↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/24

パートナーの誓い


―ピッ、ピピッ


鳴り響くアラームの音で目が覚める。今日は朝からあいにくの天気のようで、部屋の中はいつもよりうす暗い。


―ピピピッ、ピピp


もぞもぞと身体を起こし、耳障りな音を立てる目覚まし時計を止める。


ごろんっと大きく寝返りを打ち、枕元で充電していたスマホに手を伸ばす。


ホーム画面に表示されている今日の天気を確認する。くもり時々晴れの予報だ。


今日は土曜日、体育館でのサークル練習の後に、紗季とデートの予定。とりあえず天気は問題なさそうだな、と一安心する。


そのままスマホの画面を消して、再び寝返りを打って仰向けになる。ぼんやりと天井を見上げながら、ふと昨日の夜のことを思い出す。




『私。善人の、彼女に......なりたいから』




真剣な表情で見つめてくるまもり。


突然の告白に言葉が出てこない俺を見て、まもりは優しく笑った。


別に、今は返事いらないから、と。


それだけ言い残すと、まもりはそそくさと帰っていった。日曜の予定はまたメッセージで連絡する、とのこと。


「まもりからのメッセージは...まだ来てないな」


メッセージアプリを開いてみるも、新しい未読マークは付いていない。


んー、さすがにこっちから連絡するのは、ちょっと...違う気がする。


一晩経って、冷静に思い返す。


あんな真正面からの告白を受けておいて、俺は返事もしてない。


…ダメすぎるな、俺。


改めて、自分の情けなさに凹みながら大きなため息をつく。天気が悪いと心まで暗くなる、良くない良くない。


切り替えてこう、と勢いをつけて起き上がると、手元にあったスマホが小さく震える。


『おはよ。朝ごはん、もう食べた?』


スマホを開くと、悠人からのメッセージが届いていた。俺の起床時間を正確に把握している、さすが悠人だ。


『おはよ、今起きた。まだ食べてない』


そう返信すると、すぐに既読マークが付く。こいつ......見ているなッ!


『よかった。今から部屋行くね、すぐ着くから』


ん?なんだか急展開で話が進んでいる。この感じだと、すでに家を出てるっぽいな。


...あ、普通にメッセージ返してしまった。よく考えたら、悠人も『幼馴染やめる宣言』してたんだった。


まぁ考えても時間の無駄か。とりあえず、悠人が到着する前に顔だけでも洗っておこう。


俺は急いで立ち上がり、いそいそと洗面台に向かた。


◇


「いただきます」

「はい、どうぞ召し上がれ」


目の前に用意された悠人特製の朝ごはん。からっぽのお腹が立ち上る香りに刺激される。


一仕事を終えた悠人は、ゆったりと俺の隣でくつろいでいる。


俺から見る限り、今日の悠人はいつもとまったく変わりがない。


いろいろ聞きたいことはあるが、とりあえずは冷めないうちに朝食を頂くとするか。


薄切りのハムが乗ったサラダに手を伸ばす。食事はまずサラダから、といつも悠人に口酸っぱく言われてるから。


黙々と食べ進める俺をよそに、悠人はベッドの方を向いてスンスンっと鼻を鳴らしていた。


「ねぇ、悠人。もしかして...」


名探偵のような顔つきをした悠人は、静かに俺に問いかける。


「昨日...まもり、来てた?」


…すごいな、ちゃんと換気したのに。いや、別にやましいことはしてないけど。


「あぁ、昨日の夜ね。いつもどおり、ベッドでゴロゴロして帰ってったよ」


いつもどおり、ってのは少し語弊はあるかもだけど。さすがに告白された、って自分の口から言うのは憚られる。


ふーん、と興味なさげに答える悠人。鋭く光るその目は、今にも真実を暴こうとしている。


「てか、どうしたん?朝から来る、って珍しいじゃん」


これ以上の追及を避けるために、多少強引ぎみに話を変える。


事実として、悠人は泊りでそのまま朝を迎えることはあっても、わざわざ朝から出向いてくることは今までなかったはず。


さきほどまでの名探偵の気配は消え去り、穏やかな表情を見せる悠人。


「そうだね。ちょっと、伝えたいことがあって」


そう呟いた悠人は、傍らに置いていたショルダーバッグに手を伸ばした。


◇


朝食を終えて綺麗に片付けられたテーブルの上には、見慣れない書類が並べられていた。


「昨日、善人と別れてからいろいろと動いてたんだけど」


わざわざテーブルの向こう側に移動して、正座で向き合う悠人。想定外の展開に、全然頭がついて来てない。


「法学部の友達に相談したら、たたき台だけならすぐ作れるって言われて」


珍しく緊張してるのか、いつもより早口でまくし立てる悠人。そんな悠人の姿に、不謹慎にも可笑しくなってしまう。


小さく笑い声をこぼした俺に気付いたのか、悠人は怪訝そうな顔でこちらを見つめる。


「あぁ、ごめん。珍しく早口な悠人を見てたら、つい」


平謝りする俺の言葉に、毒気が抜かれたように呆ける悠人。少しだけ間を置いて小さく笑うと、悠人からさっきまでの緊張の色が消えていた。


「善人。真面目な話なんだよ、ちゃんと聞いて」


落ち着きを取り戻した悠人は、まるで先生のような口調でゆっくりと語り掛ける。


「これが、僕の覚悟だよ」


悠人は目の前に置かれた書類を指差した。




『同性パートナーシップ契約(合意契約)』




「僕は、幼馴染をやめるよ」


そこには「財産管理」「医療や介護の同意権」「遺言」などの単語が並んでいる。それらの単語は目に入るだけで、脳はいまいち状況を理解できてない。


悠人は身を乗り出してスッと俺の手を取ると、誓いの言葉のように胸に秘めた想いを紡いだ。




「善人のパートナーに、なるために」


幼馴染(♂)、参戦!こんなつもりじゃなかったのになぁ...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。