表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/58

その22の1「登山と霧」


「あいよ」



 一応は従っておくかと、レグは早足になった。



「あっ……」



 前に出たレグを見て、アムは声を漏らした。



 レグとアムの距離がはなれていく。



 そのときノーラが、アムの背を軽く叩いた。



「何してるの? 追いかけなよ」



「えっ……」



「さあ、早く早く」



「……レイ。お願いします」



「かしこまりました」



 レイスが命令するより前に、カゲトラは前に出た。



 後ろから猫が近付いてくる気配に、レッティが気付いた。



「っ……! ついてこないでよ……!」



 レッティは足を早めて、アムをまこうとした。



「そんな決まりはありませんから」



 アムは微笑を浮かべ、猫にレッティを追いかけさせた。




 ……。




 一行は山頂にたどり着いた。



 涼しい時期の登山に選ばれる山は、標高が低いのが普通だ。



 道もわかりやすく、苦戦をする要素はなかった。



 生徒たちのほとんどは元気だったのだが……。



「はぁ……ひぃ……」



 意地を張って猫と張り合ったせいで、レッティが息を切らしていた。



 鞍の上で、アムが呆れ顔を見せた。



「はぁ。天職の力を抑えていては、


 猫の脚から逃げ切れるわけがないでしょうに」



「あんたが追いかけてくるのが悪いんでしょ!? げほっげほ」



「そんなことよりお昼ごはんにしましょう」



「こいつ……いつかブッ殺す……」



 山頂で、昼食を食べることになった。



 食事の後は、ひとやすみの時間となった。



 休憩時間が終わると、アムたちは下山を開始した。



 山を下りながら、アムはレグに話しかけた。



「レグ。疲れてませんか?


 乗せてあげても良いですよ」



「べつに。俺よりそっちのお嬢さんを乗せてやれよ」



 レグは疲れた様子のレッティに視線をやった。



「嫌ですけど」



「そう。……待て。動くな」



 レグは一人だけ、何かに気付いた様子を見せた。



 それを見て、レイスが猫を停止させた。



 アムは何もわからないまま、鞍の上で視線を動かした。すると。



「レグ……? これは……?」



 突然に、霧が姿を見せた。



 霧はみるみると、その濃度を増した。



 一行の視界は、あっという間に濃霧で閉ざされてしまった。



「妙だ。油断するなよ」



 真剣な様子のレグに、レッティがゆるく疑問を向けてきた。



「妙って? 山だったら霧くらい出るんじゃないの?」



「さっきまで、空はからっと晴れてた。


 山の天気は変わりやすいって言っても、


 こんなに急に霧が出てくるもんじゃない」



「それが何だって言うの?


 こんな所でじっとしてらんないわ。


 行くわよ。トリーシャ」



 レグたちを置いて、レッティは先へ進もうとした。



「っ……! 待て!」



「えっ?」



 レグが慌てた様子を見せたので、レッティは脚を止めた。



 直後、霧の中からレッティへと、影が迫ってきた。



 レグはレッティに手を伸ばし、彼女を抱き寄せた。



 そして彼女を庇うように、影に背中を向けた。



 影はレグに突進し、彼の背中を強く打った。



「ぐうっ……!」



 屈強なはずのレグの体が、突き飛ばされた。



 レグは呻き、レッティを抱いたまま倒れた。



 彼はすぐに立ち上がり、周囲を警戒しながらレッティに声をかけた。



「怪我はないか……?」



「え、ええ。今のは……?」



「魔獣のように見えましたが」



 レイスがそう言うと、レッティが戸惑いを見せた。



「魔獣って、近くにダンジョンもないのに……」



「話は後だ。手枷を外しておけ。


 ナーガエールさんはアムをお願いします」



「はい」



 レッティとトリーシャが、腕輪を外した。



 天職の力が解放され、身体能力が上昇する。



 レグの値踏みでは、今回の敵はなかなかの相手だ。



 お嬢さまがたに戦力になってもらおうとは思っていない。



 とはいえ、自分の身くらいは自分で守って欲しいものだ。



 そんなふうに考えながら、レグはスキルを発動させた。



 まず魔剣を出現させ、ジャマな鞘は地面に落とした。



 さらに盾を出現させて構えた。



 そして意識を研ぎ澄まし、周囲を警戒した。



 レグが待ち構えていると、霧から脅威が飛び出してきた。



「ぐっ……!」



 正体不明の敵の突進を、レグは盾で受け止めた。



 続いて反撃を試みたが、相手は素早く霧の向こうに隠れてしまう。



 レグの剣は空を斬った。



「すばしっこいやつめ……」



 状況を打破できないレグを見て、レッティが焦りを見せた。



「なんとかならないの……!?」



「敵の位置がわかればな……!」



 焦っているのはレッティだけではなかった。



 霧のせいで、周囲の状況は何もわからない。



 下山中の生徒たちが、どこに居るのかもわからない。



 うかつに威力のある技をはなてば、彼らを巻き込む危険性がある。



 とはいえ、このまま耐えているだけというわけにもいかない。



 何かしなくては。何か……。



「リカールさま」



 落ち着いた様子で、レイスが口を開いた。



「ナーガエールさん……?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ