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第23話 託された命

第二の主人公、菜月編の中編です

 その頃ソニックは、どうやったら日本に短時間で行き来し、菜月をアメリカに連れて来れるか手間取っていた。パスポートの再発行は時間がかかる。船での移動は制限時間上厳しい。飛行機で行くしかないのだが、アメリカから出てはいけないと制約が多かった。ニールとルディが動いてくれてはいるが、落ち着かなくてしょうがなかった。ここで動いたのが当時のカリフォルニア州知事。ソニック達に提案する。


「こちらの小型飛行機を貸与するよ。その娘は今、ヨコハマの病院にいるのだろう?それなら、横須賀米軍基地に飛ぶっていうのはどうだ?多少の手続きは軽減されると思うが。その代わり条件が何点かある。まず、各機関と一緒に行って彼らから離れない事。それと、必ず240時間以内に日本領土から出る事。最後に、君が日本に行く間に他の者達の力を借りて、彼女の諸手続きを済ませる事。君に「Sonic Los Angeles」の名前を与えた以上、その点は踏まえるように。」


との事。飛行機は早くて2週間後に出せると話がついた。その事を史郎と菜月に電話で話す。早速史郎が横須賀米軍基地へ赴く。アーモン大佐という人物がカリフォルニア州知事とアメリカ軍から依頼を受けていた。彼はソニックが横須賀米軍基地でライブを行っていた時代に知り合っていたと話す。

 

 もうすぐ2週間が過ぎようとしている。今から12時間後にソニックを乗せた小型飛行機が横須賀米軍基地に到着する予定だ。菜月を引き取る前に会議をする事になる。ソニックは日本で前科者であるからだ。参列者はアメリカ側からはソニック、鉄治、史郎、桜、茜、葵、インターポールのニール、国際弁護士のルディ、司法書士の「ナッシュ」ことナッシュ・アームストロング、税理士の「エバ」ことエステバン・ゼーマン、会計士のマイケル・ロメオ、そしてFBIから3名、CIAから3名、ロス・アンゼルス市から1名、カリフォルニア州から1名


 3日前に来日したWatts Towersからはソニックの盟友ビッグジョー、アレックス、ブライ、ジャーマン、ジャッキー、エディ、ドクター、ギャリー、ランボー、ムスタング、経理担当のイミダス、ダラス組のマッハ、ジャンゴ。


 日本側からは「Burning Gear」社長の塚原、菜月の面倒を見ていた先輩、小芝麻紀、「Try Flyers」の手嶋、古賀、木村、横須賀米軍基地のアーモン大佐、横浜南署の刑事、勅使河原、菜月の担任今森、菜月の主治医辻本、菜月を一時保護し、面倒を見ていた喫茶店のマスター田中勝、裕子夫妻、ソニックは制限時間があるため、このメンバーが事前に集まり、10日前から会議を行っていた。ニールらインターポール、FBI、CIAはソニックと同行するため当日参加で資料だけ配られていた。会議そのものは淡々と進んでいた。手続き関連や金銭的な事、相続権等、特に揉める事もなく、ソニックが着く前には全て終わっていた。あとはソニックの到着を待つのみ。


 1999年11月18日。その日、日本は秋雨前線が通る大雨の日だった。土砂降りの雨の中、横須賀米軍基地で流れていた。「All by myself」 桜と一緒に兄を待つ菜月。すると大雨が急に止み、光が差した。それと同時に、ソニック達が乗る小型飛行機が横須賀米軍基地に着陸する。飛行機から降りてくるやいなや、ソニックは基地全体に響くでかい声で菜月を連呼する。


「菜っちゃーん!菜っちゃーん!菜っちゃーん!菜っちゃーん!」

 

滑走路からジープに乗り換え、菜月と桜がいる部屋へ急ぐソニックと一団。


そして2人は約5年ぶりに再会した。


「菜っちゃん!」


「All by myself」が一瞬止まる。そして、菜月は泣きながら叫んだ。


「兄ちゃーん!」


菜月はソニックの胸の中に抱きつき、大声で泣いた。ソニックはそんな菜月をぎゅっと抱きしめた。


「兄ちゃんもう全部わかってるから、好きなだけ泣いていいよ。いっぱい泣いていいからよ。あとは兄ちゃんに任せてくれ。兄ちゃんを頼ってくれてありがとな。」


あの時の台詞と変わらない。日本にいた時のままだった。背が伸び、声がしゃがれているものの、以前より大きく見えるソニックの胸の中でおもいっきり泣いた。そしてソニックは菜月の前でしゃがみ込み、頭を撫でながらきちんと眼を合わせ、自信たっぷりの笑顔で菜月に話した。


「あとは全部兄ちゃんに任せろ!」


 日本にいた頃は元気が無く、死にたいとまで言っていたソニック。そんな初恋のお兄ちゃんが5年の月日を経て逞しい男に成長した。自信に満ちあふれ、堂々と話すソニックを目の当たりにし、菜月は安心した。


「菜っちゃん、兄ちゃん今はソニック・ロス・アンゼルスって名前なんだ。スペイン語で衝撃の天使って意味なんだけどよ。もし苛められたら、ソニックの妹だって言えば苛められねーからよ。兄ちゃんにいっぱい甘えて、いっぱい頼ってくれよ。その方が兄ちゃん頑張れるからさ、これからよろしくな。」


そのまま会議に合流するソニックと、抱きかかえられる菜月。参列者に話をする。


「菜っちゃんとお亡くなりになられた浪川夫妻は俺の命の恩人なんです。本当は3人一緒に恩返ししたかったのですが、だからこそ菜っちゃんには3人分恩返しするつもりでいます。俺達が菜っちゃんを立派な女性に育てたいと思います。菜っちゃんが大人になるまで俺が責任持って支えます。どうかお願いします。菜っちゃんを俺に預けて下さい。」


ソニックは胸を張り、堂々と約束した。日本にいた時に知っている人々にとって、今のソニックは明らかに変わっていた。身体も声も大きくなり一人前の男に成長したのだ。会議の中で2人の遺骨はまだ埋められていない事を知るソニックは、2人の墓を購入。手入れを「Try Flyers」や一同に託した。


菜月が一同と飛行機に乗る。ソニックは、


「バイバイじゃなくてまたね。って言いなよ。今度は綺麗なレディになってまた会おうね。」


こうして菜月はソニックと共に日本を去った。1999年11月18日の夕方のことであった。


2時間後、FBI からソニックに


「おい、日本領域内出たぞ。もう大丈夫だ。」


と、声がかかる。ソニックは改めて菜月を力強く抱き締める。


「やっとだ。菜っちゃん!よーやく自由になった!これからずっと兄ちゃんと一緒にいられるぞー!」


菜月はまだ不安を隠せない。するとビッグ・ジョーが日本語で


「俺、ビッグ・ジョーってんだ。兄ちゃんの友達だ。菜っちゃんは俺達Watts Towersが守るからよ。よろしくな。」


ニールとルディも続く。


「菜っちゃんは俺達皆で守るから大丈夫だよ。」


「皆菜っちゃんの事心配してたんだ。これから俺達も頼ってくれよ。」


知らない外国人達が日本語で話しかけてくる。菜月は不思議でしょうがなかった。ソニックが、


「兄ちゃんの友達は全員日本語喋れるよ。スゲーだろ?」


機内には史郎、桜、茜、葵もいる。桜が


「菜っちゃんは今日からあたし達の妹だからね。よろしくね。まだアメリカにもう1人お姉ちゃんいるからね。」


茜も


「あたしは菜っちゃんの学校の先生だからね。困った事があったら相談してね。」


菜月が


「兄ちゃんも死んじゃったら?」


とまだ不安がると、葵がゲラゲラ笑いながら菜月に話す。


「大丈夫だよ。菜っちゃん。兄ちゃんミサイル撃たれたって絶対死なないよ。こいつ頑丈だから。」


機内はドッと笑いが起きた。ソニックは機内で菜月を右腕で抱きしめながら、日本で馴染みの歌「Tomorrow」をLAに着くまで何度も歌った。自分の歌より、菜月が日本の何処かでで聞いたことがあるであろう歌を、優しく語りかけるように歌った。同乗していた若草のファミリーや、一部のワッツ・タワーの面々、同行していた各機関の者達は、その歌声に懐かしさを感じていた。桜が部屋で泣いている時期、ソニックはこんな感じで歌っていたなと。

 

 小型飛行機は、LAのホーソーン空港に着陸した。そこから車に乗り換えて若草家に着いた。


「菜っちゃん、着いたよ。今日からここが菜っちゃんの家だ。」


菜月は


「うわあ、大きいお家・・・」と驚く。


 アメリカのロス・アンゼルスの南に位置するトーランスという町。ここは在日日本人が多く住む町である。菜月はここに住居を構える若草家に高校卒業までソニックと共に暮らすことになる。


 家に着くと、日本へ行けなかった緑と菫が菜月を温かく出迎えた。


「菜っちゃーん!待ってたわよー!」


末妹の菫は妹が欲しかったらしく、菜月を大歓迎し可愛がった。到着すると同時に菜月を抱きしめる菫。自分の死んだ優しいお母さんの面影を持つ緑。大きなゴールデン・レトリバーのキキが菜月の所へ行く。菜月は犬が好きらしく


「わあ、可愛いワンちゃんだー。」


と喜ぶ。この日は菜月の歓迎会が行われた。菜月の好きな物がたくさん並ぶ。菜月は普段1人で食事を摂っていたので、違和感があったが楽しかった。その後、菜月は菫に風呂に誘われた。菜月も年頃の女の子であり、大好きな兄と風呂に入るのは抵抗があると思い、菫が菜月を誘った。


「菜っちゃん、お姉ちゃんとお風呂入ろー。あ、ソニックは覗かないでよー。」


 菫は菜月の髪を整え、かなり長い時間2人で風呂で話をしていた。時折菜月の明るい笑い声が聞こえた。風呂上がりの菜月は、まだ少女なのにやけに色っぽく見えた。


「やっぱお姉ちゃんに手入れしてもらうと違うよなー。菜っちゃん可愛いよ。」


これからどんどん綺麗になるんだろうなとソニックは感じた。菜月はそのまま菫の部屋で寝た。部屋から2人の声が聞こえる。菜月の明るさが戻っていった。


 ソニックがグラミー賞を辞退したのはもう一つ理由があった。ソニックが発する「Sonic」という力はまだ完成とは言いがたかった。ライブ中に放つ「Jet」「Volt」「Burst」。この3つがオーディエンス全員に届いておらず、観客達はそれぞれ1つの「Sonic」しか受けていなかったのだ。平等にやってるはずが、どれか1つしか届いていない。全員に3つの「Sonic」を浴びせられるのにはどうしたらいいのかと、ずっと悩んでいた。その答えは、このブランクの期間が鍵となった。止まっているこの時を、菜月が青信号で人生を歩み出すまで、「Sonic Los Angeles」というギャングはひたすら待っている。


ソニックは自ら全てを捨ててアメリカに来ましたが、菜月は何者かに突然全てを奪われてアメリカに来た設定となっています

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