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その12の2


「武器を抜いたんだ。相応の処罰は受けてもらうぞ」



 惨劇は起きなかったが、それは結果に過ぎない。



 レグが強くなければ、死者が出ていてもおかしくはなかった。



 ただのケンカだと見過ごすわけにはいかない。



 レグは通報のため、遠話箱を取り出した。



 そのときレイスが、アイスを持って帰ってきた。



 彼女はアイスを差し出しながら、アムに謝罪した。



「もうしわけありません。肝心な時に」



「それは……だいじょうぶだったけど……」



 返事をするアムは、まだ平静ではない様子だった。



 やがて通報を受け、警察官が姿を見せた。



 当事者であるレグたちは、ざっと事情聴取を受けることになった。



 アムの身分のおかげもあり、聴取はスムーズに進んだ。



 聴取が終わると、警官たちは暴漢を連行していった。



 自由になったレグたちは、公園をぶらぶらと進んでいった。



 その途中で、アムが口を開いた。



「強かったのですね」



「ん?」



「武器を持った相手に勝つだなんて」



「たいした相手でもなかったからな。


 それに、完全に丸腰ってわけでもなかったし」



「そんなに強いのに、冒険者を止めてしまったのですね。


 どうしてですか?」



 アムのほうは見ずに、レグはこう返した。



「身のほどを知ったからさ」



「身のほど……?」



「知ってるか? 俺はじつは、無敵じゃないんだ」



「あたりまえだと思いますけど」



「だよな?


 けどそれを、あたりまえじゃないと思ってる奴が居る。


 そういうやつは無理をするから、


 短い期間で言えば、


 そのへんのやつより上手くいったりするもんだ。


 そしていつか、自分が無敵じゃないってわからされる日がやって来る」



「……おバカさんだったのですか? レグは」



 無鉄砲で、活躍して、痛い目にあった。



 細かいことはわからないが、どうやらそういうことらしい。



「そうだな。その通りだ。


 もうバカじゃいられなくなった。だから止めたんだ。


 ……そろそろ帰るか」



「そうですね。


 ……レグが賢くなって良かったです」



「うん?」



「おバカさんのままなら、


 私と出会うこともなかったはずですから」



「…………そうか」



 レグは微笑んだ。



 嬉しそうと言うには、くすんだ色の笑みだった。



 アムを家に送り届けたレグは、またボロい住み家へと戻った。




 ……。




 後休日-あときゅうじつ-が終わり、休み明けになった。



 今日も仕事。そして次の日も仕事だ。



 社会人の定めに従って、レグはオーウェイル邸に向かった。



 屋敷にたどり着いたレグは、いつものように猫小屋に向かった。



 小屋に入ったレグは、すみっこのほうへと歩いていった。



 そして仕切りの奥を覗き込み、そこを定位置にしている黒猫の様子を見た。



 いつもと変わりなく、猫は元気がないように見えた。



 黒猫に軽く話しかけた後、レグは白猫のほうに向かった。



 鞍の用意を整えると、やがてアムたちが姿を見せた。




 ……。




 学校へ行き、そして帰宅した。



 猫小屋から館へ戻ろうとするレイスに、レグが声をかけた。



「ナーガエールさん、ちょっと二人で話いいですか?」



「アムさま。構いませんか?」



「ないしょ話ですか……? まあ良いですけど」



 そう言ったアムは、おもしろくはなさそうだった。



 だが、それでわざわざ妨害するほど、彼女は狭量ではない。



 しぶしぶと、一人で館に戻っていった。



 猫小屋の中で、レグはレイスと二人になった。



「それでお話というのは?」



 レイスが尋ねると、レグは親指で、仕切りのほうを指差した。



 この位置からは見えないが、奥では黒猫が丸くなっているはずだ。



「あの黒いやつのことです。


 ずっとしょんぼりねこをやってる。


 まるでタヌキだ。


 さすがに気になりますよ」



「彼女……カゲトラは、


 アムさまの事故の時に、車をひいていた猫なんです」



「事故ですか。


 踏み込むことでもないと思って、


 詳しいことは聞いてませんでしたが……。


 黒いのがヘマをしたんですか?」



「いえ。車の整備不良だと、そう聞いています」



「悪くないのにああなったんですか? 責任を感じて?」



「問題はそれだけではないのです。


 アムさまが猫車に恐怖を抱くようになったということは、


 既に知っていますね?」



「はい。面接の時に聞きましたね」



 そもそも、レグが雇われることになったのは、その恐怖症が原因だ。



 車椅子を猫車ナシで運ぶため、レグの『収納』スキルが必要となった。



 当然にレグは、その話を覚えている。



「道を走ってる時も、なるべく車を見ないようにしてるみたいですね」



「はい。そしてアムさまの恐怖の対象は、車だけではないのです」




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