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勇者は、後のマツリ!  作者: くるす
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第三話‐①



「いやああああ!!やばい、やばい、やばい!!気持ち悪い!!!」


次の目的地である『職の街 アステリ』に向かう道中。私とリリィの前に立ちはだかったのは謎の物体。

丸くて、半透明で、うねうね動いて……しかもそれが一体じゃなくて、五体位いて…気持ち悪い。

しかもしかも、こっちに向かってくるのに身体に当たっても痛くも痒くもない。うねうね動いているだけで更に気持ち悪い。


「も、もう!何これ~!気持ち悪い!気持ち悪い!!」

「マツリ!下がって!!」


リリィの言葉に私は反射的に下がると、地面から突如として何かが出てきた。


「さぁ、やっちゃいなさい!!私のゴーレム!!」


リリィの指示で土型の人形?であるゴーレムが謎の物体に向かって攻撃していく。ゴーレムによって攻撃された謎の物体は抵抗する事なく潰れ、消えていった。

そして、気付いた時には全ての謎の物体を消していた。


「す、凄い……。」

「ふぅ、いい仕事をしたわ…。さっきのも魔物よ。超低レベルだけど倒すとちゃんと経験値貰えるから、マツリも倒しておいた方がいいわよ。」

「ま、魔物……あんな気持ち悪いやつも魔物なんだ。…にしてもリリィのゴーレム、前より性能上がってない?なんか前より強そうだったけど…、」

「それはそうよ~。私の魔術師のレベルが上がってるからねぇ~。前より強いゴーレムを召喚する事が可能よ。」

「レベルが上がってるから……前から気になってたけど経験値ってそもそも何なの?さっきみたいな魔物を倒せば得られる力みたいな事?」

「う~ん、ちょっと違うかなぁ~。街につくまで教えてあげる。これからの事を考えれば、マツリにも必要な知識だからね。」


持っていた杖をマジックの様に消したリリィが歩き始める。そんなリリィを私は追いかける様にして隣に並び歩き始めると、リリィは得意気に口を開いた。


「まず経験値っていうのは、自身の経験した力を数値化したもの。難しい高等魔術を成功させたり、強い技を出したり、強い魔物を倒したり…そういうのにも経験値が必要なの。経験値はマツリの言った通り魔物を倒したり、他にも勉強したり修行したり…やり方は色々あるけど、レベルを上げる為に必要な作業をして経験を積む。それを数値化したものって言えば分かりやすいかしら。マツリも経験ない?何か…出来なかった事が何度も練習して出来る様になった経験。」

「そりゃ色々あるよ。乗れなかった一輪車を何度も練習して乗れる様になったとか…、」


料理とかも出来なかったけど何度もやっていくうちに人並みに出来る様になったし、仕事も何度もしているうちに慣れる位まで出来る様になった。

リリィの言う経験値っていうのは、こういう経験で得られた力って事なのかな。


「けど私の世界はそれを数値化したりしてないよ。てか、出来ないと思うし……それに、魔物なんていないから倒しても経験値ってやつもらえないし。」

「そうなの?マツリのいる世界は不便なのね。まぁ、魔物がいないのは良い事だけど。」

「不便かどうか考えた事はなかったけど……逆に経験値を知ると、どういうメリットがあるの?」

「そりゃあ…一番は自分のレベルがどれ位か分かる事じゃない?そうすれば色々出来るし。そうね…例えば高収入の仕事が出来るとか。」

「高収入の仕事。」

「そうそう。うーん…例えば、昨日いた魔物狩りで考えてみましょうか。魔物狩りの説明はしたわよね?」

「う、うん。魔物を狩って生計を立ててるって人達だよね?」

「そ。さっき私達が倒した魔物も対象よ。けどさっきの魔物はレベルが低いからそんなに儲からない。儲かる程の魔物はかなり高レベルで危険なの。自分のレベルが高くないと相手に出来ない。」

「相手に出来ないって……攻撃が効かないとか?」

「ま、そんな感じ。もっと詳しく言うと弱い攻撃が効かない。相手にするには強力な攻撃が必要になる。けど、強力な攻撃をするには自身のレベルが高くないと攻撃方法を習得する事が出来ないって訳。だからこそ修行なり、魔物を倒して経験値を得る事によってレベルの高い魔物を狩る事が出来る。高い魔物を狩れば、報奨金が貰える。それで生計立てられる。簡単でしょ?勿論、この世界はレベルが低くても生活出来るわ。けど働いて、ちゃんと稼ぎたいと思ってるなら、ある程度レベルがないと生活出来ないわよ。」

「へぇ…じゃあ経験値って必要な事なんだ。」

「そうね。これから旅をする訳だし、魔王を封印するには結構経験値は必要にはなるでしょう。でも、その前にマツリには適正職業が何なのか知らないといけないわ。」

「て、適正職業?」


な、何それ……また新しいワード。…ん?いや、職業については昨日宿屋でも聞いていた気がする。肝心の内容は聞けず終いだったけど……。


「マツリの世界はどうかは知らないけど、この世界にいる人達は産まれた瞬間から最も適している職業が分かるの。私なら『魔術師』ね。」

「う、産まれた瞬間に?リリィも産まれた瞬間に魔術師が適してるって言われたの?」

「そうよ。産まれる時は必ず助産師と適正職業を判別する『祈祷師』や『巫女』、『占い師』が同伴していて、そこで言われるの。基準は分からないけど、私の場合は元々魔術師の家系だし、遺伝的要因が大きいんじゃないかしら。」

「そ、そんな事あるの。産まれた瞬間、自分が将来就く職業が決められてるって……、」

「あら、なんか不服そうな顔。」

「そ、そりゃあ嫌でしょ。他人に自分の将来が決められるなんて……。リリィは嫌じゃなかったの?」

「……考えた事なかったわ。だってこっちの世界にいる以上、それが当たり前な訳だし……。まぁ、中には言われた適正職業とは違う職業に就いたって人はいるみたいだけど…レベルを上げるにも技を習得するにしても経験値が得られにくいとかで挫折する人が殆どだって聞いたわ。」

「リリィは…満足してるの?魔術師になって。」

「それも分からないわ。だってこれが私だし、考える必要がないっていうか……って話が脱線したわね。」


コホン、と一つ咳払いをするとリリィは再び話し始める。


「マツリがこの世界に来た以上、マツリにも適正職業があると思うの。マツリはこっちの世界の字も読めたし、この世界に溶け込み始めているみたいだしね。」

「ん?勇者っていうのが職業じゃないの?」

「勇者は肩書みたいなもので職業じゃないわ。歴代の勇者達も様々な職業があってこその勇者だったみたいだし、マツリにも適正職業は有る筈!」

「それを知る為に街に行く…って事?」

「そうよ。これから向かう『職の街 アステリ』には『占いの館』があるから、そこで適正職業を教えてもらうの。ついでに私のレベルが今どれ位なのかも教えてもらうつもりよ。」

「『占いの館』?」

「『占い師』がいる館、だから『占いの館』。さっきも言ったけど適正職業を判別する事が出来る職業の一つが『占い師』で職業だけじゃなくて経験値やレベル、後はレベルの高い占い師だと未来の先読みとかもできるとか……。」

「…私の知ってる占い師とは微妙に違うね。」


私の知っている占い師と言えば、水晶玉やタロットカードを使って占った人物の性格や運勢を見る人の事だ。こっちの世界の人達はもっと現実的というか、自分の将来や現状を決めてもらう人の事らしい。

…にしても…私にもあるのか……適正職業ってやつ。一応社会人だし、今も店員として働いてるけど……もしかしたら私の適正職業は違うかもしれない。

リリィみたいな魔術師の可能性もあるし、魔物狩りの人みたいな強い人になるかもしれない……想像出来ないけど。

………気にならない、と言われたら嘘で正直な話、気になる。


「あ、マツリ。見えてきたわよ!『職の街 アステリ』!」

「え?あ…本当だ。」


リリィの指をさした先、そこには確かに大きな門が見えて、その先には広い街並みが見える。

遠くからでも広い街並みが見えるという事は……昨日いた村より遥かに大きな所なのだろう。


「さ、後少しよ。行きましょ!」

「だ、だから毎回先に行かないで!」


●●●


『職の街 アステリ』は昨日いた村より遥かに大きく、そして……綺麗だった。


「わぁ……凄い…。」

軒並みの建物は全てレンガ調で一枚一枚瓦が並べられた屋根の色は赤や黄色と鮮やかだ。建物にはそれぞれアーチ状の扉があり、どれも細かな装飾がされている。窓には色鮮やかな花が植えられた花瓶や花壇が並んでいて…まるでドールハウスの様で凄く…可愛い。

レンガで造られた道には沢山の人が行き交っていて賑やかだ。私の知る都会の賑わいとは違い、どことなく異質でどことなく楽し気。外国にいる気分だ。

……いや、いる世界が違うのだし、外国といえば外国なのかもしれない。


「何ボーっとしてるの?そんな道のど真ん中に立ってたらぶつかっちゃうわよ?」

「あ、ご、ごめん。その……凄く綺麗な街並みだったから、見とれちゃって……。」

「アステリは職の街と言われてるだけあって色々な職人がいるの。この綺麗な街並みも色々な、それこそ沢山の職人達が作り上げた云わば芸術作品。マツリが見惚れるのも無理はないわ。」


芸術作品……確かに、そう言われたら納得してしまう程綺麗な街並みだ。今この瞬間だって、すぐに目を奪われてしま……、


「とりあえず、行くわよ!!マツリ!!」

「え、ちょ…!?」


強引に手をとられたかと思いきや、リリィは私の手を引きながら歩きだす。

ずんずんと前へと進んでいくリリィの背中はどことなく楽しそうで活き活きしている。その理由が何なのか私には分からないけど……楽しそうにしているリリィを止める気にもなれなかった。


「見えてきたわよ!マツリ!『占いの館』!」

「え、ほ、本当?」


リリィに手を引かれて歩いていく事数分、この街に来た目的である『占い師』がいる『占いの館』についたみたいだ。

リリィの歩く足が止まり、私はリリィと共に目の前にある建物…というより大型のテントを見上げた。


「…占いの、館……こ、これが?」

「そうよ。ここが『占いの館』よ。」

「……う、胡散臭い……。凄く怪しい…。」


目の前に聳える様にして立つ大型の紫色のテント。レンガ調の街並みとあまりにも不釣り合いで怪しげなテント。

入り口らしき場所にはどこの民族が用意したのか分からない怪しげな木彫りの人形が二体鎮座していて、その頭上には古いのか所々錆びている看板。そしてそこには『占いの館』と掠れた文字が書かれてある。

……怪しい。怪しすぎて、不安になる。


「ほ、本当に大丈夫なの?ここ…。」

「だ、大丈夫よ!…確かに初見さんから見たら怪しさ抜群だし、不信感を抱くのは仕方がない出で立ちだけど……ここにいる占い師の腕は確かだし、私も何度もお世話になってるし……そ、それにほら!これを見て!」


半分焦りながらリリィは入り口に鎮座している人形の片方を指さした。もっと詳しく言うと人形が手にしている小さな木の板をさしている。

その木の板には王冠のマークと『女王認可』という文字が彫られていた。


「これは王都…つまり国が認めた占い師がいるっていう証拠なの。だから実力は本物だし、安心して!」

「国が認めた?」

「そう。占い師として技術、透視能力…そういったものを国が試験するの。そして高い能力を持つ者だけが合格出来て、こうして国から合格した証を貰えるの。勿論試験は占い師だけじゃなくて他の職業でもあるわ。」

「へぇ…つまり私の世界でいう国家公務員…的な感じ?」

「国から認められた者は国に忠誠を誓う代わりに生活や仕事に必要な助成金が貰えるの。それに、ここみたいに店を持つ者は公的文書を発行出来るのよ。」

「公的文書?」

「そうよ。例えばここの場合は『私が出した結論は国が認めたものである』みたいな文書…つまり証明書を国として発行出来るの。」

「証明書…。この世界でもそういうのあるんだ。」

「上級レベルの仕事や何か申請する際に必要になるの。こういう公的文書が発行出来るのは国が認めた者達だけ…つまりこの王都のマークを目印にした所でしか出来ないっていう訳。他の所より少し割高だけど、国が認めたから実力は本物だし、何より信用出来る。」

「他は安かったり、信用出来ないって事?」

「そんな事はないけど……中には無償でしてくれる所もある位だし……けどそれ以上に信用出来るっていう点では安心でしょ?マツリだってこれから自分の事を聞くってなったら信用ある所の方が安心じゃない?」

「そ、そりゃあ…そうだけど…。」


まずそもそも『占い師』に見てもらうっていう事態怪しいというか胡散臭いというか……あまり信用ないのが本音だ。本当に出来るのかと疑っているのかもしれない。

…だからこそ、リリィの言う通り、少しでも信用出来る場所を選べるのなら……私はそちらをとりたいと思う。


「…本当に、本っっ当に大丈夫なんだよね?」

「大丈夫だって!国が認めた場所なんだから大丈夫!…もう!ほら、行くわよ!」

「ちょ…!またそうやって強引に連れて行こうとするんだから…!」

「こうでもしないとずっと考えこんで入ろうとしないでしょ?マツリにはこれ位の強引さが丁度いいわよ。…すみませーん!二人、お願いしまーす!!」

「も、もう!一人で歩けるから、手を放して!リリィーーー!!」














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