102 焼き鳥パーティー
「「「「「焼き鳥大作戦!!」」」」」
……え?
あ、うん……。
だけど、気合いを入れたのも虚しく、程なくして鳥さんは地に倒れ伏した。
「あ〜、倒れちゃった」
飛華、残念そうに言わない。
素材が手に入るんだし、いいじゃない。
「まぁ、いっか」
そうだよそうだよ。大きな骨とくちばし、目玉、お肉……などなど。
素材となる部分は丁寧に抜き取り、綺麗にする。素材の部分があらかた取れたら、素材は寮室に転移させておいた。……帰って時に悲惨なことになっていそうだけど。
残っているのは、未解体の食用部分。
「それじゃあ〜」
はいはい。
「焼き鳥パーティー、始めるよ〜!」
分かってますって。
「……ちなみに誰か、解体できる〜?」
……流石に食用は無理です。
だって、難しいんだもん! 素材を取るよりも、断然難しい!
綺麗に切らなきゃいけないし、内臓とかの処分は……魔法で消せばいっか。
「……とりあえず、丸焼きにする?」
そうですね。
「それにするとしても毛皮が邪魔だよね、美華」
「そうだね、風華。毛があるとあまり美味しくなさそう」
「つまり、毛皮を剥ぎ取るっていうこと?」
「「そういうこと〜」」
最初からそう言ってください。
「毛皮ってどうやって剥くの?」
「……上手くやるんだよ、夢華」
「……この流れ、私がやるの?」
……。
「そうかも」
「そんな〜!」
**
「終わった〜」
1時間ぐらいかけ、私達はやっと、鳥さんを焼く段階まで来た。鳥そのものが大きいから、肉に綺麗にした棒を突き刺して。地面に立てたY字型の棒で支えるスタイルだ。……いつその棒が折れるか、不安で仕方ないけど。
陽華が無菌空間? とやらを作ってくれたから衛生的。安心して食べられるだろう。
「それじゃあ」
私たちの片手にはコップに入った、あま〜い砂糖水。ただ、そのままだと甘すぎるからレモンを絞ってある。
「まだお肉は焼けていないけど、ね。風華」
「先に乾杯しようよ、美華」
「それじゃあ〜」
「私達の……健闘? を、祈って!」
「「「「「「かんぱ〜い!!」」」」」」
後ろの方で、パァ〜ンという音と共に紙吹雪が舞った。
「どう? お祝いバージョンなんだよ。ね、美華」
「そうだね、風華。新しい魔法の開発!」
あ、双子の魔法でしたか。一瞬、敵襲かと思いました。
ダンジョンにいることも忘れるぐらいワイワイしている。
鳥さんもいい具合に焼けてきたらしく、飛華が豪快に切り落としている。
「はい、これ。冷めないうちに早く食べなよ」
「あ、うん。ありがと」
飛華に鶏肉を渡されるけど……そんなにお腹、減っていないんですよ。というか、山盛りって言っていいぐらい盛られている。食べ切れる気がしないんですけど。しかも、まだお肉はあるみたいだし。
「……これ、どうしよう」
どうしょうもないよね。
私達で食べるか、誰かにお裾分けするか、転移させるか、捨てるか……。
「捨てるのはもったいないし……誰もこのあたりまでこなさそうよね」
そうですね。こんな深層まで来る生徒もなかなか居ない……。
つまり、選択肢は最初から一つだったわけだ。
「……転移させる?」
「どこに転移させるの〜?」
それが問題です。
流石にお肉を寮の部屋に送るわけにはいかないし。かといって、屋外に置いておくのもなぁ……。
「……食堂に送る?」
「え? みんなの夕ご飯にするの? 美華」
「そうじゃないかな、風華。だって、それくらいの量はあるし」
確かに。
「じゃあ、食堂に送るけど、いい?」
「流石にいきなりドンってお肉が来たら食堂の人もびっくりしちゃうでしょ。だったら、メモをつけないとだよ。稜華ちゃん」
なるほど。
「夢華、お願い」
「え!? 私なの!?」
そうじゃない? 知らないけど。
夢華に書いてもらった伝言と共に鳥さん丸焼きを食堂に転移させる。
……うん、美味しく調理してもらってね。既に丸焼きになっているけど。
「じゃあ、休憩もしたし……」
「おやすみ〜」
「グゥ」
寝た。
双子が、寝た。
「飛華、私も寝る〜」
「恐ろしい眠気が……」
寝た。
陽華と夢華が、寝た。
「……」
お腹いっぱい食べると、眠くなるのかな?
飛華がギギギ……と私の方をむく。
「稜華……みんな寝ちゃった……」
「あ〜、うん、しょうがないよ。だって結構魔力も体力も使っただろうし……。ダンジョンに潜って半日弱が経っているから結構疲れていると思う。そう……適度な休息も重要、だと思うよ」
私も眠くなってきたんですけど。
「そう……そうよね。じゃあ、1時間後に起きよう? ね?」
「いいけど」
私としても休息はありがたいです。
「流石に地べたに寝るのはどうかと思うから……」
「了解」
私は魔法で空気のベッドを作る。ふわふわしているから、起きた時に体が痛いっていうこともないだろう……落ちない限り。
ま、まぁ、いざとなったら風華に頼るしか……。
「じゃあ、おやすみ、稜華」
「うん。おやすみ、飛華」
私はタイマーを1時間後にセットし、目を閉じた。
**
「新しき■■■■の誕生に、祝福を」
それは、ただの通過行事でしかなかった。
一族全員が一同に会し、若き■■■■の誕生を寿く。これを、成人と言っていた。大人たちは。
幼いアルキーミアにとって、この行事は何よりも苦痛だった。長い時間、ずっとじっとし、上位者の指示に従わなければならない。それすらできないのであれば、教育が足りないと判断され、さらに厳しい教育が為される。
ただ、今のアルキーミアにとって、この行事はこの上ない栄誉なものとなった。
自身が、■■■■の一員と、認められるのだから。
一人前と認められた者には、それぞれの仕事が与えられる。
例えば、宗家を守る、とか。
例えば、新しい分家を作る、とか。
例えば、■■■■の研究をする、とか。
どの仕事にせよ、一族の役に立つものだ。
自分には、どのような仕事が与えられるのだろう。
■■■■を信じ、疑うことを知らないアルキーミアは心を躍らせていた。
「アルキーミア・レッジェンダ、及びシナーア・ロイヤルティーには」
来た。
ここで、宗家当主より役目を言い渡されるのだ。
アルキーミアはこれ以上ないほど緊張し、ワクワクしていた。
「王都で魔術師になることを命じる」
ざわり、と周囲がざわめく。
今までになかった言葉だ。少なくとも、アルキーミアが聞いてきた限り。ただ、周囲の大人の反応を見る限り、きっと初めてなのだろう。このような事態は。
「……発言を許可して頂いても良いでしょうか」
そう声を上げたのは、アルキーミアの父だった。
アルキーミアの父は宗家当主の年の離れた弟だ。しかし、成人と共に兄当主の補佐をすることを命じられ、今日まで当主である兄を支えてきた。
……尤も、親子ほど歳が離れていたが。だが、そのことが幸いしたのか、当主はアルキーミアの父を可愛がっていた。
だから、当然の如く、当主はアルキーミアの父に発言の許可を……。
「許さぬ」
有無を言わさぬ、低い声。
広間は、静寂に包まれた。
誰もの間に衝撃が走っただろう。このようなことは、今までに一度もなかった。
「我が一族は今まで、■■■■を継承することを何よりも最上位に置いてきた」
当然だ。
自分の命を捨ててでも、■■■■を守れ、漏洩するな、と言われてきたのだから。
「ただ、ここ数十年、大した研究成果も挙げられていない」
事実だ。
挙げられた研究成果といえば、■■■■は偉大だという、当然の結果だけ。
「近年は王都で まじゅつ とかいう、新たな技術が発達してきているらしい」
まじゅつ。
知らない言葉の響きだった。
「よって、■■■■の更なる発展のため、アルキーミアとシナーアには魔術について学べ」
「「御意に」」
アルキーミアとシナーアは、すぐさま恭順の意を示す。
すると我に帰ったように、大人たちも当主に向かい、恭順の意を示した。
「面をあげよ」
アルキーミアはこの当主が嫌いではなかった。
いつだって、この方の指示には理由があるからだ。意味もわからない命令をされるよりはマシだった。
……ちなみに意味もわからない命令をアルキーミアにしたのは、宗家の長男でアルキーミアの従兄弟だ。この従兄弟はその他色々と問題行動を起こしていたので、本人の知らぬうちに次期当主候補から外され、代わりにこの従兄弟の弟が次期当主候補となっている。
「アルキーミアは今後、魔術師としてレッダ・ミアと名乗るように」
「ご命令のままに」
こうしてアルキーミア・レッジェンダはレッダ・ミアになった。
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