第32話 光の輪が繋がって行く
もう一人の主人公、菜月が卒業し、成長していきます。
ソニックがNYから戻って1ヶ月、もうすぐ菜月達が小学校を卒業しようとする頃、菜月達が通う小学校に拳銃を所持した男11人が侵入してきた。悲鳴が飛び交う中、茜達教師は必死に子供達を逃がそうとしたが、菜月の親友、窓香が人質に取られそうになったその時だった。
《ガシャーン!ブオーン!フォンウオン!》
校舎の窓を3台のバイクがウィリー走行で派手にぶち破り、バイクに乗った3人の青年が犯人の前を通り過ぎ窓香を救出した。バイクの男達は日本語で
「大丈夫かい?お嬢ちゃん。もう大丈夫だ。あとは俺達に任せろ!」
と窓香の前でにっこりしながら犯人をほぼ秒殺で全員撃退した。家にいたソニック達は慌てて小学校に向かうと既に警察が来ており、事態は沈静化していた。その時、窓香がソニックに説明する。
「このお兄ちゃん達があたしを助けてくれたの。」
彼らを見ると、その男達はGTだった。Watts Towersで別れたあのGT。事業を始めたと聞いていたが何年振りだろうか?
「お前、GTか?久しぶりじゃねーか!」
GTは軽く笑い
「よお、ソニック。元気そーじゃねーか。」
ソニックが尋ねる
「お前らが助けてくれたのか?」
GTが説明するには
「仕事で近くにいてよ。悲鳴が聞こえたから来てみたらこれもんだよ。昔思いだしちまったな。」
ソニックはまだGTが何をしていたのか知らなかった
「仕事ってお前今何やってんの?」
GTは照れながら答える
「こいつらと車組み立てててよ、今度レースに出るんだ。パリ・ダカール・ラリーって知ってるか?それに俺のチームが参戦するんだ。すげーだろ!」
ソニックは
「マジで?スゲーじゃねーか!俺達も応援するよ。」
そして、GTと共に子供達を救った彼の盟友、ジョーカーとベネディクト・ウィットモア。通称「ベック」にも礼を述べた。
帰り道、窓香がソニックに相談する。
「ねえ、あの時のバイクのお兄ちゃんってソニックのお友達?」
ソニックはGTは昔からの友達だと語り始める
「そーだよ。一緒にいろいろ馬鹿やってたなー。」
無言のままうつむき、ソニックを見る窓香
「・・・どーしたん?窓香ちゃん?」
ソニックは(怖かったろうな)と思うが
「・・・あの人にお礼言いたい。」
窓香は顔を赤くしてソニックに伝えた。どうやら窓香はGTに惚れてしまったらしい。
あとでGTに連絡し、彼の職場に顔を出したいと尋ねた。GTは
「いいのか?あんな事件の後で?まあ、土日以外ならいつでもいいよ。」
と返答した。GT達は、アナログ・キングダムのあるレイクウッドから東にあるウィッティアで自動車会社を立ち上げたらしい。菜月や窓香達5人も会いたいと言っているから一緒に連れてこいと言われた。
後日、GT達が働いている自動車会社へ行った。ベックに倉庫のような随分大きな建物(ガレージと展示場)と、隣接する事務所内へソニック達は招かれた。あの一件でGTに惚れてしまった窓香はGTに
「あの・・・これ・・・クッキー焼いてきたの。食べて。・・・それと・・・あの・・・サイン下さい。」
ともじもじしながらGTにクッキーと色紙を渡す。GTは
「ああいいよ。」
とにっこり笑い窓香にサインした。その後窓香に抱きつかれ、顔にキスをされたGTは
「あれ?怖がらせたと思ったんだけどなあ。立ち直りはえーなー。」
と感心していた。ソニックが
「アホ。この娘お前に惚れたんだよ。察してやれよ。」
と話すと、窓香が
「やだ!言わないでよ!ソニックの馬鹿!」
と怒られてしまった。ソニックは
(これって前にもこんな光景見たような・・・)
と思いながらGTやジョーカー、ベックと話していた。
その後、GTが運転するマシンを見せてもらった。ゴールドに輝く雷のようなストライプの派手なボディ。GTはこのマシンを
「ゴールデン・タイガー・レボリューション・ワッツ・カスタム」(GTR-WC)
と名付けていた。この車でパリ・ダカール・ラリーを制覇し、ゆくゆくはラリーレイドを目指すと生き生きと話す。ソニック達Watts Towersが大型トレーラーでツアーをしていることを聞き、耐久型レースをやってみたくなったそうだ。今、マシンは完成したが、スポンサー集めに苦労しているという。ソニックは
「何だよオメ-。俺達に言ってくれよ。ダチじゃねーか。」
とスポンサーを買って出た。鉄治が運営している「Burning Gear America」から出資しようと鉄治に連絡したら、二つ返事でOK。また、ソニックがCMに楽曲提供している企業数社にも打診した。帰り際、窓香がGTにラブレターを渡した。GTは
「また遊びに来いよ。待ってるからな。」
と窓香に伝えた。後年窓香は、このGTやソニック達Watts Towers、菜月を題材とした物語を執筆する事になる。
それから3日後、ソニックと史郎、菜月がジャンゴの運転する車で帰宅途中の事だった。トーランスに入り、家の近くまで来ると
「キャー!」
と悲鳴が聞こえた。その悲鳴は菜月の友達、望美と母親、妹の声だった。心配になって車から降りるソニックと菜月。ベランダに望美がいた。菜月が
「のんちゃん。どうしたの?」
と尋ねると、望美が
「へ、蛇がいるの!」
と泣きながら伝えた。ソニックは望美に
「お父さんかお母さんいるか?」
と尋ねると、望美の母がベランダに来て
「キッチンに大きな蛇がいて1階に行けないんです!」
と話す。ソニックは
「俺が捕まえますよ。中入っていいですか?」
と望美の母に聞く。すると、
「玄関の鍵空いてるから入って!お願い!何とかして!」
と頼まれた。ソニックとジャンゴは史郎にジッポライターを借り、ジャンゴが車中に持っている懐中電灯と、菜月に家からゴミ袋と大きめの紙袋を持ってくるよう頼んだ。そして、望美の家に生えていた太めの小枝を1本折った。
望美の家の玄関にジャンゴと入る。床に懐中電灯を照らすと、大きなガラガラヘビがキッチン周りを這いずり回っていた。ソニックは小枝を蛇に絡ませ、ワッツ・タワーで仕留めたときと同じように蛇の頭と胴体を小枝ごと手刀で引きちぎり、頭部を靴で思い切り踏んづけた。そしてちぎれた胴体の切断部分をジッポライターで焼いて動かなくした。そのまま両方をゴミ袋に入れ、見えないように上から紙袋に被せた。一旦灯りを付けると、キッチンは蛇の血の他に這いずり回った跡が残っていた為、望美の母に雑巾を借り、掃除した。終わるとソニックとジャンゴが
「終わったから降りてきて大丈夫ですよ。」
と望美達に声をかけた。ソニックは
「蛇ってゴキブリと同じで1匹いればもっといると思うんで。明日俺らの仲間に蛇取りの名人達大勢いるんで派遣しますよ。」
と言って帰って行った。
翌日、望美の家にソニックとアパッチ、コブラ、ジャイロと、現在ワッツ・タワーに住んでいる者38名が訪ねてきた。ソニックが蛇1匹につき10ドル、巣を見つけて駆除したら100ドルやると言われ、彼らは蛇採りに向かった。夕暮れ時に巣が見つかり、ほとんどの蛇が駆除された。彼らは望美の母にお礼を言われ、夕食をご馳走になった。
話しは変わり、9・11のテロ事件以来、ソニック達Watts Towersは
「他に何か出来る事はないか?」
と財団を設立する。このことにはGT達や、NYにいるジャンボ・マックスも賛同しており、後年になり協力してくれた。この財団のスタッフは、かつてライブハウス「エデン」で、ソニックに凶器を投げつけた元ジャンキー達が刑務所から出所し
「何か力になりたい」
とソニックに頼み勤務している。また、Watts Towersと共に1992年のロス暴動で服役していた者達も出所し、ビッグ・ジョー等一部の顔馴染み達に
「俺らにも手伝わせてくれ」
と頼み共に勤務している。彼らは刑務所内で読書をしており、Watts Towersとは別に様々な事を勉強したと話す。彼らの発案で財団から移動図書館を出して全米を走ろうという運動を行っている。
「安易に物を与えても、人生において長く続かない。学べる場所や手段がないなら、こちらで作ってしまおう。自分できちんと学んで明日に繋ごう。解らなかったら何でもこっちで答えられることはきちんと教えよう。」
という考えであった。これは、ソニックが亡き恩人、菜月の父、龍司が常々言っていた事を彼らが自ら考えて実施したのだ。ソニックの脳裏に浮かんだ
「これ、食えよ。」
「生きてりゃいいじゃん。」
この言葉にピッタリ合致した行動であった。NYにも設立し、そちらはジャンボ・マックスの仲間達、あのハーレムで過ごしていた新たな仲間達や、グラウンド・ゼロでのライブに参加したオーディエンスの一部がスタッフ入りしている。彼らは
「サンタクロースをやろう」
と企画し、トナカイ型のボディに装飾を施した大型バイクをGT達に発注し、アメリカ中の子供達にプレゼントを配っていた。あらゆる光が繋がり、共に助け合い、1つのファミリーとしてアメリカを覆った。
もうすぐ菜月達は卒業を迎える。中学校は日本人学校ではなく、菜月の希望で地元の公立中学校へ進学する。窓香、由佳里、望美、千尋も一緒だ。道場に通いアメリカの友達が増え、英語が話せるようになっていた。その道場で出会った友達に誘われ決めたようだ。担任教師の茜も
「菜っちゃんはもっと現地慣れした方がいいと思うわ。せっかくアメリカに来たんだから、現地の子供達と仲良くした方がいいと思うの。成績も問題ないし英語の上達も早い。後は色々な人達と接していろんな考えを知っておいた方が絶対いいと思うわ。それにその学校はあたし達も通ってた中学校だから大丈夫よ。」
と助言をもらっていた。
また桜も大学を卒業し、この春から洋楽の和訳、Jポップの多言語訳の職に就き、この年からアメリカと日本を行き来する生活を送る。ソニックは、昨年のテロ事件に遭遇し、Watts Towers共々留年する事になり、再びUCLA に通っている。
菜月の卒業式。ソニックはいつものモッズ・スーツで参列。
「菜っちゃんももう中学生になるのかあ・・・」
と感慨にふけっていた。担任の茜が卒業証書授与で菜月の名前を呼ぶ
『浪川菜月』
菜月は大きく可愛い声で
「はい!」
と堂々と返事をする。あの放火事件から3年の月日が経ち、このLAで菜月は逞しく成長していた。両親との死別を乗り越え、こうして新たな環境で明るく自信を持った娘に変わったのであった。ソニックは一安心するも、一抹の不安を覚える。何せ菜月はこれから、自分や桜が壊れてしまった年齢へ育っていくのだから、あらゆる変化と対応に敏感にならなければ俺達の二の舞になると考えていた。
卒業式が終わると、菜月達は記念写真を撮りたいと遅れて参加した緑や菫に撮影を頼んでいた。その写真は、菜月の部屋にあるテディベアと、その上に額縁に飾られた卒業証書を囲み、菜月の部屋中に張られている。菜月はバカンス中に黒澤道場へ合宿に行き、空手や柔道、剣道、合気道等の黒帯に挑戦するという。
また、このバカンス中に葵が同時に結婚することも決まっていた。相手はここで説明する。
【デビッド・ウォーカー】
通称「デイブ」
国境なき医師団の医師。ソニックが初めてこのLAに来た時はライトボーン医師と共にソニックをオペした人物の1人で、ER救急救命の元外科医だった。その後、国境なき医師団に参加し、去年のテロ事件の間に帰国し葵と再会。後に、葵と共に外科病院を開業する。
この時、葵が菜月にあるお願いをしていた。
「あたしが子供産んだら、今度は菜っちゃんがお姉ちゃんになってくれない?」
菜月は快く承諾し、誓った。
「今度はお姉ちゃん達の子をあたしが守るんだ。」
こうしてあらゆる出来事が交錯し、多くの絆が深まっていった。
ソニック達Watts Towersも、この1年の遅れを取り戻そうと大学に通い詰めていた。皆が口々に
「来年までに卒業しよう。」
と意気込んでいた。これからアメリカで作ったファミリー全員が人生の2歩目を歩むことになる。
久しぶりに仲間のGTが登場しました。友達でも同じ道を選ぶとは限らないということです。GT達はこれからも登場します。また、この話からは菜月の話が増えていきます。




