105 鬼才の持ち主達
「……学園長が1000年に1度の天才ならば、コイツらは万年に1度の鬼才と言っても」
「過言ではないでしょう」
その言葉が肩に重く、重く、のしかかった。
「……先輩。そんな言い方は、ないです」
「はぁ? だが、ヘリコニアも……」
トランクイリタ先生は、戸惑っているようだった。
「そうですね。私は言いましたよ。確かに紫月さん達はすごいです。ですが……だからこそ、でしょうか。そのように、別次元のように扱われるのは、苦しい。……先輩も、そうじゃなかったんですか?」
「……俺は、お前とは」
「先輩も私と一緒です」
間髪を入れず、ヘリコニア先生が言う。
「先輩と私は、正反対のようで……いえ、正反対なところしか見えないのに、なぜか同じ、なんです」
「なんの、根拠があって……」
きっと、それは。その根拠は。
「わかるんです」
真実。
真実だ。
適性魔法。
先生は、そうして知っている。様々なことを。
「ホント、変わりませんね、プシッタコルムは」
へ?
学長先生、ヘリコニア先生を名前呼びしている?
「それだけの才能を持ちながら遠慮するのはやめてもらえます?」
確かにヘリコニア先生はすごいです。
「私の弟子ならば、もっと胸を張ってもらえますか? ホント、外面は謙虚なくせに内面は勝気とか、やりきれないですよ」
……言えているような、言えていないような……。
「って、ヘリコニア先生、学長先生の弟子なんですか!?」
「正確には弟子だった、ですけど……。在学時にお世話になったんです」
へ〜。
意外です。そこで、一つの仮説に行き着く。
ヘリコニア先生の師匠となると……学長先生も、もしかして……。
「とにかくっ!問題はなんで魔法を5回もかけなきゃいけなかったって言うことなんですっ!」
……研究者肌、になりますよねぇ?
「1回でいつも通り、地下10階層の生徒全員を連れ戻せました。大体生徒は10階層までしか行けませんから。ですが、一応確認したらまだダンジョン内に生徒がいたんですっ!」
あ〜、はい。
「だから、2回目の魔法、かけたんです。だけど、ダメでした。3回目も、4回目も。対象範囲を広げて、5回目にやっと連れ戻すことができたのです」
……うん、何も言うことないね。
「……貴女達は一体、何回層まで行ったんですか?」
えっと、ですね。
「31階層です」
「31階層!?」
「あ、攻略できたのは30階層までですよ? 31階層は入ってすぐ連れ戻されちゃいましたから」
「30階層!?」
そうなんですよね〜。
「とうとう私達、最下層まで行ったんじゃないかな、美華」
「そうだよね、美華! 私達の伝説はやっぱりここから始まるんじゃないかな!」
あ〜、うん。
伝説。まぁ、伝説にはなるでしょうか。むしろ都市伝説っていう感じになりそうなんですけど。
「……ちなみに、それぞれどんな感じでしたか? あ、16階層からで問題ないです」
そうだよね。15階層までは行ける人はいけるだろう。
「えっと〜、16階層は〜。……夢華、どんなところだっけ〜?」
「……陽華ちゃん。たくさん焼き鳥、食べたでしょ?」
「あ、そうだね〜。ありがと、夢華〜」
「……えっと、どう言うことです?」
そうなりますよね〜。
「魔物の鳥がたくさんいたんです。なので姉妹で焼き鳥パーティーをしました」
「焼き鳥パーティー!? ダンジョンの中で!?」
「私達には鉄壁の陽華がいるんで」
「えっへん〜」
はいはい。陽華はすごいね。
「で、21階層からはお魚を食べました〜」
「美味しかったよね。稜華ちゃんは絶対に食べなかったけど」
魚、そんなにみんな好きなの!?
なんでそんな残念そうな顔をするかな!?
「で、26階層からはタコとかイカとかです〜」
「流石に食べる気にはなれませんでした」
「むしろなんで魔物を食べるって言う発想に……」
……食いしん坊が多いからです、きっと。きっとそう。そう思わないとやっていけませんよ。
「はぁ……今まで15階層までしか攻略されていなかったのに、今日になって一気に30階層まで……倍近くじゃないですか。しかも未確認の階層まで確認してくれちゃってますし……」
なんか、その……すみません。ご迷惑おかけしまったみたいで。
「……この件については、対応が決まり次第通達します。紫月さん達は帰って大丈夫ですよ」
そんな疲れきった笑顔で言われると、なぁ……。まぁ、原因は私達なんですけど。
「じゃあ、私も……」
「プシッタコルムとオンブラは残ってください。対応について、あと、その他色々と……聞きたいことがあるので」
「師匠、弟子贔屓はやめた方がいいです」
「……聞きたいことその他色々ってなんです?色々って」
「色々ですよ?」
意味深〜。
というか、この2人って、結構仲良し、だよね? 少なくとも、夏休みに一緒に旅行するぐらいには。おおよそ、それくらいは学長先生もわかっているんじゃないかな〜。
「それと、プシッタコルム」
「はひっ」
突然のご指名に驚く先生。返事がひっくり返っていてかわいい。
「弟子贔屓ではありませんよ」
そうなんですか。
「この学園で私の次に実力があるのはあなた達ですから。……学生時代は随分と妨害をされていましたが、それでもこの学園に入れたのでしょう?」
貴族がいた時代の苦労が……。
「大丈夫です。私の弟子ですから。あなた達は才能もある。努力もできる。やろうと思えば、なんだってできるのですから」
わぁ、哲学。
「特に、あなた達は若いのですから」
確かに。
若くて才能もあって努力もできて、性格も……うん、まぁいい方だと言えるだろう。日頃の生活は置いておいて。
そう考えると、ヘリコニア先生ってめっちゃいい人じゃん。
「大丈夫です! とって食ったりはしませんから!」
その笑顔が怖い!
「あ、紫月さん達もこんなくだらない話に付き合わなくても大丈夫ですよ」
「じゃ、失礼しました」
飛華も帰りたかったんだねぇ。いの一番に学長室を出る。
「失礼しました〜。美華、帰ろ?」
「そうだね、風華。早く帰ろう」
「失礼しました〜」
「稜華ちゃん、帰らないの?」
「あ、帰る……帰ります」
帰る以外になんの選択肢が!?
寮への帰り道はいつも、雑談がメインだ。
「次は冬休みだね〜」
「私はダンジョン攻略、しようと思ってるんだけど……みんなはどうなの?」
「私たちはもう決めてるよ。ね、美華」
「そうだね、風華。私達は国内一周旅行に行くつもり」
スケールでかっ! 冬休みの2週間かそこらですることじゃない気がする。
国内って言ってもこの国、この大陸で1番大きいし、東西に長いし、辺鄙なところもあるしで結構大変だと思うんだけど……。
「私は未定〜」
「私も」
うん、逆に今の時点で予定が決まっているのがすごいよ。
もちろん私は研究、なんですよねぇ。流石にそろそろ行かないとミアの機嫌が悪くなるって言いますか……。
「じゃあ陽華ちゃん、風華ちゃんと美華ちゃんほどの規模じゃないけど、一緒に旅行しない? 稜華ちゃんも一緒に」
「……ごめん。私、結構忙しくて」
ミアの相手にね!
「そっかぁ……」
ほんとにすみません! 私としては姉妹とも過ごしたいよ?
だけど、ミアの研究所に行くと必ずと言っていいほど缶詰状態になって徹夜なんて日常茶飯事、ご飯は1日1食あったらいい方、だもんね!
楽しいのはいいけど、もうちょっと生活環境を改善してほしい……。夢華による完璧と言っていいほどすごく良い生活にどっぷりと浸かった私には少し辛いし……。
「だけど、多分、5日に1回は帰れると思う」
「どんな頻度!?」
「そう?」
研究していれば1日がすぐ終わっちゃうし。関連する資料とかを集めているだけでも1日が終わっちゃうし、ミアの研究談義は面白いテーマばっかりだから2日ぐらいは軽く経っちゃうし……。
「……稜華ちゃん。せめて、3日……いや、2日に1回は帰ってきて」
マジの目で言われました。まぁ、どうなるかわからないけど。
「……うん、頑張る」
お読みいただき、ありがとうございました。これにて第7章 ダンジョン攻略編は終了となります。『設定等』の方で登場人物まとめについてアップしました。次回からは
第8章 冬休み編
……なのですが、実はなかなか続きが書けてないため、更新頻度が落ちてしまいます。すみません(・・;)
どうぞこれからも6姉妹の物語をよろしくお願いします。




