えたもんじゃねー。菜っちゃんが自分の足で歩いて自分で掴んだものなんすよ。今だって菜っちゃんが友達守りたいからって自分で言い出した結果なんです。引きこもってたシンデレラと訳が違います。自分で考えて行動したから成功したんですよ。毎日ぶっ倒れるまで練習してたのもいつも見てたんでね。だからそんな菜っちゃんをこれからも応援して下さい。」


と記者団に深々と頭を下げた。記者達は


「カメラで映しちゃいけないものもあるんだ・・・」


と口々に話し、2人に拍手を送った。


 その帰り道、ソニックは菜月に話す。


「菜っちゃんよお。兄ちゃんが初めてグラミー賞取った後にな、おっちゃんみてーな人になりてーって思ったんだよな。あん時兄ちゃんはとっくに成人超えててよ。だけど菜っちゃんが兄ちゃんみてーになるって言ったのは確か中学生の頃、まだアカデミー賞取る随分前だったな。その時点で菜っちゃんは兄ちゃん超えてたかもな。」


菜月は


「ううん。まだまだだよ。本当にこれから兄ちゃんに負けないからね。」


「ああ、菜っちゃんには兄ちゃんを超えて欲しいからな。とことん突っ走ってくれよな!」


と仲良く帰って行った。まるで菜月がアメリカに来て初めて行ったピクニックと変わらない2人の後ろ姿だった。


 その夜、菜月の夢の中に亡くなった龍司と千春が現れた。夢の中で千春が


(菜っちゃん。こんなに大きくなって・・・)


と言って菜月を抱き締め、泣いていた。龍司が


(菜月。生きてて良かったろ?お前にもソニックにも幸せが訪れたじゃねーか。偉いぞ。菜月。父ちゃんも母ちゃんもお前の中でずっと見てたんだぞ。)


菜月は


(嬉しいけど、やっぱりお父さんもお母さんも生きてて欲しかったの。兄ちゃんの言うとおりだよ。何も恩返し出来なかったじゃない!)


(・・・すまなかったな。あん時ああするしかなかったんだ。お前だけは生きて幸せになって欲しかったからよ。怖い思いさせて悪かったな。でも、兄ちゃんが守ってくれたんだろ?菜月は兄ちゃん大好きだったからお前を託したことに後悔はねーよ。それに大勢友達出来たじゃねーか。俺達はこれからも菜月の中で生き続けてずっと見守ってるからな。兄ちゃんと精一杯生きるんだぞ。)


と2人が去ろうとすると


(行かないでよ!まだ話したいことがいっぱいあるんだから!)


と引き留めると、千春が


(あたし達はいつでも菜っちゃんの中にいてずって見守っているからね。これからも頑張るのよ。菜っちゃんはもうあたし達より強くなれたんだから。)


2人が


(頑張れ!菜月!兄ちゃん達と一緒に強く生きるんだぞ!)


と言い残し、菜月は夢から覚めた。菜月は


「兄ちゃんと師匠が言ってた事は本当だったんだ・・・ずっと見ててくれたんだ・・・ありがとう、お父さん、お母さん・・・」


と涙を流した。夢の中の龍司と千春は、菜月くらいの身長だった。菜月はいつのまにか亡くなった両親と変わらない背丈に成長していた事に気付いた。それを見た同居している窓香達4人は菜月の話しを聞き、一緒に泣いてくれた。


 この年、NYの「グラウンド・ゼロ」に新たに「ワン・ワールドトレードセンター」が完成した。1から7まであり、未だ建設中の物もあり、いずれも旧ワールドトレードセンターより低いが、見事に再建され、竣工式にはソニック達Watts Towersも参列した。この建設には、ジャンボ・マックスと共に瓦礫を片付けた男達も大勢関わっていた。彼らはこの「ワン・ワールドトレードセンター」が完成した時、皆で号泣したという。それは失った悲しみではなく、再建した達成感からであった


何もかも生きていなければ何も成し得ないということ、また、自信さえあれば何でも出来る事を菜月は証明してくれました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。