第40話 母の強さ・女の強さ
菜月が両親を失った後初めて故郷に帰ります。約10年振りの帰郷です。
話は戻って翌年2010年1月、LAでは、ソニック最後のプロジェクト。ミュージックタワーLAがダウンタウンより東に離れたエルモンテに完成する1ヶ月前、菜月は日本で成人式を上げた。一緒に日本に初めて訪れた菜月の親友達、窓香、由香里、望美、千尋も一緒に横浜市内で振り袖姿となり、一緒に成人式に参加した。写真を撮っていた菫は
(菜っちゃんももう20歳かあ。ほんと早いなあ。)
と振り返っていた。その後、菜月達6人は、菜月の両親が眠る墓を訪ね、墓参りをした後向かった先は、菜月の故郷、横浜八景島であった。菜月の家「なみや」があった土地は空き地になっており、何やら石碑が建っていた。その石碑にはソニックの名前が彫ってあった。不思議になって近所を歩く6人。次第に菜月の記憶が蘇り、あそこまだやってるかな?と「なみや」の近所にあった喫茶店を探すと、マスターがいた。放火で家から放り出された時に菜月を一時保護した田中夫妻が健在で今も喫茶店を続けていた。この10年で新装開店したらしく、外見は大幅に変わっていたが、この喫茶店に入ってみる。菜月が
「あのう、すみません。あそこの石碑って兄ちゃんのですか?」
と尋ねる菜月。だが、田中夫妻はまだ気付いていない。振り袖姿の5人の美女と、スーツ姿の見かけない美女。主人の勝が
「どちら様ですか?」
と尋ねると
「菜月です。あそこでラーメン屋やってた「なみや」の・・・」
すると妻、容子が
「ええ!あの菜っちゃん?」
とびっくりしていた。当然だと思う。あの泣いてばかりの大人しい菜っちゃんが自信たっぷりの元気な美女としてこの八景島へ帰ってきたのだから。
次第に当時を知る者達が喫茶店に続々と来店し、菜月をじろじろ見る。
「へえ、あの菜っちゃんがこんな綺麗な美人さんになって。」
「今何やってんの?」
「アメリカはどう?」
「この娘達は菜っちゃんのお友達?」
皆アメリカへ旅立った菜月を心の隅で心配していたようだった。菜月は
「このスーツのお姉ちゃんが菫お姉ちゃん。こっちが小学校から幼なじみのまーちゃん、ゆーちゃん、のんちゃんとちーちゃん。小学校から大学まで一緒なんです。」
と明るく答える。あまりの変貌振りに八景島の住民達は驚いた。見事にレディとなってこの故郷に帰還したのだ。菫が
「菜っちゃん凄いんですよー。ハリウッド女優なんですよー。」
と更にびっくりしている様子。一同開いた口が塞がらない状態だった。その後、ソニックに連絡を取る菫。すると、ソニックから「Wi-Fi使っていい。」と言われ、喫茶店の様子が映し出された。ソニックは八景島の住民に聞かれる。
「君、ほんとに菜っちゃんハリウッド女優なの?」
ソニックは
「ええ、そうですよ。菜っちゃんがやるっつーんで。」
「随分変わったからびっくりしたわよ。」
「あ、ええ、その、むちむちのダイナマイトな身体になっちまっ!・・・・いってえな!」
側にはソニックの天敵、葵がおり、ナースサンダルで思いっきりソニックの頭を殴る
「菜っちゃんをそういう目で見るな!」
「大丈夫です。兄ちゃんが嫌らしい顔したら、あたし達が締めますから。」
八景島は笑いに包まれた。ソニックは
「俺は菜っちゃんアメリカに連れてっただけで、ほとんどその娘達とねーちゃん達がやってくれてましたよ。特に隣にいる菫ねーちゃんはほんと大事にしてくれて、昔は同じベッドで一緒に寝てたくらいでしたから。」
菫が「今もだよ。」と話すと菜月が「やだもお!」と照れる。そしてソニックが
「あの美男美女の娘さんですよ。そりゃ美女になりますよ。菜っちゃんはこっちで自信と親友と新しい家族を手に入れたんですよ。それにおっちゃんの血が今目覚め始めたってのがアクションだったんじゃねーっすかね?今の菜っちゃん俺より強いっすよ。バット5本折るくらい強烈な蹴りかましますから。」
八景島の住民達は「へえ。」と目をきょとんとしていたが、桜が未だに姿を見せない。菜月が「桜姉ちゃんは?」と聞くと
「腹に子供出来てよ。今度は双子だよ。今度は菜っちゃんがお姉ちゃんだもんな。」
と膝に抱えた長女の真優がソニックの膝に乗っている。
「あら、ソニック結婚してたの?」
ソニックは公式発表をしていない為
「隠すつもりはなかったんですが、相手一般人なんで。ほら、最初に菜っちゃんの面倒見てたあの娘と結婚したんすよ。」
八景島の住民達は一同納得。そして菜月が
「真優ちゃーん!」
と手を振る。すると真優が
「なっちゃん!なっちゃん!」
と大喜び。長男の誠剛も、菜月がプレゼントしたおもちゃを持って
「おねーちゃんありがとー!」
と礼を言う。遅れてフラフラの桜が現れる。葵は桜の様子を見に来ていた。
「桜姉ちゃん大丈夫なの?」
と尋ねると
「大丈夫よ。それより菜っちゃん。ちゃんと産まれたところに帰れて良かったね。それに皆も留学先から来てくれてありがとうね。」
と親友達に礼を言う。この頃窓香はオーストラリア、由香里はイタリア、望美はフランス、千尋はイギリスに留学していた。菜月の為に日本へ来ていたのだった。八景島の住民達はあまりのスケールの大きさに仰天していた。最後に緑が現れ
「もう菜っちゃんは立派なレディですよ。ちゃんと女の子の嗜みは教えてますし、兄ちゃんより手かからなかったんで。ソニックが育てるって言ったけど、何か一緒に育っていった感じでしたよ。菜っちゃん、帰ったら皆でお酒飲もうね。」
と言って締めくくった。菜月は10年ぶりに再会した八景島の住民達と沢山写真を撮り、アメリカに戻る前にまた来ると言って帰って行った。帰りに6人でソニックとの想い出の場所、八景島シーパラダイスやコスモワールドで豪遊し、その後飲み歩いて解散した。
ソニックはツアー北部の最後、NYで3公演行った。マディソン・スクエア・ガーデン、アポロ・シアターの後、マンハッタン島ブロンクスに新設したミュージックタワーNYの最上階でライブを行った。LAと同時期に建てたこのビルには思い入れがある。南に行くとワールドトレードセンター跡地の「グラウンド・ゼロ」がある。これから一からやり直そうという意味を込めてこのマンハッタン島に建てたのであった。発起人としてソニックが最初にライブを行い、最後に
「世界中のガキ共!ここ目指せ!待ってんぞ!」
と言って締めくくった。
翌年の6月、ソニックと桜に双子が産まれた。男女の双子で名前はそれぞれ「健勇」「愛弥」と名付けた。2人同時に産まれてくたびれた桜だったが、退院してもケロっとして2人の赤ん坊を抱いていた。それを見たソニックが
「女って強いよな。桜って子供産めば産む程強くなってる気がするよ。」
と話すと桜があっさり
「あなたの子だから可愛いだけよ?」
と話す。ソニックは
(産むことは手伝えねーけど、この家族は絶対守るぞ。)
と心に誓うのだった。ソニックはふと
「・・・桜。ビアノ貸してくれよ。」
と頼み、ジャズピアノ「チルアウト」を弾く。
(俺に出来る事なんてこれくらいしかねーからな・・・)
と弾いていると、近所のマダム達が聞きいっていた。6月の穏やかな昼下がり。子供達がまだ学校から帰って来ない時間帯に皆ソニックの弾く「チルアウト」を聞きゆっくりと手を休めていた。
この3ヶ月前、日本で大地震が起こった。菜月と菫は無事だったが、あらゆる所で被害があり、ソニックは大型クルーザーに物資を積め、コンボイ部隊に頼みなんとか物資を送った。飛行機は着陸出来ず、船舶も津波で危なかったらしいが、パイレーツの操縦が良かったこともあり、無事に届けられたと報告された。だが、2回目の地震にコンボイ部隊も巻き込まれ
「地球がひっくり返ると思った。」
と口々に話していた。
10月にはミュージックタワー・ラス・ベガスも完成。この最上階のトリは、かつてソニック達Watts Towersを見いだしたバンド「Skippin`Jackal」が登場。ヴォーカルのショーンが
「オメーら!てっぺん目指せよ!」
とソニックに続き言い放った。ショーンとはあの1996年1月20日のライブ以来旧知の仲であった。ソニックの「俺は神を許さねー!」という発言にも賛同してくれた良き先輩であった。
来年には菜月も戻ってくる。また、菫も結婚が決まっていた。相手は
【スコット・アダムス】
通称「スコッチ」
ソニックの義弟で大学の友達である。アメリカのNPOに参加しており、来年帰国予定。後に、ソニックが立ち上げた財団の責任者となる事が決まっている。スラム街の医療、教育、就労に尽力する好青年である。
菜月を含めた若草のレディ達がどんどん強く綺麗になっていく。桜が昼寝をしている場所に、双子の赤ん坊が卵に包まれるように眠っている。3人の上に風に揺れて落ちたカーテンがふわっと被さる。その光景にソニックは母親の美しさを感じた。
女性は成長すると見違えるほど美女になってたりするので菜月に当ててみました。




