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第24話 RELIVE④ ブランクと新たなる衝撃

菜月編後編です。

 1999年11月18日。菜月はソニック達とアメリカで暮らすことになった。次の日、緑と桜が作った弁当を持ち、トーランス南のローリング・ヒルズへ菜月を連れ出すソニック。久しぶりのデート。道中ソニックはある女性達から声をかけられる。桜の友達ビビ、メグ、リンダ、マリサだった。


「ソニック。何処行くの?」


と話しかけてくる。まだ外国人と話したことがない菜月はソニックの影に隠れる。


「ローリング・ヒルズに2人でピクニックだよ。」


と話す。影に隠れて怯えていた菜月に、日本語が堪能なマリサが日本語で話しかける。


「菜っちゃんこんにちわ。あたしマリサ。兄ちゃんと桜姉ちゃんのお友達だよ。」


菜月の震えが止まった。どうやら日本人もいるらしいとほっとしたようだ。道中ではいろいろな人々がソニックに話しかける。


「よお、ソニック。今日はデートか?」

「また曲出してくれよな。」

「今度のライブはいつだ?」

「グラミー賞蹴りやがって。来年取れよ。」

「その子はお前の家族か?」


ソニックは明るく答える。


「この娘は俺の妹だよ。昨日こっち来たばっかでよ。まだ慣れてねーんだ。ライブは夏頃に再開する予定だ。期日決まったら必ず報告するからな。待っててくれよな!」


と皆に明るく返答した。それを見た菜月は思った。


(兄ちゃん凄ーい。)


 ローリングヒルズ内のシルバートウヒ公園で休憩し、2人で弁当を食べる。ソニックは食べ終わった後、首にかけてる物を取り出す。日本で菜月と砂場で遊んでいたときに拾った古いハーモニカを吹く。菜月が知っているいつものアニソンだ。ソニックは芝生に寝そべりながら菜月に話す。


「菜っちゃん。日本でもアメリカでもよー、この青い空は変わらねー。地面だってあったけー。同じ地球なんだ。さっき話しかけた人達も兄ちゃんや菜っちゃんと同じ人間なんだ。その内菜っちゃんにもわかる時が来るよ。」


更に続けて


「菜っちゃん。家族ってーのは血の繋がりだけじゃねーんだ。家族ってのは自分で作れるんだ。これから菜っちゃんがいろんな人と出逢って、大切な人だと思う人はみんな菜っちゃんの家族なんだ。兄ちゃんは今から菜っちゃんの家族第1号だからよ。よろしくな。」


と言いながらにっこり笑って


「菜っちゃんはこれから女を磨いてレディになるんだ。今から5年後、10年後の菜っちゃんは絶対美女になるよ。兄ちゃん楽しみだなあ。」


帰り道、菜月は疲れたのかソニックにおんぶされて帰ってきた。だが、表情は緩んでいた。


 次の日、菜月のもとへ近所に住む菜月の同級生4人が遊びに来る。後年、菜月の生涯の親友になる窓香、由佳里、望美、千尋。茜が担任をしているクラスの女の子達で、菜月がアメリカに来るのをずっと待ちわびてきたらしい。どうやら窓香達のクラスには女の子がこの4人しかいないという。これからの不安と慣れない環境で菜月は戸惑っていた。そこでソニックが尋ねる。


「じゃあ、兄ちゃんも一緒に行っていいか?おやつ作ってやるよ。」


そう言って窓香の家にお邪魔する事になった。


 窓香の家は大手IT企業のお父さんの仕事でアメリカへ転勤してきたらしい。他の3人もそんなとこである。菜月達5人が遊んでいる間、ソニックはお母さんと話していた。以前この町でハリケーンを吹っ飛ばした事を覚えていたらしい。そして若草家の門前で弾き語りをしていたことも。ソニックはみんなにたこ焼きを焼こうと、専用のたこ焼き器を持参してきた。材料は後で仲間が届けてくれる。しばらくしてアポロとサージェントが材料を届けてくれた。そして、みんなの前でたこ焼きを焼く。みんな美味しそうに食べていた。ついでにお近づきの印に各家族分のたこ焼きも作ってあげた。


「これ、どっかで食べたことあるね。」


窓香の母は話す。


「昔、ドジャースタジアムの前で売ってたんです。」


と話すと、


「あー!あの時のたこ焼き屋さんってソニックだったんだー。」


とびっくりしていた。どうやら窓香の父はドジャーズファンで、よく家族で観に行っていたらしい。ソニックは窓香の母に提案する。


「今度この子達連れてディズニーランド連れてっていいですか?俺奢りますんで。菜っちゃん日本で全部失ったから楽しい想い出作ってあげたいんです。」


窓香の母は、他の子の母とも相談して決めようと言って話をつけてくれた。


 夕方5時、家に帰る。


「また明日みんなで遊ぼー。」


と窓香に誘われた菜月。ようやく笑顔が見られた。彼女達4人のおかげで菜月は予定より随分早く学校に通うようになった。女の子って受け入れが早いなあ。とソニックは思った。

 

 新年では、若草家の女性は皆、着物姿で過ごす。皆、自分の名前にちなんだ着物を着ていた。菜月は黄色が好きという事で黄色い着物を着て新年を迎えた。緑が仕立てた物だ。淡い色の着物を着たお姉さん達と一緒に並ぶ黄色い着物を着た菜月。とても晴れやかで綺麗だった。


数ヶ月前に地獄を見た女の子はすっかり若草家に打ち解け、明るく笑っていた。愛犬のキキはすっかり菜月に懐いている。アメリカに来て初めて餅を食べた。京都出身の緑の雑煮は最高だった。緑は京都美人で有名だったらしい。因みに菜月の母、千春は秋田美人で「ミスお茶の水」だったと菜月が話していた。菜っちゃんはそんな美女から生まれて、ここの美女達に囲まれてどんな美女になるんだろうとソニックはわくわくしていた。

 

 正月が過ぎた後、ソニックは菜月、窓香、由佳里、望美、千尋、緑と桜、菫、各親御さんをディズニーランドへ連れて行った。費用は全部ソニックが払うということで了承してくれた。一つだけ、菜月の写真を沢山撮って欲しいとだけ話した。因みにカメラはソニックが撮るという。写りたくないからだ。ソニックはあまり乗り物に乗らず、誰かと頻繁に携帯電話で話をしていた。実はこのディズニーランドにWatts Towersの数名を忍び込ませ、ミッキーやドナルド等の着ぐるみを着て待機するよう示し合わせていた。乗り物から降り、疲れ果てた一同だったが、そのミッキーやドナルド等と写真を撮って喜んだ。皆車中で疲れて眠ったまま帰って行った。


 年明けの1月中旬、菜月はトーランスにある日本人学校へ通い、茜のクラスに転校生として迎えられた。それからというもの菜月は学校から帰ると


「ただいまー。」


とカバンを部屋に置くと直ぐに


「行ってきまーす。」


と緑に告げ、4人の友達と毎日遊びに行く日々を送っていた。菜月の穏やかで楽しい日常が順風満帆に過ぎて行った。


菜月の学校生活が始まり、ソニックも活動予定が随分早まった。最低アルバム2枚出そうと意気込み、予定通りライブ再開は8月中旬、その時期にアルバム1枚、更に11月にもう1枚出す計画を立てた。

 

 それから数日が経ち、ソニックは菜月に服を買って上げようと思い、買い物に誘った。だが菜月は


「いらない。」


と話す。今の菜月の部屋は前は茜の部屋であった。まだ幼かった頃の茜の服が何着か閉まってあり、それが着たいと菜月は話す。茜は


「いいけど。でもそれお古だよ?」


と菜月に話すが


「これ、可愛いから着たい。」


と話す。そして、桜や菫も昔着ていた服を菜月に与えると、菜月の瞳がキラキラ輝いた。次々に試着し、鏡を見る菜月がどんどん光って見えた。一人っ子だった菜月にとって「お姉ちゃんのお下がり」は憧れだったようだ。ソニックは服を買うのを残念がるが、それが菜っちゃんなんだろうと受け入れた。だが、いずれ菜月はその服を着れなくなるだろう。これから成長するのだからと。菜月が4人の姉達のお下がりを着るのは中学生まで続いた。

 

 菜月の朝は早起きである。5時には起きており、菫に習ったヘアメイクに結構な時間をかけていた。ソニックも5時に起き、レイクウッドのWatts Towersがいるアナログ・キングダムまでロードワークをし、トレーニングをした後に再び走って帰宅。7時くらいになると、菜月のヘアスタイルも完成しており、一緒に朝ご飯を食べるというルーティーンだ。

 

 こうして迎えた1999年8月15日。ソニックは再びライブに返り咲く。場所はロス・アンゼルス・ミュージック・センター。同日に8枚目のアルバムを出す。今回の「Sonic Los Angeles」はメイン。大トリである。会場は超満員。野外ではないが広く、「Sonic」が出しやすい会場。後部の席には、菜月や若草家の一同。そして、窓香達菜月の友達家族を招待していた。全員「Sonic Los Angeles」のライブに来るのは初めてである。


 前座が終わり、ソニックの番が来る。今日はドラムからスタートし、途中でベース、ギターと変わる予定である。いつものようにソニックは客席から列を成して入って来た。いつものスカジャンにチタン製の手甲、白い鉢金、鉄の入ったアーミーシューズと、腰に下げた2本のドラムスティックが重なる音が場内に響き渡る。


《ゴッ!ガシャッ!ゴッ!ガシャッ!ゴッ!ガシャッ!ゴッ!ガシャッ!ゴッ!ガシャッ!》


入場しながらソニックは一人思いふけっていた


(おっちゃんよお・・・菜っちゃんは俺が必ず守るよ。今の俺に出来る事、あんたらに借りたもんチャラになるとは思ってねーけど、ぜってーいい女に育てるよ。まだそんくらいしか出来ねー馬鹿だからよ。今は許してくれよ・・・あんたらの分まで2人共精一杯生きてやっからよ。)


最後尾にいた菜月が


「兄ちゃーん!」


と声援を送ると、両拳を上げて答えた。どこかすっきりした表情で入場してくる。そして、菜月達にとって初めての「Sonic」。ステージに上がったソニックは、左腰に下げてある長いドラムスティック2本をスッと抜き、勢い良くぐるんと回す。


《ドン!カッ!》


早速「Volt」をドラムでお見舞いし、いつも通りオーディエンス達は暴れ狂った。


「お帰り!ソニック!」

「待ってたぞ!ソニック!」

「早く「Sonic」を食らわせてくれ!」


次々と「Jet」「Volt」「Burst」を炸裂させる。菜月は「わあ!」と喜んでいたようだ。エディの照明を使った演出で光を帯びたまばゆい鳥たちが夜空へ解き放たれる。UCLAで勉強したWatts Towersの照明組がアレンジを加えていた。


 そんな解放感の中進んで行ったライブが続く中、ソニックは新たな力を見せる。それはライブ終盤の出来事だった。


《ガッ!キュッ!グイーン!》


観客全員が一瞬引き寄せられ、抱え込まれるという不思議な現象だった。ソニックは、


(よっしゃ!上手くいった!)


と手応えを感じていた。こうして復活ライブが終わる。ステージから降りるソニックは


「また今日から毎日ビシバシやらしてもらうからよ。覚悟しとけよオメ-ら!明日はリバーサイドだ!水着着て来いよ!」


と言って去って行った。


ライブ終了後、菜月達のいる後部座席にソニックはこっそり回ってきた。菜月はもじもじしながら菫の影に隠れる。


「・・・チビには衝撃強すぎたかなあ?」


とソニックが呟くが、葵がソニックを叱る。


「馬鹿!あんたってほんと乙女心がわからないのよね!」


菫がにっこりしながらソニックに告げる。


「兄ちゃんカッコいいってよ。」


菜月は恥ずかしそうに再び菫の影に隠れてソニックを見つめていた。


「やだ!言わないでよ!」


ソニックは菜月に前にしゃがみ込み、頭を撫でながら話しかける。


「兄ちゃんこれから菜っちゃんの為に頑張るからよ。側で応援してくれな。兄ちゃん何倍も頑張れるからよ。」


菜月はかつてソニックが桜に唇を奪われ、これまでの悲しみが木っ端微塵にされたように、菜月は輝く兄の「Sonic」を食らい、両親を失った悲しみが木っ端微塵にされ、完全にソニックの虜になってしまった。この日から菜月は死んだ両親の事を一切話さなくなり、兄となったソニックに憧れ追いかけるように生きていく事になる。


 このブランクを経て、ソニックは新たな「Sonic」を習得した。オーディエンス達は話す。まるで全てを抱き寄せ、引き付ける「Magnet」のようだと。


 11月にはステイブルズ・センター(クリプト・ドットコム・アリーナ)でライブを行った。そのライブ直後、再びグラミー賞の話が舞い込んでくる。ソニックは


(去年バックれたからなあ。今回はちゃんと貰おう。そして去年の事も謝ろう。)


と決めていた。その夜、家で史郎に呼ばれた。


「よお、ソニック。お前もう21歳になったんだろ?酒付き合えよ。うちには女の子しかいねーからな。息子と酒飲みたかったんだ。」


と言いソニックを地下室に連れてった。史郎はワインコレクターだった。緑がつまみを出しにやってくる。


「いつもここで1人で飲んでるから付き合ってやってね。」


と話し出て行った。この日から親子でサシで酒ん飲む習慣がついた。話しは音楽のこと、仲間のこと、桜や菜月のこと等話してる内に朝になっていった。ソニックは


「いいなあ、こういうの。やっと人間の生活に戻れた気がする。」


と満足気だった。この先、週末の日曜は史郎とサシで飲むのが楽しみとなっていった。


11月のステイブルズ・センター(クリプト・ドットコム・アリーナ)でのライブ当日、9枚目のアルバムを出す。この時ソニックはグラミー賞にノミネートされ、Watts Towersが世に出て行くことになる。


 


ソニックが得た「Sonic」の末尾には「T」が付きます。

菜月はソニックとはまた別の形で力を得ます。

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