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24. 第二要塞へ

エリオたちは第一要塞を離れた後、地図に従って第二要塞へ向かった。


第一要塞で起きた出来事は、まだ全員の胸に重く残っていた。


魔獣の世界は、彼らが思っていた以上に組織化されていた。

そして魔獣たちは、彼らが思っていた以上に賢かった。


コーディアは少し思い詰めた様子だった。

五歳の頃のことを思い出していた。


あの時、彼女は近所の家に長い間預けられていた。


ある日、窓の外にザヒール軍服を着た者たちが見えた。

コーディアは、父と母がようやく戦争から帰ってきたのだと思った。


だが彼らが持ってきたのは、帰還の知らせではなかった。

訃報だった。


父フィン・キャスター。

母ヴィーナ・キャスター。

優秀な狩魔師だった二人は、魔獣との戦場で命を落とした。


魔獣の爪によって、二人とも殺されたのだと。


もし両親が国と民を守るために魔獣と戦っていたのなら。

なぜムムロは、母がかつて魔獣を救ったと言ったのだろう。


コーディアには分からなかった。母はなぜ魔獣を救ったのか。

あれは残酷で冷血な、人を喰らう獣ではないのか。


それに、たとえ魔獣を救ったとしても。最後には結局、両親は魔獣に殺されたのではないのか。


なぜ母はそんなことをしたのだろう。


本当に、自分の記憶の中の母がするようなことなのだろうか。


魔獣は冷酷で、凶暴な悪魔のはずなのに。


しかし、さっき彼らが第一要塞から脱出できたのは、間違いなくムムロの助けがあったからだ。


もしかすると、魔獣の中にも残酷ではない者がいるのだろうか。

ほんの少しでも、人間らしさを持つ者が――。


だめ。考えるな。

コーディアは自分に言い聞かせた。

今はもっと大事な任務がある。


エリオもまた、何も言わずに最後尾を歩いていた。


もしムムロが意図的に逃がしてくれなかったら、今頃どうなっていただろう。


彼らは第一要塞全体を騒がせてしまった。

すべての魔獣が一斉に襲いかかってきたら、勝ち目などあっただろうか。


それ以上に、エリオは考えずにはいられなかった。

すべての発端は、自分だった。


左目に激しい術後反応が起きたせいで、一瞬で戦闘能力を失った。そのせいで、コーディアは魔獣に連れ去られた。


視覚改造手術が終わった時、エリオは思っていた。これでようやく、生まれ持った欠陥を克服できたのだと。もう「唯一魔獣が見えないプルプラ族」ではないのだと。


ようやく両親を殺した獣たちを自分の目で見ることができる。そして正面から戦うことができる。


たとえ魔獣が見えるのが左目だけだとしても、それで十分だと思っていた。


だが結局、自分は欠けている。

左目だけで魔獣を見る自分は、一体何の役に立つというのだ。


エリオは突然足を止めた。


「あの……」


他の四人が振り返る。

「どうした?」


「ごめん」

エリオは深く息を吸った

「俺、抜ける」


四人は困惑した顔でエリオを見た。数秒の沈黙が流れる。


最初に口を開いたのはソーンだった。

「俺たちはこれから黄の匣を取り戻しに行くんだぞ? 今さら抜けるって言うのかよ」


「俺が一緒にいると、みんなの足を引っ張るかもしれない」

エリオは俯いた。


「だから急に現れて仲間に入れてくれって言っておいて、ちょっと困難にぶつかったら今度は抜けるってわけ?」


ソーンの声には苛立ちが滲んでいた。

「お前、この任務を遊びか何かだと思ってるのか?

お前の両親が遺した、あの大切な『黄の匣』を、何が何でも取り戻すって決意したんじゃなかったのかよ!」


「でも、俺の左目が……」


「エリオ」

グレンが言葉を遮った

「君が自分を責める必要はない。これは君一人の責任じゃない。

俺たちが油断して、魔獣に分断された。だから隙を突かれたんだ」


「でも、俺の左目が突然おかしくならなければ、コーディアは魔獣に連れ去られなかった」

エリオは激しい罪悪感に苛まれながら、消え入りそうな声で絞り出した。


「エリオ」

コーディアが静かに言った

「あなたは私を助け出してくれたじゃない」


「助け合って、一緒に進む。それが仲間ってものじゃないの?」


「それに、確かにあの時のコーディアは危険な状況だった」

グレンが微笑む

「だが今回、第一要塞に入ったことで有用な情報もかなり手に入った」


「私たちは、あなたを負担だなんて一度も思っていないわ」

コーディアは優しく言った

「だから拗ねないで。私たちにはあなたが必要なの。そうでしょう、ソーン、ヴィクター?」


ヴィクターは微笑み、エリオの肩を軽く叩いた。ソーンは、わざとらしく変な顔をしてみせる。


エリオは胸の中に空いていた穴が、少しだけ埋まっていくように感じた。


独眼の狩魔師となった自分が、本当にこの任務を最後までやり遂げられるのか。それはまだ分からない。

だが少なくとも今は。彼には、もう一度前へ進む理由があった。


彼らは歩みを止めず、できる限り速度を上げて先を急いだ。


道中では何度か魔獣と遭遇したが、どれも積極的に襲いかかってくることはなかった。


それでも五人は気を緩めなかった。

特に夜の休息時には、周囲を見張る者を交代で立て、魔獣の不意打ちに備えた。


そして三日目の夕暮れ。彼らは第二要塞へと辿り着いた。


その地には、何十メートルもの高さを誇る石柱が無数に立ち並んでいた。濃霧の中に浮かぶその姿は、まるで巨大な墓標の群れのようだった。


要塞の建造物は切り立った岩壁に築かれ、石柱に取り付けられた箱のように見える。

さらに上空には複雑に張り巡らされた縄橋が無数に伸び、石柱同士を繋いでいた。


「おっ、第二要塞って意外と見つけやすいんだな」

ソーンが舌を出した

「第一要塞みたいに地下へ隠れてるのかと思ってたぜ」


「でも、この要塞は大きすぎるよ」

ヴィクターが周囲を見回した。

「モルゴロスと黄の匣をどうやって探すんだ?」


「第一要塞で見た様子からすると、魔獣社会には階級制度があるみたいだったわ」

コーディアは思い返す

「たしか『長老』って言葉も出ていたでしょう?」


「確かにな」

グレンが頷く

「魔獣社会は俺たちの想像以上に複雑だ。

指導者がいて、権力の中心があって、制度もある。そして独自の規律まで持っている」


「ミレイナが言ってたよね」

コーディアは考え込む

「私たちが探しているモルゴロスは魔獣の群れの指導者だって。もし要塞の中で権力の中心を築くなら、どこを選ぶと思う?」


他の四人も石柱群を見渡した。

そしてある一点を見た瞬間、全員が動きを止めた。


広大な石柱群の中で、一際目立つ石柱があった。


圧倒的な高さ。圧倒的な大きさ。

柱の側面には無数の部屋と通路が刻まれ、螺旋を描きながら上へ上へと伸びている。

その構造は石柱の頂上まで続いていた。


やがて夕陽が沈み始める。

石柱群に建てられた家々には次々と灯りがともった。だが、その巨大な石柱の頂上だけは異様だった。


まるで灯台のように眩しく輝いている。


「あの石柱、目立ちすぎだろ」

エリオが小声で言いながら指差した

「要塞全体が、あれを中心に発展したように見える」


「その通りだな。他の石柱群があれを囲むように建っているし、頂上は要塞全体を見渡せる位置にある」


「つまり第二要塞の指導者を探すなら、あそこが一番怪しいってことか?」


「俺はそう思う」


「モルゴロスが黄の匣を持って第二要塞へ戻ったなら、あそこが最有力だろうな」


「面白ぇじゃん」

ソーンが口元を吊り上げる

「俺は雑魚どもと話すのが一番嫌いなんだ。だったら最初から魔獣どもの権力中枢を叩きに行こうぜ」

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● 毎週 【日・月・火・木・金】18:10 更新


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