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26/58

その14の2


「カゲトラ……」



 アムはおそるおそると、カゲトラに視線を戻した。



「みゃぁ……」



 悲しそうな瞳の猫が、アムの瞳と向き合った。



「あっ……」



 たまらなくなり、アムは車椅子を前進させた。



 そして猫のすぐそばまで来ると、ガントレットをカゲトラの頬に伸ばした。



 硬い装甲が、ふさふさと柔らかい猫の毛皮に触れた。



「ごめんなさい。


 私は自分ばかりが傷ついていると思って、


 怖いことから目を逸らしていました。


 あなたも傷ついていたのですね。


 そんなあたりまえのことに、今まで気付けませんでした」



「みゃ……」



「正直に言えば、


 まだ少し、あなたを怖いと思っています。


 あなたは何も悪くはないのに、ごめんなさい。


 ですが私は、そこから前に進めないような弱虫ではない。


 そう思いたいです。


 また以前のような関係に戻れるよう、


 私を助けていただけますか? カゲトラ」



「みゃー」



「ありがとうございます」



 恐れを残したまま、アムとカゲトラは触れ合った。




 ……。




(一件落着……かな?)



 事態を見守っていたレグが、レイスに声をかけた。



「後のことはよろしくお願いします」



「はい。ほんとうにありがとうございました」



 レイスはていねいに頭を下げた。



「いえ。俺の猿知恵なんて、大したもんでもありません。


 アムが弱いやつだったら、逆に悪化する可能性もあった。


 上手くいったのは、あいつが強いからですよ。それじゃ」



 そう言い残し、レグはレイスに背を向けた。



 猫小屋から去ろうとするレグに、アムが気付いた。



 カゲトラに触れたまま、アムがレグの名を呼んだ。



「レグ」



「ん?」



「明日もよろしくお願いします」



「ああ。また明日」



 振り返らずに、レグは小屋から去っていった。



 オーウェイル邸から離れたレグは、まっすぐに自宅に向かった。



 帰宅したレグは、まず郵便受けをチェックした。



 すると中に、封筒が入っているのが見えた。



 レグはそれを手に取り、送り主を確認した。



「こいつは……」




 ……。




 翌朝。



 週に二日ある休日の、後半となった。



 アムの自宅であるオーウェイル邸。



 アムの私室。



 レイスの手助けによって、アムは身支度を整えていった。



 部屋着から余所行きに着替える途中、レイスの遠話箱が鳴った。



 レイスはアムの着替えを中断し、すぐに遠話に出た。



「はい」



 するとスピーカーから、レグの声が聞こえてきた。



「リカールです。ナーガエールさんですか?」



「はい。おはようございます。リカールさま」



 レグの名字を聞いて、アムのガントレットがぴくりと動いた。



 そんなことには気付くはずもなく、レグはレイスと通話を続けた。



「おはようございます。


 ちょっと今日は調子が悪いので、


 休ませてもらっても構いませんか?」



「それはまあ。たいへんですね。


 わかりました。アムさまには私から伝えておきます」



「すいません。それじゃ」



 簡潔に用件を伝え終えると、レグはすぐに遠話を切った。



 レイスは遠話箱をメイド服にしまった。



 アムが口を開いた。



「こんな時間に遠話だなんて、誰からだったのですか?」



「リカールさまから」



「そうですか。レグはなんと?」



「体調が悪いので、今日は休ませて欲しいそうです」



「体調……風邪ですか……?」



「はて……話し声はしっかりとしていたようですが……」



 アムは一時的に、がっかりとしたような顔になった。



 だがすぐに、元気を取り戻してこう言った。



「風邪ならたいへんです。


 レグは一人暮らしなのでしょう?


 私たちでお見舞いに行ってあげるべきではないでしょうか?」




 ……。




 一方……。



 調子が悪いと言っていたレグは、自宅ではなく安酒場にいた。



 彼はそこで、初対面の男たちとテーブルを囲んでいた。



 右手にはカードが見える。



 ゲームの真っ最中のようだ。



 レグのすぐ近くには、中身が減った酒瓶が置かれていた。



 テーブルの中央付近には、紙幣が積まれているのが見えた。



 子供の遊びとは違う、カネを賭けた勝負のようだ。



 チェンジが終わると、レグは手札を開示した。



「フォーソード」



 レグの手札は平凡だった。



 それを見て、相手の一人が笑った。



「悪いな兄ちゃん。ファイブカップだ」



 男の手は、凄く強いというわけでもないが、レグの手より上だった。



 つまりはレグの負けだ。



 勝者の手が、テーブルの賭け金に伸びた。



 そのとき、レグの手が、男の腕を掴んだ。



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