第28話 9・11 俺達に出来ること
ニューヨーク編三部作前編です。
ソニックがとWatts towers史実と関わっていきます。
「何だあ?ありゃ、よろよろ飛びやがって。ビルにぶつかんじゃね・・・・
「おい!見ろ!こっちからも飛行機が突っ込んで!・・・
2001年9月11日。ソニック達Watts Towersは全米ツアー中の折り返し地点、NYのマディソン・スクエア・ガーデンでの初日を終え、マンハッタン島から離れたジョン・F・ケネディ国際空港近くのベイズリー・ポンド・パークの一角を借り、ベースキャンプを張っていた。皆でそれぞれ朝食を摂り、歯磨きや洗顔をしている時だった。ソニックはホットドックを焼いて食べていたが、2機目の飛行機がビルにぶつかった時、食べかけのホットドッグが手元から落ち、しばらく呆然としていた。てっきりこっちの空港に着陸するものだと思っていた一行は、全員言葉を失った。
《ガン!ガラララッ!》
《ドオオン!》
《バアーン!》
そして再び
《ガーン!ガラガラン!》
《ドオーン!》
《バガン!ゴトン!》
『2001年9月11日 午前8時46分 アメリカン航空11便がワールドトレードセンター(世界貿易センタービル)ノースタワーに激突』
『同午前9時03分 ユナイテッド航空175便がワールドトレードセンター(世界貿易センタービル)サウスタワーに激突』
【アメリカ同時多発テロ勃発】
ソニック達Watts Towersは、ワールドトレードセンターがあるマンハッタン島の対岸にあるジョン・F・ケネディ国際空港近くのベイズリー・ポンド・パークでその瞬間を目撃してしまった。仲間達に怪我はないが、この様子を見てソニックを含めWatts Towers全員が固まり、しばらく呆然としていた。
110階建てのビル。ノースタワーの北側93~99階の所にジャンボジェット機が激突。続け様にサウスタワーの南側77~85階の所に別のジャンボジェット機が激突。僅か17分の出来事だった。あの大勢の人々を乗せた大きな飛行機が、一瞬で「ガラクタ」と「火炎」に変わってしまった。
『午前9時59分 サウスタワーが約56分間炎上し、崩壊』
『午前10時28分 ノースタワーが約102分間炎上し、崩壊』
『付近のマリオット・トレードセンターもこの2棟の崩壊に巻き込まれ、崩壊』
ジャンボ旅客機2機と巨大なビル3棟が、ソニック達Watts Towersの目の前で大きな音を立てて崩れ落ちた。普段なら通勤や通学で賑わう穏やかな時間帯。それが一瞬で地獄絵図と化してしまったのだ。街中から悲鳴が上がる。ソニックを含め皆がパニックに陥っていた。飛行機がぶつかった直後にソニックや史郎の携帯電話にLAにいる桜や緑が何度も電話をかけていたが、全く気付かないくらいに呆然と立ち尽くしていた。鉄治や家族を抱えているWatts Towersの携帯電話にも入電されていたが、全員固まり、誰一人気付くことなくベイズリー・ポンド・パークの一角は彼らの携帯電話の着信音が絶えることなく無情に鳴り響いていた。
しばらくして仲間の1人、ゼブラと次いでダラスからの仲間、グッディが我に返り、携帯電話の着信に気付く。2人共家族からの安否確認だった。彼ら2人はその場にいた全員にでかい声を張り上げ
「お前ら!携帯出ろ!全員鳴ってるぞ!」
と手拍子を叩き声を荒げ、連呼する。ここで全員正気を取り戻し、家族に安否確認の連絡をする。ソニックは菜月も桜も学校に行ったばかりとのことで、後でまた連絡すると緑に伝えたが、ソニックは以降、連絡出来なくなってしまう。電波障害の為に繋がらなくなってしまったのだ。
右眼を失ったソニックは、他人より五感が発達している。あのビルから、あの飛行機から、あの街から、あのマンハッタン島から骨の髄まで全身に悲鳴を感じていた。
「あいつら助けないと!」
と我に返ったソニックはビルへ向かおうと走り出すが、近辺の橋は全て使い物にならなくなっていた。噴煙で周囲が見えずにいた。ワールドトレードセンター対岸のブルックリン橋付近に辿り着いたソニックは常時携帯している2本の警棒をジョイントさせ、「Jet」を放ち煙を払おうと何度も試みた。その内、ビルの上から人が次々と自ら落ちていくのが見えた。ビルの上は大火災。「Sonic」が使えない。落ちていく彼らを眺めながら自分の無力さを感じた。マンハッタン島に通じる道路や橋、電車等の交通ルートは全て遮断され、ソニックもWatts Towersも指をくわえて見ているしかなかった。立ちこめる噴煙と鳴り止まぬサイレン、崩れ落ちるビルや飛行機の残骸が落ちる音、多くの人々の悲鳴。ソニックやWatts Towersにも避難勧告が出され、どうすることも出来なかった。
途方に暮れながら目の前で惨劇を眺めるソニックとWatts Towers。マンハッタン島は大混乱となり入ることが出来ない。かといってこれを見て黙って帰る訳にもいかないもどかしさが全員に交錯していた。そこに数名の消防士と警察官が来た。
「お前らこんなとこで何やってんだ!早くここから逃げろ!」
ソニックは納得出来ない。
「これを見てどうやって帰れっつーんだよ!俺達に何か出来ることねーのかよ!」
と涙を滲ませ消防士の襟首を掴み激昂した。だが消防士は苦悶の表情を浮かべながら
「ない!お前らが無事でいることが最善なんだ!俺達だって街の人々や仲間が犠牲になってつらいんだ!頼むからこの街から離れてくれ。」
ソニック達は一旦ベイズリー・ポンド・パークから離れ、北側のグレート・ネックで一夜を過ごした。この時全員が眠ることなく
「今の自分達に何が出来るか」
を考えて話し合った。Watts Towersは誰一人、諦める者はいなかった。夜には電波障害で電話が繋がらなくなってしまった。ソニックはしばらく菜月や桜と連絡が取れなくなる事が気掛かりだったがこの街からも出られないもどかしい夜だった。すると、コンボイ部隊のロージーがバイクで付近を見回っていたらしく全員に小声で話す
「今なら2台くらいマンハッタン島へ入れそうだぞ。北側は警備が浅い。」
それを聞いたコンボイとマッハが
「寝台車と診療車だけ回そう。それとゼロヨンがバイクで先導してくれ。」
ソニック達Watts Towersは、コンボイ部隊のタンクとハルクを残し、全員寝台車へ乗り換える。2人は燃料と食料を積んでいるためここで待機となった。他の全員が265号線を通り、スロッグスネック橋から夜中の3時にひっそりと反時計回りでマンハッタン島に何とか入ることが出来た。トレーラーには無線があるので、残ったタンクとハルクに到着と近況を知らせた。その後、ヤンキースタジアムにトレーラーを止め、南へ徒歩で移動した。この辺りの地理はハーレム出身のダンが詳しく、ナビゲートしながら東海岸沿いをぞろぞろと歩いて行く。煙草の吸い殻まみれの道を歩いて行くとイースト・ハーレムがあり、1人の大柄な男が界隈の男達と因縁をつけてきた。
彼の名はジャック・ボガード・マカリスター。通称「ジャンボ・マックス」。北アイルランド系アメリカ人。元プロレスラーで、現在はハーレムの重鎮として君臨している男だ。そのジャンボ・マックスが
「ここは俺らの縄張りだ!勝手に入るんじゃねー!」
と因縁を付けてきたが、ビッグ・ジョーが
「お前らの縄張りなんだろ?だったらその縄張り荒らされて黙って見てんのか?!」
と怒鳴りつける。2人はしばらくガンを飛ばしながら彼らも一緒にワールドトレードセンターの辺りまで歩いた。この2組は歩きながらもお互い警戒し、一言も喋らなかった。
ワールドトレードセンター付近には多くの消防車や救急車、パトカーが止まっており、未だに煙があちこちで上がっていた。まるで絨毯爆撃を食らった市街地のようだった。それを見たソニックは聞き耳を立てる。瓦礫の中でかすかに「Help」と言う声が聞えた。ソニックは消防隊と共に瓦礫の撤去を素手でやり始めた。キッドが
「おい、Sonic使わねーのか?」
と尋ねるが、ソニックは
「この瓦礫じゃSonic使えねー。中にいる人達まで傷つけちまう。こうやって1個ずつ片付けるしかねーだろ。」
大きな瓦礫を持ち上げてどけるソニック。消防隊もびっくりのサイズだった瓦礫を片付け始める。Watts Towersも、ジャンボ・マックス達ハーレムの男達もただただ無言で消防隊と瓦礫を片付け始めた。途中で鉄治とアポロが
「待て、ソニック。軍手だ。手痛めるぞ。他のは今から調達してくるわ。」
と言って手袋を探すために一旦場を離れた。軍手はパワーのある者から配られ、その中にジャンボ・マックスもいた。
朝になり、光が差す。あれからもう1日経ったのか・・・
消防隊やWatts Towers、ジャンボ・マックス達ハーレムの者達が瓦礫を片付けている中、テレビカメラとリポーターが側に来た。ムカついたソニックが瓦礫を持ち上げ
「次はテメーらの番だ。」
と言ってカメラマンに持たせる。カメラは当然ぺしゃんこにされる。
「マイクやカメラより重いだろ?その下敷きにされてる人達の気持ちくらい考えろや!」
と怒鳴りつけた。このソニックの怒号に瓦礫を片付けている者達は特に何も言わなかった。皆ソニックと同じ気持ちであるからだ。
遠くから下敷きにあった身内の心配をして遠くから祈っている人々が大勢いた。そんな人々にさえソニックはキレた。
「祈ってる暇あんなら手伝え!自分の手動かせ!足動かせ!頭動かせ!身体動かせ!掌合わせて祈ってるだけじゃ、何にもしねーのと同じなんだよ!祈りなんか今更クソの役にもたたねーだろ?!」
手前の方からどんどん撤去されていく。ロッキーやボス、ブライ、コンボイ部隊のダンプとミグが重機の使用を許可され、ショベルやクレーンを操る。すると中からかすかに人の声が聞えた。ソニックはここで檄を飛ばす。
「諦めんな!中で人が呼んでいる。外にいる俺らが頑張らねーでどーすんだよ?」
5mはある瓦礫の後ろで何名かのうめき声が聞える。消防隊、Watts Towers、ジャンボ・マックス達ハーレムの猛者達がここで底力を見せ、この巨大な瓦礫を一斉に持ち上げ、中にいた23名を救助した。負傷者は救急車に運ばれたが、それだけでは足りないと鉄治と史郎が消防隊に要請する。
「我々は大型トレーラー20台でツアーしている最中だ。我々のトレーラーも使わせてもらえないだろうか?ヤンキースタジアムに寝台車と診療車、他にグレート・ネックに残りのトレーラーを駐めてある。そのトレーラーの物を全て使って構わないので是非協力させてくれないか。」
と交渉した。すると、
「寝台車と診療車は許可する。他のトレーラーは今この現場にはダメだがマンハッタン島に入るのだけは許可する。片付き次第様子を見て判断する。くれぐれも我々の指示に従うように。」
という形で了承を経た。鉄治は
「コンボイ部隊、一旦作業から離れろ。トレーラー全部回せ。寝台車と診療車の許可は下りた。仮の救護所を作るんだ。持って来た水と食料、燃料はマンハッタンには入っていいってよ。タンクとハルクに無線で連絡だ!」
コンボイ達はパトカーの無線を借り、グレート・ネックで待機中のタンクとハルクに連絡。ゼータとフランキーが寝台車と診療車をヤンキースタジアムに取りに行き、他のコンボイ部隊は2人一組のリレー方式でトレーラーをマンハッタン島に運んだ。消防やハーレムの中にもトレーラーを運転していた者もおり協力してくれた。寝台車と診療車は開放し、救急車で運ばない軽傷者の仮救護所となった。
そして、マンハッタン島に着いたコンボイ達トレーラー部隊を他所に、ある「物」が雄叫びを上げる。
このビルの瓦礫の撤去作業を手伝い、ソニック達Watts Towersは実に8カ月間LAに帰ることが出来なくなってしまう。彼らがLAに帰還したのは翌2002年5月の事である




