その12の1「公園とごろつき」
レグたちは、猫で公園に向かった。
都内で3番目くらいの、それなりの規模の公園だ。
公園の駐車場に着くと、アムは車椅子に移った。
そしてレグ、レイス、シルクと一緒に、公園を進んでいった。
心地良い日差しを浴びながら、アムは口を開いた。
「なかなか良いところですね。よく来るのですか?」
「最近はあんまり。ひとり公園で散歩……ってガラでもないしな」
「そうですか。
それならまた、一緒に来てあげても良いですよ」
既に元婚約者のことなどは忘れたのか。
アムは穏やかに、車椅子散歩を楽しんでいるようだった。
「そいつはどうも」
しばらく並木道を進んでいくと、解放的な広場に出た。
そこでアムが、屋台の存在に気付いた。
「あっ、あそこでアイスクリームが売っていますね。レイ」
「はい。リカールさま。アムさまをよろしくお願いします」
レイスはアイスクリームショップのほうへ向かった。
「自分で選ばなくて良いのか?」
レグがアムに尋ねた。
「レイは私の好みを把握していますから」
そのとき。
「車椅子? 珍し~」
ラフな格好の男が二人、アムたちに近付いてきた。
「きみ可愛いね。良かったら俺たちとお話しない?」
馴れ馴れしい男の誘いを、アムは冷たく拒絶した。
「お断りします。
ここは静けさを楽しむところです。
女性を口説きたいのであれば、繁華街にでも行ってください。
それにあなた方に構っていただかなくとも、
私には既に連れ合いが居ます。
見えないのですか?」
全く目がなさそうなアムの態度に、男たちは怯まなかった。
彼らは余裕を崩さず、品のない口説きを続けた。
「冷たいこと言わずにさ、
こんな顔だけの玉無し野郎より、
俺たちのほうが満足させられるぜ?
何せ俺たち、特級冒険者だし。
あんまり舐めた口をきかないほうが良いと思うんだけどなぁ?」
「特級……?」
アムの表情が曇った。そのとき。
「失せろ」
レグがアムの前に立ち、男たちを睨みつけた。
「あ? 何だって?」
男たちも目つきを鋭くして、レグを威圧しようとした。
「聞こえなかったか? 舐めた口をきいてやったんだ」
「だったら……望みどおりに転がしてやるよ!」
男の一人が、短気にレグに殴りかかった。
大振りなパンチは、レグにはっきりと見切られていた。
レグはパンチを回避して、カウンターの拳をはなった。
無駄のない軌道で伸びたフックが、相手の頬に突き刺さった。
男は殴り飛ばされ、倒れて動かなくなった。
10を数えるまでもない。完璧なノックアウトだ。
レグは残ったほうの男に、冷めた視線を向けた。
「これが特級? フカすのも大概にするんだな」
「てめぇ! よくも……!」
レグが恐ろしく強いということは、相手もすでに理解できているはずだ。
それでも、舐められたままでは引き下がれないと思ったのか。
男は懐から、ナイフを取り出した。
素手の自分に武器を向けるとは。
レグは男に呆れ顔を見せた。
「オンナ口説くのに刃物か? 必死すぎんだろ……」
レグの後ろでは、アムが血相を変えていた。
「何を余裕ぶっているのですか……!?
相手は剣を持っているのですよ!? 逃げて……!」
(剣なんて大げさなもんじゃないと思うが)
「みゃ……!」
主人の動揺を見て、シルクが前に出ようとした。
戦えないあるじに代わり、レグを守ろうというのだろう。
(ありがたいことだが)
「みゃ?」
レグはシルクのひたいを押さえ、彼女の前進を止めた。
「いまさら逃がすかよぉ!」
上段からヤイバが振り下ろされた。
レグはそれに合わせ、右脚を振り上げた。
「えっ……?」
レグの足が、男のナイフをへし折った。
刀身はくるくると宙を舞い、やがて地面に突き刺さった。
「へっ? あっ?」
呆然とする男に、レグが蹴りを叩き込んだ。
綺麗にアゴを蹴られた男は、意識を失って倒れた。




