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13. 二人組の死闘

グレンたち三人が魔獣と戦っている頃、地溝の反対側にいたエリオとコーディアも、四体の魔獣に襲われていた。


エリオは感じていた。ここにいる魔獣は、山で遭遇した魔獣より明らかに手強い。


いや、強いというより――

狡猾だった。


魔獣たちは激しく攻め続けてくるわけではない。だが、かわすのが異様に上手かった。


数歩先で狩魔師と睨み合い、こちらが踏み込もうとするとすぐに距離を取る。

まるで体力を削ろうとしているようだった。


何度か同じことが続いたあと、二人は追うのをやめた。

その場に立ち、魔獣たちが次に何を仕掛けてくるのかを待つ。


策が効かないと分かったのか、魔獣たちは再び飛びかかってきた。


エリオは剣を振るい、魔獣の腕を裂く。だが急所には届かない。


その魔獣は、身をひねって攻撃をかわしていた。

別の一体が右後方から襲いかかる。


だがコーディアの回し蹴りが炸裂し、魔獣は地面へ叩きつけられた。


やっぱり、こいつら馬鹿じゃないな。エリオはそう思った。


こちらの左目だけが、魔獣を見ることのできる紫の眼だと見抜いている。

そうでなければ、何度も右側から攻めてくるはずがない。


コーディアがいてくれて助かった。


そう思うと同時に、エリオは少し申し訳なくなった。

彼女は自分の戦いだけでなく、エリオの右側まで気にかけなければならない。


だが、この状態が長く続くとは思っていなかった。


右側への反応は、最初ほど鈍くない。

魔獣の移動速度も、想像していたほど速くはない。

少しずつなら、右側からの攻撃にも対応できるはずだ。


幸い、ここの魔獣は前に遭遇した個体より戦い慣れているものの、圧倒的な脅威というほどではなかった。

エリオは自分の力を信じていた。


視覚改造手術が終わった時、バルバス博士は彼の体調を心配していた。


回復には一か月必要だと言われた。

さらに、左右で見えるものが違うことによる違和感にも慣れなければならない、と。


だがエリオに、一か月もゆっくりしている時間などなかった。


ほとんど意志の力だけで手術台から起き上がった。

そして半日後には屋外へ出て剣を振っていた。

手術前の感覚を取り戻すために。


左目はまだ腫れている。痛みもある。だが、そんなものは些細な問題だった。


両親の黄の匣を取り戻す。それが、今のエリオにとって何より重要だった。


その思いが胸の奥で炎になっていた。

来るなら来い。

何が来ても、もう俺は倒れない。


二体の魔獣が再びエリオへ襲いかかる。


エリオは全力で跳んだ。一体目の魔獣の肩を踏みつける。

そのまま魔獣を踏み台にして、さらに高く跳んだ。空中で身体を回転させる。


二体目の魔獣が飛びかかってくる。エリオはその正面へ剣を突き出した。


今度は外さない。刃は正確に急所を貫いた。

魔獣は空中で力を失い、そのまま地面へ落ちる。


エリオは振り返った。

残った三体の魔獣が、突然コーディアへ集中攻撃を仕掛けていた。


次々と繰り出される攻撃。コーディアは反撃の隙を見つけられない。


剣で攻撃を受け止め続けるしかなかった。そして少しずつ、地穴の入口へ追い込まれていく。


エリオは一体の背後へ向かって駆け出した。奇襲を狙う。だが魔獣はすぐに気配を察し、振り返った。


いい。

エリオはそう思った。

少なくとも注意は引けた。


その魔獣が飛びかかってくる。拳を何度も振るってきた。鋭い爪が空中で光を反射する。


拳筋はひどく乱れていた。一見すると、まるで規則性がない。だが速い。エリオはなかなか反撃の機会を見つけられなかった。


それでも数発かわすうちに、少しずつ見えてくる。


魔獣の拳そのものは予測できない。次にどこを狙うのかまでは読めない。


だが拳を引き、次の攻撃へ移るまでのほんの一瞬。零点何秒にも満たない隙がある。


エリオは身を沈めた。剣の角度を変える。

そして魔獣の腹部へ突き込んだ。


「俺の勝ちだ」

エリオは低く呟いた。


その瞬間、激痛が走った。

何が起きたのか理解するより早く、腹部に凄まじい衝撃が叩き込まれる。


エリオの身体は数メートル先まで弾き飛ばされた。小さな丘へ背中から激突する。

手から剣が離れ、地面へ転がった。頭がぐらつく。


衝撃のせいで、どこが痛いのかも分からなかった。


それでもエリオはすぐに起き上がろうとした。再び戦うために。


その時、ようやく理解した。さっきの突然の痛みが、どこから来たものなのかを。


左目だ。


左目が痙攣していた。


焼けるような痛みが、左目から後頭部まで走っている。

まるで硬い石で眼球を何度も叩きつけられているようだった。


エリオは左目を強く押さえた。


今じゃない。頼む。今だけはやめてくれ。

心の中で叫ぶ。


それから大きく息を吐いた。左目を開こうとする。

だが開いた瞬間、痛みはさらに強くなった。

まるで眼球そのものを力任せに引き抜かれているようだった。


開けない。左目が開かない。


エリオは左目を押さえたまま、ふらつきながら落ちた剣へ向かった。


だが魔獣の位置を確認しようとした時、ようやく思い出す。残された右目では、魔獣を見ることができない。


恐怖が一気に押し寄せた。


エリオはコーディアの方を見る。

コーディアは両手で剣を握り、何かを必死に受け止めているようだった。


次の瞬間、彼女は力いっぱい押し返す。

前方へ宙返りし、素早く立ち上がる。そして背後へ向かって剣を振り抜いた。


「エリオ! 危ない!」

コーディアが叫んだ。


エリオには、何かが迫っている気配だけが分かった。だが何も見えない。


コーディアは前方へ跳んだ。空中で何度も剣を振るう。

着地すると、さらに後方へ強烈な蹴りを放った。


そして素早くエリオの剣を拾い、彼のそばへ駆け寄る。


「どうしたの?」

そう言いながらも、彼女の目は前方を警戒し続けていた。


「目が……」

エリオは苦しげに言った

「コーディア……左目が……」


「何……」

コーディアは言い終える前に、一歩前へ踏み込んだ。魔獣の攻撃を受け止める。


彼女は前方へ何度も突きを放った。だが魔獣はそれをすべてかわしているらしい。


コーディアは左右へ身をかわす。そして突如として身体を大きく傾けると、後方へ仰け反りながらその身を翻した。


その顔がエリオの方を向いた瞬間。彼女の表情が凍りついた。


「エリオ!」

コーディアは叫んだ。


そして迷わず、手にしていた剣をエリオへ向けて投げ放つ。


刃はエリオの顔へ向かって飛んできた。

だが次の瞬間、何かに弾かれたように空中へ跳ね上がる。


エリオには魔獣が見えなかった。危険な何かが、そこにいることが分からなかった。


彼に見えたのは、コーディアの身体が突然宙へ跳ね上げられる光景だけだった。

そして彼女は地面へ落ちていく。その落下が、まるでひどく遅く見えた。


胃の奥で何かが激しく掻き回されている。吐きそうだった。


エリオは必死に前へ進もうとする。何もかも投げ捨てるように、コーディアを受け止めようとした。


だが彼女が地面へ落ちる寸前。見えない手が、その両脚を掴んだように見えた。

コーディアの後頭部が、地面へ激しく叩きつけられる。両脚だけが宙に持ち上がっていた。


次の瞬間、彼女の身体は強い力で後方へ引きずられた。地穴の方へ向かって。


ほんの数秒のことだった。コーディアは、地穴の奥の闇へ消えていった。


それが、エリオが意識を失う前に見た最後の光景だった。


ご覧いただきありがとうございます。

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