第14話 RELIVE③ 本当の戦いの幕開け
ソニックが遂に世界の扉を開く話です。
あの町から1人抜け出したソニック。壁から屋根へ、屋根から屋根へと走り、まるで忍者か強盗のような感じで抜け出していった。次第に車通りの多い大通りに出たところで走るのを止め、歩道を歩き出す。すると1人の男が電柱にもたれかかり、腕組みをして立っていた。ソニックは彼に声をかけられる。
「よお、ヒーロー。輪から抜け出してどこ行くんだ?」
その男はニールだった。怪我が治り退院していた。ソニックは答える。
「エデンに行く。こっからが本当の戦いだ!」
ソニックはスカジャンのポケットから、以前巻いていた包帯を鉢巻き代わりにし、気合いを入れる。ニールは路上に車を止めており、
「乗れよ。送ってってやる。エデンまででいいのか?」
と尋ねる。するとソニックが
「いや、ワッツ・タワーだ。あそこで俺の最高の仲間達が手ぐすね引いて準備して待ってる。あいつらと合流してあとは歩いて行く!」
もう夕暮れ時だった。2人はニールの車でワッツ・タワーへ向かう。カーステレオから、1970年代イギリスのハードロック「We will rock you」が夕闇に流れている
そしてワッツ・タワーに着いた。Watts Towersは既に臨戦態勢が整っていた。機械組が作ったステレオとスピーカー、アンプとピンスポットライト、発電機。衣装組が作った新たなスカジャン。営業組が売りさばいたチケット。
(皆で働いた金でずっと食いつないできた。一人一人が音響、照明、配置からバッグバンドも全てはこの日のために皆で頑張ってきた。相手はエデンのジャンキー共。相手にとって不足はねー。)
ダウンタウンの外れにあるソニック最初の戦場エデンへ向かい、列を成して歩く。
(今度は1人じゃねー。53人の最高の仲間がいる。このWatts Towersと共に、この腐った世の中を俺達の音楽でぶっ壊してやる!俺達の音楽はこの国に来てからこの7ヶ月、甘いラブソングなんか一つも作ってねー。全部戦うための曲だ。こいつをかき鳴らして、がなり倒して、エデンのジャンキー共を俺達のロックンロール・ジャンキーに変えてやるんだ。今がその時だ。勝つまで絶対立ち止まらねー。)
ソニックとこの最高のローディーWatts Towersは、皆そう思っていた。ソニックがニールに尋ねる。
「よお、あんた小銭あるか?あんたが俺らのオーディエンス第1号だ。土産にとっとけよ。今からそいつをプレミアもんに変えに行く!」
その頃、若草家では、久しぶりに家族全員揃って夕食を摂っていた。そんな中、桜が一家に聞いた。
「ねえ、あの人どんな人?」
桜だけはソニックの素顔を知らない。だがあの声は、確かに自分を助けてくれた人に間違いないことは何となくわかっていた。どうしてもお礼が言いたいと桜は話すが、葵は桜に諭す。カタメ、いや、ソニックがどんなに危ない男か最初にまざまざと見せつけられていたからだ。
「止めたほうがいいよあいつ、乱暴で汚いし危ないよ。」
すると、緑が桜に話す。
「そんな事ないよ。でもね、あの子もお友達もなんか悲しそうな顔してるの。桜ちゃんはどう思う?」
桜の口が止まった。どうしていいか直ぐに答えは出なかった。外で彼が緑の行為に声を荒げるていたこと、他の姉妹が口論になっていたことも耳に入っていた。すると、史郎が話す。
「あいつは、いや、あいつらは、本当の戦いをしに今必死で戦ってるんだ。あいつらが勝って戻ってくるまで気長に待とう。答えは時間をかけてゆっくり出せばいいさ。」
舞台は再びエデンの道中。リアカーで機材を運ぶ。作戦は綿密に練られていた。まず、尖兵がエデンに忍び込み、全ての灯りを消す。その間暗闇で機材をセットし、その間にチューニングを始める。ステージにはバンドがスタンバイし、機材のセットが終わったら照明を付け、直後に演奏を始める。今日のソニックはスタートがドラム、その後にベース、最後にギターと毎日持ち回りを繰り返す。
エデンのブレーカーをジウとトニーニョが落とした。流石名コンビと感心しつつ計画を実行に移す。オーディエンスは何も見えてない。いや、灯りがあっても見えていないだろう。そういう奴らだ。アンプとスピーカーをセットし、ゴッグ達が作った発電機をかける。音響は最初からフルボリュームの爆音。ハウリングすら味方に付ける。暗闇の中、ソニックの1mもある長いドラムスティックから繰り出すドラムロールと、ベースのジャーマンが間髪入れずにリズムを合わせる。そして、レオとスクラッチの爆音ギターがかき鳴らされた。ソニックにはわかっていた。こいつらは何にも見えていないということを。
「この音で感じろ。もっとこっちだ。両眼あんだろ?何処見てんだ?オメーら!」
まるで挑発するように吠え歌った。その瞬間、音速で切り裂くジェット気流のような突風がエデンの室内、いや、エデンの窓ガラスや狭い通路をぶち破って轟いた。ソニックとWatts Towersは、朝まで曲を止める気はない。朝まで付き合って貰う覚悟で音をかき鳴らした。1曲終わってもテンポ良く次の曲が被さるように入る。そして2つ目の「Sonic」をお見舞いした。奴らの身体に音を通じて稲妻のような電流を浴びせかけた。奴らが電撃を浴びてビクンと奮えている。照明はまだ付けない。付けるのは3つめの「Sonic」を食らわせた直後だと示し合わせていた。そして5曲目で3つ目の「Sonic」
「オメ-らの身体から何か熱いもん湧き上がってくるだろう?解放してみろ、ほら、解放してみろよ!我慢してんじゃねーよ!脱いでもいいんだぞ!ここはアメリカなんだろ?Let's Come on!The Skeleton Party!」
とライブハウス内の周囲をぐるりと囲んでいるWatts Towersが挑発する。オーディエンスの数名が
「うおー!もうダメだ!たまんねー!」
「OH!OH!Hey!Hey!」
「もっと聴かせてくれ!」
「Please!Please!」
「次々鳴らしてくれ!」
「早く灯りと音をくれ!」
「ずっと聴いていたいぜ!」
と言い出したその時、ようやく照明を付けたが、
「そのピンスポに当たっているのはステージにいる俺達じゃねー。俺達の曲聴いてるオメーらだ!」
と、客席にピンスポットライトを次々と当てまくった。興奮するオーディエンス。してやったりのソニックとWatts Towers。
「オメ-らはこれが欲しかったんだろ?たっぷりくれてやるよ!」
と照明を四方八方から客席に当てまくる。
「オメ-らが本当に欲しかったのはドラッグじゃねー、このまばゆい光だろ?」
「太陽に当たるとドラッグ抜けるのが怖いんだろ!」
「社会に出るのが怖いんだろ?」
「頭イカれて溶けちまうのが怖いんだろ!」
「太陽に当たるのが怖いんならこれでも当たってろ!たっぷりくれてやるよ!俺達の爆音付きだけどな!」
とWatts Towersの挑発は止まらない。その間にまた奴らに3つの「Sonic」をRock'n'rollに乗せて食らわせる。彼らの体内にある爆弾のような炎を燃え上がらせた。
「風が欲しけりゃ吹かしてやるから乗っかれ!」
「しびれたくなったら拳を突き上げて稲妻浴びろ!」
「燃えたくなったら身体の中に火種くれてやるから踊れ!そしてここまで飛んでこい!」
と次々と3種の「Sonic」を放ちまくった。そんなライブがPM8時から翌朝8時まで、なんと半日続いていた。その頃にはオーディエンスの方が力尽きて倒れていた。暴力は一切振るってない。呆気に取られるエデンのマスター。成功を見てニヤリと微笑む鉄治とニール。そしてマイクを掴んだソニックが言い放つ。
「おい!テメーら!今日はネタ切れだけどよ!今晩も来っからな!明日も!明後日も!土日も!今から毎日休まねーで来っからな!テメーら!俺達のライブから逃げんじゃねーぞ!チケットばら撒くから今夜も来い!」
とシャウトし、大量のチケットをばら撒きステージから降りた。去り際にソニックがポールにぼそっと話す。
「俺がこの音楽でこいつらを誘き寄せる。毎日続けてりゃ必ずヤクの売人が出てくる筈だ。そいつの尻尾が見えたら捕まえてくれ。頼むぜ!ニール!」
ニールは確信した。あいつらならこの街から、この国からドラッグとジャンキーを消し去ってくれるということを。ニールは直ぐさまインターポールの応援を呼んだ。
時間はPM8時に遡る。ダウンタウンからかなり離れている若草家。史郎が窓を開けて桜や家族に話す。
「ほら、みんな外!あいつの曲ここまで響いてるよ!ダウンタウンの外れのライブハウスからだぞ。あんな遠くから!俺はな、あいつの音楽がいつか世界を変えるような気がしてたまらないんだ。」
後日談だが、この時ソニック達の音楽は、エデンの窓ガラスを割っただけでなく、その小さな窓や通路から、ダウンタウンに止まらず、ビバリーヒルズやパサディナ、サンタモニカやLA国際空港、若草家のある南の港まで広範囲に響いていたそうだ。もちろんソニックやWatts Towersが拠点とするイングルウッド地区にも聞こえていた。そこに住む者は一発でソニックの曲だとわかったと話す。LA全域に住む住人達が噂をする。
「これがSonicか・・・・俺達も間近で聴きてー!」
「この曲何処で売ってるんだ?」
「名前何ていうんだ?」
「何処で歌ってるんだ?」
「今度いつやるんだ?」
ソニック達Watts Towersの伝説が今日始まった。
【1995年7月某日。「Sonic Los Angeles」始動。アメリカLAで活動を開始。】
エデンから出ると、そこには大勢の人集りが通れないくらいたむろしていた。皆ソニックを見て唖然とし、誰も声をかけられなかった。それだけ凄い事をしたという自覚さえソニック達にはなかった。
(そういや今日日曜だったかな?まあ、いいや。また今日やるし。)
と、その人集りの中の1人が尋ねてきた。パサディナで熊を倒した時にいたハンターだった。
「お、お前!あん時の熊殺し・・・・」
そういやそんなこともやってたなとソニックは思いながら彼らに笑顔で言った。
「中の俺達の声聞こえたのか?言ったとおり今日も明日も毎日やるからここに来いよ。マジで毎日休まずやるよ。チケットはこいつらから買ってくれよ。」
と鉄治達マネジメント組とチケット売り組を残してワッツ・タワーに帰って行った。
帰り道。疲れたソニックとWatts Towersの面々だが、堂々と胸を張り、ダウンタウンをあとにした。Watts Towersの面々が帰りの道中で
「奴ら、まるであばらも頭蓋骨もスッカスカの髑髏のパーティーみてーだったな。」
そう笑い飛ばしながら歩いて行った。通行人の何人かがソニックに尋ねた。
「お前ら、一体何者なんだ?」
ソニックは堂々と大きな声で答える。
「俺の名前はSonic Los Angeles。こいつらは俺の最高の仲間達Watts Towers。このツラ一回見たら忘れねーだろ?目ん玉片方ねーんだからな!」
とゲラゲラ笑いながら返答した。
(今夜もライブが待っている。またワッツ・タワーの下で眠ろう。起きたらまたエデンだ。今日から忙しくなるぞー。)
とソニックは笑顔で去って行った。そう。本当の戦いは今日始まったのだ。ここを乗り切ってデビューするんだとわくわくしながら眠りについた。
ここから「Sonic」は、ほぼ音楽に乗せて使用しています。
また、Watts towersはただのスタッフだけでなく、バックバンドからソニックと共に歌う者もいます。
アーティスト名の「Sonic Los Angeles」は、ソニックとWatts towers全員を指します。




