その23の2
「ああ。さっき使った技、
魔導抜刀っていうのは難しい剣技でな。
つまさきから手の指先まで、
全身の動きが研ぎ澄まされてて、
調和が取れてないといけない。
ちょっとでもバランスが崩れると、
剣の勢いに負けて自分がケガをすることがある。
さっきの俺みたいにな」
「レグほどの冒険者でも使いこなせないなんて、
凄い技なのですね」
「……そうだな」
レグの視線が少しだけ浮いた。
アムはそれに気付いたが、理由まではわからなかった。
……。
翌日。
いつものように授業を終え、アムたちは帰宅した。
オーウェイル邸の猫小屋で、アムがレグに声をかけた。
「レグ、ちょっと部屋に来ていただけますか?」
「ナンデ?」
「良いから行きますよ」
「良いけど」
特に断る理由もない。
疑問を抱きながらも、レグはすなおにアムの部屋に移動した。
「座ってください」
「どうも」
レグは丸テーブルの席に腰を下ろした。
アムは車椅子を前進させ、棚のほうへと向かった。
彼女は棚から、紙包みを取って戻ってきた。
そして車椅子のまま、レグの正面に移動した。
アムは手にしていた包みを、テーブルの上に置いた。
「開けてみてください」
「ああ……」
レグは荒っぽい手つきで、紙包みを開封していった。
包みの中には小箱があった。
何やら高級感あふれる箱だ。
レグは箱を開け、その中身を確認した。
すると箱の中に、首飾りが収められているのが見えた。
「どういう流れだ? コレ」
どうして急に、アクセサリを渡されることになるのか。
事情がわからずに、レグはアムに疑問を向けた。
「あげます」
それはそうなのだろうが。
その理由が知りたいのだが?
「誕生日ってわけでもないが……」
何か他の記念日だったか。
自分が知らないだけで、ドライバーの日とかそういうのがあるのだろうか。
あるいは下僕の日とか?
レグは答えを探したが、しっくりくる結論は見つけられなかった。
得体の知れない贈り物を、このまま受け取っても良いのか。
レグの躊躇を見て、アムが口を開いた。
「それほど高いものでもありませんから、
遠慮しないでください」
「わかった。貰っとくよ」
高いものじゃないって、本当か?
外箱だけでもけっこうに値が張りそうなものだが。
レグはそう思ったが、固辞するのも違うかなと思った。
それで小箱の蓋をしめると、ポケットに入れようとした。
「せっかくですから、
身につけてみてはいかがですか?」
「え~? なんか恥ずかしい」
「何の乙女心ですか」
「わかったよ」
レグは贈り物を装着した。
彼は元々、古い首飾りを身につけている。
胸のあたりで、二つの首飾りが並ぶことになった。
「どうだ? 似合ってるか?」
「悪くはないと思いますよ。
ですが、首飾りを二つというのは、不自然だと思います。
古いほうは外したほうが良いと思いますけど」
「べつに良いだろ。二つでも」
「一つのほうが良いですよ。
その古いほうは、傷がたくさんついていますし」
「どんだけオンボロでも、これは俺に必要なものなんだ」
「どうして……?
まさかその首飾りは……カレンさんに貰ったものなのですか?」
「そうだけど」
レグは悪びれずに答えた。
実際に、レグは悪い事は、何もしていない。
そのはずだった。だが。
「っ……!」
アムはつらそうに表情を変えて、車椅子を急発進させた。
そして部屋の出口に向かい、乱暴にドアを開いた。
「おい……」
急変したアムを、レグは追いかけようとした。だが。
「ついて来ないでください!」
アムは怒声でレグを突き放して、部屋の外へと出ていった。
「何だってんだよ……?」
困惑してその場に留まったレグに、レイスが声をかけた。
「アムさまを追いかけないのですか?」
「追いかけないとダメですかね?
あいつが何を考えてるのか知りませんけど、
今回のことって、向こうが悪くないですか?」
「そうですね。アムさまが悪いですね。
それで……アムさまを追いかけないのですか?」
どちらが悪いのかなど、レイスにとっては大した問題でもないらしい。
「わかりましたよ。追いかければ良いんでしょ」
レグは重い腰を上げて、部屋の外に出た。
そして廊下の左右に視線を向けたが、既にアムの姿はなかった。
(もう居ない……。探すのめんどうだな。
どうせ追いかけることになるなら、
とっとと捕まえりゃ良かったぜ)




