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73. 真相と目撃者?

森の奥で、ムムロは一軒の朽ちた樹上小屋を見つけた。

その小屋は二本の大木の間に高く架かっており、内も外も苔に覆われている。蔦は好き放題に伸び放題で、森を覆う濃い木陰が陽光のほとんどを遮っていた。


崩れかけた屋根の隙間からは、まるで金色の糸のような陽光がわずかに差し込み、室内に漂う饐えた腐臭と混ざり合っていた。そのせいで、小屋の中はいっそう薄暗く感じられた。


ムムロは中へ入り、コーディアをそっと床へ降ろした。

コーディアは座り込んだまま顔を上げ、ムムロを見つめる。その瞳には恐怖が色濃く浮かんでいた。


ムムロはこれまで出会った人間たちの顔を思い出す。

皆、コーディアと同じように恐怖に満ちているか、あるいは憎悪に満ちているかのどちらかだった。


ただ一人を除いて。

ヴィーナ。


あの日、自分に逃げろと言った狩魔師。

あの表情だけは理解できなかった。


だが長い年月を経て、ヴィーナの顔を思い返すたびに、あの表情はもしかすると優しさというものだったのかもしれない、とムムロは思うようになっていた。


「こんな形で連れて来てしまって、すまなかった」

ムムロはぎこちなく言った。


こんな丁寧な口調で話した経験など、一度もなかった。


コーディアは目を大きく見開いた。数秒固まった後、小さな声で答える。

「……大丈夫」


立ち上がりながら尋ねた。

「でも、どうして私をここへ連れて来たの?」


ムムロは小屋の外へ視線を向けたまま、しばらく黙り込んだ。数分後、ようやく口を開く。それでもコーディアの方は見ない。

「今朝の村での戦いで、お前は俺を助けた」


静かな声だった。

「だから何か礼ができないかと考えていた」


コーディアは言葉を失った。

魔獣の口から「礼」という言葉が出てくるなど、一度も想像したことがなかった。


「それで気づいたことがある」

ムムロは続ける

「お前の仲間の男だ。最初は確信が持てなかったが、その後もしばらく遠くから見ていてな」


少し間を置く。

「俺はあの男を知っている気がする」


「誰のこと?」

コーディアは首を傾げた

「エリオ? それともグレン? さっき一緒にいた仲間のこと?」


「違う」

ムムロは首を振る

「もう一人だ。村にいた時、俺を殺そうとした男」


コーディアは必死に記憶をたどった。だが、あの時はあまりにも混乱していた。


「隅で黒い筒を持ち、俺に向けていた男だ」

ムムロが言う。


「……アレク?」

コーディアが怪訝そうに尋ねる。


ムムロはうなずいた。


「知っているか?」


「俺はお前の仇を討てる」


「え?」

コーディアは瞬きをした

「何の仇?」


「その男だ」

ムムロは答える

「俺が殺してやれる」


コーディアは青ざめて一歩後ずさった。首を激しく横に振る。

「だめ! お願いだからやめて! どうしてそんなことをするの?」


ムムロは眉をひそめた。なぜそんな反応になるのか理解できない。

「なぜだ? 母親を殺した相手を、そのまま放っておくのか?」


コーディアの動きが止まった。

驚いたというより、思考そのものが停止したような顔だった。まるでムムロが理解不能な異国の言葉を話しているかのように。


反応がないのを見て、ムムロはもう一度言う。

「ヴィーナには命を救われた。だからいつか恩を返したいと思っていた。だが彼女は死んだ」


そしてコーディアを見た。

「何年も経ってようやく、ヴィーナを殺した男を再び見つけた。だから俺はそいつを殺せる。お前のために。そしてヴィーナのために」


「そんな必要ない」

コーディアは虚ろな目で首を振った。


「母は人間に殺されたんじゃない」

震える声だった

「魔獣に殺されたのよ……そう、魔獣に。みんなそう言っていた」


「違う」

ムムロは即座に否定した

「ヴィーナは人間に殺された」


「違う……」

コーディアはさらに後退る

「そんなはずない……私、ちゃんと聞いたもの……」


「俺は見た」

ムムロは言った。


コーディアは呆然としていた。再び強く首を振る。


「ある男が黒い筒をヴィーナへ向けた」

ムムロは当時を思い出しながら言う。


「それから『パン』という音がした」

拳を握る

「そしてヴィーナは倒れた。二度と動かなかった」


「あなた、狂ってるわ。本当に狂ってる。……ここから出させて」

コーディアは震える声で言った

「本当におかしい」


そう言って出口へ向かう。木からどう降りるか確認しようと外を覗き込んだ。


「信じないのか?」

ムムロの声が背後から飛ぶ

「俺はその場にいた。だが、お前が持っているのは誰かに植え付けられた間違った記憶だけだ」


コーディアは唇を強く噛みしめた。しばらく沈黙した後、ようやく言葉を絞り出す。


「でも……」

震えている。胸の奥で炎が燃え上がる。声も自然と大きくなった

「でも……たとえあなたの言う通り、誰かが母を撃ち殺したのだとしても、その人間が誰かなんて分かるはずないじゃない! だって、あれから何年もの歳月が流れたのよ!?」


「そうかもしれないな」

ムムロは肩をすくめた

「確信はない」


少し考えてから続ける。

「ただ、お前の仲間はあの時見た男によく似ている」


そして真っ直ぐ言った。

「本当に、よく似ている」


コーディアは深く息を吸った。ムムロを見る。

「ねえ。第一要塞で私たちを逃がしてくれたことには感謝してる」


だが次の瞬間、その目は冷たくなった。

「でも正直に言うわ。私はあなたのことを一つも信じてない」


ムムロは眉を寄せた。そしてコーディアの目を見つめる。


「お前は俺を信じていないのか?」

短く区切った

「それとも――信じたくないのか?」


コーディアは一瞬固まった。その言葉の意味がすぐには理解できなかった。


だが次の瞬間、小屋を飛び出す。

そして入口で足を止めた。迷っているようだった。

ムムロの言葉が頭の中で何度も反響する。


やがて彼女は振り返り、一言一句を重く噛み締めるように言い放った。

「あなたたち魔獣の言葉なんて――」


拳を握り締める。

「私は一言だって信じない!」

ご覧いただきありがとうございます。

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● 毎週 【日・月・火・木・金】18:10 更新


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