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39. 生誕祝典

エリオが再び浅い眠りに落ちたのは、夜明け頃だった。


目を覚ました時、窓の外はすでに明るくなっていた。

グレンとコーディアはとっくに起きて、朝食を取っていた。


「どうやら昨日、よく眠れなかった奴がいるみたいだな」

エリオが食堂へ入ると、グレンが笑いながらからかった。


朝食を終えた後、彼らはザヒールへ戻る準備をした。

キャロライン王女は三人のために軽食を用意してくれていた。


彼らは皆に別れを告げると、皇都の通りを抜け、駅へ向かって歩き出した。


道中は大変な賑わいだった。

街には旗がいくつも掲げられ、露店の商人たちが見たこともないような菓子を売り歩いている。どれも色鮮やかで、見るからに美味しそうだった。


人々は華やかな衣装をまとい、手足を踏み鳴らし歓喜に身を躍らせながら、歌い踊っていた。


角を曲がると、壮麗な王立楽隊が賑やかな音楽を奏でながら行進していた。


人波はひどく混み合っていたが、誰もが満面の笑みを浮かべていた。


「そうか。今日はナディラ皇三世の百九十七歳の誕生大典なのね」

コーディアが言った。


「すごい賑わいだな。本当に国中で祝ってるんだ」


四国の中で不老不死の存在は、現ナディラ皇三世ただ一人。

だからこそ、このような誕生大典も、この国でしか見られないものだった。


「駅はたぶん、あっちの方だよな?」

グレンは人混みの中で道標を探した。


「ええ……きゃっ!」

コーディアは人波に押され、通り沿いの店の方へ流されてしまった。エリオとグレンから引き離される。


「エリオ!」

彼女は叫んだ。だが周囲があまりに騒がしく、その声は完全にかき消された。


コーディアはつま先立ちになって道標を確認する。このまま駅で合流した方がいいだろうか。


そう考えた瞬間、背後から腕を掴まれた。驚いて振り返る。

エリオだった。


「コーディア! 人が多すぎる。俺たちから離れない方がいい」


「ここは駅へ向かう大通りなんだ」

後ろからグレンも続いた。


「しかも誕生大典の行列もここを通る。駅に着くまで少し時間がかかりそうだな」


その時、周囲の人々から大きな歓声が上がった。振り返ると、ナディラ皇三世が姿を現していた。


皇帝は馬車の中に座り、窓から手を出して群衆へ振っている。頭には相変わらず、あの黒いヴェールをかぶっていた。


「ナディラ皇三世万歳!」

人々が興奮したように叫んだ。


「このナディラ皇三世って、本当に運がいいよな」

グレンが二人へ小声で言った。


「裕福なナディラ家に生まれただけでも幸運なのに、百五十年に一度しか咲かない不老不死の花まで口にできたんだから」


「どうせ使い切れないほど金持ちなんだし、不老不死になった方が長く楽しめるだろ」

エリオはいたずらっぽく冗談を言った。


三人は身を寄せ合いながら前へ進む。


行列はナディラ宮殿へ向かって進んでおり、ちょうど彼らとは反対方向だった。そのせいで移動はさらに難しくなった。

だがその分、彼らはナディラ皇都の様子を少し眺めることができた。


ザヒール国と同じように、ナディラの主要な政府機関も宮殿周辺に集まっている。国家機密研究開発局も、その一つだった。


宮殿からそう遠くない場所に、広大な敷地を持つ巨大な建物がある。

その堂々たる建築を見るだけで、ナディラの工業技術がどれほど発達しているのか想像できた。


その時、人混みの少し先で小さな騒ぎが起きた。

フードをかぶった人物がエリオに激しくぶつかる。謝りもせず、慌てて逃げ出した。


だが今度は、赤子を抱いた婦人にぶつかった。

婦人はよろめいて後ろの果物屋の屋台へ倒れ込む。


屋台はひっくり返り、果物が地面へ散らばった。婦人の腕から赤子が滑り落ちる。


間一髪。エリオがその赤子を受け止めた。


「おい!」

エリオはその人物へ叫んだ。


だが相手は振り返りもせず、走り続ける。


「おい! そいつを捕まえろ!」

人混みの後方から、数人の兵士が群衆をかき分けながら近づいてくる。


彼らはエリオへ向かって叫んでいた。


エリオは赤子をコーディアへ預けると、すぐにその人物を追いかけた。

相手の足はそれほど速くない。さらに誕生大典の人波が逃げ道を塞いでいたため、エリオはすぐに追いついた。


「そこのあなた!」

エリオは相手の肩を掴む

「さっき、子供を抱いた婦人にぶつかりましたよ!」


相手は激しくもがいた。その拍子にフードが外れる。


フードが外れ、肩まで伸びた金髪と、その下に隠れていた清らかな女性の顔立ちが露わになった。


彼女は慌てて手を上げ、顔を隠そうとしながら急いでフードをかぶり直す。だが、エリオはすでにその素顔を目撃していた。


「ごめんなさい、私はただ……」

すがりつくように紡がれたのは、紛れもない若い女性の声だった。


だが最後まで言う前に、後ろからナディラの兵士二人が追いついた。


彼らは左右から金髪の女を拘束する。そしてエリオへ向かって言った。

「助かったよ、若者」


「何があったんですか?」


「この者は、誕生大典の混乱に乗じて封鎖中の民家へ侵入しようとした。幸い、我々が見つけた。これから拘束所へ連れていく。祭りの邪魔をして悪かったな」


コーディアとグレンも駆け寄ってきた。


「大丈夫か?」

グレンが尋ねる。


「ああ」

エリオは肩をすくめた

「たぶん泥棒か何かだろう。封鎖された民家に入ろうとしていたらしい」


「でも、このお祭りは本当にすごい人出ね。住民のほとんどが街へ出てきているみたい。だから空き家を狙おうとする人もいるのかもしれないわ」


三人は改めて周囲を見回した。


確かに、通りのあちこちに制服姿の兵士が立っている。

行列の近くには数名の狩魔師の姿もあった。

軍がこの誕生大典をどれほど重視しているのかが分かる。


長く行方不明の大帝コーウィンを除けば、ナディラ皇三世は現在この世界で唯一、百九十七歳まで生きている人物なのだ。


エリオは、兵士たちに連行されていく金髪の女の背中を見つめた。


その時だった。金髪の女がふと振り返り、エリオを深く見つめた。

その顔には、何とも言えない微妙な表情が浮かんでいる。


エリオは眉をひそめた。胸の奥に、妙な違和感が広がる。だが、それが何なのかは分からなかった。

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