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108 愛してる

「じゃあ、リベンジ戦、やるよ」


お、おぉ……。


「さっきと同じ順番だとつまんなくない?」

「確かに。ナイス風華」

「流石に美華の告白文を聞き続けるのは無理がある」

「風華、酷いぃ!」


確かにこの様子だと双子はすぐに離脱しちゃいそうだもんね。


「じゃあ、順番はクジにする〜?」

「それで順番が大体同じならもう一回引けばいいよね」


なるほど。


「情報作成」


くじ箱、登場〜!

いやぁ、魔法って便利ですね……。


「えっと、引いた順に時計回りでいい?」

「いいよ〜」


ちなみに箱の中には1〜6の番号が書いた紙が入っているだけ。

小細工などは一切していない。うん。……したくなるけど、しちゃいけないんだよ。


「まず最初……3。美華、だね」

「あぁ風華、またね……!」

「いつでも会えるでしょ」


意外と風華ってドライ?


「次、1番。飛華。次いで6、5、2、4」


つまり、美華から時計回りに飛華、夢華、私、風華、陽華、となるわけだ。さっきとはかなり違うから、新鮮味がある。


「先に作戦タイムを設けた方がいいんじゃない?」

「じゃあ、2分間〜」


作戦……セリフ、っていうことだよね。

さっき、陽華は愛してるって全然言っていなかったけど脱落はしていなかった。言わなくてもいいのかもしれないけど、できるだけリスクは避けたいよね。

だから『愛してる』をベースに組み込んで、どうやってドキドキさせるか、だよね。

ドキドキ……ドキドキ……。


「作戦タイム、終了〜。美華、始めて〜」


結局作戦らしい作戦は立てられずに終わりました。

……まぁ、なんとかなるでしょ!


「……飛華って可愛いよね」

「美華の方が可愛いよ」


……美華、撃沈。


「そ、その……飛華は美人で可愛くて強くて……」


表面的な所だけじゃダメですよ〜、美華さん。ずっと一緒にいた私が保証します。


「美華のそういうストレートなところ、好きだよ」


なんの照れもなくそう告げる飛華に美華は赤くなる。


「美華、失格」

「風華!? もうちょっと判定優しくしてくれてもいいじゃない!」

「勝ちたいんで」


風華が勝ちに来ましたか……隣にいるから油断しないようにしよう。


「夢華」


次は飛華と夢華の番です。


「さっきは大したことをしてくれたね?」

「え?ひ、飛華ちゃん? 何を言っている……の?」

「わからないの? 夢華は鈍感だなぁ」


いやそれはないと思う。飛華も夢華も鋭い……。


「だけど、そういうところ、好きだよ?」


破壊力……!

しかも夢華の耳元で……!


「夢華、脱落〜」


ヤバい、飛華の両隣がことごとくやられていく……マジ飛華が強すぎ……。

何はともあれ、次は私の番だ。

風華の弱点は美華。だけどあまり使わない方がいいだろう。きっと美華を出されるっていうことは予想がついているだろうから。


「風華」

「何?」

「……私は風華のこと、好きだけど、風華はどう?」

「好きだよ」

「ホント?」


目を逸らさないことを意識して、言う。そしてこのタイミングに……!


「……稜華? 何してんの?」


パシリ、と手を掴まれた。


「え? くすぐったく……ないの?」

「別に。稜華、くすぐってるつもりだったの?」

「うん」


そう、こちょこちょ作戦……!

真面目な雰囲気の中、こちょこちょして笑わせてる作戦……のはずなんだけど。なぜか風華に効いていません。


「稜華、くすぐるの下手すぎ」


え……。

そんなダイレクトに言われると傷つく……。


「こういうのはね、こうやるんだよ」


風華の手が伸びてきた、と思った次の瞬間。


「く、くすぐった……」

「そ。これくらいやらないと。ほら、笑いな?」


笑いな? に妙な圧がかかっているし、くすぐるのがめっちゃ上手い。

すっごいくすぐったいんですけど……!


「稜華、失格〜」


くすぐり作戦は返り討ちにて終了しました。

その後、残った飛華、風華、陽華でゲームは続き、結果は飛華の連勝で終わった。

……うん、飛華強すぎ!




**




「飛華」


明かりを落とした部屋の中に、月に光だけが差し込む。さっきまで騒がしかったことなど感じさせないくらいに静かだ。


「どうしたの?」


私は身体を飛華の方に向けた。


「愛してるゲーム」

「え? まだやるの?」


さっきまで散々やっていたのに、って。でも、私と飛華が直接やることはなかった。だから。


「私からの、愛してるゲーム」


私はきっと、こうしないと飛華に私の気持ちを、言えないから。


「飛華、大好きだよ。愛してる」


これは、私からの一方通行だから。



「優しいところ、好き。いつも、飛華は私の……私達のことを考えてくれてる。いつも、私達の前ではお姉ちゃんでいる。……だから、心配になる」


「美女なところ、好き。飛華はめっちゃ可愛くて美形。だから変なヤツに絡まれないか心配になる」


「可愛いところ、好き。しっかりしていると思っていたら結構抜けていたり。雷怖がったり。あと、姉妹でやったの愛してるゲームの時、カッコよくて可愛かった。ギャップ萌え、ってやつかな」


「強いところ、好き。すっごい強いのに、いつも全力じゃない。だけど、それで勝てるのがすごい。全力を出す機会をすっごい楽しみにして、探して、全力を出してる時も好き」


「飛華、好き。全部好き。私が見てきた飛華、全部。優しくて強くて可愛くてなんでもできて、でもどこか抜けていて。そんな飛華が、大好き。愛してる」



……言葉にするのって、難しいね。

きっと、心の中はもっとたくさんの気持ちで溢れているのに。それを、言葉にできなくて、もどかしい。


「……じゃあ、私も」

「……え? 誰に?」

「稜華しかいないでしょ」


止める時間など与えられず、飛華はぽつりぽつりと言っていく。



「内気なとこ、好き。すっごい頭の中では色々考えているんだろうけど、人付き合いに慣れていないから知らない人の前だとすぐ固まっちゃう。めっちゃ可愛いよ」


「可愛いと言えばね、稜華の髪、好きだよ。寝癖がついているのが可愛いし、毛皮みたいにふわふわ。……綺麗な色だよね。光が当たると特に」


「すごい頑張り屋さんで努力家なとこ、大好き。いつも頑張って頑張って結果を手に入れようとしてる」


「物知りなとこ、ホントに尊敬する。ものすごい魔法式を理論で組み上げて、自由自在に魔法を作って、使って、なんでもできちゃう」


「だから……かな。稜華はいつも、私のわからないところ見てる。私の知らないものを見て、聞いて、考えて。……稜華はすごく考えているから。だから、心配になるんだ」


「いつか、稜華は私達の前から消えちゃうんじゃないかなって」



ヒュ、と喉が鳴った。

だって、それはいつでもあり得ることだから。私は、知ってしまった私は、ミアの存在はもう無視なんてできないから。ミアに言われたらなんでも頷いてしまう自信があるから。ミアと飛華だったら、ミアを優先してしまうから。


だからミアのことは大好きで、尊敬していて、怖くて、嫌いだ。


仕組まれているんじゃないかなって、思って。そう考える自分が、嫌になる。私は、私が好きで嫌いだから。


「稜華はいつも、姉妹の輪から一歩引いたところにいる。……歩く時もちょっとだけズレていたり」


「別にあわせろって言ってるわけじゃないけど、私はそれが大きな意味を持ってるんじゃないかなーって思っちゃう」


「稜華はいつも隠し込んじゃう。大事なことほど」


「ずっとずっと。ちっちゃい頃から。……稜華が家出した時も、多分隠し込んで隠し込んで、わかんなくなっちゃったから、だよね」


「いつも、私達は誤魔化されちゃう。それはきっと、稜華は私が、私達が稜華の隠していることを気づいた時、傷つくと思っているから」


そうだよ。

だから、私は何も言わない。


「だけど、私達はそんなに子供じゃないんだよ。まだ子供だけど、昨日の私達より、子供じゃない」


「姉妹だから、っていうわけじゃないけど」


「少しぐらい、教えて、背負わせてほしいなぁ」


「あ、これ、独り言ね?」


え? あ、はい。


「話は戻るけど……」











「稜華、愛してるよ。世界で一番」


それは、私が欲しかった言葉(もの)だった。

お読みくださり、ありがとうございました。

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