↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
96/102

「さっき、間違いなく停止したと思ったんだけどなぁ」

※ 誤字脱字、文章内の加筆修正などを行いました。

 異世界召喚の特典として向上している身体能力を存分に発揮し、晶子は一瞬で取り巻き達へと距離を詰める。

(斬魔を発動した時に感じたけど、ルビーとサファイアが混じってるおかげなのかマナの溜まりが凄く良い。これなら煌一閃に常にマナを溜めるようにしておけば……)

「疾風嵐塵(しっぷうらんじん)!!」

 下段の構えから逆袈裟に振り上げる。刀身に溜め込まれたマナが振り上げた際の風圧を何倍にも増幅させ、渦巻く暴風となって取り巻き達に向かっていった。

 暴風は綿毛の幕を乱しその中で尚も藻掻いていた取り巻き達の体を抉り、中段にいる機体を沈黙させる。

「乱流絶ち!!」

 続いて振り上げた刀身を真っ直ぐに振り下ろせば、真空の刃となって飛んでいく。暴風すらも斬り払い、最下段から二段目にいた魔道具を容赦なく破壊した。

(秘技を発動する度に必要なマナのチャージを短縮! 我ながら至高の逸品を再編したのでは?? 晶子さんてんさ~い!!)

 再編で作り直した煌一閃の性能に晶子が心の中で自画自賛しておると、ずしん、という音と共に動いていた全てのケーブルが落ち、ピクリとも動かなくなる。

 どうやらケーブルを動かす為のメイン動力を担っていた取り巻きが倒された事で、機能が停止したようだった。

「ラッキー! これでケーブルは——」

 動かない、と晶子が笑おうとした時だった。地に落ちたはずのケーブルの一本が、これまでとはけた違いに機敏な動きで晶子へと迫る。

 ハッと事態を把握するよりも早くケーブルは晶子の体を横薙ぎにし、その体を軽々と吹き飛ばした。

「ぐっ!」

 寸での所で防御が間に合ったのでさほどダメージは喰らわなかったが、流石に踏ん張る事までは出来ず、晶子の体は地面を転がりながら階層の淵まで追いつめられる。

 何とか勢いを殺そうと煌一閃を突き立てたりするも、相当な力で弾き飛ばされたせいで中々止まれず、遥か空の上に放り出されてしまうのも時間の問題だった。

(それはいくらなんでもマズいって! えっとえっと……!!)

 どうするかと必死に考える晶子の体を、不意に何か柔らかい物が受け止めた。ふわふわとした肌触りとほんのりとした青臭さが鼻腔を擽る。

「うわちょなに!? って、これ……!」

 急な感触に驚いて目を見開いた晶子の視界に映ったのは、無数の綿毛が寄り合わさって出来たクッションだった。

(これって、フラフスクリーンの綿毛?)

 それだけではない。綿毛のクッションに埋もれる晶子を支えるようにして、いつの間にか鑪が後ろから抱きかかえるようにして立っていたのだ。

「晶子、大事無いか?」

 ちらりと、取り巻き達の方を警戒しながら、鑪が問いかけて来た。

「は、はい。大丈夫です」

(たたたたた、たたらさん!? ナンデドシテ!? てか今の一瞬でここまで走って来たの!? ああああああああああああああああああああああああああああ最推しの腕の中にいる事実に嬉しいと思っているヲタクな自分がいる反面、一方的に鑪さんを突き放してた分際で何興奮してんだワレェ!? って思ってる自分もいて、更に言うならまだ鑪さんの事許してないからなって気持ちもちょっとあったりなかったり……ど、どんな顔してればいいん!?)

 本心で言えば最推しである鑪の腕の中にいる事に狂喜乱舞している筈なのだが、ここ最近の鑪との関係を考えると素直に喜ぶことが出来ない。

 他人行儀な態度をとるのはやり過ぎだったのかもしれないが、晶子にとってこの施設の魔道具達は一方的な加害者ではない。

 彼等は不幸な経緯から居場所を失い、ようやく見つけた新たな場所では人体実験の末に人でないものにされてしまった正真正銘の被害者なのだ。

 そんな彼らを一方的に嬲り、正義と言う名の暴力を振るおうとした鑪の行為は、とてもでは無いが許容できるものではない。

(てか鑪さん、あたしが攫われたってなってめっちゃ探してくれてたみたいだけど……なんか、ちょっと執着し過ぎじゃない?)

 初めて鑪に自身の正体を打ち明けた日から、彼は監視の名目でこれまでの旅に同行して来た。

 当然そう簡単に信用してもらえないと思っていた晶子も二つ返事で了承したし、誠実が人の形をして歩いているような人間性の鑪なら大丈夫だと絶対の信頼を置いていたからこその返事だった。

 しかし、最近の鑪はどうにも様子が可笑しい。監視のかの字も出さないどころか、まるで晶子の隣に居る事が当たり前のように振舞う事も増えている。

 それに違和感を持っていなかった晶子も大概だが、今回の事で酷く荒れていたとアルベートから話を聞いて以降、そう言えばと思い至る事が増えていたのも事実。

(……まさかとは思うけど、本当にアルベートが言ってたみたいな事、ある訳無いよ、ね……?)

 帝都の玉座の間でアルベートが口にした『鑪が晶子を好いているのでは』という言葉。

 当時は解釈違い故に絶対に認めないと断固拒否した晶子であったが、攫われた晶子を救い出すために我を忘れたように振舞う鑪を目の当たりにしては否定しづらい心持ちにもなるというもの。

(仮に、万が一、本当に鑪さんがあたしをす、すす、すき、だったとして……一体何時から?? え、あたしそんな恋愛感情向けられるような事したか……??)

 こう言っては何だが、晶子は生まれてこの方まともな恋をした事がない。一般的によく言う学生時代の片想いといった経験自体はあるが、それも憧れの気持ちが強かった事もあり、割と早々に区切りをつけていた。

 なにより、学生時代に偶々立ち寄ったゲーム販売店でパッケージに一目ぼれしたWtRsに出会ってからというもの、恋愛事に一切興味が出なかったのもあって余計にその類には縁がなかった。

(結局、WtRsのゲームディスクが擦り切れて遊べなくなるまでは、まじで恋とか愛とか気にした事も無かったからなぁ……そう言った話を振られるようになったのも、高校卒業して飛び込んだ今の会社で仲良くなった人達と話すようになってからだし)

(お前ホント、俺様達のこと好きだよな……親御さんにはせっつかれたりしなかったのかよ)

(……あー……あたし、親いないんだよね)

 急に割り込んで来たアルベートの言葉に、晶子はややバツが悪そうに答える。

(……は?)

「どこぞに怪我は無いか?」

「はい、大丈夫です。助かりました、ありがとうございます」

「そうか」

 晶子の返答に呆けた声を出したアルベートを置き去りに、晶子は鑪に礼を述べて体を離す。鑪もそれを素直に受け入れると晶子の服に纏わりついている綿毛を軽く払った。

(ハーミーズは……うわ、こっちに追撃くるの抑えてくれてるじゃん……そんな状態で良くあたしにフラッフスクリーン投げれたね……)

「ふむ……前々から思っていたが奴の扱うこの綿毛、異様に絡みついてきおって喰らう側としては鬱陶しい事この上ないな」

「あ、あはは……」

 忌々しいと言わんばかりに呟く鑪の声色からして、相当鬱陶しく思っているのだろう。人間であれば眉間に皺を寄せてしかめっ面を作っているのだろうなと容易に想像ができ、思わず乾いた笑みを浮かべてしまった。

(——おいコラ晶子!! 勝手に話を終わらせんな!!)

(うわびっくりした)

 やや不機嫌そうな鑪になんと声をかけるか考えあぐねていると、ほったらかしにされたアルベートが怒鳴り声を上げる。

 思わずビクッと肩を震わせた晶子だったが、どうやら鑪には気付かれなかったようだ。その事にホッと胸を撫でおろしつつ、怒り心頭なアルベートにどうしたのかと首を傾げるしか無かった。

(どうしたのよ急に。てかなんでそんな怒ってんの?)

(俺様ぁ、お前が親無しだって聞いた事ねぇんだが!? なんで言わねーんだよ!!)

(あぁその事? もう何年も前の話だし、別にいいかなって)

 随分と懐かしい思い出に、晶子は何とも言えない表情を浮かべていた。両親の話など、もう何年とした事が無かったからだ。

(うちの両親、あたしが高校生になる前に事故で亡くなってんの。縁切ってたのかなんなのか、双方の親族とも全く繋がりがなくてさ。あわや施設行きって所を近所に住んでた仲の良いおばあちゃんが後見人になってくれてさ。色々とお世話になったの)

 今思えば、顔見知りとは言え他人の子供、ましてや十代後半の少女を育てるなど相当な覚悟が必要だっただろう。

 しかし、晶子を引き取った養い親は常に明るく穏やかで、彼女と共に過ごす生活はとても充実していた。

(高校も自分でバイトしてお金を溜めるって言ったんだけど、子供がそんな事気にしなくて良いって全額出してくれてさ。卒業後はあたしも働き出したし、色々恩返しもしてたんだけど……社会人になって初めての冬に、亡くなっちゃった)

 あの頃の晶子は、もう一人の親たる女性を亡くしたショックから塞ぎがちになってしまい、結局会社を辞める事に。

 その後はWtRsを延々と周回する日々を送っていたが、いつまでもこんな状態では実の両親も養い親も喜ばないと奮起し、紆余曲折ありながらもなんとか今の勤め先へと再就職をするに至ったのだった。

(ま、今はもう色々と吹っ切れてるからさ。そんな深く気にしないで)

(……お前がそう言うなら)

 まだ少し納得していないようだったが、アルベートは渋々と引き下がる。きっと彼も、今の鑪に負けず劣らずなしかめっ面をしているのだろうと思い、晶子はバレないよう苦笑した。

「しょーこー! だいじょうぶー!?」

 ふと名を呼ばれて顔をあげれば、慌てた様子でこちらに近づくハーミーズが見えた。

「咄嗟の事で頭回らなくて……フラフスクリーンでクッション作ったまでは良かったんだけど、思った以上に勢いがあったから止められなかった。ごめん……」

「いやいやいや! ハーミーズのおかげで勢いを殺せたようなもんだし、最終的には鑪さんに受け止めてもらえたから大丈夫! ありがとね!」

「でも! ……いや、晶子が無事なら、それでいいや」

「そうそう! ほら、晶子さんはこの通りピンピンしてるからね!!」

 右肩をぐるぐる回してアピールする晶子を見て、ハーミーズがまた笑う。どことなくホッとしたようなその表情に、晶子も釣られて笑みが零れた。

「っと、のんびりしてる場合じゃ無かった」

 晶子はそう言うと、自身を弾き飛ばした元凶に視線を向ける。中核らしき魔道具を倒した事で停止していた筈のケーブルが再び動き出しており、薄くなった綿毛の幕の隙間からこちらの出方を窺っているようだ。

「さっき、間違いなく停止したと思ったんだけどなぁ」

「ふむ……恐らくではあるが、メイン動力を担う役割を繋ぎ変えたのではないか?」

「……鑪と同じ意見なのは癪だけど、僕もそう思う。あいつら、塔みたく縦に積み上がってるけど中身は全部一まとめに繋がってるんじゃないかな?」

 つまり、先程の晶子の一撃によりメイン動力を担当していた魔道具が破壊され、ケーブルなどを操作する者が居なくなったということらしい。

 それを検知した内部機構が即座に生き残っている取り巻きに担当を移行させたことで、再び動き出したのではないかという推測だった。

「まじか……でもそれなら、あたしのあの結晶攻撃受けてよくもまあ生きながらえてるな」

「それだけ執念深いという事であろう」

 譫言のようにかつての栄光や崇拝を口にする取り巻き達。その事からしても彼等がこの研究所とそこで行われていた実験の数々、そしてそれらを指揮していた十三代目所長に並々ならぬ執着を抱いているのが分かるというもの。

(執着って怖いからなぁ……あながち、鑪さんの言ってることも間違って無さそうで怖いのよね。ホントなら即死してるはずの傷で生きてる~みたいな話、現実世界のテレビ番組でなんか見たな……)

 昔どこかで聞いた生命の神秘話を思い出して遠い目をした晶子。

「「「اس دی تعریف کرو، اس دی تعریف کرو—اوہ جہڑا ساڈا اے; دعا کرو، دعا کرو—ابدی خوشحالی۔」」」

 その時、しぶとく残っている取り巻き達が一斉に何かの呪文を唱えだした。

「「「گاؤ، اوہ گاؤ عظمت دے کارنامیاں دا; ڈر، اوہ طاقتور رہنما توں ڈر۔」」」

「ぐっ、なん、だ、この、面妖な、呪文は……!」

「う、うげぇ……なん、なの、これ……すご、く、きもちわるい……」

(こ、れ、ヤバ……! 呪文自体に淀みが混じってて、まともに聞いてられない……!)

 金属をひっかくような音や、何かをぐちゃぐちゃと潰すような異音。その他多くの不快な音が混ざり合い、晶子の耳を劈く。

 とても耐えられるものでは無く、晶子は両手で耳を塞ぎ、その場に蹲ってしまった。

「晶、—……大—夫—っ!?」

「—子、—っか—して!!」

 突然蹲った晶子を心配して二人が語り掛けてきてくれるも、彼ら自身もかなり辛そうだ。なにより、耳鳴りが酷過ぎて晶子の耳には一言も届かない。

「「「اپنے آپ نو سجدہ کرو تے اکورانیا دا احترام کرو - اک بے مثال باصلاحیت، دنیا دے عروج تے راج کر رہیا اے۔」」」

「うぅ……!!」

 取り巻き達が呪文を唱える度、頭が割れるように痛む。傍らにいる鑪達も頭を抱え、今にも膝をつきそうになっている。

(なんなの、この呪文。こんなの、WtRsにはなかったはず……)

 記憶をどれだけ遡っても、取り巻き達が唱えている呪文に心当たりは無い。であれば、これも淀みの精霊による妨害のせいなのか。

 どこか冷静な頭でそんな事を考えていた時だった。


 ——キュィィィイイイイイイイイイン


(……何の音?)

 耳鳴りで五月蠅いながらも辛うじて聞き取れた甲高い機械音。まるで何かを充填するかのようなそれに、晶子はハッとして顔を上げる。

「!!」

 見上げた先にあったのは、辛うじて残った三体が体の各所からケーブルを伸ばし、それを束ねて巨大なレーザー砲へと変形させている姿だった。

 レーザー砲の銃口には既にマナエネルギーが溜まり切っているようで、いつ発射されても可笑しくは無かった。

「じょーだん、きつい、って!!」

 晶子は取り落としていた煌一閃を拾い上げると、勢いよく足元に突き立てる。それと同時にドンッという音と共にレーザーは発射された。

「金剛壁!!」

 レーザーが目と鼻の先まで迫った刹那、間一髪で晶子の防御魔法が発動。防御魔法の壁をガリガリと削る音にレーザーの威力を垣間見た晶子はゾッとしながら、これを喰らわなくて本当に良かったと胸を撫でおろした。

「はぁ……心臓に悪い」

「助かった晶子」

「ホントに……ありがと」

 脱力する晶子の背を擦り感謝を述べる鑪に続き、へたりこんだハーミーズが照れ臭そうに言う。

(鑪さんが居るから素直になりにくいのかな。こういう所が子供っぽくて可愛いのよね)

「いいのいいの、気にしないで」

 親戚の子供を見守るような気持ちになりながら、晶子はそう微笑んだ。その笑顔の意味を理解してしまったのか、ハーミーズはどこか居心地悪そうに顔を背ける。

 そんな様子がますます愛おしくて、晶子は攻撃を受けている最中であるにも関わらずニヤニヤが止まらなかった。

(にしても、さっきの呪文……詠唱するだけで淀みが溢れるって、一体どんな原理になってんの? てか誰があんなもん教えたん——)

 脳裏に過ったのは、老若男女入り混じった不愉快な声と晶子を一方的に敵視するかつての聖女。

(もし、仮にこの呪文の出所がアイツ等だとしたら……想像以上に事態は悪い方へ行ってるかもしれない……)

 そんな事を考えていると、遂にエネルギーが尽きたらしくレーザーは掻き消えた。しかし、完全に止まったというわけではないようだ。

 再び甲高い奇怪音が鳴り響いたところを見るに、マナエネルギーの再充填を行っているらしい。

「!! 晶子! いくら我の守護であっても、あの威力と同レベルの攻撃が何度も来れば守護が崩壊する! 早々に決着をつけねば!」

「そう言う事なら良いよね? 僕程度の大技くらいなら、防げない訳無いでしょ?」

「ふん、当然だ」

「……貴方達、やっぱ仲良しだよね?」

「「良くない!!」」

 綺麗にハモった二人に、晶子は苦笑した。

「でもそうね、一気にケリつけようか!!」

 額から落ちる汗を拭いもせず、晶子はニッと笑って見せる。

 それぞれに武器を構えた三人は互いに頷き合うと、今にも充填を終えようとしている取り巻き達を見据える。

「守護をしていないのであらば、我が奥義の錆にしてくれようものだが……今回は貴様に譲ってやろうハーミーズ」

「はんっ! 言ってろ偏屈ジジイ!」

 短い言葉の応酬の後に、鑪が一歩後ろへ下がる。それを見計らって、ハーミーズの口から流れるように呪文が紡がれ始めた。


【逆巻く風の旋律は、美しき世界の調べ】

【小鳥の囀りと詠い、朝日の陽光に照らされて踊る】

【ここは遥かなる西の果て、愛を語らう夢の中】


 詩人が詠うような詠唱が進むにつれ、ハーミーズの頭上に風が集まり始める。無数の花弁を巻き上げているそれらはやがて巨大な矢の形を形成すると、ゆっくりと取り巻き達に狙いを定めた。


【さあ、共に朝焼けの果実酒を飲み干し、下らぬ日常を謳歌しよう!】

【迫る影に春風の矢を放ち、明日への餞にしてしまえ!】


「ブルームストーム!!」

 ハーミーズがパチンと指を鳴らした瞬間、花弁を巻き込んだ矢が真っ直ぐに取り巻き達へと飛ぶ。それとタイミングを同じくして、第二弾のレーザーが発射された。

 風の矢とレーザー砲、単純な字面だけ見れば勝敗は明らかに見える。だが、当然これでは終わらない。

「居合刀技・金剛一刀!!」

 鑪のダイアモンドのように固い剣戟が、一時的にレーザーの威力を弱め。

「乱流断ち!!」

 嵐をも斬り払う晶子の一太刀が、若干押されつつあった矢を後押しした。仲間の手助けによって勢いを取り戻した矢は、レーザーのど真ん中を裂くように飛び続け、やがてレーザー砲に直撃。視界を一瞬白く染めたかと思うと、次の瞬間には大爆発を起こした。

「っ……どうなった!?」

 咄嗟に庇ってくれた鑪の腕の中で、晶子はもくもくと立ち昇る煙の隙間から相手の様子を窺おうとする。

 すると、ガコン、ドシャッと何かが崩れ落ちていく音が響き渡り、ようやく晴れた視界の先には、全ての機能を停止させた取り巻き達の姿があった。

(ほんとに止まってる……?)

 用心に越したことは無いと晶子は視覚をマナで強化し、取り巻き達の体内に巡るマナを見通すと完全に供給が止まっている事が確認できた。

「……うん、今度こそ止まったみたい」

「そうか」

 晶子の言葉に、鑪が一言返す。しかし、二人の間にそれ以上の会話は無く、ただ黙って取り巻き達の亡骸を眺め続けていた。

「晶子~、あと、ついでに鑪も。アルベート、だっけ? 彼の所に行かなくて良いの?」

「え、何で知って」

「囮で飛び回ってても、ちゃんと耳は聞こえてたからね?? というか、僕が風の英雄だって忘れて無い? たかだか少しの距離と高さがある程度、僕の耳には障害にもならないからね!」

 自信満々に言い切るハーミーズに、そう言えばそうかと今更思い出したように納得する。

「ほら、早く行こう!」

「でも取り巻き達は……」

「誰も触ったりしないよ。いくら僕達が倒したって言っても、まだ施設の警戒態勢は溶けて無いんだし」

 肩を竦めるハーミーズを見て晶子はやや悩んだものの、当初の予定通りにアルベートの元へ向かう事に。

「行きましょう、鑪さん」

「うむ」

 愛刀を回収して来た鑪にも声をかけ、晶子は後ろ髪引かれる思いをしながらも取り巻き達だった残骸を残してその場を後にするのだった。

次回更新は、7/24(金)予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。