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第30話 RELIVE⑤ 俺は神を許さない!

ニューヨーク編三部作後編です。

【2001年9月11日 アメリカ同時多発テロ勃発】


死者2763人 

ワールドトレードセンターに居た民間人が2192名死亡

消防士343名死亡

警察官71名死亡

ハイジャックされた旅客機の乗員、乗客が147名死亡

ハイジャック犯が10名死亡


実行犯はイスラム過激派テロ組織「アルカイダ」

首謀者はウサマ・ビン・ラディン

発案者はハリド・シェイク・モハメド


この大事件を見た世界中が


「KAMIKAZE だ・・・」


と話すが、ソニックと鉄治、史郎は口を揃えて


「違う!」


と言い放った。KAMIKAZEは1人乗りであり、乗組員は「御国の為に死ね!」と命じられて乗せられていたのを、戦争を体験していない3人共知っている。ソニックがアポロ・シアターでのライブで話す。


「当時の日本は完全にイカれてた。国民は全員「死」を強要されており、背くと重い「罰」が下された。そのような狂った教育を施されて育てられた。まだ子供の頃に親や教師からそんなクレイジーな事を教え込まれ、国民は洗脳されていた。それでもわからねー奴は兵隊に「ヒロポン」というドラッグを打たせて無理矢理戦わせていた。アメリカだってベトナム戦争で余ったドラッグを蔓延させて、おかげで俺まで傷物にされたよ。夢や目標を持った人達でさえその有様だぞ。あの飛行機を操縦した者はKAMIKAZEだろうが、あの飛行機には関係ない人々が乗っていた。彼らは何か?その関係ない人々はKAMIKAZE(神)の生け贄にでもなったというのか?そんなの認めねーぞ!?」


彼ら日本に生まれた者だけではなかった。熊襲太鼓のドラムスティックを作る為、日本へ渡ったハックとアポロも同様だった。彼ら2人は宮崎県から屋久島へ行った後、鹿児島の知覧特攻平和会館を訪れ、2人で涙したと話していた。


「彼らも俺達と同じ人間だったんだ・・・」


「ソニックがいつも言ってる腐った世の中ってこういう悲劇を生むんだな・・・」


と絶句したと言う。


 ワールドトレードセンター跡地。後にこの地は「グラウンド・ゼロ」と呼ばれる。あの110階のビルが飛行機2機の特攻で瓦礫の山と化し、現在は更地にされてしまった。「Sonic Los Angeles」がこの地で供養のためライブを行うことになった。マンハッタン区や、対岸のブルックリン区、隣のニュージャージー州・ジャージーシティにまで観客が集まった。建物から顔を出す者も大勢いた。数は数えていないが、10万人はいただろう。この日のソニックは好戦的だった。マンハッタン区に「Volt」、ブルックリン区に「Jet」、ジャージーシティに「Burst」、その一帯に「Magnet」を放つ。いつも以上に激しく「Sonic」を音に合わせ放ちまくる。熊襲太鼓も加わりいつもより攻撃的で暴れ回るようなこのライブの中で、ソニックは5つ目の「Sonic」を放った。戦場で闘う「Combat」のような、置き換えれば「Ghost」のような、いつまでも身体に何かがまとわりつく異質な「Sonic」だった。このライブはソニックにとって明らかに「腐った世の中との戦い」だった。右眼を潰されたあの日から気に入らなかったこの世の中をぶっ壊すチャンスをこの地で得た。ソニックはライブの間、珍しくオーディエンスとMCで口論になる。


「これが神の悪戯だってんなら、俺は神を許さねー!」


「神を信じないならいったい何を信じるんだ?」


「人に決まってんじゃん。いつまでも見えねーもんに踊らされんな!神を信じるよりよっぽど難しいがな!」


「その意味不明な「Sonic」を発しているお前も神か悪魔じゃねーのか?」


「俺か?俺はお前らと同じヒトだよ。オメ-らと同じ赤い血流れてんよ。イエスもムハンマドもお前らと同じヒトだよ。ガキでも知ってるわ。」


「そんなことはない!彼らは夢の中で啓示を聞いて悟ったんだ!」


「啓示か。俺の夢ん中でごちゃごちゃうるせー奴らか?そんなもんとっくに蹴散らしたわ。瓦礫片付けながら思ったわ!顔も見えねー奴らの口車に乗らなくて良かったってな!」


このライブは賛否両論を呼んだ。宗教改革にもなりかねないこの口論が朝まで続いた。この場所で大勢の人々が敵味方関係なく「神」という存在の下で命を奪われているという現実から、誰しも目を背けようとした。現実逃避を未だに続けている彼らにソニックは怒りを覚えていた。どんどんヒートアップしていく。これは人間同士が戦うために言い合っているんじゃない。見えない敵と戦うために互いに本音を言い合っているのだ。次第にソニックを含め、この激論が悲しみに変わっていく。


ソニックは、ライブで初めて上着を脱ぎ、上裸になる。


「この傷を見ろ!神がほんとにいるんなら、何でこの傷を癒してくれねーんだ?このツラを良く見ろ!何で俺の右眼を奪ったまま返してくれねーんだよ?!神なんて・・・俺から半分光を奪ってった見えねー悪魔と変わらねーじゃねーか!・・・この半分光の見えねーツラを死ぬまで晒さなきゃいけねーんだぞ!・・・こんな姿をよ、カメラに晒されてみろよ!・・・生き地獄じゃねーか!俺も!このテロで傷物にされた奴らもよ!死ぬまで化けもんみてーな姿に変えられちまったんだよ!神の悪戯でな!」


ソニックのその姿を見て、オーディエンス達は絶句する。ソニックは自ら晒し者になり、身体を張って訴えかけたのだ。


「・・・神の悪戯だって言うんなら、この間のテロは何だったんだろう?」


「天使が舞って落ちた羽根の正体がジャックナイフだったんじゃね-のか?偶像崇拝も大概にしろよ。結局皆見えねー何かに踊らされてただけじゃねーか!オメ-ら!いい加減目え覚ませよ・・・」


「実際に110階のビルが建っていたこの地は一瞬で更地にされちまったんだぞ!亡くしちまった命だってよ、もう神のように見えなくなっちまったんだぞ・・・・あいつらだってヒトだったんだ。もっと生きたかっただろうに2度と見えなくなっちまったんだ。天使みてーにな・・・・」


ソニックは左眼の奥から涙を溢れさせながら


「あんたらが何を信じようが構わない。俺だって見えない神ではないある尊敬している人物を信じてここまでやってこられた。このライブも仲間達がいなかったら出来なかっただろう。俺は目の前に存在している仲間を信じてきたからこのステージに立っていられるんだ。それは神じゃねー。1人1人感情を持った人間なんだ。俺もお前らもあのテロに関わった人間も・・・いくら祈ったってあの瓦礫から全員救われたかよ?」


「俺も弱いから何かにすがりてー気持ちはわかるけどよ、結局答えは自分の中にあって神が決めるもんじゃねーだろ?俺だって瓦礫片付けたくらいの事しか出来なかったよ・・・「Sonic」なんて力持ってたってクソの役にも立たねーんだってよ・・・無力なのは俺も同じだったんだ・・・」


「だけどな!俺はアメリカ人を信じたい!お前らいつだって他人事じゃなく誰かの為に何か出来る事ねーかっていつも思いやって行動してるじゃねーか!今回の事件だってみんなそれぞれ出来る事やれてたじゃねーか!それが人の強さじゃねーのか?それがいいんじゃねーのかよ?だから俺達も何かやって立ち上がろーじゃねーか!歴史覆そーじゃねーか!神になんか出来ねー事を俺達全員でやろーぜ!」


涙をにじませ最後にこう言い放つ


「俺はこの自爆テロのバックにいる全ての神をぜってー許さねーぞ!」


拍手と罵声が折り混じったこのライブが終わった。ソニックはあの惨劇を目の当たりにした当事者として、ミュージシャンとして、1人の人間としてどうしても伝えたかった。これからこの問題と仲間達と、そしてここにいる国民達と共に戦わなければいけなかった。あのテロで失った命は2度と戻らない。どんなに祈っても元に戻らない。犠牲になった人々の為にも、目撃者となったソニックはそれでも戦わなければならない。犠牲になったのは民間人だけではない。あのテロリスト達だって神にそそのかされたのではないだろうか?そして全ての責任を神に押しつける。また別の悪が現れたと考えるようになった。オーディエンス達は沈黙し、涙した。NY市長はこの惨状を世界中に伝えるために「Sonic Los Angeles」にライブを依頼した。いにしえに伝わる熊襲太鼓という化け物太鼓をずっと叩き続けたソニックを通じてこの問題を世界中に考えてもらおうと賭けに出たのだ。


 Watts Towersの仲間には、実際に戦争被害者がいる。ボスニア内戦から逃れてきたアレックス、冷戦を経験し、陸の孤島から脱出したジャーマン、戦争で左手の中指を失ったサージェント、アフガニスタンで撃墜され、右脚が義足となってしまったエース、元海兵のハルク、そして被爆2世の鉄治。彼らのためにもここで折れるわけにはいかなかった。


 日本では、ソニックがアメリカへ発った後、「地下鉄サリン事件」というテロ事件が起きていた。その首謀者もまた、宗教の教祖だった。結局奴らは何が目的で人を殺めるのだろうか?島原の乱も十字軍もバドルの戦いも、パレスチナ問題も大体宗教には戦争が付きまとう。宗教戦争は未だに終わっていない。過激になっていく一方だ。戦争の舞台となった国々の一般人はいつでも犠牲となり泣いている。祖国に帰れず平穏な暮らしが保証されていない。本当に神がいるのなら、何故彼らを救ってあげられないのだろうか?そんな矛盾を今現在でも世界中で続いている。


このライブは撮影こそされていないものの、世界中に伝わり、そして厄介な事をされたと世間は批判した。


「めんどくせー奴が現れた。」


「奴のせいで商売あがったりだ。」


「ルターにでもなったつもりか?」


と批判的に捉えられていた。それでもソニックの心は決して折れない。片眼を失った時、神は助けてくれなかった。助けたのは人間の龍司や千春や菜月、Watts Towersや若草家だった。アメリカに来ても迫害されていたWatts Towersを救う神などいなかった。汚された人間達に迫害されて苦しんでいる彼らを神は知らないふりをしてやり過ごしている。その有様を見た時からいずれ姿の見えない神と戦うことになるだろうと、ハナから覚悟を決めていたからだ。特に困ったのは教会やモスク。社会的弱者の教徒達に


「今まで何も助けてもらってねーぞ。」


「それ信じて何の意味があんのか?」


「坊主丸儲けじゃねーか。」


「貧困な国に産まれてきた俺達はむしろ神を憎む!」


彼らは実際に誰にも救われてない。物資を届けられるだけじゃ問題は解決しない。彼らの置かれた環境を、世界を変えなければ誰も救われない。そんな中、ソニックに賛同する者もその場に限っては大勢出てきた。


「確かに神を見た者はここに居ない。俺達は何を信じていたんだ?」


「戦争のバックに宗教があるのは事実だ。俺達もテロリスト達も間違った解釈をしているんじゃねーか?」


「ソニックは無神論者だ。目の前にいる俺達を信じてここで話している。今俺達がここにいる全員を信じようじゃないか!人種を問わずこうして皆で話し合えたじゃないか!」


「これからは人を信じる努力をしよう。それが平和に繋がるかもしれない。」


 ソニックとWatts Towersはもやもやしたまま帰路に着いた。大型トレーラーの中でソニックは考え込む。頭の中で、日本を代表するガレージバンドの曲、「West cabaret drive」のイントロがコンテナ内で重くいつまでも繰り返し流れていた。


(おっちゃん。あれで良かったんだろうか・・・俺、間違ったこと言ってねーよな?)


昨年の9月以来、約8ヶ月振りにLAに帰る。道中、あのマンハッタンからさほど離れていない場所に綺麗なキャベツ畑が大きく広がっていた。その鮮やかな色にソニックは癒やされていった。


(・・・ここからもあの惨劇が見えたんだろうなあ。エンパイア・ステート・ビルやタイムズ・スクエアがはっきり見えるよ。)


キャベツ畑を通り過ぎれば、小麦畑、そこを通り過ぎればトウモロコシ畑、そこを通り過ぎればプレーリー(大平原)そして、グランド・キャニオンの渓谷や、懐かしい砂漠の荒野。その果てにLAがある。改めてアメリカの壮大な景色に心を打たれた。長いこと連絡出来なかったLAの皆にも伝えようとソニックは思っていた。


そしてLAに8ヶ月振りに帰還した。その時、菜月と若草家はこれとまた別の戦いを強いられていた。


ソニックが大勢の前で初めて過去の傷跡やこの惨劇の心情を打ち明ける話でした。

ソニックなりに世の中と戦うライブを行いました。

あまり頻繁にやる事ではありません。あってはならないと思います。


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