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勇者は、後のマツリ!  作者: くるす
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第十二話‐④



占いの館から出てしばらく歩くと話に聞いていた南側の酒場に辿り着いた。

以前利用していた酒場に比べると外観や規模の大きさが違った。明らかに建物は大きく、塗装され整えられた壁や屋根は綺麗だ。だが、その中でも目にいったのはそれらを誇張する様な電飾の数だ。

赤、青、緑、白……まるでクリスマスの様な電飾の鮮やかさと明るさに一瞬夜だという事を忘れそうになる。

意気揚々と中へと入っていくリリィを先頭に私も続いて中に入った。中は明るい外観と違い薄暗く、ジャズに似た落ち着いた音楽が流れている。壁に並べられた無数の酒のボトルやカウンターといったものは以前利用していた酒場と似た様な内装だったけれど、明らかに雰囲気が違う。

以前利用していた酒場というのはこう……常にがやがやと騒いでいて賑わっていた。けれどここは静かで、落ち着いている。利用している人達も話す数は少なく、飲み物や食べ物を口にしている。

…富裕層が住んでいる地区とマルサは言っていたけれど……確かにそう言われてみたら利用している人達の服装は細かな細工や刺しゅうがしてあって豪華そうだ。この雰囲気でも納得がいく。

店の一番奥にある席に私達は腰を落ち着けると席にあったメニュー表を眺めてはリリィが手早く、適当に注文をした。誰の意見も聞かずに適当に注文するリリィに一瞬「勝手だな」と思ったけれど、思っただけで口にする事はなかった。

それはどうやら皆も同じらしく、シフォンに至っては初めての酒場とあって目を輝かせてはキョロキョロと辺りを見渡していた。


「にしても地区が違うっていうだけで全然街の雰囲気は違うのね。驚いたわ。」

「あ、それ私も思ったよ。前行った酒場と比べて静かで落ち着てるよね。」

「そうなんですか?」

「うん。向こうはもっとがやがやとしてたし、賑やかっただったよ。」

「それも五月蠅い位ね。ま、向こうはここと違って仕事目的で通う人が多かったからね。それを証拠に、ここには依頼掲示板はないでしょ?」

「え?あ…そういえば……、」


リリィに指摘されて改めて辺りを見渡すが……確かに、仕事の依頼表が貼られている依頼掲示板がない。あれだけ大きく、目立つものがあればすぐに気づく筈なのに……それがないという事は、ここは本当に食べるだけ所なんだ…。


「にしても、不思議だよなぁ。門が閉じられているっていうのに、ここら辺の奴等は本当に落ち着いているよな。むしろ落ち着きすぎだろ。」

「確かに……。兄さんの言う通りですね。門が閉じらていた西側地区は閉じられたとあって騒がしがったですし、ここまでくる道中も門の事で賑わってました。けど…南門が閉じられた、ここ南地区はなんというか……話題になる程賑わってませんね。それこそ静かすぎる位です。」


ジークとシフォンの言葉に私はこの酒場まで来る道中の事を思い出した。…確かに、門の事で賑わっていた西側地区やマルサのいた占いの館付近も話題が上がっていた。けれど、南側地区は話題すらあがっていない。普段通り、みたいな生活感さえある。

確認の為に酒場に向かう前に南門の様子を見てきたけれど……話に聞いていた通り、門は閉じられており、西門と同様同文の立て札が用意されていた。ただ、少し違ったのは……門の前にいた人達の数だ。

門が閉じられているとあって様子を伺う者や行商人らしき人達が門の付近にいたけれど、西門に比べて圧倒的に少なかった。野次馬が少なかったのだ。まぁ、もう夜だし人が少ないと感じるのは当たり前かもしれないけれど……西門がある地区とは明らかに違う雰囲気があった。


「まるで何も知らないみたいだな。それか……知っていても興味がないか、だな。」

「でもマルサはここの人達は噂好きだって言っていたけど……、」

「それはそうだよ。噂好きなのは上流階級の方々で、ここはそんな方々に情報を売る人達が集まる場所だもん。」

「情報を売る……成程。……って、え?」


聞き慣れない高い女性の声。同席するリリィやシフォンとは明らかに違う声に私を含め皆も驚いた様に目を見開くと、そのまま反射的に視線を声のした方へと向けた。

視線の先…唯一驚いた表情を見せず静かに座るクロトの真後ろ、そこには一人の少女が笑みを浮かべながら立っていた。

身軽そうな服装に首元には身の丈ある長いマフラー。笑みを浮かべ細くなった瞳は淡い緑色で金髪のツインテールによく合っている。小柄だが見た目から活発そうな雰囲気を放つ少女は私達の驚いた表情を目の当たりにすると更に嬉しそうに笑みを浮かべては「ども!」と声をあげた。


「御初御目にかかります~。皆々様。驚かせてしまって申し訳ありませ~ん。」

「な…アンタ、誰よ?いきなり私達の話に割り込んできて……、」

「ふふふ……商売の匂いがしましてな……私の名前は『ナタン』。しがない『情報屋』でございまする。」

「じょ、情報屋…?」


ペコリと頭を下げながら話す少女…ナタンさんに私は同じ言葉を繰り返すとナタンさんは下げていた頭を上げながら「はい~」と笑みを浮かべた。


「この街を拠点に西へ東へ北から南…どんな種類も問わず、情報を集めてはそれを売り買いしている者ですよ~。」

「な、成程…?」

「その情報屋が何の用なのよ。」

「情報屋が話しかけるのは勿論、商売の為ですよ~。私の情報、買いませんか?今なら初回特典でお安くしときますよ~。」

「お断りよ!!」


ニコニコと笑顔で話すナタンさんにリリィは考える事なく速攻断った。速攻断り、その上物凄い怒りの形相を浮かべるリリィに正直驚いた。

噂が流れているとはいえ、誰かが話している様子も話題に出している者もいないこの状況……例え情報を売っている人だったとしても普段のリリィなら話を聞きそうなのに……、


「何もそんな必死に断らなくてもいいんじゃないか?俺達が動かなくても向こうから話が飛んでくるなんて……中々ないぞ?」

「うっさいわね。情報屋は信用ならないのよ。高い仕事の情報を買ったのに実際は何もなかったり、逆に楽な仕事の情報を買ったら酷い仕事の情報だったり……、」

「つまり…リリィさんは情報屋に色々騙されて信用がないと……、」

「さっきからそう言ってんでしょ!?」

「ヒッ!す、すみません…!」

「…それに、情報屋は職業じゃないわ。魔物狩りみたいな肩書き…つまり、情報屋だって偽っている可能性がある。」

「…あれま。私の事を疑ってるんですねぇ……しくしく、私は悲しいでありんす……でも、言いたい事は分かります。情報屋なんて曖昧な仕事、誰もやりたがらないし、疑う人は疑いますからね~。」


リリィに疑いの目を向けられているにも関わらず、ナタンさんは気にしていないのか、それとも言われ慣れているのか表情を変える事はなかった。


「情報屋は信用第一ですからね~。ここはまず、信用してもらう為に……貴方から!!!」

「え!?わ、私ですか…!?」


勢いよく振り返ったかと思ったら、そのままの勢いでシフォンに指をさしたナタンさん。さされたシフォンは突然の事に目を見開いて驚いていたが、ナタンさんは臆する事なく言葉を続けた。


「綺麗な髪色ですね~。その独特な髪色と瞳の色、そして突出した長い耳……いやぁ、エルフ族はエルフ族でも女性のエルフは初めて御見掛けしますよ~。ね、シフォンさん!」

「え!?」

「へ!?な、ななな何故私の名前を…!?」


シフォンが慌てふためくのも無理はない。私だって正直驚いている。何せ……シフォンの名前を名乗ってもいないのに言い当てたのだ。

エルフなのは見た目から分かるだろう。けれど…名前までは当てる事なんて無理に等しい。な、なんでナタンさんはシフォンの名前を当てれ…いや、知っているの!?

驚く私やシフォンに反応があって嬉しいのかナタンさんは得意気に笑みを更に深く浮かべた。


「ふふふ。情報屋としてはこれ位分かって当然ですよ~。」

「まぁ、この街に来てからシフォンの名前はよく言っていたしな。名前ぐらいなら分かるだろ。」

「ジーク。」


ジークの発言に笑みを浮かべていたナタンさんの動きが止まった。止まったかと思いきや難しそうに眉間に皺を寄せた。


「む。むむむ……痛い所を突かれてしまいましたなぁ~。確かにそちらのお嬢さんに関しては今日初めて御見掛けしましたので、名前しか知り得ませんです。」

「フン。大した事ないじゃない。」

「ま、まぁでも!他の方々は名前以外の情報もありますよ!えぇ、勿論!ここからが本気です!安心して下さい!!」

「自分の情報を暴かれるというのは安心していいのか……、」

「ツッコんだらお終いだぜ、マツリ。ここは大人しく聞いていこう。」

「ゴホン……では、改めまして……そこのズバリ痛い所を突いてきたエルフのお兄さん!」

「お、次は俺か。」


名指しされ面白そうに笑みを浮かべるジーク。不安そうにしていたシフォンとは真逆の反応だ。余裕がある。


「名前はジーク、さんですね。何度もこの街や王都を出入りしているので、何度か御見掛けした事があります。ピネーの長の付き人…という体で来ていらしたので、そこそこ実力ある弓使いの方なのでしょうね。」

「あら、合ってるじゃない。」

「そこそこは余計だ。」

「一度目の王都訪問は六年前、二度目は四年前、それ以降は毎年、半年に一度この街を経由して王都に向かわれておりますね。この頃になると夜外を出歩ては街にいる身目麗しいお姉さま方に声を掛け、食事『等』をしてますね~。色男ってやつですね。」

「うわ……そんな事してたの。」

「最低ね。」

「兄さん……。」

「予想外の暴露のせいで女性陣の視線が痛い…、」

「次に貴方!破天荒魔術師、リリィさん!」


ビシッと効果音がつきそうな程、ナタンさんに指をさされたのはリリィだった。リリィは指をさされた事に一瞬目を見開いて驚いたが、すぐに眉間に皺を寄せて顔をしかめた。


「誰が破天荒魔術師よ。天才美少女魔術師でしょうが!」

「それこそ誰だよ。」

「ハァ!?アンタの目は節穴なの!?私以外に誰がいるっていうのよ!!」

「お、落ち着いて下さい!リリィさん!兄さんも煽らないで…!」

「いやぁ…噂に違わぬ破天荒ぶりですな~。…魔術師リリィ。突如としてこの街に現れては依頼をこなし、難易度の高い依頼や金目を要求する通称『魔女』。」

「……魔女…。」


悍ましい程の響きある言葉に思わず繰り返してはチラリと隣に立つリリィに視線を向けた。リリィはというと「失礼ね」と納得いかないと顔をしかめている。

難易度の高い依頼や金目を要求……それはクロトを仲間にした時にも聞いた事がある。確かあの時は……『金にがめつく、片っ端から依頼をこなす我儘な魔術師』だったっけ。


「ですが様々な依頼をこなすとあって実力は本物。今では珍しい『召喚術』を主に魔術を展開している、高レベル魔術師。噂では王都から騎士団に入隊する様、通達があったとか……、」

「召喚術……女王からの通達…?」

「確かに私の魔術はそう呼ばれてるわね。今時は珍しいって言われてるけど、私の家は昔からこうだし何も考えてないわ。通達も初耳。まぁ?依頼をこなしてる時に何度か騎士団に声を掛けられたけど無視したわ。」

「そうなの?」

「そりゃそうでしょ。コッチはアンタを呼ぶ為に必死だったんだから。女王だの騎士団に興味ナシ!」

「女王からの通達を無視って……折角の女王認可の魔術師になれたチャンスなのに。しかも騎士団の魔術師と言ったら将来安泰が約束されてるっていう噂だ。それを蹴るなんてなぁ……、」

「だから、何度も言ってるけど……興味ナシ!それに今の私はあの時と違って強くないから。普通の天才美少女魔術師だから。」


本当に興味がないのか素知らぬ顔を浮かべているリリィ。また出てきた女王っていう言葉……この世界の一番偉い人、なんだよね。そんな人からお誘いを受けていたなんて……初めて聞いた。

こうして今も隣に立って、同性で歳も近いのに……やっぱりリリィは私と違って凄い人、なんだなぁ…。


「そして次に貴方!マツリさん!」

「!」

「単独で動いていたリリィさんに連れられた普通の女の子!商人という職業で低レベルながらレアアイテムであるエレクシールを合成した強運の持ち主!!」

「きょ、強運なのかどうか分からないけど……、」

「噂では御伽噺で有名な世界を救う勇者と言われているが今だに真実は分からぬまま……是非、私としてはその辺の事を詳しく教えて欲しいものですねぇ…。」

「は、はぁ…、」


早口で話すナタンさんの勢いに飲み込まれそうになり言葉に詰まる。いざ自分の番になるとどう反応していいか分からない。

…にしても会った事もないのに、ここまで私の事を知っているなんて……まるで今までずっと一緒にいた様な…そんな錯覚までしてしまいそうになる。


「エレクシールと言えば、そのレアアイテムを使って今まで単独で行動、仲間すら作らなかったクロトを仲間に引き入れてしまうのだから…それはさぞや驚きましたよ~。」

「………、」

「クロトと言えば、この街で一番と言われる剣の使い手。数多くの依頼をこなし、その中でも魔物を狩る依頼を数多くこなしていた事から魔物狩りのクロトと名が通る様になりました。」


魔物狩りのクロト…確かに、その名を聞いたのが最初で、凄腕の剣士だと知ったのは後だった。クロトの実力は自分の目で目の当たりにしたから分かっているつもりだ。


「とても冷静な彼ですが、実は情に厚く、魔物を狩る依頼も人々が困っているからという理由で行っていたとかいないとか。」

「へぇ、中々やるじゃないか。」

「その腰にある剣も歴戦を潜り抜けてきており、刃こぼれ等しても新調せず修理に出しては大事に大事にしてきました。…それもそうですよね~。何せ、その剣は親友の形見なんですから~。」

「え、」


ガタンッ!!


ナタンさんの言葉を遮る様にクロトが突然、立ち上がった。本当に突然の事に静かだった店内が一瞬、更に静かになった気がした。


「クロト…?」

「……先に宿に戻る。」

「え、」

「ちょ…ご飯はどうするのよ!まだ来てないわよ!?」

「適当に食べる。」


そう言い残しクロトは私達の前から去り、酒場を後にした。……声音はいつもと変わらないけれど、雰囲気が少し暗かった。いや、暗かったというより……怖かった。


「…大丈夫かな…クロト…。」

「あちゃ~…今度は私がクロトの痛い所を踏んじゃいましたかね~……。」

「形見がどうとか言ってたわね。あの剣……、」

「まぁ、そうですね。詳しい話は私も分かりませんが、あの剣はクロトの御親友の方が元々使われていたそうで……、」

「つまり…亡くなられたのはクロトさんの御親友の方…。その方が使われていて剣をクロトさんが使っている…という事ですか?」

「そういう事になりますね~。」

「………、」


初めて聞いた。…というより、クロトのプライベートを初めて聞いた気がする。しかも…結構重たい話を本人の口からじゃなく、他人から聞いてしまった。

…亡くなった親友の剣…か。本人にとっては触れられたくない話、というのが他人である私でも分かる。だから…クロトはこの場から離れたのかもしれない。


「…ハァ……やっちまったな…。」

「ん?どうしたの?ジーク。溜め息ついて……、」

「あぁ…いや……ちょっと過去の自分を悔いている所だ。…クロトに申し訳ない事しちまったな……。」


重たい溜め息をつくジークを他所にカウンター奥から店員が料理を持って私達の所へとやってきた。何もなかったテーブルにはリリィが頼んだ料理が並べられていく。

並べ終え店員が去って行くのを確認すると「いや~」とナタンさんが苦笑いを浮かべながらクロトがいた席へ腰を下ろした。あまりにも自然な流れだったから驚くタイミングを逃してしまったが、それすらも気にする事なく用意されたフォークを片手にナタンさんは言葉を続けた。


「何はともあれ、私がちゃんとした情報屋だというのは御理解頂けましたか?」

「そ、それは分かったけれど……、」

「なんでアンタがそこに座って、しかも食べようとしてんのよ。これはアンタの物じゃないですけど。」

「まぁまぁ。固い事言わないで下さいよ~。日夜走り回ってお腹ペコペコなんですから~。」

「そんなの私達には関係ないでしょうが!!」

「そ、れ、に……私の情報買いたくないですか?今なら、このご飯くれるだけで提供しちゃいます。」

「情報ですか?」

「はい~。例えば……この街から出る方法、とか?」

「!!」

「その顔は知りたかった顔ですね~。お声掛けして良かったですよ~。」


フフン、と得意げな笑みを浮かべるナタンさん。この街から出る方法って……私達が求めていたものだ。その方法を知っているなんて……、

驚く私の隣でリリィが「それ本当なの?」と怪しそうに聞くとナタンさんは持っていたフォークをペンを持つ様に持ち帰ると楽しそうに動かしては話し始めた。


「勿論ですよ。…もう皆さんならご存知かもしれませんが、騎士団が今、西と南の門を閉じています。その理由は特別調査をしているから…とありますが、実際は違います。その理由もご存知ですか?」

「うん。確か…南門の向こうにある村が何かに襲われたって……だから門を閉じているって聞いた。」

「その通りです。魔物に襲われたのか、はたまた人の仕業か……どちらにせよ村を『消した』犯人を見つけ、村を一夜で滅ぼした脅威を討伐しなければならなくなった騎士団は門を閉ざし、退路を断ち、一斉調査中…という訳です。」

「マルサが言っていた噂は本当だったのね…。」

「この辺では噂を通り越して、事実として流れ始めていますよ。恐らく二、三日もあれば街全体に広まるでしょうね~。」

「…開門される期間はやはり長いものになりそうなのか?」

「まぁ、そうすぐに開かないでしょうね~。最低でも一か月位掛かるものじゃないでしょうか。」

「長い!…大人しく待つなんてやっぱり無理ね。」

「でしょう?そこで私の持ってきた情報ですよ。……そうですねぇ。今回は初回という訳で御代はこの食事で構いませんよ。どうですか?」


ニコリと笑みを浮かべるナタンさん。私達に売ろうとしている情報…というのは「街から出る方法」というものだろう。開門するまで恐らく一か月以上掛かるとならば、少しでも早く街から出たい。ナタンさんがその術を知っているのならば教えてもらいたい。

何せ私達にはナタンさん以外に街から出る方法というのが思いつかないし、手掛かりもないのだから……、


「………、」

「リリィ…。ここはナタンさんの話を聞かない?それ以外に方法はないんだし……、」

「だな。飯奢るだけで情報をくれるならいいんじゃないか?嘘でも痛手にならないし。」

「もう~信用して下さいよ~。間違った情報なんて渡しませんって~。」

「で、でも本当にご飯だけでいいんですか?それで情報を渡して下さるなんて…、」

「初回だからですよ~。勿論次からは情報に見合った御代を請求します。…これから御贔屓して下さればいいと思っているだけなので、気にしないで下さいな。…で?どうします?買います?」

「………変な話だったら容赦しないわよ。」


皮肉めいたリリィの言葉にナタンさんは更に笑みを浮かべながら「交渉成立」と口にしながら持っていたフォークで目の前にあるお肉を刺した。ナタンさんの言う「街から出る方法」という情報を買う事になった。







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