↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/24

たべたそうに こちらをみている

菅原(すがわら) 善人(よしと)

 平穏な大学生活を過ごしたい、半額弁当が至福の主人公


葵(あおい) まもり

 小動物系幼馴染(♀)、自宅押しかけ系ヒロイン


篠宮(しのみや) 紗季(さき)

 クールなウサギ系元カノ、いまだに距離がつかめないヒロイン


柊(ひいらぎ) 悠人(ゆうと)

 中性的な美形幼馴染(♂)、エプロン姿が想像できるほどの正妻感



いやぁ、昨日はほんとに大変だった。


あのあと、まもりは完全わがままモードに突入して、結局終電近くまでゲームに付き合わされた。


落ちゲー、格ゲー、パーティーゲー、リズムゲー辺りを一通りやり尽くした後、しっかりと終電に間に合うように駅まで送って帰らせましたよ。いまさら二人きりだからって、変な雰囲気になるわけがない。


ちなみに、まもりの自宅の最寄り駅までは、まもりパパがお迎えに来てくれたのでご心配なく。さすがに駅から自宅まで一人で夜道を歩かせるくらいなら、うちに泊めるのもやむなしだし。


ということで、本日は超絶に寝不足である。


こんな日に限って1限からしっかり講義が入っている。というか、まもりは「俺が明日1限から講義ある」って知った上で、遅くまでダル絡みしてたんだと思う。そういう奴だ、あいつは。


あくびを噛み殺しながら、どうにかペンを走らせる。同じ学科の友人からは「講義ノート枠」として重宝されている感があるので、安易に居眠りもできない。


いや、別にそんな友人、切ったらいいだけの話なんだけど。まぁ、いざという時は人の縁って大事だし。恩は売れるだけ売っときたい。俺、菅原『善人』だし?


そんなしょうもないことを考えながら、襲い掛かる眠気と戦いながら講義を受け続けた。


◇


今日は珍しく悠人と講義が被っていないので、一人きりで昼食の時間を迎えた。


「たまにはこういう一人の時間も悪くないなぁ」と思いながらも、一応悠人に昼飯のお誘いだけ送ってみる。


すぐに返信は来たが『これからバイト、また誘ってね』とあっさり振られてしまった。


(しゃあない、たまにはぼっち飯と決め込みますか)


睡魔で少しヨレた字で埋め尽くされたノートを片付けながら、ぼっち飯の選択肢を考える。


うちの大学の昼飯の選択肢は3つ。


ひとつ目は学食。それなりの値段でそれなりの量と味。しかし、一人で利用するのはちょっとだけ勇気が必要。


2つ目はカフェ。軽食でパスタがメインだが、あそこの生パスタは普通に美味い。ただ、値段もそれなりにするので毎食はちょっとお財布的に厳しい。たまに悠人と行ったりしてる。


最後は売店。弁当かパン、あとは飲み物。言うて一番学生感があるのって、結局これだと思う。


よし、今日はぼっちだし、無難に売店で済ませよう。


◇


講義棟を出て、寝不足の目に染みる日差しを浴びながら売店へと向かう。悠人に連絡していた分でちょっと出遅れたけど、混雑のピークを避けられた、と前向きに捉えよう。


売店へ続く階段を下りる。ふと、階段を上ってくる見慣れた顔が目に入った。




紗季だ。


「...あっ」


驚いた顔で俺を見上げる紗季。少しだけ階段を下りるスピードを緩める。


「……売店?」

「うん、今日は一人だから」

「そっか」


相変わらずぎこちない。もっとスムーズに会話できないもんかね。


「んじゃ、また」


絶妙に気まずい空気をかき混ぜるように、軽く手を振って一気に階段を下る。


うーむ、そろそろどうにかしたいんだけどね、これ。


紗季の方からも話しかけてはくれるんだけど、なかなかどうして会話が弾まない。


無視して避けるのもだいぶ心を擦り減らすけど、これはこれで針の筵(むしろ)感がある。そりゃ『元恋人』ってのは、難しい関係だってのは分かるんだけどさ。


ふぅ、と小さく息をついて売店のドアをくぐった。


◇


「ありがとうございましたー」


やる気のない店員の挨拶に見送られて、そそくさと売店を後にする。


昼食争奪戦で売れ残った菓子パンを手に入れ、いつものスポーツドリンクも無事に購入できた。


(天気もいいし、外のベンチで食べるかなぁ...)


なんてことをぼんやり考えていると、売店前の休憩スペースに佇む人影が目に入る。




紗季だ。あれ? さっき階段を上がっていったはずでは?


「どうしたん?誰か待ってる?」


こちらに気付いてる様子だが、すぐに返事が返って来ない。


...あれ?俺、何か怒らせることしました?


会話のキャッチボール的に、まだ向こうのターンなので返答をしばし待つ。


手持無沙汰に耐え切れず、購入したパンが入ったポリ袋を覗いてみる。


あ、よく見るとこのパン、どっちも甘い系だな。しくったな。


「...お昼」


パンの構成ミスを悔やむ俺をよそに、紗季は重い口を開いた。


「一人なら、一緒に食べようと思って」


休憩スペースのイスから立ち上がえり、ゆっくりとこちらに近付いてくる紗季。


「だから、その……だめ?」


少し目にかかる髪を気にしながら、不安を隠しきれない表情で俺の返答を待つ紗季。


…うーんと、これはどういう意図だ?


『元恋人と二人で昼飯食べる』って、個人的には罰ゲームに近いんだけど。


いやでも、普通の友達としてのコミュニケーションか?俺が過剰反応しすぎか?


俺の目の前で立ち止まる紗季は、俯きながら俺の返答を静かに待っている。


...いや、待って。ここで断っちゃうと、俺が悪者みたいにならない?


「ダメじゃないよ。あっちの飲食スペースで食べるか」


根負けした俺は情けなく笑いながら返答する。ノーと言えない典型的な日本人だなぁ、と痛感する。


「……うん!」


パッと一瞬で紗季の表情がほころぶ。クール系の見た目でそれやられると、相当な確率で男子は落ちますよ。こんなところで無駄打ちしなさんな。


いつもより少し足早になりながら、売店の隣に併設されている飲食スペースへ向かう。


◇


飲食スペースには長机とキャスター付きの椅子が並べられており、サークルの部会とかでも使える共用のフリースペースになっている。


たまに、ここで軽音楽部が構内ライブをやってたりするけど、それ以外は誰でも自由に使える。


「うーし、腹減った! 食べよ食べよ!」


適当な椅子に座り、購入したパンを袋からテーブルにばらまく。


勢いで一緒に食べることになったけど、こうやって二人きりになるのは高校の時以来かもしれない。


「そのパン、好きなの?」


勢いよくテーブルに転がったパンを指さしながら、紗季は向かいの椅子に座った。


「いや、売れ残りで一番安かったやつ。食べたことない」


なんかだか格好つかない。パンより弁当の方が良かったか?


「善人って...お昼、いつも売店なの?」

「いや、悠人が一緒の時は学食が多いかな」


もちろん紗季も悠人のことは知っている。高校の時に、俺を介して3人で会話した記憶がある。


「柊くん……昨日、怖い顔で睨まれた」


あ、それはたぶんサークル練習の時のやつですね、はい。


「あ、その節は本当に申し訳なく。悪い奴じゃないんだけどね、あいつも」


顔は良いし悪い奴ではないんだけど、俺に関わることになるとちょっと、ね。


遠慮というか、ブレーキがうまく動作しないというか。暴走機関車みたいなそんなイメージ。


「...私、何かしたかな? すごく睨んでたけど」

「違う違う、あれは本当に悠人が悪くて」


今度、悠人に会ったら強めに言っておこう。さすがにこれは紗季に悪い。


「紗季は、悪くないよ」


申し訳ない気持ちでこぼした俺の言葉に、紗季はハッとした表情で顔を上げる。


「…紗季」


釣られて顔を上げた俺と目が合った紗季は、焦っているのかあちこちと目線が落ち着かない。


...あれ?下の名前で呼ぶのはNG?馴れ馴れしかったか?


「あ、ごめん。篠宮さんが良かったか?」


言いながら、心臓の辺りがチクッと痛む感覚。一瞬で遠くなった紗季との距離に、正体不明の感情が沸き立つ。


「ち、違うの! 紗季......で、いい!」


身体を長机に乗り出して否定する紗季。勢いよく長机にぶつかってしまい、机の上のペットボトルが倒れてしまう。


「ご、ごめん!」

「あぁ大丈夫! 蓋してたから大丈夫、落ち着いて」


謎に二人であたふたした後、少しの沈黙が訪れる。


「……ふふっ」


耐えきれないように小さく吹き出す紗季。口に手を添えてうつむいているが、小さく肩が震えているので全然隠せてない。


「なんかツボるところ、あったか?」

「……ふふっ。なんだか、善人とのこういうの……懐かしくて」


柔らかい笑みをこぼす紗季。相変わらず、笑った時の破壊力は高い。


「別に、このくらい普通だろ。何も特別じゃない」


そう、当たり前。このくらいスムーズに会話したい。元恋人という鎖があったとしても、友人としての付き合いは可能なはず。


多少のいざこざがあったとしても、年齢的にはもう大人なんだから。


「...じゃ、じゃあさ。またお昼とか」


緊張から解放されて油断していた俺に、紗季はおずおずと踏み込んでくる。


「誘っても……いい?」


......反則技だと思う。心の中でイエローカードを掲げながら、見慣れない包装から覗くパンにかじりつく。


このパン、味がまったく分からない。こんな昼食は、ちょっと困るかもなぁ。


ウサギ感、ってこんな感じなのか?わからない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。