最終話:さよなら、そして愛する世界へ
更紗が過去のすべてを愛し
新しい未来へと羽ばたく「最高のハッピーエンド」を描き切ります。
魔界の空に、千年に一度だけ昇るという
「双子の蒼月」が輝いていた。
今夜、魔王城では
更紗とデストロイドの婚儀が執り行われる。
更紗は、母・陽子が丹精込めて育てた
「永遠を誓う青い花」で編まれた
ベールを纏っていた。
鏡の中に映るのは
漆黒の翼を誇らしげに広げ
瞳に力強い光を宿した一人の魔族の女性。
もはやそこには
深夜のオフィスで震えていた影はない。
「……更紗。
本当に行っちまうんだな
俺のところから」
控え室に、不釣り合いなほど
立派な礼服を着たアンデスが入ってきた。
その瞳は、式の前からすでに真っ赤だ。
「パパ、隣の部屋に引っ越すだけだよ?
毎日一緒にご飯食べるって約束したじゃない」
「分かってる……分かってるんだがよ……。
剛(前世)の時は
お前の花嫁姿を見ることなんて
叶わねえと思ってたからな……」
アンデスは、大きな手で
更紗の頭を優しく撫でた。
「幸せになれ、更紗。
……武流なら、俺の代わりに……
いや、俺以上に、お前を守り抜く。
それは、俺が一番よく知ってるからな」
「ありがとう、パパ」
更紗は父の手を握りしめ
それから陽子の精霊が舞う光の中を通って
デストロイドの待つ祭壇へと歩き出した。
祭壇の前に立つデストロイドは
銀髪を後ろに流し
更紗がかつてプレゼントしたネクタイピンを
魔王の装束に隠し持っていた。
更紗が隣に並ぶと
彼は震える声で囁いた。
「……綺麗だ、更紗。
あの日、病室で別れた時から……
俺はずっと、この景色を夢見ていた」
「私もだよ、武流。
……待っていてくれて
見つけてくれて、ありがとう」
二人の誓いの口づけが交わされた瞬間
魔界全土に祝福の鐘が鳴り響いた。
リアンとシャーネスが
悪魔らしからぬ
歓喜の涙を流しながら花びらを撒き
魔界の住人たちは
新しい「女王」の誕生に熱狂した。
ふと、更紗は夜空を見上げた。
あの遠い「元の世界」では
今頃誰かがまだ
終わらない仕事に
追われているのかもしれない。
かつての更紗もそうだった。
けれど、彼女は今、心の底から言える。
(……あの時
勇気を出して手を伸ばして
本当によかった)
過去の苦しみも、涙も
すべてはこの瞬間のための
「前書き」に過ぎなかったのだ。
「更紗、何を考えている?」
デストロイドが
愛おしそうに更紗の腰を引き寄せた。
「ううん、何でもない。
……ただ、これからの毎日が、楽しみだなって」
更紗はデストロイドの胸に顔を埋め
柔らかな翼で彼を包み込んだ。
もう、さよならを言う必要はない。
ここにあるのは
愛するパパと、見守ってくれるママと
千年の愛を捧げてくれる恋人がいる
彼女の「新しい世界」なのだから。
双子の月の光に包まれながら
二人の永遠の物語は
ここからまた新しく刻まれていく。
最後までお読み頂きありがとうございました。
また、別のお話でお会いしましょう♡




