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第4話 RELIVE① 俺って何かあんのかな?

この話からはアメリカ・ロサンゼルスが舞台になります。

 1995年1月20日 カタメとマネージャー、高木鉄治がアメリカ、ロス・アンゼルスに到着した。が、東に歩いて20分後、2人は何者かに発砲される。


「危ねー!」


《バン!》


と鉄治はカタメの首根っこを掴んで凌いだ。殺気に満ち満ちたこの街。そこには、薄汚れたタワーが建っていた。カタメはそれを見上げながら


「いいじゃん。このタワー。今日からここを根城にする。」


と場所を確保する。


【ワッツ・タワー】


 1921年、1人のイタリア人、サバト・ロディアというタイル職人がこの街にたどり着いた。当時、この街には何もなかった。サバトは、ここに来た以上何か大きな事をやり遂げようと周りのゴミを集めてこのタワーを作った。1954年に完成。それから9年後の1965年、このタワーの下で暴動が起こる。(ワッツ暴動)


更に30年後の現代、再びこの街全体で暴動が起こった。


 鉄治が持つ地図を頼りに片っ端からライブの出来る場所を探しに行った。1日中周り、一件だけ見つかった。明日の夜8時頃来てくれと言われ、その場を去った。


「アメリカ来たばっかなのにもう見つかった!」


と2人は意気揚々としていたが、ここがこれから始まる修羅の門になるとは想像もつかなかった。


 ダウンタウンの外れにあるライブハウス「エデン」。ここは、アメリカ中のジャンキー達(薬物中毒者)の溜まり場である。


 タワーに戻ると、そこは既に戦場と化していた。灯りのない町、銃弾があちこちで飛び交う。凶器を振り回した男達が朝まで暴れまわる。そこはいわゆるスラムと呼ばれる場所だった。僅かな灯りを頼りに男達は殴り殴られ傷つけあう。カタメは何処か懐かしさを覚えていた。何処か人目の付かない場所で2人は仮眠を取り、朝になったら練習がてらタワーの下で演奏し、英語で歌った。


「・・・まあ、来たばっかだし誰も聞かねーか?」


と軽い気持ちでいた。


 そして夕陽が沈む頃、再びタワーの下でバトルが始まる。それを他所にカタメと鉄治はダウンタウンの外れにあるライブハウス「エデン」へ向かう。会場は大盛り上がりだが、肝心の他バンドやミュージシャンらしき者はいない。


(俺だけか?)


と疑問を持ちながらカタメはステージに上がる。何処か重い空気が漂う。カタメは初めての異国の地で緊張していた。チューニングは済ませていたのでギターを掻き鳴らし歌うだけだが、カタメの演奏が始まると同時に、鈍器が飛んできた。演奏しながら交わすカタメ。その間、あらゆる凶器がカタメを襲う。ナイフ、ハンマー、チェーン、割れ瓶、椅子やテーブル、ガラス片。あらゆる凶器がカタメの身体中に直撃していった。カタメの血で染まるステージ。物を投げる観客は、カタメの顔等見ていなかった。カタメの演奏すら聴こえていない様子だった。カタメは気付いた。


(こいつら、何処見てんだ?目がイッてる。正気じゃねー。)


それでもカタメは持ち曲全部演奏した。血だらけになりながら自分で出口までよろよろ歩き、入り口で倒れて救急車で運ばれた。命に別状はないが、全身傷と痣だらけ。包帯が至るところまで巻かれていた。カタメは入院を薦められたが、金がないとの理由でその日に病院を出る。そしてふらふらの身体を引き摺りワッツ・タワーの下へ戻る。


 もう朝だった。包帯まみれのカタメを見て、スラムの連中は「ゾンビ」「ミイラ」とあだ名を付けた。彼らは乱暴者だが何故か親近感がある。自分と同じ目をしている。カタメは勝手に思っていた。


 その夜、再びエデンに向かう。重い身体を引き摺りながらたどり着く。そしてまた演奏する。また凶器の雨が降ってくるが


《バン!!!!》


という音と共にカタメの腹部に銃弾が貫通した。その場に崩れ落ちるカタメ。目の焦点が定まらずヘラヘラ笑う観客。頭を押さえるマスター。


 だがカタメは再び立ち上がり演奏を続けた。みるみる血に染まっていくステージ。腹部の出血が止まらないカタメ。それでも吐血しながら歌い、あがいて演奏するカタメにオーナーは驚愕する。鉄治がステージに上がって止めに入るも振り払い、意地でも演奏を続けるカタメ。観客はカタメの姿も見ずに笑って凶器を投げ続けるだけ。救急車が来るまでカタメは歌い続けた。


 病院に運ばれ、手術が始まる。およそ10時間は経っただろうか?龍司に連絡しようと何度も思うが躊躇する鉄治。自分にはこの国に何とか連れてきた責任がある。


 やがてカタメの手術は成功した。が、カタメは麻酔が切れた瞬間起き上がり、再びタワーに戻ろうとする。止める鉄治と医者、看護師。だがカタメは聞き入れない。病院内で獣のような奇声を上げ、去って行く。最早正気ではない。鉄治が瀕死のカタメを止める。するとカタメは、


「帰んならあんた1人で帰れ!俺はこの国に死にに来たんだ!それにまだ何も成し遂げてねー。このまま帰れっかよ!」


「あいつらの顔見ただろ?あんな悲しい面見せられて黙ってろってのか?あいつらは闇の中で何かヤバいもんを掴まされただけなんだ!そいつがはっきりするまで俺はぜってー止めねー!死んでもな!」


喋る事すらやっとの身体で鬼のような形相で吠える。カタメの覚悟は本物だった。再びワッツ・タワーにふらふら戻り、仮眠を取る。


そして3度、エデンへ向かう。マスターは最早命知らずとしか思っていない。


「昨晩銃で撃たれた奴が今日ステージに立つって?そんな命知らずは初めてだ。お前以外は1度、いや、1曲やってみんな逃げてったというのに!」


と話す。それでもカタメは折れない。むしろ左眼がギラギラ尖っている。3日目のステージ。プロでもやらない3DAYS。カタメはまた演奏した。3日続けてステージに上がったので、数名の客がカタメを覚えていた。隻眼に包帯まみれの身体。忘れないだろ?


「HEY!JAP!今度は何をお見舞いしてやろーか?」


俺の存在を覚えている。カタメはニヤッと笑った。演奏開始と同時に投げられたのは火炎瓶。ステージは燃え上がる。だが、カタメはその場で演奏を続けた。笑いながら逃げて行く観客。それでも止まらないカタメの演奏。炎の中カタメのシャウトが響き渡る。鉄治はカタメにバケツの水をぶっかけ羽交い締めにし、ステージから引き摺り下ろす。マスターは消火器を辺り一面撒き散らし、消防を呼んだ後カタメに叫んだ。


「何てクレイジーな野郎だ!死神でも取り憑いてんのか?オメ-は!」


カタメの左半身が火傷に覆われる。着ていたスカジャンは焼かれ、ズボンにも引火し出した。水と泡まみれの身体で救急車の中でカタメは半狂乱で笑う。


「見たかよ!兄貴!あいつら俺の面覚えてやがったぜ!これがROCK'N'ROLLだ!」


同じ病院、アメリカに渡りたった3日で3度の入院。最早常軌を逸しているカタメ。治療が終わると、ベッドに四肢を拘束されていた。


そして夜中になり


《ガン!》


という音が病室から聞こえる。直後に


《ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!》


と何処かに何かぶつかる音が病院内に響き渡る。なんとカタメが四肢を拘束されたままベッドを引き摺り、ドアでつっかえていた。カタメは


「ガァアッ!!!!」


と雄叫びを上げる。まるで身ぐるみを剥がされ、靴を履く事すら許されない裸足のライオンのようだ。その日の夜、その病院の夜間勤務の看護師は日本人だった。「若草」と表示されているネームプレートを見てカタメは日本語で叫ぶ。


「あんた日本人か?俺の服あんだろ?よこせ!あ?聞こえねーのか?テメー!俺の服よこせっつってんだろ!」


鋭い眼光で睨み付け、半狂乱で暴れる。慌てて夜間勤務の医師がカタメに麻酔を打とうとするが、カタメの一瞬固くなった身体が麻酔注射の針をピキーンと折る。青ざめる医師。ベッドを破壊し、四肢の拘束を自力で解いたカタメに看護師が日本語で


「もお出てってよ!」


と叫ぶ。そしてカタメは


「あ?2度と来るか!こんなとこ!とっとと手足の鍵開けろブス!」


といい放ち、鉄治の肩と病院の柵をはずした鉄パイプを杖代わりに病院を去って行った。その看護師の名は若草葵。後にカタメととある事件を機に再会する事になる。


 よろよろになって知らない街を歩く。残った左眼はかすんでいき、何処かの家の壁にもたれかかり、座り込んでしまう。そんな時、何処からかピアノの音色が聞こえる。ドビュッシーのアラベスク第1番、思わずカタメと鉄治はその場に座り込んで聞き入ってしまっていた。何処かの家の部屋でカーテンに揺られている口元が微笑む。弾いていたのはカタメくらいの少女だった。今まで尖っていたカタメの心が静かに穏やかに洗い流されていく。鉄治が煙草を取り出した。カタメは鉄治に


「俺にも1本くれよ。」


と煙草を貰い、火を付ける。16歳のカタメは煙草は初めてである。ゆっくりと煙草を吸いながら鉄治に尋ねる。


「・・・なあ、あんちゃん。俺、こんだけやられて死なねーって事は、俺って何かあんのかな?」


鉄治は答える。


「それを確かめるためにこの国に来たんだろーが?俺は信じるぞ。オメ-はぜってー何かあんぞ。言葉に出来ねー何かがな。」


しばらくアラベスクを聴きながら、鉄パイプをアスファルトに突き立てて、ガリガリと地面に鉄パイプで擦りながら再び歩き出した。ワッツ・タワーの方角へまたよろよろと・・・カタメは歌を口ずさんだ。


「・・・明日を探そう♪・・この広ーいせーかいでー♪・・・今こそそのとーきー♪・・・・さあ、みんなーでー旅だとうー♪・・・」


合唱曲、Let's search for tomorrowを口ずさみながら、ワッツ・タワーを目指し、ゆっくりと延々と歌いながらよろよろ歩いて行く。そして、アラベスクを弾いていた女性の口元がにっこり微笑んでいたのを感じた。


 杖を突き、ふらふらワッツ・タワーを目指して歩きながら考える。


(何かって何?正義?勇気?友達?知識?愛情?そういうことじゃねーよな?)


と思った。カタメの中に隠された特別な「何か」言葉に表せる代物じゃねーなと何となくの予感はしていた。その「何か」が後々世界を揺るがす事も知らずに。







この話が彼の超能力を発動するきっかけになります。また、この話から随所に世界中のジャンル関係なく名曲を挟んでいます。

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