第16話 カメラと銃口
この話で「ワッツ暴動」を経験した人物が更に1人ソニックに協力します。
話が変わる。嬉しいことではなく嫌なこと。それは、ソニックが最も大嫌いなこと
「カメラを向けられること」
である。ソニックは少年時代に罪を犯し、その時向けられたメディアのカメラに激しい憎悪を覚えていた。新聞や雑誌にあることないこと好き放題書かれて、少年時代のソニックは死にたいと思う程傷ついていた。何よりソニックは、この顔を世間に知られたくないという事が理由の1つでこのアメリカに来たのだから。ソニックにとって
「カメラマン=スナイパー」
と同じである。むしろカメラマンの方がある意味残酷だと考えている。スナイパーの弾丸は一撃で仕留めるが、カメラマンの写真はそれ1枚でいくらでも傷つけられる
「末代まで永遠に残る傷痕」
を作るようなものだ。ソニックは毎日腹が立っていた。カメラのシャッター音はソニック達Watts Towersが何処かを歩く度、街中で立っているだけでもある者は眼前まで押し寄せ、ある者は物陰に隠れて写真を撮る。ソニックはエデンのあるダウンタウン近郊やリトルトーキョー、サンタモニカの辺りでそういう輩と日々格闘していた。遠方のカメラマンをファルコンが投げたブーメランで頭を吹っ飛ばし、近距離に近づくカメラマンをJJがメリケンサックで前歯を折る。それでもしつこいカメラマンはキッドやブルがボコボコにし、アルがナイフで脅す。ビッグ・ジョーやブライが大きな身体で放り投げる。最終的にソニックが2本の警棒を使い、目の前の景色を斬り裂き、上空から落雷を打ち落とし、カメラマンの足下に高熱を浴びせた。
この時期のソニックはとにかくカメラマン達との格闘で荒れており、いつも険しい顔で周囲を睨み付け、街中を見渡していた。シャッター音と拳銃のトリガー音が離れてても聞き取れるくらい神経が尖っていた。いまやダウンタウンの各ストリートやビル群は、「Sonic」の爪痕が至る所に残っている。色々な意味でこれだけ有名になれば無理もないのだが、ソニックは依然として
「おい!俺にカメラ向けるって-のは、銃口向けるのと同じなんだよ!」
「カメラ持ってる奴とドラックやってる奴は問答無用でぶっ殺す!」
「その画をお前らのオナニーのおかずにされてたまっかよ!」
連日ギャラリーやメディアや観光客と揉めていた。シャッターの「カシャッ」と鳴る音は、拳銃の撃鉄を引いてトリガーに指をかける音より殺意を覚える。ソニックは警棒でカメラマン達の足下のアスファルトを斬り裂き追い払う。それでも
「あいつの顔が見たい。」
「新聞や雑誌に載せたい。」
「記念写真を撮りたい。」
とワッツ・タワーにまで押しかけてきた。特にワッツ・タワーの目の前にある103丁目ワッツ・タワー駅に民衆達がごった返していた。そういう連中に警棒を振るい、「Sonic」を放ちながらこう言って脅す。
「おい!今すぐこの国から消えるか、今すぐこの世から消えるか好きな方選べ!」
「俺達が欲しいのはフラッシュの一瞬の光じゃねー!このドラム缶のような暖かい永遠の光なんだよ!」
全くわかり合えない両者。通行人にまで一斉に向けられ、その度カメラを破壊し、そんな連中の両手を負傷させる毎日。どんなに脅してもうじゃうじゃ沸いてくる人々にワッツ・タワーの住民まで迷惑していた。103丁目ワッツ・タワー駅の周りは「Sonic」でめちゃくちゃに破壊されていた。
「俺達は動物園の動物じゃねーんだよ!」
彼らはもう限界だった。ソニック以外にもカメラを向けられるのが嫌な者が大勢いた。彼らもソニックと同じくらい暗い過去を背負ってきたのだ。そしてワッツ・タワーに押しかける連中にソニックが言い放つ。
「俺らとテメーらとじゃ、有刺鉄線の境で睨み合っている暗がりの獣とハンターだ!カメラのシャッターっていう引き金弾いたその瞬間にテメーらの両腕か両眼、俺らの牙で食いちぎるぞ!」
その後しばらくして、ソニックとWatts Towersは、この町を出ていく事になった。ここにいては迷惑と考えてのことだった。まとまった金が入り、土地を買い、拠点を移す事にしたのだ。Watts Towersの中にはビッグ・ジョーと数名が建設作業のバイトに入り、ボスのように建築の資格を持っている者もおり、買った土地に皆で5階建てマンションでも建てて自分達の城にしようと盛り上がっていた。そんな中、仲間の1人、GTがここに残ると言い出した。GTは
「お前みたいに俺もお前とは別の夢を見つけたい。だからここで新しく仲間を作ってそれを目指す。みんなすまないが、これは俺が自分で考えたことだ。」
と話す。ソニックは
「わかった。それでも俺達はダチだからな!また逢おうぜ!」
と明るく返した。そして友情の印に今着ていたスカジャンを脱ぎ、GTにプレゼントした。仲間が抜けるのはつらいが、確かにGTの眼はギラギラ輝いていた。あいつに別の光が見えたんだろうと袂を別ったのだ。そのGTとは何年か後、また別の形で再会する事になる。
その後もライブは毎日続いた。そんな1995年10月。ソニック達の記事が新聞にデカデカと載っていた。
『麻薬密売人一斉検挙。場所はダウンタウン外れにあるライブハウス・エデン』
というこの記事。だが、ソニック達Watts Towersがドラッグをやったわけではない。ニールと示し合わせていたことが今日、結果に結び付いたのだ。ニールは現地の麻薬Gメン達とエデンで毎日張っていた。ソニックの曲を聴く度にだんだんとドラッグを止めていくエデンのオーディエンス達。何故なら彼らは、ドラッグよりソニックのチケット欲しさに金をチケット代につぎ込んでいた。業を煮やした密売人達がエデンを訪れ、ニール達に見つかり検挙されたという事だ。その密売人の名は
【リッキー・ブラックハウス】
通称「死神のリック」「暗黒の闇商人」
と呼ばれるかなりやばいマフィアのボスで、国際指名手配を食らっていたらしい。これにより、エデンからジャンキーがいなくなった。この逮捕により、エデンのオーディエンス達が口々にソニックに謝りに来た。
「ソニック。今まで悪かった。罪償ってくるよ。許してくれ。」
ソニックは気にしていなかったが、ドラッグは違法である。彼らは皆警察に出頭し、治療しながら服役していった。後年彼らはソニックを影で支えていく事になる。
この一件の後、マスターが話があるとソニックとWatts Towersを呼び止めた。紹介が遅れたが、彼の名前はティム・タガート。1965年、ニールやルディ同様ワッツ暴動の参加者だと話す。
その昔、テキサス州アマリロからLA に流れついていた。彼もワッツ・タワーの住民だった。ニールやルディの事も知っていた。ティムはそのままLAに定住し、1970年代にこのライブハウス「エデン」を作る。だが、死神のリックに今まで目を付けられ、客をジャンキーに変えられてしまったと話す。ティムは、エデンを作った後コツコツとステージの裏にレコーディングスタジオを作っていた。ティムはエデンのステージ裏奥の部屋へ鉄治や史郎も含めて全員連れて行った。そこに大きなレコーディングスタジオがあった。機材は全て70年代の物で古く型遅れだったが、ソニックはいたく気に入ってしまった。ティムはそのスタジオをソニックとWatts Towersに譲ると言い出したのだ。ティムは長年このスタジオを使うミュージシャンを待っていたのだと言う。埃まみれの部屋と機材を皆で綺麗に掃除しようと全員動いた。ここにもまた、ソニックの可能性を信じる人物が生まれたのだった
仲間の1人だったGTが抜けますが、彼は今後も別の形で再登場する予定です。




