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第7章:永遠の夜に咲く、青い約束


ブラック企業の社長が

「永久強制労働」という名の地獄へ連行されてから

魔界にはかつてないほどの穏やかな時間が流れていた。



魔王城の中庭では

更紗の魔族転生と「過去との完全な決別」を祝う

ティーパーティーが開かれている。


「更紗様、こちらのドレスにお着替えを。

……ふふ、今日が一番お綺麗ですわ」


リアンが用意したのは

月明かりを織り込んだような深い青のドレス。

それを纏った更紗は

もはや社畜として疲れ果てていた面影などどこにもなく

気高く美しい「魔族の姫」そのものだった。


中庭に出ると

そこには色とりどりの光が舞っていた。


中心にいるのは

花の精霊となった更紗の母親だ。


「更紗、こっちへいらっしゃい。

……あら、本当に素敵な顔になったわね」


精霊の母が優しく微笑む。

更紗はその手を取り

そっと耳元で囁いた。


「……ママ。私、もう大丈夫。

……パパ(アンデス)も

武流デストロイド

ずっと私を守ってくれてたんだよ」


精霊は驚いたように目を見開き

それから「……やっぱり、バレちゃってたのね」と

かつてのように悪戯っぽく笑った。


その視線の先には

気恥ずかしそうに酒を酌み交わす

デストロイドとアンデスの姿がある。


「おい、武流!

さっきからニヤニヤしやがって。

更紗を泣かせたら

魔王同士の戦争だろうが

俺が相手になってやるからな!」


「……アンデス、義父ちち上。

更紗を泣かせるのは

俺がこの命を落とす時だけだ。

……もっとも、俺は死んでも地獄から這い上がって

更紗を迎えに行くがな」


相変わらず重すぎる愛を語る二人に

更紗は思わず吹き出した。


「もう、二人とも!

今日はお祝いなんだから、喧嘩はやめて」


更紗が歩み寄ると

デストロイドが静かに立ち上がり

彼女の手を包み込んだ。


かつて

狭いアパートの天井を見上げていたあの夜。


死を待つだけだった更紗に

彼は「選ばせてやる」と言った。


「更紗。……改めて、聞かせてくれ。

魔族として、俺の隣で生きることを選んだことに

後悔はないか?」


更紗は、デストロイドの銀色の髪に触れ

それから広い中庭を見渡した。


美味しいお菓子を運んでくれる

リアンとシャーネス。


豪快に笑いながら

こっそり涙を拭いているアンデス。


光り輝きながら

自分を見守ってくれる精霊の母。


そして、何より温かい、デストロイドの体温。


「後悔なんて、あるわけないじゃない。

……私、今が人生で一番、生きてるって感じがする」


更紗は初めて

自分から彼の唇にそっと触れた。


「あっちの世界に

最後にお別れを言っておいてよかった。

……『さよなら』を言わなきゃ

この幸せには気づけなかったから」


魔界の紫色の月が

二人を祝福するように照らす。


かつて「月野更紗」を苦しめた世界は

もう遠い記憶の彼方だ。


ここにいるのは、最愛の恋人と、家族と

忠実な部下たちに囲まれ

永遠の時を謳歌する一人の女性。


更紗の新しい物語は、まだ始まったばかり。


そこにはもう、深夜の電話も

終わらない納期も存在しない。


あるのは、愛する人たちと過ごす

最高に「のんびりとした」永遠だけだ。




お読み頂きありがとうございます

次回も楽しみに♡

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