103 海の中
鼓膜に響く、けたたましい音。
薄く目を開けば、暗い世界が映る。
……なんで、めざまし……というか、ここは……。
「おはよ」
「ん……おは、よ……」
そしておやすみ……。
「いや、寝ないで!?」
そう言われましても〜。
「ほら、稜華ちゃん、早く起きて! 出発する前にある程度目を覚さないと!」
出発……?
今日は何も用事が……あるっけ?
「ここ、ダンジョンだから〜。というか、なんで私たち、ダンジョンの中で呑気に寝ているの〜」
最初に寝たのは双子で、その次が陽華と夢華でしょ。
というか、みんな鳥さん食べた後寝ちゃったから、あの鳥に睡眠作用でも入っていたのかなぁ……。ただ、食べて眠くなっただけかもしれないけど。
「……じゃあ、10分後、先に進むよ?」
りょーかい!
10分。普通に考えれば長い時間。だけど、今ばかりは短い。だって、寝起きだから。目を覚まして、すぐに魔法を発動できるようにしなければならない。
大きく伸びをした後、体を動かす。
かなりの運動量だったからか、既に筋肉痛になりかけている。だけど、筋肉痛は、まぁ……しょうがないよね? 魔法で治しちゃ意味がないし。
「それじゃあ、行くわよ〜」
おおー!
そうして、気合を入れたのはいいものも。21階層からはなぜか水深が深くなり。海に潜ることとなった。
陽華が球体の盾で私達を囲ってくれて呼吸もできる。だけど。
「え、ウソ……」
なんでこんな天敵がいるの!?
あたりはにいるのは魚の大群。
「なんで……」
こんなダンジョンの中に魚がいるなんて、聞いてないよっ!! なんで地下なのに海水が!
おかしい!おかしいよね!?
結構内陸のくせに、地下ダンジョンは海へ繋がっているわけ!?
ホント、信じられない! いや、信じたくなんてないんだけど!
「わぁ、稜華ちゃん、ご立腹……」
悪かったですね。
「じゃあ、サクサク攻略しちゃう〜?」
そうしましょう。
こんな魚の中にいるなんて嫌です。断固拒否!
「美華、さっきみたいに強行突破するの?」
「私は別にそれでもいいよ、風華。だけど、私、魚も食べたいんだよね」
知るかっ!
私は放浪時代に痛い目に遭ってるんですよ、魚で!
「まぁ、魚は高級だしね。私的にはなんで稜華がそんなに魚嫌いなのかが知りたい……」
「聞く? 聞きます?」
「キレ気味に言わない」
ホント、辛かったんです。
「私、小さい時、他の国に行ってたじゃん? その時、たまたま魚を食べる機会があったの」
臨海部に町があったから1番ネックな輸送な問題もクリアしていた。
「で、初めての魚に心躍らせていたわけ」
誰もこんなことになるとは思わなかったと思う。
「食べた時は良かったよ。あんまり美味しくなかったけど。だけど、その翌日!」
なんと!
「食中毒になって三日三晩、苦しんだの!」
ホント、この気持ちを誰か察して!
「だから魚は天敵!」
むしろ、これ以外にどういうんだ? っていうぐらいです。
「あ、そう……」
いや、ほんと辛かったんだからね!?
「じゃあ、私達はお魚食べるから、稜華ちゃんはさっきの鳥でも食べていればいいんじゃない?」
夢華ぁ……。
私だけ仲間はずれみたいに言わないで……。これはこれで悲しい……。
「ねぇ、強行突破しない!?」
「稜華がそんなことを言うなんてね〜」
早くこの魚地獄から脱出したいんです!
「じゃあ、行くよ!」
はい!
「強化魔法!」
「補助!」
今度はタイミングバッチリだね。
私も自分に情報強化をかけ、先を走る姉妹を追いかける。
ものすごいスピードで21階層を抜けると、そのままの勢いで25階層まで突っ走った。
「……で、こいつは何?」
冷ややかな声が出てしまったのもしょうがないだろう。
やっと抜けられた〜って思っていたのに。なのに。
「なんなの、これ!?」
「ボス級の魔物でしょ、どう考えても」
あ。
……。
………。
「情報ばく……」
「稜華、ストップ!!」
「飛華、なんで止めるの!?」
これは私の敵だ!
滅さずにどうするというの!?
「美味しそうなお魚じゃない!」
……知らねええええええぇぇぇぇ!!!!!
この地面の上で跳ねている魚のどこが美味しそうなの、ねぇ!?
誰か教えてくれます!? いや、教えてくれなくていいけど!
「と言うわけで、稜華は見てて! そうだよね、美華」
「そうだよ風華。稜華は見学でお願いっ!」
……いやいや。
「普通に、さっきの鳥さんより強いんじゃない?」
だってここ、25階層だよね?
さっきの鳥さんより、絶対強いよね?
「……稜華、お魚、消滅させないって約束できる?」
「……飛華がそう言うなら」
「じゃあ、お願いね。……お魚を消滅させたら、私、怒るから」
「分かった。……作戦はさっきの通りに?」
飛華が怒るなら……仕方ない。魚は諦めよう。
「じゃあ、お魚大作戦、行くよ〜」
「「「「おおー!!」」」」
「……はぁ〜い」
流石に協力しないという選択肢はないです。私達は運命共同体なので。
「二重結界!」
「情報付与」
さぁ、後は叩きのめす時間だぞ?
「稜華、貴女は攻撃するんだったらBランク魔法までね!」
……了解〜。
「焼き魚!」
いや飛華さん、そんな魔法、ないですって。
「ホント、いい感じに焼くのは難しいのよ」
知るかって!
もういいです。陸を跳ねる魚はもう見たくないです。
「情報停止」
魚はピタリと止まり、落ちる。
その寸前、陽華が結界を作ったらしく、地面に叩きつけられることはなかった。
うん、衛生的。
「それじゃあ、素材を……」
ハッ! そうだ! 素材!!
そう!鳥であれ、魚であれ、素材が出る!
ただ情報分解しちゃったら、素材は出ない……。すっかり忘れてた……。
うん、素材は重要だよね!
「稜華、いつも魚系の魔物とかはすぐ倒しちゃうでしょ? だから貴重だと思うよ」
なるほど。確かに。私、魚系の素材はほぼ持ってないです。
つまり、臨時収入に等しいってわけですよ!
「分かったらさっさと解体しようよ、美華」
「そうだね、風華。解体が終わったら焼き魚パーティーだね」
うええぇぇ……。
鳥ならまだしも、魚を食べるんですか……。
「稜華は食べなくても大丈夫〜。……その分、私の取り分も増えるし〜」
そ、そうですか……。
**
「それじゃあ、次の階層に……」
みんなが魚を食べている間、私は干し肉となった鳥さんをチビチビと食べ。やっとこさ出発だ。
「また次は別の雰囲気になるのかな〜」
そうじゃないの?
だって、あの魚、ボス級でしょ。
次は海鮮じゃないほうが……。
「あ、足がたくさんある」
え?
私がその先を覗くと。
「きゃあ〜!!」
飛華が盛大な悲鳴をあげる。……きっと飛華にとっては嬉しいんだろう。
だって、こんな海鮮、私には食べたくも思えないだろうけど、飛華にとっては嬉しいだろうね。
「なんなの、これ!!」
え?
足がたくさんあるし……イカとタコだよね、多分。
「美華、私、これは食べたくないかな……」
「風華、私もだよ……」
え?
「私もコイツはいらないかな〜」
「私もだよ、陽華ちゃん」
なんで?
「なんで魚は良くてコイツらはダメなの!?」
「逆に稜華は食べたいの?」
「いや、全く」
「よし、強行突破しよう。稜華、消しちゃってもいいよ」
「え、そしたら素材が残んないじゃん」
さっき言ってくれたでしょ?
「え? ボス級だけで良くない?」
あ、確かに。
「じゃあ、また強行突破……」
「え? 飽きない?」
……。
それを言われても……。
「じゃあ何か新しい方法、思いつくの?」
思いつきませんね〜。
「むしろ、全部倒しちゃう?」
いいの?
「飛華、いいの!?」
「もう、めんどくさいし全部倒さない?」
「面白そう! ね、美華」
「そうだね、風華!」
「そろそろダンジョン攻略も終わりだろうし……」
私達、もう30階層前まで来ているし、途中寝たしね。
「じゃあ、レッツゴー!! ……あ、ある程度は防御とかもよろしく!」
飛華……結局自分が魔法をたくさん放ちたいだけでは……。
〜飛華がバンバン魔法を放っています。しばらくお待ちください〜




