第35話 レディになっていく義妹の夢
ソニックと菜月が互いの意思でそれぞれ人生の大きな転換期を迎えます。
あれから1年。2003年6月。ソニックとWatts Towersは全員UCLAを卒業した。相変わらずソニックは達斗に護身術の他、「Sonic」を教えながら音楽活動に勤しんでいる。今年も全米を回りながらアルバムを出す。菜月はアクション女優を目指し、日々稽古に励んでいたが、6月のある日のこと、菜月は家で泣いており、緑と桜、菫が慰めていた。ソニックが
「学校で何かあったのか?」
と尋ねると、菫が
「違うよ。お気に入りだった服が破れちゃったのよ。」
と話した。菜月は自分が太ったのではと気にしていたという。ソニックは菜月に
「なーんだよ。菜っちゃん。みんなと並んで立ってみなよ。」
と明るく話しかける。菜月は泣きながら立つと、菜月の身長が緑や姉達より高くなったのを初めて気付く。菜月の身長は168cm。緑や他の姉達は大体155cm前後、一番背の高い葵ですら160cmちょっとの身長である。ソニックは178cmである。
「菜っちゃんは、ねーちゃん達より背伸びたんだよ。乳もでけーしよ。これでもうねーちゃんのお下がりは着れなくなったな。そろそろ兄ちゃんに菜っちゃんの服買わせてくれよ。おしゃれな菜っちゃん見てーんだよな。」
と言って慰めた。次の週末、皆で菜月の新しい服を買いに行った。まだ菜月にはファッションの自信がなく、また、男のソニックは下着売り場まで入れないからである。お礼にソニックは全員分の服を奢った。
そして新学期、菜月はひょんな事から親友の由香里と大喧嘩して帰ってきた。結構な期間2人は口も利かず時間が経っていた。理由まではわからないが、ソニックはとにかく菜月の話を出来るだけ耳を傾けて聞いた。そして
「そうか・・・」
とだけ口にし、後は飲み込んでいた。とにかくこの時期は一番危険な年頃である。ソニックはちょうど今の菜月と同じ年頃の時、祖国で殺戮を犯し、少年院へ送られた時期だったからである。なるべく菜月が自分に逃げられるような環境を作ろうとしていた。桜も同様だった。ちょうど今の菜月くらいの年頃にギャングの強姦を受け、しばらく恐怖で部屋から出られなかった時期である。ソニックや若草家では
「ここが山場だな。慎重にいこう。」
と茜や葵にも伝えていた。
数週間後、再び菜月と由香里が大喧嘩した。互いの主張がぶつかり合うこと2時間後、ようやく2人は泣きながら抱き合って仲直りした。それを見ていた窓香、望美、千尋が2人に拍手を送ったと達斗から早朝トレーニングの時に聞いた。どうやら由香里はソニックや、窓香が恋するGTのような「お兄ちゃん」が欲しかったらしい。由香里は下に弟や妹が3人いる長女だった為、羨ましかったと話す。それを聞いたソニックはGTを誘い、由香里を訪ねた。GTが
「何だよ由香里ちゃん。そーいうことなら言ってくれよ。俺もソニックも菜っちゃんや窓香ちゃんの友達は皆妹だと思ってるんだぜ?アナログ・キングダムに言ってみなよ。Watts Towersの兄ちゃん達がいっぱい待ってるぞ。結婚してねー兄ちゃん達をアプローチしてみればいいんじゃねーか?」
と話す。ソニックは由香里を抱きかかえ
「こんくらいならいつでもしてやるよ。由香里ちゃんは俺の妹なんだからよ。」
と言ったら由香里に思い切りビンタされた。
「そーいうのじゃないの!」
と言われ、ソニックは葵に
「おい!筋肉猿!妹をそういう扱いすんな!」
と怒られてしまい、一同に笑われた。
12月になると、菜月はビザの更新のために一時帰国することが決まっていた。この時は前回迎えに行けなかった緑と菫が付いていった。菜月は生まれ故郷である横浜八景島へは寄らず、両親の墓だけ訪れた。墓は綺麗に掃除されていた。「Try Flyers 」のメンバーや、近所に住んでいた人々が掃除してくれていたと住職に聞かされた。菜月はソニックと同じく一人前になるまで地元に帰りたくないと決めていた。
2週間後、3人はLAに戻ろうと成田空港へ赴くと偶然「Try Flyers 」の古賀、手嶋、木村とばったり遭遇した。「Sonic Los Angeles」の5回目のグラミー賞受賞と共に、所属する「Burning Gear America」へのスタッフ入りを決めたとの事。彼らはこれから日本を拠点にアメリカやUKを往復する毎日を送ることになる。この時機内の中で菜月がアクション女優になると聞かされた3人は
「・・・こりゃ龍司の血だな。」
と口を揃えて言った。緑が3人に尋ねると
「はい。菜っちゃんのお父さんは、博多のドラゴンってあだ名の九州じゃ知らない者はいないくらいのワルで、九州中のワルを相手に何百人も倒すくらい強かったんですよ。まさかこの娘がそっち側に行くとは・・・」
この話は今、菜月には届いていない。菫と離れた席で仲良く喋っていた。
更に1年が過ぎ、2005年6月、菜月は中学校を卒業する。菜月は窓香達4人と共に高校をハリウッドにあるカトリック系の厳しい女子高校に進学が決まっていた。茜とも相談し、レディを目指しながら黒澤道場に通う予定である。自ら敢えて厳しい環境に身を置くことで、己を鍛えようとしたのである。菜月はずっと考えていたことがあった。ちょうど1年前に日本へ帰国し、墓参りに行ったときであった。
(兄ちゃんって好きな人いるのかな?あたしに気使って兄ちゃんは自分の人生犠牲にしてるんじゃないかな?)
この1年でようやくわかった。ソニックは桜と相思相愛だった事に気付いた。菫や緑に相談しても
「うーん。わからないなあ。」
としか言わない。思い切ってソニックにぶちまける菜月
「兄ちゃん。あたしもう大丈夫だから、桜姉ちゃんと結婚しなよ。ダメだよ。いつまでも好きな人待たせてちゃ!・・・・ダメだよ・・・。」
菜月は泣きながらソニックに思いを伝える。ソニックは
「菜っちゃん。どこまで兄ちゃん助けてくれんだよ。そうだよな。兄ちゃん男らしくなかったな。わかった。今すぐ男見せてやる。皆と一緒にここで見ててくれ。」
ソニックは自分の部屋から何かを持って、部屋で仕事中の桜にプロポーズした。
「もう菜っちゃんは大丈夫だ。今まで待たせて悪かったよ。」
それを見て菜月は泣きながら拍手した。初恋とはそういうものだ。すかさず菫が菜月を抱き締める
「いつの間にかこんなに大きくなっちゃって。菜っちゃん偉いよ。」
菫は携帯電話で菜月の残念会の場所を探す。提供したのは、丁度1年前に大喧嘩した由香里の家だった。
若草家は今、ソニックと桜、史郎、緑の4人だけ。由香里の家に菜月と菫、窓香、望美、千尋が寄り添い、遅れて茜、葵が訪ねてくる。
茜が
「菜っちゃん偉いよ。すっかりレディになったね。先生嬉しいよ。こんなに立派になって。」
続いて葵が
「菜っちゃんアクション女優になるんでしょ?怪我したらちゃんと診てあげるからいつでもおいで。お姉ちゃんずっと応援するからね。」
千尋が
「菜っちゃんもっと男の子と喋ったほうがいいよ。菜っちゃんの事好きな子いっぱいいるんだから。」
望美も
「そうだよ。兄ちゃんよりいい男いっぱいいるよ。これから一緒に彼氏探そうよ。」
窓香が
「あたし菜っちゃんが女優になって成功したら、菜っちゃんをモデルにしたお話書きたいんだけどいい?そうなったら最高じゃない?奇跡の兄妹って事になるじゃん!だからあたしも菜っちゃんに頑張ってほしいな。」
そして由香里が菜月の新しい人生の道を目指すきっかけを作る一言を話す
「でもさ、菜っちゃん羨ましいよ。だって初恋の人に育ててもらってるんだもん。それにこれからも続くんだもん。いいなー。あたしもディカプリオに育ててもらいたいなー。これって世界中探しても菜っちゃんくらいしか味わえない幸せだと思わない?」
この言葉に菜月は考え出す。そんな時、鉄治やWatts Towers全員とGT達まで由香里の家を訪れた。
ビッグ・ジョーが
「みずくせーな、菜っちゃん。俺達も頼ってくれよ。他にも兄ちゃんこんなにいるんだぞ。」
ファルコンが
「アクション女優になるんだろ?何でも協力するからよ。」
ブルが
「ソニックより戦い慣れてる奴らゴロゴロいるんだぜ?」
そして鉄治が
「今度アナログ・キングダムに来いよ。俺達がいろんな技教えてやっからよ!」
菜月はこの夜失恋したが、同時にこんなにも沢山の家族が増えたことにより、楽しい夜を過ごした。
翌朝、菜月はソニックに告げた
「あたし、兄ちゃんのこと諦めた。だから、兄ちゃんみたいなカッコいい人になる!」
ソニックはその言葉に感激した。そして
「菜っちゃん。兄ちゃん結婚するけどよ、菜っちゃんは今まで通り妹だからな。兄ちゃんに子供出来たら、今度は菜っちゃんがお姉ちゃんになってくれるか?」
菜月ははっきりと「うん!」と答えた。そして
「兄ちゃん、これから一緒にアナログ・キングダムまで走ろうよ。Watts Towersの兄ちゃん達があたしに技教えてくれるって約束してくれたの。」
ソニックはにっこり笑い
「よし!行こうじゃねーか!」
と2人で走り出した。この日から菜月は妹であると同時に、お姉ちゃんになるために走り出した。
(いつのまにか菜っちゃんは、マリンブルーのような透き通った心と肌の綺麗な乙女になっていったなあ・・・やっぱ俺の思った通りの美女になったなあ)
と微笑みながらソニックは菜月と走って行った。
菜月がソニックを「憧れ」や「恋」から「自分の目標」として認識していく話でした。
菜月はここからWatts towersを本格的に「兄」として頼るようになります。
ソニックはあくまで菜月の「兄」であり「保護者」でもあるため、それ以上にはなれないという事です。




