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43. 血よりも近い家族(下)

エリオとサヴィル一家の姿を見つめながら、コーディアはふと、彼が自分とよく似ていることに気づいた。


二人とも実の両親を失った。けれど幸運なことに、別の家族を得ることができた。


血は繋がっていなくても、本当の家族として守ってくれる人たちを。


エリオにはサイモンおじさんがいて、スタッシーおばさんがいて、レニー姉さんがいる。

コーディアにはアレク兄さんがいて、アイヴィー院長がいて、孤児院で一緒に育った子供たちがいる。


もしあの人たちがいなかったら。自分とエリオの人生はどうなっていただろう。想像もつかなかった。


自然と、あの頃の記憶が蘇る。胸の奥に沈んでいた暗い日々。


当時のコーディアはまだ五歳だった。

それでも、その時の出来事も感情も、今でもはっきり覚えている。


あの頃、ザヒールの国境地帯では魔獣被害が広がっていた。

多くの狩魔師が討伐へ向かい、一般人で構成された防衛軍団まで後方支援のために動員されていた。


コーディアの両親も狩魔師だった。当然のように前線へ向かうことになった。


幼いコーディアは近所の家に預けられ、毎日帰りを待っていた。


今日こそ帰ってくる。

明日こそ帰ってくる。

そう信じていた。


だが、待っていたのは再会ではなかった。両親の訃報だった。


軍の関係者が近所の家を訪れた日。彼らは静かな声で告げた。

キャスター夫妻は魔獣との戦闘で戦死したこと。


そしてコーディアを引き取る親族や知人がいない場合、ザヒール政府が軍直属の孤児院への入所を支援すること。


数日後。彼女を孤児院へ連れて行く人物が現れた。

それがアレク・ブレイとの最初の出会いだった。


近所の夫婦は何日もかけて説明してくれた。お父さんもお母さんも、もう帰ってこないこと。元の家には戻れないこと。


だが、コーディアは頑固だった。泣かなかった。毎朝起きると玄関へ走る。そして一日中そこで待ち続けた。


食事の時間になると、必ず両親の分を残した。

だって、もうすぐ帰ってくるのだから。

そう信じていたからだ。


アレクが迎えに来た日も同じだった。

コーディアは全力で抵抗した。


殴った。蹴った。噛みついた。引っ掻いた。

五歳の少女とは思えない暴れぶりだった。さすがのアレクも手を焼いたらしい。


最後にはため息をつき、暴れるコーディアを肩に担ぎ上げた。

そのまま孤児院へ連れて行き、アイヴィー院長へ引き渡した。こうして入所手続きが完了したのだった。


あの頃の自分は、世界のすべてが憎かった。どうして自分の両親だけが魔獣に殺されたのか。


他人が突きつけるその残酷な現実を、幼い私はどうしても信じたくなかったのだ。だから、優しいアイヴィー院長とも、孤兒院の子供たちとも、一切口をきこうとはしなかった。


食事の時間になると、わざと皿をひっくり返した。牛乳を床一面にぶちまけた。

夜になると床へ寝転がって泣き叫ぶ。他の子供たちは眠れなくなった。


ザヒール政府が雇った教師が授業を始めても、勝手に教室を抜け出した。そして孤児院の門の横へ立つ。


父さんと母さんが迎えに来る。だから待たなければいけない。そう言い張り続けた。


どれだけ我儘を言っても。どれだけ迷惑をかけても。

少しふくよかなアイヴィー院長は黙って後始末をしてくれた。一度も彼女を責めなかった。


そして毎日夕方になると。門の前で一日中待ち続けたコーディアのもとへ、必ずアレクが現れた。


若い頃のアレクは、孤児院を訪れる時はいつも私服だった。

軍服を脱いだ彼は、子供たちにとって近所のお兄さんのような存在だった。

親しみやすくて優しい。いつも笑顔だった。


アレクは多くの時間をコーディアのために使った。大丈夫だと何度も伝えた。一人じゃないと伝えた。


そして彼女の両親がどれほど立派な狩魔師だったのかを語ってくれた。人々を魔獣から守るために戦ったこと。命を懸けて誰かを救ったこと。


何度も。


何度も。


何度も。


コーディアが夜になると泣き出し、眠れなくなるたびに。アレクはそっと抱き寄せて寝かしつけてくれた。


やがて。孤児院史上もっとも手のかかる問題児は、少しずつ心を開いていった。

両親がもういないという事実を受け入れ始めた。孤児院の生活にも馴染み始めた。


アイヴィー院長は本当に苦労したらしい。コーディアのことで白髪も何本も増えたと聞いている。


ただでさえ忙しい孤児院だった。それでもアレクが支えてくれたおかげで、院長は何とか息をつくことができたのだ。


だから今のコーディアには分かる。エリオとサヴィル一家の絆がどれほど深いものなのか。


数分見ていただけで理解できた。エリオを救ったのはサヴィル一家だ。

アレクが自分を救ってくれたように。


もちろん分かっている。なぜサヴィル一家がエリオを叱るのか。なぜエリオが黙って出て行ったのか。

それはアレクが、自分に怒った理由と同じだからだ。


アレクはずっと、自分が狩魔師になることを望んでいなかった。


「魔獣は危険だ。そして狡猾だ。あいつらとの戦いは、いつだって命懸けなんだ」

アレクは何度もそう言っていた。


それでもコーディアは狩魔師になりたかった。両親のような立派な狩魔師に。誰かを守るために戦う人になりたかった。


そして、それを通してアレクに伝えたかった。もう心配しなくていい、と。

自分は昔みたいに我儘ばかり言う子供じゃない。誰かを支えられる存在になったのだ、と。


そう、今の私たちはもう大人だ。


この世界を、守ることだってできる。

ご覧いただきありがとうございます。

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● 毎週 【日・月・火・木・金】18:10 更新


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