表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/150

112 アルキーミア・レッジェンダ

「……復讐、ですか」


……怖い。


「……どこでそれを?」


そう、私に問う声は恐ろしく冷たい。

怖くて、怖くて。逃げ出しそうになるのを堪え、震える口を開く。


「見て、聞いて、結びつければ……分かり、ます」


断片的に夢で見ているのはミアの記憶の一部。そんなの、とっくに分かっている。


「今の王家は魔術師狩りをした王家の末裔ですから。ミアは復讐をするために。それから私達が模擬なのは……魔術師を……あとは、もう一つの一族を甦らせるため、ですか……?」


だって。そうじゃない。私が見てきた限りだと。


魔術師のレッダ・ミアは弟子……おそらくオリアナ、を罠にかけられて。魔術師狩りが始まって。

魔術師狩りから逃げる時に嵌められた一本道を通って。

だけど、逃げられなくなって。箱を押し付けられて。その人──黒のチリチリの髪だったから多分、シナーア──を犠牲にして逃げて。

自分の記憶と記録を消して。逃げて。ここに、研究所を作って。

私達を、【紫月姉妹】を創って。

それで今、私達を模擬という扱いをして、本番を、作ろうとしている。


「稜華! それを、どこでっ!」

「夢です」


悲鳴に近い声で言うミアと対照に私の心は沈みきっている。何も感じない。

だって。


「夢でした。悪夢に、近かったです」


私だって、こんなこと知りたくなかった。私達が創られた、人間のようで人間じゃないものなんて、知りたくなかった。


「夢、で……見たっていうの……?」

「……はい。ここ半年は、特にです」


具体的には、魔法学園に入学してから。

私は夢を見ることが増えた。悲しくて苦しい悪夢を。


「まさか……でも、ちゃんと対処していたはず」

「何をですか?」

「記憶を、よ。貴女達はわたくしが創ったのだから、わたくしの影響がある可能性が高かった。だから、入念にそれらのリスクは取り除いたのよ」


ミアによってリスクは取り除いた。なのに。


「だけど、一部は取り除ききれなくて。記憶に蓋をするように封印みたいな形にしたのよ」


つまり……姉妹にも、記憶が埋まっている。


「じゃあ、姉妹たちは……」

「おそらくないわ」


それはキッパリとした断言だった。


「多分……稜華はわたくしと会って、魔術師を知って……封印が緩んだのかもしれないわ。それが記憶の箱から少し溢れた」

「その溢れた記憶が夢になった、というわけですか」

「一つの仮説よ」


じゃあ、少なくとも何かしら記憶の箱が開きかけることはない、っていうわけだ。


「安心しました」


姉妹が、傷つく可能性が減って。


「……稜華は、それでいいの?」

「構いません。……こんなの、姉妹は知らなくていいんですから」

「こんなの、なのね……」


姉妹は自分達がどうして生み出されたかなんて知らずに、ただ笑っていればいい。


「……稜華ばかり抱え込まなくてもいいのよ?」

──『少しぐらい、教えて、背負わせてほしいなぁ』


いつかの、飛華の声。


「抱え込んでなんて、いません」


こんなの、抱え込んでいるうちに入らない。


「……そう」


ミアは少し眉を下げると目の前の扉に向き直った。扉に手を当てると小声でぶつぶつと唱える。

魔法でも、魔術でもないもの。きっと、それは。


「……ずっと廊下で立ち話だったわね。どうぞ、入って」

「失礼、します」


ミアによって開けられた扉を、潜る。

見知らぬ部屋。だけど、どこか見覚えがあった。


「わたくしの記憶を見ているなら、もしかしたら一度は見たことがあるかもしれないわね」


さっきまでの暗いトーンを払うようにミアは言った。


「稜華達も、自我が芽生えるまで、ここにいたもの」

「……はい。知っています」


ここで、ミアは。


「私達を、最高傑作っておっしゃてくれましたね」

「……そんなことまで覚えているのね」


フッとミアの表情が柔らかくなる。


「……なら、知っているのかしら。わたくしは」

「復讐のために。……どうやって復讐するのかは、知りませんけど」


ホント、ミアは私達をどうするつもりだったのだろう。


「……貴女達は直接は関係しないわ」


そう、なのだろうか。


「わたくしは……さっき稜華が言ったように魔術師を」


当たっていたんだ。


「それと……わたくしの一族、錬金術師の一族を」


錬金術。

それが、ミアの。


「アルキーミア・レッジェンダの一族、なんですね」

「そうよ」


その声は、淡々としていた。


「正直言って、わたくし、もう錬金術とか魔術とか。……どうでも良くなってきたの」

「そうなんですか?」


シンプルに、驚く。


「だけど、やらなきゃいけないから」


それが、ずっと、ミアを縛っている。


「……なら、少なくても魔術師は〈青の魔術師〉に任してしまいましょうよ」

「ダメよっ!」


え、なんで。


「真っ先に〈赤の魔術師〉様にお会いできないじゃないっ!」


……あ〜、うん。


「わたくし、もし〈赤の魔術師〉様にもう一度会えるなら、真っ先に会いたいわ。というか、目を開いてすぐ視界に入るところに居たいわっ!」


……ハイ。

そうだね。


「ミアは〈赤の魔術師〉様が大好きでしたね……」


うん、ミアが狂乱するほどには。


「だって、〈赤の魔術師〉様は……」

「あ〜、もうそれ大丈夫です。お腹いっぱいなので」


何度も聞いているからねぇ。


「錬金術師……の方はミアだけですもんね〜」


流石に錬金術師の方はミアと……私。この二人で頑張るしかない。私が役に立つかはわからないけど。


「そうよ。だから稜華」


なんでしょうか。


「学園、休学してウチで働かない!?」

「……はい?」


なぜそうなる。


「そもそも私、ミアに学園行けって言われて行っているんですけど……」

「ならそのわたくしが言うわ。ウチで働いて?」

「その……流石にいきなりいなくなったら姉妹もおかしいって思うのでは……」


できるだけリスクは避けたい。


「ふ〜ん。稜華」


はい。


「学園に未練があるのね」

「なんでそうなりますか!?」


どこをどうやったらそうなるんですかっ!


「だって稜華、いつも特になんとも思わずわたくしの言葉に頷いていたのよ? こうやって理由を並べ立てて反論するなんて、研究談義以外なかったわ」


そ、そうなのか?


「で、どうするの? 休学するの?しないの?」

「……しま、せん」

「なら時間ができたらできた時間だけここに来てね」


ニコリ、と言われて私に冷や汗が流れた。


「……頑張ります」


実際にできるかどうかは分かんないけどねぇ……。


「だけどそうなると結局、大半の時間はわたくしだけじゃない」


全然大半じゃないけど……ミアにとっては大半、なのだろう。いまいちミアの時間感覚がよくわからない。


「……流石にわたくしだけで進めるのは難しいわよ。できないことはないけど、何千年単位になっちゃう」


……果たして私はその時に生きているのか……?

いや、同じ【研究成果】の青龍希翠が百歳越えだから、流石にそれくらいは生きれる……?


「だから助手が欲しいのよ。もちろん、その役目は稜華だったし」


それが学園に行ったから助手がほぼ毎日不在、ということか。


「ミアが求める助手の役割ってなんなんですか?」

「ん〜、そうね〜」


ミアはしばらく考えた後、ゆっくりと条件を上げだす。


「まずは、魔力が多いことね」


まぁ、それは魔法・魔術を使う上ですごく重要ですよね。


「魔術を使いこなせること。別に魔法でもいいんだけど」


なるほどなるほど。


「魔術・魔法の知識が多い方がいいわ」


かなり候補が絞れてきましたね〜。


「後、正確な作業ができる人がいいわ」


ミアの条件が厳しい……。


「どう?いそう?」

「ん〜、一人か二人は」

「誰々!?」


そんな目を爛々と輝かせなくても……。


「ヘリコニア・プシッタコルムです」


まぁ、ヘリコニア先生なら、ね。


「人じゃない。しかもこっちの事情なんて分かっていないし、学園の教師でしょう?」


おっしゃる通りです。


「流石にそれはマズイわ」


そうかぁ……。


「じゃあ、条件にこっちの事情を理解している、もしくは理解できるって入ります?」

「そうね」


もう全然当てはまる人がいないのでは……?

いっそ、魔術師ぐらいしか……。


「いましたね」


そうです。魔術師なら良いんです。


「〈青の魔術師〉なんてどうでしょう?」

「わたくしが嫌いだから嫌よ」


……ワガママだなぁ。

それこそ、〈青の魔術師〉は何気と便利だと思ったんだけど。魔術師で生きているのはミアと〈青の魔術師〉ぐらいだし……って。

……そういえば、いるじゃん。


「ミア、一緒に旅行しませんか?」

“旅行“の行き先は……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ