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第15話 ならず者達のDaddy

彼らの音楽の師匠となる若草史郎が合流します。

 今日もライブが続いている。新人のアーティスト、Sonic Los AngelesとWatts Towersがジャンキー相手にエデンで暴れている。あの娘が部屋を出てからもう2ヶ月が経っていた。史郎も合流し、皆のレベルもテンションも上がっている。ソニックがここ2ヶ月間ででかい出来事が2つある。嬉しいことと嫌なこと。それぞれ1つずつ。


 嬉しいことは史郎が合流してくれたことだ。史郎は桜が元気になってから、鉄治に頼んで単身日本へ飛んだ。目的は、ソニックが契約しているレコード会社「Burning Gear」の社長、塚原と面会を果たした。史郎は塚原に頭を下げて頼んだ。


「あいつを、カタメとこの国で名乗っていたSonic Los Angelesを私に預けて下さい。今まで見たこともない凄い素質と才能を持ってるんです。あいつを世界一のミュージシャンに育てたいんです。あいつの音楽なら絶対世界を変えられます。もうLAではあいつを知らない奴はいません。どうかお願いします。」


と土下座して頼んでいたそうだ。塚原は史郎のことは噂でしか聞いていない。関係者の間では


「あの頑固でプライドの塊のような奇才がここまでするなんて例外だぞ。これはあいつに何かあるんじゃないか?」


と騒がせていた。実際に史郎はソニックの音源を塚原に渡した。すると


「これがあの時の少年の曲か・・・全然違う。パワーアップしてる・・・」


と話す。塚原は


「わかりました。あなたに預けます。しかし条件が1つあります。うちのレコード会社所属ということでお願いします。近々私もLAへ言って実際に確かめてみます。それまでの間、あいつを、今は「Sonic Los Angeles」でしたっけ?あいつをもっと鍛えてやって下さい。こちらからもよろしくお願いします。」


と約束を交わし、ソニック達Watts Towersに合流した。鉄治には既に塚原から連絡が来ていた。


「あいつのことをよろしく頼む。」


 まずボトムの重要性。まずはベース。


「ベースは曲の胴体、心臓、血液のようなものだ。何日聞いても飽きないラインで弾くんだ。例えばドリフの髭ダンス知ってるか?ずっと見てても飽きないだろ?あれってブラックミュージックのベースだけなんだよ。あのイメージで弾いてみるんだ。初めてお前がウチの前で弾いていたアラベスクと同じだ。出来る者からソニックのベースを飽きないように弾いてみるんだ。」


と、そのイメージで弾くと、ワッツ・タワーズの住人達が勝手に踊り出した。


「たったこれだけでこの手応えかよ!」


とソニックとWatts Towersは驚いた。


 そして次はドラムだ。


「ベースのラインが胴体、心臓、血液なら、ドラムは脳と手足だ。横たわってたって動かないだろ?つま先と踵、ふくらはぎ、両腕と背筋を使って力強くテンポ良くベースに合わせるんだ。歩くか突っ走るイメージでやるんだ。ドラムが音楽を動かす頭脳になるんだ。出来るだけ手数を多くしてみろ。それだけで突っ走っている感覚になるだろう?そこに今度はスローダウンだ。リズムを狂わさずに小さく細かく叩くんだ。小さく叩いても力強さを残して正確に叩くんだ。インターバルのつもりでやってみろ。きちんとベースに合わせるんだぞ。」


このドラムとベースが組み合わさって、強力なボトムが完成した。曲は全くいじっていない。この2つの操り方を変えることにより、ソニックの曲は重厚さを増した。より強固な土台が生まれたのだ。このドラムをやる中で、ソニックはただ1人思っていたことがある。それは


「もっとビリビリズドンと鳴りそうなドラムが欲しい。叩き方でどうにかなるものだろうか?」


ギターやベースのように電気を通さないドラム。ソニックは史郎に何か相談をしていた。史郎はここで、自身のスタジオからある物を数名がかりで運んでくる。それは和太鼓だった。ソニックは和太鼓を叩くのは初めてだ。今までどっかに飾られている物しか見たことがない。この大胆な発想にソニックは驚いた。和太鼓は叩く箇所によって音の響きが違う。真ん中を叩けば、乾いた「ドン!」という音が鳴り、端を叩けば「カララ!」という全く別の音が鳴る。この「ドン!カララ!」という音は、「Sonic」の操る雷撃の音にぴったり合致した。更にソニックは、ドラムに古タイヤを入れたかった。「ボン!」「ボフ!」という音を組み合わせたかった。もっとスローダウン時に厚みを加えたかった。既存のドラムセットの右側に和太鼓を置き、背後に古タイヤを縦に並べた。この配置により今後ソニックは、スタンディングでドラムを叩く事になる。


 そしてギター。ソニックとWatts Towers達は、ギターを2人体制で弾いていた。弾き方や技術に問題ない。短期間でよくここまでハイレベルに弾けたなと驚く程だった。足りないのは「アドリブ」と「アクション」だった。


「アドリブはスパイスのようなものだ。やり過ぎてもいけない。お前らが売っているたこ焼きだって、ソースドバドバかけたら食ってられないだろ?そのたこ焼きに鰹節や青海苔、マヨネーズをちょっと加えるイメージでやってみるんだ。別の調味料も使っていいが、あくまでちょっとずつだぞ。いっぺんにいろんなモンかけるなよ。曲が崩壊するからな。」


「アクションはライブのファッションだ。ただ突っ立って弾いてるだけじゃオーディエンスはヴォーカルばっか見る退屈なバンドに見られる。2人のギターと1人のベースは、ヴォーカルの前にとことん出るように、むしろ、オーディエンスと一緒に暴れるくらいがいいんだ。お前達は技術もセンスもある。弾きながら前に出て思い切り暴れてみろ。ダンスが上手い者もいるんだから、ギター弾きながら踊ってみるのもありだぞ。楽しんで弾いてみろ。」


 史郎の指導やアドバイスは的確で想像以上だ。おかげでここワッツ・タワーはまるで毎日ダンスホールのような場所になっていた。更に史郎のおかげでWatts Towers全員がギター、ベース、ドラムのどれかは高水準で弾けるようになっていた。


最後にヴォーカルのことだが、ソニックとWatts Towers達は史郎にある提案をしていた。


「強力なヴォーカル1人に頼って歌うのはもう古い。周囲を巻き込みたいので、周りのスタッフも加えてあらゆる方向から歌いたい。メインヴォーカルはもちろんソニックが適任だが、流石に毎日となるとソニックが持たない。だからヴォーカルでもソニックを支えたい。」


と言うのだ。実際に全員で挑んだエデンでの初ライブやそれ以降もこのやり方で成功している。これをやればオーディエンスも一緒に歌う。ライブが終わる頃には1つの集合体となって終われる。そんな感覚が彼らには感じ取られていた。史郎はそこについても真摯に受け止めた。


「確かに普通ではやらないけど、今のお前達なら十分に可能だ。まず、ソニック以外のシンガーを選ぶ。それと、これから全員声量を上げる訓練をやろう。いいか、ヴォーカルに関して声量の点ではソニックが最大のライバルだと思ってやるんだ。そうすればもしかしたらお前達の中から「Sonic」を発動させる者が現れるかもしれない。もしそうなったらお前達Watts Towersは世界を獲れると思わないか?」


全員がわくわくしながら史郎の指導を実践した。更に史郎はマネジメントや商業的なことも教える。売るのはチケットや曲だけではない。どの曲か、たった1曲だけでいい。ラジオにかけられる曲を全米にセールスしてくること、そして、今のソニックの出で立ち。白い鉢巻きにスカジャン、手甲、カーゴパンツにアーミーシューズ。これを皆で真似てみよう。一発でWatts Towersの人間だとわかるように。史郎はソニックの考えを理解していた。


「主役は俺じゃねー。俺とこいつら全員だ。」


と話していた。史郎はそれに乗った。史郎は普段スーツだが、史郎もまたスカジャンを愛用した。また史郎は、スカジャンの素材は余ったパラシュートを使用していると伝えた。あとはそれを衣服に作り直し、自分達がお気に入りの刺繍を施す。こうして史郎や鉄治も含めた57人全員分のスカジャンを作ることになった。


「数が合わないって?その分はニールとルディに上げるつもりだ。あいつらも大事な仲間だからな。」


 Watts Towersは一斉に動き出した。営業組は音源を持って全米を駆け回った。衣装組はソニックを素体にスカジャンやカーゴパンツ、手甲やアーミーシューズ、鉢巻きを量産した。マネジメント組はエデン以外のホールを回った。機械組は毎日ボリュームマックスで傷んでいる機材のメンテナンスに勤しんだ。楽器を弾く者は毎日練習した。ワッツ・タワーの真下はもうWatts Towersの路上ライブのメッカと化していた。また史郎はエンジニアも数名育てた。これから君達はCDを売ることになる。このまま行けばレコーディングに入るだろう。ブースで機材を操れる者が数名欲しいと考えていた。ソニック、鉄治、そしてWatts Towersの中で、休む者等1人もいなくなっていた。毎日が充実し、全員の眼が輝いていた。メンバー達が話す。


「働くってこんなに楽しいことだったんだな。毎日面白すぎてたまんねーよ!」

 

こうして史郎は次第に彼らから「親父」「ダディ」「史郎さん」と呼ばれ、慕われはじめ、愛されるようになった。彼らのライブの評価は日に日に上がっていった。


若草史郎はプロデューサーではなく、音楽監督として「Sonic Los Angeles」と関わっていきます。

あくまで曲を書いているのはソニックです。

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