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14. 絶望の深淵

「エリオ、エリオ!」


「聞こえるか?」


エリオは目を開けた。


すぐそばにグレンが膝をついている。その後ろには、ソーンとヴィクターが立っていた。


エリオは身体を起こそうともがいた。瞬きをする。

どれくらい意識を失っていたのだろう。


左目を襲っていた激痛は引いていた。まだ鈍い違和感は残っている。それでも今は、両目を開けていられた。


「コーディアはどこだ?」

エリオが尋ねる。


三人は顔を見合わせた。


グレンが口を開く。

「それを、俺たちも聞きたかった。どこを探しても、コーディアが見つからないんだ」


その瞬間、深い恐怖が電流のように足元から頭まで駆け上がった。


エリオは思い出した。

自分のせいだ。

自分のせいで、コーディアは連れ去られた。


底のない深淵へ落ちていくようだった。

絶望が一気に押し寄せてくる。


命を賭けて、魔獣を見ることのできる左目を手に入れたはずだった。

それなのにまた。戦いの大事な瞬間に、自分は誰かの足手まといになった。


全身の震えが止まらない。言葉も出なかった。


「……急いでコーディアを見つけるぞ」

グレンの力強い声が耳に届いた

「まだ間に合ううちに」


エリオは、はっとした。


そうだ。

自分は何を考えている。


コーディアは行方不明になっただけだ。

死んだわけじゃない。

死ぬはずがない。


まだ生きている。

きっと生きている。


どうする。

今、何をすればいい。


エリオの呼吸が荒くなる。


そうだ。今は自分を責めている場合じゃない。


エリオは立ち上がった。拳を強く握り締める。大きく息を吸い、震える身体を無理やり止めた。

その時、胸の奥から怒りが込み上げてくる。あまりに強い怒りで、胸が痛むほどだった。


エリオは周囲を見回した。そして一つの地穴の入口で視線を止める。


間違いない。


覚えている。コーディアは、あの地穴へ引きずり込まれた。


――必ず連れ戻す。

エリオは心の中で叫んだ。

――絶対にだ、コーディア。


「あそこだ」

エリオは地穴を指差した

「コーディアはあそこへ引きずり込まれた。俺が行って、助け出す」


三人は茫然と地穴を見つめた。


「俺のせいだ」

エリオは皆へ向き直る。


「本当にすまない。みんなは先に進んでくれていい。

俺が地穴に入ってコーディアを探す。必ず連れて戻る」


ソーンがため息をついた。ヴィクターは眉をひそめる。


グレンはエリオの腕を掴んだ。

「コーディアは魔獣に地穴へ引きずり込まれたんだな?」


「うん……」

エリオは視線を落とした

「この目で見た。でも、その時俺は……」


「なら、俺たちも地穴に入る」

グレンが言った

「コーディアを救出するぞ」


「みんなまで来る必要はない」

エリオは驚いたように顔を上げる

「だって、これは俺が……」


「エリオ」

グレンが言葉を遮った。


彼は真っ直ぐエリオの目を見る。

「大事なのは、全員で固まって行動することだ。

それにちょうどいい。俺たちは今、この土地の下に地下世界があるんじゃないかと考えていた。

もしかすると、それは魔獣の要塞の一つかもしれない。どのみち、調べに行くつもりだったんだ」


エリオは皆を見つめた。胸の奥に感謝が込み上げる。


本当は分かっていた。一人で行っても勝算は低い。

だが自分がこんな危機を招いたのだと思うと、どうしても苦しかった。


「ありがとう……」

エリオは小さく言った。


「別にいいけど」

ソーンはそっぽを向く

「勘違いするなよ。別にお前を助けたいわけじゃないからな。俺がいないと、コーディアを助けられないだろってだけだ」


それから小さくぼそぼそと呟く。

「それに、わけの分からないまま仲間が一人減るのも嫌だし……」


ヴィクターは照れたように笑うと、エリオの肩をぽんぽんと優しく叩いた。


「よし」

グレンは剣を拾い上げた

「全員の意見は一致したな。時間を無駄にはできない。行くぞ」


四人はそろって地穴の入口を見つめた。


深く息を吸う。


ご覧いただきありがとうございます。

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● 7/22 ~ 8/1: 毎日 18:10 最新話更新

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