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その27の2


「問題ありません。


 この部屋を取ったのはレイですから」



「おやじさんは?」



 良家の子女が男とホテルに行くなんて、父親が許すとは思えないが。



 特に自分みたいなゴロツキが相手なら、なおさらだ。



 レグがそんな疑問をぶつけると、アムは気まずそうにこう言った。



「……レイがなんとかしてくれます」



「たいへんだな。腰がぎっくりしてるのに」



「座ってください」



 言われるままに、レグはソファに腰を下ろした。



「うわぁやわらけぇ……」



 今までにない未知の感覚が、レグに襲いかかった。



 アムはソファの近くのローテーブルに、車椅子を寄せた。



 そして包みを取り出すと、テーブルに置いた。



「どうぞ」



「うん? どうも」



 レグがアムから包みを受け取るのは、これで二度目だ。



 それで前より遠慮なく、彼は包みを解いていった。



 包みの中にあった箱を開けると、そこには首飾りがあった。



 その首飾りには、銀色のイシがはめられていた。



 どうやら魔石のようだ。



「また首飾りか」



 真顔に近い笑みを浮かべ、レグはアムの言葉を待った。



「前の物と違って、ただのアクセサリではありません。


 あなたが身につけている物と同じ、光属性の防具です。


 これで古いのは外せますよね?」



「そんなに外させたいか? こいつを」



「外させたいですね」



 アムは真剣にそう言い切った。



「……何でだよ?」



「たとえ寄りを戻すつもりがないのだとしても、


 昔の女からの贈り物を、


 あなたに身につけていて欲しくありません。


 私はあなたのことを……愛していますから」



 アムは明確に、レグへの愛を告げた。



「なるほど?」



 レグは薄く微笑んで、軽く首をかしげた。



「……驚きませんね?


 私が一世一代の大告白をしたというのに」



「そりゃな、懐かれてるのはわかるさ。


 想定してたより重いやつだなとは思ったが。


 さて……どうしたもんかな」



「ご自分の気持ちがわからないのですか?」



「いや。気持ちならわかってるさ。


 俺なんかよりもそっちのほうだ。


 アム。おまえは俺に、何を求めてるんだ?」



「何って……あなたと男女の関係になりたいと言っているのです。


 わかりませんか?」



「悪いがな、そいつは無理ってもんだ」



「っ……!」



 冷たく突き放されて、アムの顔が歪んだ。



 傷ついていることは明らかだ。



 それをまるで気にしていないかのように、レグはこう続けた。



「俺じゃあおまえの男にはなれない。


 残念だが他を当たってくれ」



「私には……女としての魅力はありませんか……?」



 震える声でアムが尋ねた。



「そうじゃない」



「私がこんな体だからですか……?」



「いいや」



「貴族の娘なんてめんどうくさい。そう思っているのですか……?」



「違う」



「だったらどうして……!?」



 アムの震え声に、悲痛さが混じった。



 レグは動揺のない声音で答えた。



「おまえに問題はないよ。全部オレの問題だ」



「何の問題だと言うのですか……!?」



「……知りたいか?」



「あたりまえです」



 勇気を振り絞った告白を袖にされ、このまま引き下がれるわけがない。



 怒りすら感じられる顔で、アムはレグの答えを待った。



「……わかった」



 レグはそういうと、ズボンのベルトに手をかけた。



 そのままベルトを外すと、迷わずズボンを脱ぎ始めた。



 女子の前で、いきなり何をしているのか。



 体を動かせないアムは、車椅子を回転させ、レグから視線を外した。



「っ……何を……」



「まじめな話だ。


 露出狂のケがあるってわけじゃない。


 ちゃんと見てくれ」



「…………?」



 おそるおそると、アムはレグのほうに向き直った。



 そこに…………思いもしない光景が見えた。



「え…………?」



 一瞬だけ声を漏らしてから、アムは絶句した。



 目の前にある光景が……よく理解できない。



「わかったか? こういうことだ」



 そう言ったレグには、脚がなかった。



 彼はその代わりに、金属の義足を身につけていた。



 そしてさらには……。



「……ない?」



 男性の股間に本来あるべきものが、レグにはなかった。



 代わりにそこにあったのは、むごたらしい傷痕だった。



 アムの意識が、少しずつ現実を咀嚼していく。



 彼女が落ち着くのを待たずに、レグは言葉を続けた。



「邪龍との戦いの傷だ。


 あの戦いで俺は、何もかも吹き飛ばされた。


 プライドも脚も、男の証もな。


 まともに小便もできないから、魔導器で処理してる。


 ちゃんと処理してくれてるはずだが、


 臭うんじゃないかと心配になる。


 それで怖くなって、強めに香水をつける」


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