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101 焼き鳥大作戦

「……ねぇ、これってヤバいんじゃない?」


15階層到達を喜んでいた私達。


「ヤバいよね、美華」

「どっからどう考えてもそうだよ、風華……」


いつの間にか、鳥の大群に囲まれてしまったのです……。




**




「フィアマ・ランチャ!」


飛華が魔法を放つものも、鳥達は器用に避けて攻撃を避けてしまう。

しかも鳥達は大きな半円を作って私達を前後左右、そして上から取り囲み、徐々に近づいてきている。


「とりあえず、結界は張っておいたよ〜」

「陽華ちゃん、ナイス」


それにしてもどうしよう。

攻撃しても避けられるし。しかも魔物でしょ? これ。ただの鳥じゃないもん。


「風華、どうする?」

「どうにかするしかないでしょ、美華」


まぁ、どうにかしないといけないもんね。


「……ねぇ、飛華ちゃん」

「なぁに?」

「これ、全部倒さなくても、撒ければ良いんでしょ?」

「そうだけど……」


夢華は何か決意したように言った。


「美華ちゃん、強化魔法って使える?」

「使えるけど?」

「……じゃあ、さ。私が補助をするから、美華ちゃんがみんなを強化させることって……できる?」


美華はその瞳に不敵な色を浮かべた。

まるで面白そうだ、というように。


「良いわよ。やってやろうじゃない。私を誰だと思っているのよ」

「美華ちゃん」

「あ、うん……まぁ、そうね」

「美華、予想通りの答えが返ってこなくて残念だね。最強な美華ちゃん! とか言う答えを望んでたの?」

「は、はぁ!? バッカじゃないの、風華!」


あ、図星っぽい。


「とにかく! 私はみんなに強化魔法をかける。そしたらみんなは突っ走って。恐れないで。私が強化すればこんな魔物の鳥なんて痛くも痒くもないわよ」


へ、へぇ……。


「いくわよ。……強化魔法、発動っ!」

「え? あ、魔法補助!」


え、いきなりすぎない?

夢華とのタイミングもズレちゃっているし。


「走って走って! 私の魔力負担軽減のために制限時間も設けたから! そうこう話している間に、あと1分半!」


はあぁ!?

これ、ヤバすぎでしょ。私に長距離走を求めないでください。


「情報強化」


筋力と持久力と運動神経をさらにレベルアップ!

既に飛華は鳥の群れをこえ、かなり向こうにいる。飛華だけじゃなくて、もうほとんどの姉妹が鳥の群れを脱しようとしている。……置いていかれちゃうね。

こんなに意識して走るなんてこと、記憶にない。


「……撒けた?」

「そう、みたいだね……」


魔法をかけたおかげで、多少息が乱れる程度で済んだ。……うん、よくこれくらいで済んだよ。


「……さん、に、いち。うん、持続効果時間、終了。無事に撒けて良かったよ。風華、私、すごいでしょ?」

「ソウダネー、美華はスゴイ」

「……風華、なんでそんなに棒読みなわけ?」


あはは。

とにかく切り抜けられて良かったです。


「やっぱり油断は禁物だね〜」


そうですね。


「なんか、統率をとっているみたいだから……こっちも本格的に戦略を練らないと、ね」


ふむふむ……。


「って、戦略を練るのは私の仕事か」

「そうね。稜華、よろしく」


そう……そうですね……。

私が戦略を練っている間は基本的に防戦になるだろうけど……。


「それにしても、焼き鳥を逃しちゃった〜」


……陽華。まだ焼き鳥を食べる気ですか。

さっきのは干物にしちゃったけど。


「このあたりの階層は鳥がたくさんいるから……ご飯の時間は焼き鳥にする?」

「うん!そうする〜。飛華、ありがと〜」


陽華、ほんとよく食べるよね。そしてかなり食べるにも関わらず太らないという……すごいです。普段の運動量の違いなのでしょうか。


「というか、さっきの鳥の大群、二重結界を張って反射効果をつけて攻撃すれば良かったんじゃないかな……」


夢華?

キミハナニヲイイハジメルノデスカ?


「なるほど? 美華、わかった?」

「多分。風華、大体わかったよ」


さすが双子。


「えっと、大きめに鳥の大群を囲う結界と私たちを守る結界を張るでしょ?」


はい。

2重の結界になりますね。


「で、鳥達を逃さない結界の内側に反射魔法の効果をつける」


ほうほう。


「で、私たちを守る結界の外側にも反射魔法の効果をつけて、内側からは攻撃が通るようにすれば」


効率よく、かつ確実に焼き鳥ができる……。


「夢華、先に言ってよ〜。実行するの、大体私だから〜」

「いや、思いついたのは今なんだよ、陽華ちゃん……」


むしろ瀕死の鳥がたくさん地面に落ちて足の踏み場がなくなりそう……。


「じゃあ、次の大群が来たらそうする〜」


いや、大群なんて来てほしくないんですけど……。

というか、いくら6人いるとはいえ、何十羽の鳥を食べ切るのは無理じゃないかな……。それにあの鳥、魔物だし……。


「まぁ、来ないことを願いましょ……」


流石の飛華もお手上げのようだ。


「そろそろ一定階層になるだろうか、ボス級の魔物が来るわよ」


え?

ナニソレ。


「稜華、ちゃんと説明は聞かないとダメだよ〜」


焼き鳥に夢中の陽華には言われたくないです。


「一定の階層ごとに、ずば抜けた強さの獣とか魔物がいるんだよ、稜華ちゃん」


へぇ。そうなんですか。


「今まで法則的に5階層ごとぐらいだよね、美華」

「うん、風華。大体それくらいだったよ」


知りませんでした。

新しい発見、です。


「一定階層内によく出る魔物が多いから……次は多分、鳥ね」

「鳥〜!」


陽華、そんなに嬉しそうにしないで……。


「陽華も焼き鳥が食べたいみたいだし……ある程度の素材を取ったら焼き鳥にする?」

「やった〜」


めっちゃ陽華が喜んでいるんですけど。

私的には焼き鳥より素材の方がいい……。

というか、みなさん、手と足の速さが違う……。呑気な会話をしているくせに進む速度はめちゃくちゃ早いし……。魔物とかが現れても焼き鳥パワーでどうにかしているよ……。

そして、地下20階層。


「あ、大きい焼き鳥がいる〜!」


陽華さん!?

ついに魔物が焼き鳥に見える幻視が見えるようになったんですか!?


「じゃあ、さっき夢華が考えた作戦で行く?」

「オッケ〜!」


陽華、まじノリノリ……。


「追加案は稜華ちゃん、お願いね」


了解〜。


「稜華、全て分解しないでね〜。素材と焼き鳥が残るぐらいで〜」

「……了解」


流石に私も素材は無駄にしないって。


「それじゃあ行くよ、風華」

「わかっているわよ、美華」

「「いざ、焼き鳥」」


大きな焼き鳥……じゃないな、魔物の鳥がビクッとなる。

きっと殺気を感じ取ったんだろうね。しかも尋常じゃないだろうし。


「二重結界、構築!」


陽華が結界を張った。


「陽華、反射魔法の効果はついてる?」

「ゴメン、無理だった〜」


そうか。

じゃあ、私が付与しよう。


「情報付与」


結界という情報に魔法を付与して。これで、大丈夫なはずだ。

ダンジョン内だし、人を傷つける以外の用法でSランク魔法を使っても怒られないし。


「飛華、試しに魔法を放ってみて。強力じゃなくていいから」

「え?いいの?」


飛華は目をランランと輝かせ、鳥さんの方に向き直った。


「爆炎!!」


うわぁ。

飛華の日頃の鬱憤が魔法に込められてる……。


「あ、避けられちゃった」


飛華の強力な殺気込みの魔法を避けた鳥は余裕そうに鳴く。……だけど。




「ギャアァ!!!」


耳が痛くなるような高音の鳴き声。

結界に当たった飛華の魔法が、跳ね返って跳ね返って、鳥さんに直撃したのだ。

……うん、効果は問題なさそう。


「陽華はこのまま結界維持。双子は後方支援。残りで鳥さんをボコボコにする。……攻撃したかったら他の人がフォローできる範囲以内でお願いします」


「りょ〜かい! 風華、行くよ!」

「分かっているよ、美華!」


その次の瞬間、聞こえる大きな爆発音。飛華がもう、魔法を発動して鳥さんにぶつかったのだ。


「行くよ〜」


おおー。






「「「「「焼き鳥大作戦!!」」」」」




……え?

あ、うん……。

焼き鳥大作戦、始動!

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