第22話 吉報と訃報 祖国で泣く義妹の為に
この話から、もう一人の主人公に3部作になります
「おい、ソニック!俺らの曲がグラミー賞にノミネートされたぞ!」
ソニックやWatts Towersは有頂天になった。ソニックは、携帯電話で龍司に電話をする。しかし、何回かけても繋がらない。そこで、日本の塚原社長に伝えてもらおうと電話をかけた。すると、衝撃の事実を明かされる。
「浪川さんち、こないだ放火でお亡くなりになられたそうだ・・・」
ソニックは
「そんな馬鹿な!先月まで電話で話したぞ!」
と塚原社長に声を荒げる。すると、
「浪川さんが亡くなられたのは事実だ。だが、浪川さんの娘さんは生きている。幸い軽傷だが、目の前で両親を失い心を病んで、今は病院のベッドで毎日震えて泣いているらしい。彼女はこれから施設に入れられるそうだ・・・」
そして、「Try Flyers 」のメンバーにも確認を取った。龍司は死ぬ間際、菜月とテディベア、それとソニックの名刺をテディベアに挟み、菜月と一緒に2階から放り投げたそうだ。ソニックは顔を真っ青にし、愕然とする。この話を聞いたソニックは彼らに頼む。
「菜っちゃんは俺に引き取らせて下さい。お願いします。菜っちゃんにもおっちゃんおばちゃんにも、まだ何も恩返し出来ていないんです。菜っちゃんは俺が責任持ってきちんとした大人に育てます。どうかお願いします。」
と、ソニックは日本に残っている知人達に電話で伝えた。
カクテルグラスに立てた蝋燭がふっと消えた。まだカクテルを注がないまま・・・
そして、この事を鉄治と史郎、Watts Towersに泣きながら伝える
「・・・悪い、みんな・・・今回は辞退する。本当にすまねー。でも今は、菜っちゃんの方が大事なんだ!俺の命の恩人が日本で1人取り残されて泣いてんだ!黙って見過ごせねーよ・・・みんな、すまん!」
と、土下座して詫びた。すると史郎が
「その話、俺に預けろ。グラミー賞は諦める。お前ならいつでも取れるだろう。とにかく今はその娘を何とかしよう。みんな、俺からも頼む。今回は引いてくれ。」
と頼んだ。Watts Towersの面々は了承し、みんなを暗い顔にさせてしまった。その後ある人物がソニックに協力すると乗り出した。若草家の人々である。桜と史郎が話す。
「それならあたし達に任せてよ。大丈夫だよ。うちは女の子しかいない家だから安心だよ。」
緑も
「その代わり、あんたも一緒に住みなさい。菜っちゃん寂しがるから。」
取り敢えず、菜月のいる病院を塚原社長に調べてもらい。すぐさま電話をかけた。菜月は横浜市内の病院に入院していた。病院に電話をかけ、菜月に取り繋いでもらう。
「菜っちゃん!」
「・・・兄ちゃん?」
菜月は震えた声で泣きながら話す。
「兄ちゃん、兄ちゃん、あたし・・・」
泣いている菜月にソニックが優しく語りかける。
「今さっき話聞いたよ。兄ちゃんびっくりしてさ・・・菜っちゃん、無事でよかったよ。」
再び菜月が震え、泣きながら話す。
「兄ちゃん、どうしよう・・・怖いよ・・・」
ソニックが落ちついた声で優しく話す。
「話は全部聞いたよ。泣きながらでいいからさ、兄ちゃんの話聞いてくれるか?」
「菜っちゃん、兄ちゃんと一緒にアメリカで暮らさないか?全然心配ないからさ。日本人しかいない町で、兄ちゃんが世話になってる日本人の人達と暮らすんだ。学校も日本人学校あるからそこに通えばいいよ。あとは全部兄ちゃんに任せてくれ。」
「これから兄ちゃんが世話になってる若草史郎っておじさんと、桜さんってお姉ちゃんに菜っちゃんの事頼んであるからさ。今からその2人が菜っちゃんの所に行くから。兄ちゃんが行くまで待っててくれるか?」
唐突の事で菜月はまだよくわかっていない。泣きながら話す。
「・・・あたし、英語喋れない・・・兄ちゃん、日本で暮らせないの?」
ソニックはそれでも諦めない。
「ごめん。兄ちゃん昔悪さしちゃったから日本には長くいられねーんだ。でもそん時、菜っちゃんが兄ちゃんを助けてくれただろ?だから今度は兄ちゃんが菜っちゃんを助ける番だ。本当は3人一緒に恩返しがしたかったんだけど、菜っちゃんに3人分恩返しがしてーんだ。どうしても菜っちゃんの事守りたいんだ。兄ちゃんの事信じてくれねーかな?菜っちゃんの為に何でもするからさ。今から毎日菜っちゃんに電話かけるからさ。兄ちゃん必ず菜っちゃんの事迎えに行くよ。それまでおじさんとお姉ちゃんと待っててくれるか?」
菜月は無言のままだった。すると、側にいた桜が代わる。若草家の一同が順番に菜月に話をする。
「菜っちゃん。はじめまして。桜姉ちゃんって呼んでね。これからあたしが菜っちゃんの所に行くから待っててね。」
葵が
「菜っちゃん。兄ちゃんから聞いてるよ。菜っちゃんって兄ちゃんの事助けた娘でしょ?優しい女の子なんだね。心配しなくていいよ。あたし達が菜っちゃんの事守るから。」
茜が
「菜っちゃん。兄ちゃんとあたし達に任せといて。全部やるから大丈夫だよ。あたし達と一緒に暮らそうよ。」
菫が
「菜っちゃん。アメリカは楽しいよ。早く一緒に遊ぼう。お姉ちゃん達待ってるからね。」
温かい言葉が次々と飛び出す。菜月にとっては初めての事だった。泣きながら菜月の気持ちが揺らぐ。
「・・・本当にいいの?」
桜が
「もちろんよ。これからそっちに行くから一緒に考えようね。兄ちゃんも後から行くから。」
ほっとした菜月は一回電話を切った。
その2日後、桜と史郎は菜月の身柄を保護するため、一足先に日本へ向かった。菜月が入院する病院へ2人で向かう。病室からは菜月の
「キャー!!!」
と恐怖で泣き叫ぶ声が鳴り響く。相当参っていたようだ。そこには龍司のバンド「Try Flyers」のベーシストで龍司の親友、古賀が菜月を宥めていた。古賀が史郎の顔を見て
「あれ?あんたどっかでお会いしましたっけ。」
と質問する。史郎が名刺を渡すと、古賀が驚く。
「あー!思い出した。あんた若草のおっさんじゃないっすか!お久しぶりです!」
と言い出す。どうやら「Try Flyers」と過去に関わりがあったらしい。史郎が尋ねる。
「もしかしてこの娘って?」
「龍司の娘です。」
史郎は驚く。
「え?あいつの娘さん?ソニックの言う「おっちゃん」って龍司のことだったのかあ・・」
と驚く。史郎と「Try Flyers」は10年程前、メジャーデビューを巡り揉めた仲であり、特に反発していたのが龍司であった。龍司達は
「自分達の好きに楽しくやりてーから。」
とメジャーデビューを辞退したという。史郎はその夜、菜月を桜に預けて他のメンバー、手嶋と木村を呼んで飲みに行くことになった。龍司のことについて皆に聞き、ソニックのアメリカでの話を伝える。史郎が龍司の事を聞き、
「・・・そうか。あの一番生意気だったあいつが・・・ソニックの曲、いい曲なんだがどっかで聴いた事ある曲だと思ったんだよなあ。まさかこんな所で繋がってたとは・・・」
手嶋と木村が
「あいつ、いや、ソニックはアメリカで大丈夫なんすか?俺らも曲聴いてるんですけど。」
「ソニックはド真面目だからなあ。今回の件であいつの事も心配してんすよ。」
史郎が話す。
「あいつは昔とは違うよ。色々問題も起こしたけど、全部他人を守る為にやった事だから。うちの娘もあいつに助けられたんだ。それに今のソニックは1人じゃないよ。Watts Towersっていう最高の仲間が付いてるんだ。俺や鉄治もいるし、あいつは問題無い。菜月ちゃんを引き取るって、自分から守るってはっきり言いきったんだ。それに俺はソニックを世界一のミュージシャンに育てる責任もある。だから俺達全員の問題なんだ。今回の事はソニックや俺だけじゃどうにもならない。君達も協力してくれないか?」
史郎は3人に頭を下げた。「Try Flyers」から見たら、「面倒くさい奴」がここまで頭を下げた事に驚く。あの「奇才」が俺らに頭下げるなんて有り得ねーと思っていた。古賀が代表して、
「菜っちゃん次第ですね。あの娘が行くって言えば協力します。でも行かないって言ったら施設しかないですね。うちらも所帯持って引き取る余裕ないんで・・・すみません。菜っちゃんの、龍司と千春ちゃんのご両親は、結婚した後2人を勘当しちゃって話になんないんです。こっちからも連絡してるんですが、両方とも完全にシカトしやがって・・・」
重い空気が漂う。史郎は、
「今は俺の娘が菜月ちゃんの面倒を見てる。うちの娘はソニックが助けた娘なんだ。あの娘ならやってくれる。もうすぐ他の娘達も来る。うちの家内も引き取る気でいる。とにかく俺達に任せてくれないか?どちらにしても転校は避けられないんだろう?うちなら日本人しかいない町だし、そこにソニックも一緒に住まわすつもりだ。君達は菜月ちゃんの今集まれる近辺の人物と、事務的な人物を集めてもらいたい。それはお願い出来ないだろうか?」
3人は
「それなら動いてみます。それよりソニックはいつ日本に戻るんですか?」
史郎は少し難しい顔で話す。
「・・・これは極秘なんだけど、あいつは日本に240時間しか滞在出来ない。日本で前科あるだろ?アメリカでは前科ではないんだが、向こうの警察と揉めてしまって・・・だが、あいつは悪くない。うちの娘や仲間を守る為にやった事なんだ。だが決まり上アメリカの各機関と一緒に帰国って事になる。あいつが「Sonic Los Angeles」って名前変えた時の条件なんだ。心配しなくても、あいつの側には俺も娘達もWatts Towersもいる。日本にいた時よりずっと強くなってる筈だ。だから引き取るって言ったんだ。あいつの気持ちも理解してほしい。菜月ちゃんはあいつだけじゃなく、俺達全員で必ず守るからさ。」
史郎の事はわかったが、暴れん坊のソニックに頼んで大丈夫なのか?と3人は思いつつ、後日から動き出した。
その頃桜は、菜月の枕元に置いてある、菜月と一緒に放り出されたテディベアを修復しながら、2人でソニックの話をしていた。
「ソニック、あ、兄ちゃんね、いつも菜っちゃんの事話してたのよ。とっても優しいテディベアの女の子の話。兄ちゃんはね、菜っちゃんに助けられた。菜っちゃんがいなかったら生きて来れなかったって話してたよ。お姉ちゃんもね、兄ちゃんに助けてもらったの。そんな兄ちゃんが絶対菜っちゃんの事守りたいって。兄ちゃんにとって大事な女の子だって。あたしもそう思うの。菜っちゃんがいなかったら兄ちゃんも成功しなかったと思うわ。これから兄ちゃんとあたし達と一緒に暮らさない?兄ちゃんずっと側にいてくれるよ。」
菜月は元気が湧かない。
「・・・あたし、怖い・・・」
涙を流す菜月を桜がそっと抱き締める。
「菜っちゃん。いっぱい泣いていいよ。誰にも言わないから。」
この言葉に菜月はハッとした。
(・・・兄ちゃんと同じこと言ってる。)
元通り綺麗になったテディベアを脇に抱え、シクシク泣きながら桜に抱きついた。菜月は桜を信用するようになった。
翌日。茜と葵が来日し、菜月を訪ねる。茜は菜月の転校手続き、葵は今現在の菜月の病状とこれまでかかった疾患を聞き取りに来た。
「あなたが菜っちゃんねー。兄ちゃんから聞いてるよ。あたしの学校おいでよ。日本人しかいないから大丈夫だよ。菜っちゃんが小学校卒業するまで先生って呼んでね。」
茜が明るく話しかける。葵も続く。
「兄ちゃん言ってたよー。菜っちゃん大きくなったら絶対美人になるって。あたしもそう思うなあ。もし具合悪くなったらあたしのとこおいでよ。あたしナースだから何でも相談してね。」
2人の優しさに触れ、菜月は決意する。
「あの・・・兄ちゃんと本当に一緒に暮らしていいの?」
3人は口を揃えて
「もちろんよ。これからよろしくね。菜っちゃん。兄ちゃんももうすぐ来るからね。」
菜月はまだドキドキしていたが、少し安心した。早く初恋のお兄ちゃんに会いたいと待ちわびる日々が続いた。そしてその準備が着々と進んでいた。
前作の主人公は男2人でしたが、今回は男女にしてみました




