幼馴染との休日
平日の5割り増しの人通りでにぎわう日曜の駅前。
「悠人、おはよ。相変わらず早いな」
集合時間の15分前にも関わらず、広場の木陰で佇んでいた悠人に声を掛ける。
「ちょうど24時間ぶりだね。今日も善人と会えて嬉しいよ」
からかう表情の悠人を軽く無視しつつ周りを見渡すが、もう一人の幼馴染の姿は確認できない。
今日はまもりと悠人と3人で、期間限定のいちごスイーツを食べに行く予定。
何でこんな話になったかは、正直もうさっぱり覚えてない。たしか「俺が奢る~」みたいな話をしていた気もするが、たぶんまもりももう覚えてないだろう。
5分ほど悠人と立ち話しながらまもりの到着を待っていると、同じタイミングで俺と悠人のスマホがポコンっと音を立てる。
『いま家出た』
大方の予想を裏切らず、まもりからの遅刻確定の連絡。しっかりとキメ顔の自撮り写真も送ってくるあたり、まったくもって焦っていないことが伺える。
こいつもはや一周回って良い性格してるよなぁ、と感心していると、隣の悠人も苦い顔をしてスマホを見つめていた。
「こいつ終わってる。善人もそろそろ縁切った方がいいよ」
けっこうな本気トーンで吐き捨てるようにつぶやく悠人。でも、甘やかす俺たちにも多少の原因はあるだろうから、それはさすがに可哀そうではある。
「どうする?どこかで暇つぶすか?」
駅前だと何なりとありはするが、30分程度の暇つぶしならゲーセンが無難か。悠人に目を向けると、少し悩むような仕草を見せる。
「いや、このままお話しよう。善人に聞きたいこともあるし」
悠人は話しながらゆっくりと歩き出し、ちょうどカップルが立ち去って空いたベンチに移動する。
◇
「ほい。紅茶は無糖しかなかったわ」
自販機で買ってきた悠人の分の飲み物を渡す。もちろん俺はいつものスポーツドリンク、最近は水やお茶よりも飲んでる気がする。
「ありがと。やっぱり善人は優しいよね、自慢の彼氏だよ」
そろそろ毎回ツッコミ入れるのも飽きてきたので、ハイハイっと適当に流しながら飲み物に口を付ける。
不満そうに俺の横顔を睨みつける悠人をスルーして、駅前を行き交う人の流れをぼんやりと見つめる。
「善人は...もう彼女とか作らないの?」
両手で握りしめたペットボトルを見つめながら、悠人はぽつりとこぼす。からかう素振りは見せず、優しく語りかけるような声色。「いまはお前が彼女だろ~」とは言えない感じの空気感がある。
「......彼女ねぇ。まず、相手がいないからなぁ」
正しい返答が思い浮かばず、とりあえずが冗談とも本気とも取れるニュアンスで返してみる。チラっと悠人の横顔を伺うが、いまだに手元を凝視していて感情は読めない。
「篠宮さん。たぶん、まだ善人のこと好きだよ」
今日の天気の話くらいの軽さで、サラッと重めな感情の話をする悠人。
まぁ、そうだよなぁ。ここ数日の紗季を見てれば、当事者の俺でも分かるレベルだし。
少しずつ汗をかき始めたペットボトルをベンチに置く。今日は最高気温もけっこう上がるっぽいし、早めに室内に入りたいな。
「紗季のこと、悠人は嫌いだったろ。最近は仲良いみたいだけど」
悠人と紗季が連絡取ってるのは、おそらくは密会報告のためだろうけど。悠人は俺の問いかけに、ゆっくり手足を伸ばしながら答える。
「全部、善人のためだよ。僕個人としては、まったく興味ないし」
相変わらずの冷気を帯びた目をしながら、どこか遠くを見つめる悠人。こいつ、ホントに俺以外の物事への執着が薄いんだよなぁ。
「あ、まもりはダメだよ。あいつは絶対に善人を幸せにできない」
不快そうな表情を隠そうとせずに吐き捨てる悠人。いや、まもりさんも良いところありますよ?ええと、その、う~んと、顔とか?
まもりの話題でふと思い出して、ポケットから取り出したスマホ画面を確認する。既に約束の時間を15分ほど過ぎていたが、いまだにまもりが到着する気配はない。
「じゃあさ。もう、僕にしちゃえば?」
両手を胸の前で握りしめて、わざとらしい上目遣いでこちらを見つめる悠人。中性的かつ麗しい顔立ちでこれをやられると、男だと分かっていてもすこし照れてしまう。
「まだ、まもりの方がマシだな。俺は女が好きだ」
少し熱を帯びた頬を隠すように、明後日の方を向いて答える。やべ、ちょっと声が大きくなってしまった。
「女好きだ、とか大声で言いふらすの。普通にキモいよ」
突然、背後から声を掛けられてベンチの上で5cmほど飛び上がってしまう。首だけ動かして後ろを確認すると、そこには侮蔑の表情で俺を見下すまもりが佇んでいた。
「まもり、まずは謝罪。20分遅刻だよ」
「はいはい、ごめんなさい。女好きさん、今日は奢りじゃなくていいから」
やめてください、その恰好の悪いあだ名。いやむしろ男らしくはあるのか?
手をヒラヒラと振りながら、商店街の方に勝手に進んでいくまもり。傍若無人すぎる、やっぱり彼女にするなら悠人の方がマシかもな。
呆れた悠人と目が合い、ふふっと笑いが漏れる。
悠人と同じタイミングでベンチから立ち上がり、先を行くまもりの後をのんびりと歩き出した。
可愛い男はBLじゃねぇ、って。エロい人が言ってました




