佐々木豊子
「あらぁ、やっときたわ涼ったら。まちくたびれて首が天井突き破りそうだったんだからぁ」
「久しぶり、元気そうじゃんばぁちゃん。そんな待たせてないだろ。ほら約束の11時ぴったりじゃん」
なんか拍子抜けだった。こっちは容体がどうか気になって仕方が無かったのに。
この様子を見るに僕の心配しすぎだったようだ。
約半 1ヶ月前、いきなり豊子から電話がかかってきた。
第一声が「今入院手続きしてるから着替え持ってきてくれない?」で心配より驚きが勝ってしまった事を思い出す。
いつも饒舌な豊子だったが、今日はいつにもましてお喋りだった。
お気に入りの病院食の話、隣の部屋の人のいびきがうるさい話や、最近ハマっているスマホゲームを勧められたりもした。
そんな話をしているうちに、豊子の担当医が、部屋にノックをしたのち入ってきた。
「お話ししているところすみません。お孫さんが来ているとのことでしたので、豊子さんの病状と今後の治療方針についてお話ししたいのですがお時間よろしいでしょうか?」
「大丈夫です。すぐいきます」
また病室には戻ってくるつもりなのでスマホと貴重品など最低限のものだけを持って部屋を出る……その瞬間、少しだけ豊子の顔が悲しみに満ちた表情をしていたような気がした。
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豊子の担当医について行く事2、3分入院棟とは少し離れた面談室に案内された。
こちらもやはり静まり返っていた。
「どうぞお掛けください」
促されるまま、回転式の背もたれがある、いかにも病院にありそうな椅子に腰掛ける。
少し場に重い空気が漂うがそれを払拭するように僕は口を開いた。
「ばぁちゃんの容体はどうなんですか?」
「はいまず病名と進行度、治療方針から話させていただきます。病名は胃がんのステージⅢです。検査ではリンパ節まで侵潤が認められました」
「そ、それはどうなんですか?」
先ほどまでの豊子の様子と反して、かなり深刻そうに、また冷徹に、かなり重大な病気の説明をされる。胃がんだとは聞いていたが、進行度は聞かされていなかった。病室での豊子を見て安心してしまっていただけに、ダメージは大きかった
「開腹手術も選択肢の一つですが、患者様の負担が大きいのと、血管まで腫瘍が広がっていた場合、開けて閉じるだけになる可能性があるので、内科治療が主になって行くと思います」
「完治することはあるんですか?」
「ない……と言うわけではないですが、高齢なのに加えて、かなり進行してしまっているので、生きているうちはこの病気と戦う事になると思います」
顔から血が遠のいて行く感覚があった
「そ、その説明はばぁちゃんにも同じ事をしているんですか」
「はい。同じ説明をしています」
そうか……さっきまで元気そうだったのは、元気なように振る舞っていたと言う事なのだろう、僕に心配をかけないために……
ここから一通りの説明が終わって、面接室を出るまでの記憶はあまり残っていなかった。
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