51話
少しして、サンガさんが、新作と言っていたデザートを持ってきた。
「えっ、これって」
「わぁ、これが新作のデザートなんですか、ケーキではないんですね」
「・・・ん、中にクリームが入っている」
サンガさんが、新作に出したもの、それは僕には、見たことがあるものだった。しかしそれは、しぼんでいた。
「これは、昔の店長が勇者様に教えていただいたといわれているデザートですが、これ、失敗作なんですよ。本当は、ふっくらと生地が膨らみ丸みを帯びるらしいのです。それでこのデザートの名前なんですが勇者様からはシュークリームと呼んでいたそうです」
やっぱ、シュークリーム!!でも、しぼんでいるあたり、焼いた後、すぐに開けてしまったのだろう。
自分もシュークリームを作って失敗をしたことが何度もあった、簡単そうで意外と難しかったんだよな
「おいしい~、これで失敗作なんですか」
「・・・もぐもぐ、十分売れると思う」
昔を思い出している間に、二人は先に失敗作のシュークリームを食べていた。
「そんなわけにはいきません。きちんと完成させたものを店に出したいのです。先ほども話した通りこのデザートは勇者様によって教えてもらったといいましたが、実はこのシュークリームのレシピは無く、昔の店長でさえ、作ることができなかったと言われていたものなんですよ。私は、その店長が残した日記を読んで、ここまで完成させましたが、何度しても失敗続きで」
レシピなし、その昔の店長が書いた日記を読んでここまで、完成させたのはすごいと思うよ。
「あれ、珍しいですね。拓也様が甘いものを食べずに考えごとなんて、食べないんですか?」
「あ、いやいただくよ。もぐっ、んーーー」
クリーム事態の味はいい、しかし、やはりシュー生地が膨らんでいないのはなぁ
「モンドさん、ちょっと、厨房と材料を借ります」
「えっ」
僕は、すぐに、シュークリームを作るための材料を準備した。
「えっと、うわっ、お菓子作りなんて久しぶりだからな、やばい、楽しくなってきた」
この世界に来ては、初めてといえるお菓子作り、材料は、前の世界と変わらないものだから、安心した。
「拓也様?」
「・・・拓也?」
アリスとミーナ、サンガさん、またこの店で働いている人達が、僕のお菓子作りを見て、呆然としている。
「これは!!まさか、いや、でも材料を見て、彼の作業を見る限り」
先に口を開くのは、サンガさんだった。
僕は、この世界でオーブンらしき魔道具にシュー生地を入れて焼く。その次はクリームを作る作業に入る。
「まさか、君は、このシュークリームの作り方を知っているのか!?」
モンドさんの問いに僕はにこっと微笑む。
よし、シュー生地も膨らんでる。
「なっ!?シュークリームが膨らんでいる!どうやって」
「サンガさん、シュークリームは焼いた、その後に、すぐに開けず、温度を少し下げ、さらに10分焼かないといけません、焼いた後にすぐに開けるとせっかく膨らんでいたシューが、しぼんでしまいます」
「そうだったのか、確かに私は焼いた後、いつも、オーブンを開けてしまっていた、そうか、温度を少し下げ、さらに焼かないといけなかったのか・・・」
そして、僕は、徐々にシュークリームを完成させていった。
「どうぞ、サンガさん、これがシュークリームです」
「おお」
サンガさんはそっと、僕が作ったシュークリームを手に取り、食べた。
「う、うまい!!私が作った時よりも、それに不思議に思ったのだがなぜ君はシュークリームの作り方を知っていたのだ」
「そうですよ、拓也様、このデザートは昔の勇者がこの店にしか教えていないと言われているのに」
「・・・拓也、私にもシュークリーム、じゅる」
アリスもなぜかを聞いてきた。ミーナは、僕が作ったシュークリームを見て、食べたそうにしている。
本当のことを言ったら簡単だけど、隠しているからな、ごまかすか
「サンガさんが持ってきたデザートが、僕が森にいたとき、一緒に住んでいたお爺さんが作っていたものと似ていて、もしかしてと思ったら、やっぱりシュークリームだったから、それなら作り方を教えてもらっていたからね」
「もしかして君が一緒に住んでいたお爺さんは昔の勇者様の子孫なんじゃあ・・・」
「さぁ、それはわからないかな」
「とにかく、君のおかげ、きちんとした作り方がわかったのは確かだ。ありがとう礼を言うよ、ありがとう、これで、新作として店に出せる」
そのあと、依頼を達成した僕達はサンガさんから、報酬とは別に、たくさんのケーキのお礼をもらった。
シュークリーム、たくさん売れるといいですね




