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第11話:勘違いの勇者と、お節介な救済

魔王と言えば勇者が付き物ですよねw


魔王城の重厚な門が

轟音と共に弾け飛んだ。


「魔王デストロイド!

囚われの乙女を今すぐ解放しろ!」


眩い黄金の鎧に身を包んだ

いかにも「正義」といった風貌の青年勇者が

聖剣を掲げて玉座の間に乗り込んできた。



玉座では、デストロイドが更紗に

魔界特産の「とろけるベリー」を

あーん、と食べさせている最中だった。


「……あ、食べかけだったのに」

更紗が残念そうに呟く。


デストロイドの瞳から一瞬で光が消え

絶対零度の殺気が勇者を貫いた。


「……貴様。

更紗の至福の時間を邪魔した罪

万死に値するぞ」


「ひっ……! い、いや、怯まないぞ!

乙女よ、今助けてやる!

さあ、その恐ろしい魔王の手を振り払ってこちらへ!」


勇者の叫びに

更紗はポカンとして自分の手を見た。


デストロイドの大きな手は

今、更紗の指先をそっとマッサージしている。


「……あの、勇者様? 助けてって、どこに?」


「どこにって……監禁され

過酷な労働を強いられ

泣き暮らしているのではないのか!?

噂では、ここでは『永久労働施設』なる地獄があると……」


「あぁ、あれは私の元社長が

入ってるだけだから大丈夫ですよ」


更紗は、デストロイドに剥いてもらった

別のフルーツを口に運びながら

実にあっさりと答えた。


「えっ? 元……社長?」


「それに勇者様、見てください。

私、ここに来てから五キロ太っちゃったんです。

ここの人たち

私が少しでも動こうとすると

『更紗様はお座りになっていてください!』って

お菓子を山ほど持ってくるんですもの。

……むしろ、ちょっと厳しくしてほしいくらい」


勇者は聖剣を握る手が震え始めた。

目の前の光景はどう見ても「囚われの姫」ではない。


溢れんばかりの魔力に包まれ

魔王からも、控えている上位悪魔たちからも

神聖な宝物のように崇め奉られている

「魔界の女王」候補だ。


「そんな……バカな。

魔王は残虐非道で

人間を弄ぶ存在のはず……」


そこへ、アンデスが巨大な斧を担いで現れた。


「あぁん?

誰だ、更紗を連れて行こうなんて言ってるガキは。

……おい勇者。

お前、更紗にこの最高級魔綿の毛布よりも

温かい暮らしを約束できんのか?

毎日、三ツ星シェフ並みの飯を食わせてやれんのか?」


「それは……その

……野宿も多いですし

……干し肉とか……」


「話にならねえな。

帰れ、小僧。

これ以上更紗を困らせるなら

お前の国を俺が直接『ホワイト化』しに

行ってやってもいいんだぞ(※徹底的な労働改革)」


アンデスの脅し(?)に

勇者はついに膝をついた。


「……僕が信じていた正義とは、一体……」


更紗は、あまりに不憫になった勇者に

手元のスコーンを一つ差し出した。


「勇者様、お疲れなんですよ。

これ、魔界で一番美味しいお店のなんです。

食べて、実家に帰ってゆっくり休んでください。

……私、もう『あの世界』には戻りたくないんです」


更紗の穏やかで

けれど揺るぎない拒絶。


勇者は涙を流しながらスコーンを頬張り

「……美味しい……こんなに温かい食べ物

生まれて初めてです……」と漏らして

トボトボと城を去っていった。


「……武流。勇者様

なんだかブラックな環境で

旅してそうだったね」


「そうだな。今度シャーネスに命じて

あの国の労働環境を調査(視察)させよう。

更紗を心配して来たのなら

それくらいの礼はしてやる」


更紗は、自分のために「世界のルール」さえ

変えてしまおうとする

魔王たちの愛に苦笑しながら

再び平和なティータイムに戻るのだった。




お読み頂きありがとうございます

次回、最終話です

お楽しみに♡

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